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再生医療の実用化はいつから?現在の研究や実用化されている例を紹介!

再生医療の実用化はいつから?現在の研究や実用化されている例を紹介!

皆さんは、現在日本で実用化されている再生医療にはどのようなものがあるのかをご存じですか?これまでの薬物療法や保存療法では改善が見込めなかった疾患でも、再生医療によって治療できる可能性があるかもしれません。今回は、日本ではどんな再生医療が行われているか、どのような研究が進められているかについてご紹介していきます。

再生医療とは

「そもそも再生医療ってなに?」と思っている方も少なくないでしょう。まずは再生医療の概要、使用される細胞などについてご説明します。

再生医療とはどのようなものですか?
もともと人間の身体には「再生する力」が備わっています。例えば、紙の端で指を切ってしまった際、その傷はいずれかさぶたとなり、自然とかさぶたが剥がれて元の皮膚へと戻っていきますよね。このような再生する力を利用してケガや病気で失ってしまった機能を元通りに戻すことを目指すのが再生医療です。再生医療では、人工物や患者さんご自身の細胞を利用します。そのため、アレルギー反応や拒絶反応などの副作用が少ないことが特徴です。
再生医療に利用される多能性幹細胞とはどのようなものですか?
さまざまな細胞に姿を変えることができる「幹細胞」のうちの1つが多能性幹細胞です。多能性幹細胞は、人間の身体の細胞であればどんなものでも作り出すことができます。無限に増殖するため、意図しない細胞に分化してしまったりがん化したりするリスクもありますが、これに関しては主に2つの研究が進められています。1つ目はES細胞です。これは、不妊治療の際に使われなかった受精卵を人工的に培養して作る細胞です。どんな細胞にも分化できる万能的なものではありますが、他人の受精卵を使用するため免疫拒絶反応のリスクがあります。2つ目はiPS細胞です。人間の皮膚から採取した細胞に遺伝子を導入することで造ることができ、受精卵のような万能性を持っています。患者さんご自身の細胞を用いるため、ES細胞のような免疫拒絶反応の心配はありません。
再生医療に利用される体性幹細胞とはどのようなものですか?
体性幹細胞とは、限定された種類の細胞に分化できる細胞です。分化機能が限定されていることによってがん化のリスクが低いため、治療技術の応用が進んでいます。白血病の治療法として行われている造血幹細胞移植療法もこの治療の1つです。体性幹細胞はあらゆる組織から採取でき、骨や軟骨、脂肪細胞など、いくつかの異なる細胞に分化できます。

現在実用化されている再生医療の治療方法

現在実用化されている再生医療の治療方法 日本で実際に行われている再生医療にはどのようなものがあるのでしょうか。実は、整形外科や歯科、美容といったさまざまな分野で再生医療は活用されています。ここからは現在実用化されている再生医療についてご紹介します。

変形性膝関節症のPRP療法による治療について教えてください。
まず、変形性膝関節症についてご説明します。変形性膝関節症は加齢などが原因となって膝関節の軟骨がすり減って変形し、膝の痛みや生活の質低下を引き起こす疾患です。これまでは体重のコントロールや薬物療法・運動療法、ヒアルロン酸の注射、手術療法などを行うことが一般的でしたが、新たにPRP療法が広がってきています。PRP療法は、治療を受ける患者さんご自身から血液を採取して、それを遠心分離機にかけてPRPを抽出して行う治療法です。PRPには組織修復能力を持つ成長因子が多く含まれており、痛みや炎症の緩和が期待できます。この治療は保険適用外のため、自由診療となっています。
歯槽骨の再生医療について教えてください。
失ってしまった歯を補う方法としてインプラント治療が知られていますが、皆さんはどのようにしてインプラントが埋め込まれるかご存じですか?歯は歯槽骨に支えられていて、その歯槽骨が歯周病や噛み合わせなどによって薄くなってしまうと、インプラントの治療を受けることができません。そこで有用なのが歯槽骨に対する再生医療です。患者さんから骨髄液を採取してそこから培養骨を作製し、骨が薄い部分に注射して厚みを取り戻すことでインプラント治療を受けることができるようになります。なお、この治療は、B型肝炎・C型肝炎などの感染症を持っている方、がんの既往歴がある方、妊娠している方などは受けられない可能性があります。実際に治療を行う医師と患者さん、それぞれの合意が得られてから治療を進めることが大切ですので、まずは専門の医療機関に相談してみてください。
美容分野の再生医療について教えてください。
美容を目的とした再生医療には、PRP皮膚再生療法や幹細胞脂肪注入法豊胸術、点滴による再生医療、セルリバイブジータなどがあります。中でも代表的なのがPRP皮膚再生療法で、しわやニキビ跡、妊娠線、肉割れといったお悩みの改善が見込めます。この施術は30分程度で完了するため入院などの必要はなく、日帰りで受けることができます。どれくらいの効果が出るかは、施術を受ける方の肌の状態や施術する部位によって異なります。そのため、カウンセリングなどで医師に患部を診てもらい、「1回の治療で見込める効果」を事前に確認しておくことをおすすめします。

まだ実用化されていない再生医療の研究について

前述した実用化されている再生医療がある一方で、まだ実用化されていない再生医療もあります。

臓器再生の分野では現在どのような研究が進んでいますか?
日本では人工臓器の研究が伝統的に進められていましたが、性能的な面で臨床応用に近づいておらず、臓器不全に対する治療が行き詰まっていました。そこで注目され始めたのが再生医療です。例えば、肝臓の機能を失った方に対して肝臓を移植するのではなく、肝細胞を移植して肝臓の再生を促すというような方法です。現在は、悪くなった肝臓に良い細胞を注入して、その部分だけを再生させるという基礎実験が成功しています。また、心筋梗塞で壊死した筋肉組織の一部に間葉系幹細胞を注入して心筋を再生させるという心臓・循環器系の実験も行われています。ただ、こうした臓器再生は倫理的な問題とES細胞の未分化によるがん化のリスクがあるため、前臨床の段階で止まっています。
がんに関連する分野ではどのような研究が進んでいますか?
がんに対する免疫療法の1つとして、患者さん自身の血液から免疫細胞(T細胞)を取り出して加工し、加工したものを注射してがん細胞を攻撃するといったCAR-T細胞療法がありますが、CAR-T細胞はがん細胞への攻撃とともに老化するため、長期的な治療効果が得られないことが課題でした。そこで、愛知県がんセンター腫瘍免疫応答研究分野の研究グループでは、CAR-T細胞療法を改良するための研究が進められ、「PRDM1」という遺伝子をなくすことでCAR-T細胞が体内に戻した後でも長く生き続けられることを示しました。今後は複数の治療モデルを用いて、治療効果の検証や安全性の確認を進めることが求められています。

まだ実用化されていない再生医療はいつから受けられるようになる?

まだ実用化されていない再生医療はいつから受けられるようになる? では、実用化されていない再生医療はいつになれば受けられるのでしょうか。実用化におけるハードルや今後の課題などについて説明します。

再生医療の実用化のハードルはなんですか?
それは倫理面における課題です。例えば、ES細胞は余剰胚を利用して作製しますが、日本では「胚は人の生命の萌芽である」とされているため、胚を意図的に使用することの是非が問われています。また、臨床試験においては、治験に参加する方の権利と福祉を保護する取り組みが重要になります。研究に参加する方を公正かつ適切に選択し、リスクや負担をかけすぎないようにすること、研究成果に過度な期待を与えないようにすることなどに気を付け、臨床試験の計画を立てる必要があります。
iPS細胞の研究は今後どのように進んでいく?
日本では2023年4月現在、iPS細胞から作製した細胞を患者さんに移植して、安全性や効果を確かめる臨床試験が17件ほど行われています。このうち14件には、ヒト白血球型抗原を免疫拒絶反応が置きにくい組み合わせで持っている、健康なボランティアの方に、細胞を提供してもらう「iPS細胞ストック」が使用されています。この治療は現在では治療ができる段階には至っていませんが、医療の実現に向けて着実に進んでいくことが期待できます。

編集部まとめ

再生医療は新しい技術であり、安全性や有効性が認められてからでないと実用化できないため、現在実用化されていない治療が「いつから受けられるようになる」と一概には言い切れません。しかし、これまで治療法がなかった疾患に対して治療できるようになるなど、さまざまな可能性を秘めているのも事実です。あらゆる分野で研究や臨床研究が進められていますので、今後の医療発達にも注目していきましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
松澤 宗範医師(青山メディカルクリニック院長 慶応義塾大学病院形成外科)

松澤 宗範医師(青山メディカルクリニック院長 慶応義塾大学病院形成外科)

2014年3月 近畿大学医学部医学科卒業 2014年4月 慶應義塾大学病院初期臨床研修医 2016年4月 慶應義塾大学病院形成外科入局 2016年10月 佐野厚生総合病院形成外科 2017年4月 横浜市立市民病院形成外科 2018年4月 埼玉医科総合医療センター形成外科・美容外科 2018年10月 慶應義塾大学病院形成外科助教休職 2019年2月 銀座美容外科クリニック 分院長 2020年5月 青山メディカルクリニック 開業

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