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再生医療で脊髄損傷は治療できる?使用する幹細胞や治療を受けるための条件を解説!

再生医療で脊髄損傷は治療できる?使用する幹細胞や治療を受けるための条件を解説!

これまで、何らかの原因で脊髄を損傷し手足に麻痺が残ってしまった場合、麻痺を改善したり脊髄損傷を元通りに治したりする治療法はありませんでした。しかし、再生医療というご自身の細胞を用いた治療法によって、治療できる可能性が見えてきました。今回はその再生医療について、脊髄損傷と関連付けながらご紹介していきます。「脊髄に対する治療法を探している」「車椅子で生活している家族を助けたい」という方は参考にしてみてください。

脊髄損傷の症状

脊髄損傷は、運動機能や感覚機能に深刻な影響を及ぼす可能性があります。また、損傷の程度や部位によって症状は異なるため、早期に発見し、専門の医療機関でご自身に適した治療を受けることが大切です。まずは、脊髄損傷とはどのような疾患なのか、脊髄を損傷することによって見られる症状はどのようなものなのかといったことをご説明します。

脊髄損傷とはどのような状態ですか?
脊髄とは、脳から背中の下のほうまで伸びている中枢神経です。身体を支えている脊椎(背骨)の後ろにある脊柱管の中を通っています。外から受ける過剰な力によって脊椎が骨折したり脱臼を起こしてしまったりすると脊髄が損傷し、運動機能や感覚機能に影響が出ます。これを脊髄損傷と言います。ラグビーなどのコンタクトスポーツや転倒が原因となることが多く、交通事故による強い外傷によって発症する場合もあります。
脊髄損傷の主な症状について教えてください。
脊髄損傷の症状として「完全麻痺」と「不全麻痺」が考えられます。完全麻痺とは、重度の脊髄損傷を負い、感覚機能・運動機能の両方を失った状態を指します。手足の機能が完全に失われ、動かせない、触る感覚や痛みを感じないという症状が現れます。一方、不全麻痺とは、脊髄の損傷が部分的な状態を指します。感覚機能は働いていても運動機能は失っていたり、感覚機能や運動機能が部位によっては残っていたりします。また、手足のしびれやヒリヒリ感といった症状だけの場合もあります。

脊髄再生医療とは

脊髄再生医療とは 脳と手足をつなぐ脊髄に傷が付いてしまうと回復させることは難しく、治療法はないと考えられてきました。しかし、近年の日本では再生医療が進み、脊髄の損傷を治療できる可能性が出てきました。「再生医療」というワードを聞いたことはあってもどのようなメカニズムなのか、どのような治療法なのかを深く理解している方は少ないかと思います。そこで、再生医療の概要や脊髄再生医療とはどのようなものなのかを詳しく解説していきます。

再生医療とはどのようなものですか?
ケガや事故などで組織や臓器が機能障害・機能不全に陥ってしまったときに、患者さんご自身の細胞や人工的な材料を用いて失った機能の再生を図るのが再生医療です。皮膚に傷が付いてもかさぶたとなっていずれ元の皮膚になるように、人間の身体にはもともと「再生する力」が備わっています。この力をうまく利用しているのが再生医療の特徴です。再生医療によって、これまでの治療法では治すことができなかったケガや病気を、改善に向かわせることができます。また、再生医療の技術を用いて、難病の原因解明や薬の開発も進められています。
組織幹細胞と間葉系幹細胞(MSC)の違いについて教えてください。
組織幹細胞と間葉系幹細胞はどちらも幹細胞の一種ですが、いくつかの違いがあります。組織幹細胞は肝臓などの特定の組織に存在している未分化な細胞で、その組織や臓器を再生・修復する役割を担っています。一方、間葉系幹細胞は骨髄・脂肪・歯髄・へその緒・胎盤などに存在し、骨細胞・軟骨細胞、脂肪細胞、神経細胞、幹細胞などさまざまな細胞に分化できます。このことから、組織幹細胞は特定の組織や臓器の再生に特化しているのに対し、間葉系幹細胞は異なる組織の再生や修復に幅広く活用できるということがわかります。
脊髄再生医療とはどんな治療方法ですか?
損傷した神経を手術やお薬で治す方法はなく、関節可動域訓練や筋力訓練、日常生活動作訓練といった、一人ひとりに合わせたリハビリテーションを行うのが治療としては一般的でした。そこに新しい風を吹かせたのが再生医療です。脊髄再生医療は、脊髄神経に直接治療を行い、麻痺の改善を目指します。その方法はさまざまありますが、一般的には、脊髄に細胞を移植する、またはお薬を投与して脊髄神経の働きを変化させるという手法になります。

脊髄再生医療に用いられる幹細胞の種類

脊髄再生医療に用いられる幹細胞の種類 2018年12月に、札幌医科大学とニプロ株式会社が開発した自家骨髄間葉系幹細胞の静脈投与が再生医療等製品として承認されました。この治療は、患者さんの骨盤から採取した骨髄細胞に含まれている幹細胞を培養し、静脈への点滴によって体内に戻す治療法です。このように、骨髄から間葉系幹細胞を採取するのが主流でしたが、研究が進むにつれてさまざまな臓器から間葉系幹細胞が採取できることがわかってきました。また、採取した臓器によって間葉系幹細胞の性質も異なることが解明されています。

骨髄由来間葉系幹細胞とはどのようなものですか?
骨髄由来間葉系幹細胞は、その名の通り骨髄から採取された間葉系幹細胞です。この細胞には免疫調節機能が備わっており、炎症を抑える作用があるため、移植してもアレルギー反応や拒絶反応が起きる心配はありません。ただ、骨髄から採取するには全身麻酔を施さなければならないため、患者さんの身体への負担が大きいことが課題として挙げられていました。
脂肪由来間葉系幹細胞とはどのようなものですか?
先に発見されたのは骨髄由来間葉系幹細胞でしたが、近年では脂肪由来間葉系幹細胞が注目されています。脂肪由来間葉系幹細胞は、身体の表面に近い脂肪細胞から採取するため、採取しやすく患者さんの負担が少ないことが特徴です。脂肪由来間葉系幹細胞は、骨髄由来のものよりも優れていることが複数あります。例えば、骨髄由来間葉系幹細胞は骨髄にある細胞の内およそ0.01%しかないのに対して、脂肪組織にはその500倍もの間葉系幹細胞が含まれています。また、脂肪由来のものは骨髄由来のものと比べて免疫抑制機能が強く、また、ご年配の方の細胞でも問題なく増殖させることができます。
iPS細胞由来幹細胞とはどのようなものですか?
iPS細胞はあらゆる細胞に分化できる幹細胞です。心臓や脳、皮膚といった細胞になることができます。iPS細胞はご自身の皮膚や血液、歯茎、歯などからも作製でき、これにより再生医療の可能性が広がるようになりました。ただその作製には1年以上の期間がかかること、費用が高額なことが課題として挙げられています。また、慶應義塾大学では、iPS細胞を用いて損傷した脊髄の運動機能回復を目指す再生医療の臨床研究が行われています。

脊髄再生医療を受けるための条件

誰でも再生医療を受けられるのか、どこで再生医療を受ければ良いのか、まだまだわからないことだらけかと思います。ここからは脊髄再生医療を受けるための条件、再生医療について相談できる病院をご紹介します。

脊髄再生医療は誰でも受けられますか?
いいえ。一般的な治療と同じように、再生医療にも適応基準が定められています。例えば、現在すでに実施されている自家嗅粘膜組織移植は、「MRI 画像における損傷部位の長さが 3 cm 以内」「年齢が40歳以下であること」「下肢の運動と感覚が完全麻痺になっている胸髄損傷であること」「受傷から1年以上が経過していること」が条件となっています。また、再生医療を受けられる基準のほかに、治療を受けられない基準も別途定められています。
脊髄再生医療を受けられる病院について教えてください。
国立障害者リハビリテーションセンター病院で相談を受け付けていますので、ぜひ相談してみてください。相談対象となるのは、外傷や病気によって脊髄を損傷し手足に麻痺があり、再生医療をはじめとした先端的な治療に取り組みたいと考えている方です。診察などを行い脊髄損傷の程度を診断したうえで、再生医療などの治療について、現在行われている治療と今度行われる予定のある治療について説明していただけます。また、患者さんの状態がそれぞれの治療基準に当てはまっているかを見極め、治療を希望する方には実施医療機関への紹介状を作成してくれます。なお、国立障害者リハビリテーションセンター病院では、細胞移植などの再生医療は実施していません。

編集部まとめ

脊髄損傷に対する再生医療についてまとめましたがいかがでしたでしょうか。脊髄を損傷すると、日常生活にさまざまな支障をきたします。特に、ご年配の方は気付かないうちに後縦靭帯骨化症や黄色靭帯骨化症といった骨や靭帯の異常な骨化を発症している方がおり、軽い転倒で麻痺を起こすこともあります。そのため、ご自身の骨の状態を理解して予防に努めることも大切です。

参考文献

この記事の監修歯科医師
松澤 宗範医師(青山メディカルクリニック院長 慶応義塾大学病院形成外科)

松澤 宗範医師(青山メディカルクリニック院長 慶応義塾大学病院形成外科)

2014年3月 近畿大学医学部医学科卒業 2014年4月 慶應義塾大学病院初期臨床研修医 2016年4月 慶應義塾大学病院形成外科入局 2016年10月 佐野厚生総合病院形成外科 2017年4月 横浜市立市民病院形成外科 2018年4月 埼玉医科総合医療センター形成外科・美容外科 2018年10月 慶應義塾大学病院形成外科助教休職 2019年2月 銀座美容外科クリニック 分院長 2020年5月 青山メディカルクリニック 開業

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