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再生医療

再生医療で皮膚はきれいになる!?お肌の状態を良くする再生医療まとめ

再生医療で皮膚はきれいになる!?お肌の状態を良くする再生医療まとめ

「再生医療」という言葉をテレビや新聞などで耳にしたことはあるでしょうか。「再生」という名前から、なんだか高度で、それでいて夢のような治療に感じる人も多いかもしれません。

ただ、どんな治療でどんなメリットを得られるのか、治療におけるリスクはないのか、保険で治療を受けられるのかなど、再生医療について詳しく知っている人はほとんどいないでしょう。

そこで本記事では、再生医療の中でも「皮膚の再生医療」に着目し、その内容や、自家培養表皮・肌細胞補充療法・PRP皮膚再生療法・ACRS療法などの再生医療の種類、自由診療における金額の相場、受診時における注意点などを解説します。

再生医療とは

再生医療とは 「再生医療」とは、病気やケガで失った組織を、人工的に培養した細胞を使って健康的な組織に作り変える治療方法です。再生医療は皮膚疾患以外にも、心臓疾患や脳疾患、整形外科疾患、リウマチなどにも用いられており、再生医療の登場によって、これまで対応できなかった疾患へのアプローチができるようになりました。

治療への期待は高いですが、医療を受けるうえで安全面にも目を向ける必要があります。患者さん自身も、再生医療におけるメリットだけでなく、注意点についても詳しく知ることが大切です。

再生医療によって皮膚をきれいな状態にできる

皮膚の再生医療は、やけどや白斑などの治療のほかに、AGAや美容などの施術にも使われています。以前の皮膚科医療では、「薬などを飲まずに髪の毛を増やしたい」「できてしまったしわやシミを治療するのではなく、根本から肌の老化を防ぎたい」などの悩みに応えることはできませんでした。

しかし再生医療が登場し、医学技術が進歩したことで、そうした悩みに対してもアプローチすることが可能となったのです。ただし、患者さんの年齢や健康状態によって、現れる作用に個人差がありますので、再生医療を受ける際は注意点があることも肝に銘じておきましょう。

自家培養表皮

再生医療による皮膚への治療:自家培養表皮 皮膚の再生医療で用いられる方法として「自家培養表皮」が挙げられます。日本に普及したのは2007年で、2009 年には保険適用となりました。こうした医学の進歩が、重度のやけどや母斑、表皮水疱症、白斑といった皮膚損傷で悩む方を救うきっかけにつながっています。

自家培養表皮とは

「自家培養表皮」とは、患者さんから健康的な皮膚を切り取り、採取した皮膚を培養し、シート状に精製したものを患部に貼り付ける移植方法です。培養方法は、抗生物質や動物由来が原料となる「3T3細胞」をベースに用い、表皮細胞を増やしていきます。3週から4週間くらいで、細胞シートが完成します。日本で扱われる細胞シートは、1枚の大きさが80cm²です。20枚あれば、大人の体表面積の10%を覆うことができます。

この自家培養表皮のメリットは、自分の皮膚の細胞をもとにして治療するため、免疫拒絶反応が起きづらかったり、皮膚移植に必要なドナーを探す手間が省けたりすることなどです。培養した細胞シートを作るのに時間がかかるというデメリットがあります。

熱傷(ねっしょう)の治療

熱傷とは、沸騰したお湯や蒸気、熱い鉄板などに皮膚が接触し、やけどをしてしまった状態のことを指します。皮膚は、「表皮」「真皮」「皮下組織」と3層に分かれており、どの層まで達するかによって重症度が変わります。軽度なやけどであれば、ヒリヒリとした痛みを感じ、水ぶくれができます。真皮下層までやけどしてしまうと、薬による治療は難しく、皮膚移植による手術が必要となります。しかしこれには、移植する皮膚が足りないという問題があります。そこで「自家培養表皮」で作られた皮膚を使うことで、広範囲にわたる重度なやけどにも対応することができるようになるのです。

母斑(ぼはん)の治療

母斑とは、皮膚腫瘍の一つで、皮膚が黒褐色になることから、一般的にはあざ・ホクロと呼ばれることが多いものです。黒い色素を持つメラノサイトが、表皮や真皮に蓄積されることで、黒くなります。生まれつきできたあざは先天性巨大色素性母斑と呼ばれ、手や足、背中など身体の至るところにできます。先天性巨大色素性母斑は、皮膚がんになる恐れがあるため、あざが大きくなるなどの異常があれば、早期に医療機関を受診することをおすすめします。治療は手術による切除となります。切除範囲が狭ければ、縫合で治療を終えることができますが、切除範囲が広い場合は治療した箇所を「自家培養表皮」で覆います。

表皮水疱症(ひょうひすいほうしょう)の治療

表皮水疱症とは、表皮と真皮をくっつけるタンパクの異常により、外部からの少しの刺激で、水ぶくれができたり皮膚がただれたりする遺伝性の皮膚疾患です。そのほかにも、栄養失調や貧血などの症状を引き起こすことがあります。これらは、新生児のときに発症するため、心配になる親御さんは少なくありません。表皮水疱症は「単純型」「接合部型」「栄養障害型」の3つの型に分類されます。治療方法は定まっておらず、症状を軽減させる治療を行うなどして、長期的なコントロールが必要になります。なお、「接合部型」「栄養障害型」であれば、「自家培養表皮」を用いた手術を行うことができます。

白斑(はくはん) の治療

白斑とは、皮膚の一部の色が薄くなり、ぽつぽつとした白い斑点ができる疾患です。詳しい原因は解明できていませんが、表皮細胞にあるメラノサイトの異常と考えられています。紫外線から皮膚を守るメラノサイトには、色素細胞が含まれています。何らかの理由で、色素細胞が減少したり消失したりすることで肌の色が白く変わってしまいます。白斑には先天性のものと、後天性のものが存在し、白斑の種類に応じて治療方法が変わります。治療方法には、飲み薬や塗り薬の処方のほか、ナローバンド・エキシマライトを使った紫外線療法、外科的処置などがあります。外科的処置では、「自家培養表皮」を移植することが可能です。

限られた症例での保険適用が可能

現在、保険適用とされている再生医療は7種類あり、骨の関節から臓器、筋肉まで、その対応症例は多岐にわたります。皮膚への再生医療では、先ほど紹介した「重症の熱傷」、「先天性巨大色素性母斑」、「表皮水疱症」の症例に対して、保険適用で受けることができます。疾患の種類や重症度によって、自由診療として取り扱う場合があるため、詳しくは、医療機関に確認しましょう。

肌細胞補充療法

再生医療による皮膚への治療:肌細胞補充療法 再生医療によって、皮膚を若々しい状態にする、美容目的での利用も行われています。

そもそも肌細胞には、「コラーゲン」「ヒアルロン酸」「エラスチン」「タンパク質」を作り出し、肌のハリや潤いを保つ働きがあります。ただ、年齢を重ねることで、肌細胞の機能は衰え、細胞の数も減少していきます。20歳を境に減少するとされ、加齢とともに、しわやたるみが目立っていくのです。

加齢以外にも、紫外線を浴びたり、乾燥する環境のなかで過ごしたりすることも健康的な肌を保つうえでは良くないとされています。そうした失われた細胞に対して、現在は肌細胞補充療法という再生医療を受けることで、活発な肌細胞の数を増やすことができます。

肌細胞補充療法とは

肌細胞補充療法とは、患者さんの皮膚から採取した肌細胞を培養し、加齢によってできたしわ・たるみの部位に移植する治療のことです。肌細胞補充療法をした部位は、肌細胞の働きが活性化することで、しわやたるみなどが次第に目立たなくなり、肌の老化抑制が期待できます。

PRP皮膚再生療法

再生医療による皮膚への治療:PRP皮膚再生療法 PRPとは、Platelet Rich Plasmaの略称で、「多血小板血漿(たけっしょうばんけっしょう)」のことです。血液は、赤血球・白血球・血小板で構成されています。血小板と聞くと、ケガをしたときに、かさぶたを作ってくれる役割があるとイメージされる方が多いかと思います。そうした「血液を止血し組織を修復し、炎症を抑える」といった血小板の力を医療に使うのです。血液から抽出したPRPを打つことで、皮膚組織の再生を促し、しわやニキビ跡などを目立たなくさせます。この治療方法を「PRP皮膚再生療法」と呼びます。

PRP皮膚再生療法とは

PRP皮膚再生療法とは、PRPを注入することで組織の再生能力を引き出し、加齢で老化した肌を活性化させ、健康的な肌に作り変える治療方法です。この治療を行うには、患者さんから採取した血液を遠心分離機にかけて、成長因子が含まれたPRPを抽出する必要があります。抽出したPRPを、目のクマやしわ、ほうれい線、ニキビ跡、妊娠線・肉割れといった気になる部位に注入することで、悩みを目立たなくさせます。患者さん自身の血液を使った治療方法となるため、免疫反応による拒絶もほとんど起きることはありません

ACRS療法

再生医療による皮膚への治療:ACRS療法 肌は、加齢だけでなく、紫外線を浴びたりスキンケアを怠ったりすることでも変化します。そして、生活習慣の見直しや体質改善だけでは、健康的な肌を取り戻すのに時間がかかります。そうした悩みがある方は、ACRS療法を受けることが、皮膚の老化の進行を防ぐ解決策になる可能性があります。

ACRS療法とは

ACRS療法とは、「Autologous Cytokine Rich Serum」の略称で、「自己血サイトカインリッチ血清」とも呼びます。この治療では、血液から精製した成長因子が含まれた製剤を皮膚に注入し、肌の再生を促します。ニキビやニキビ跡、しわ、ほうれい線、赤ら顔といった皮膚のトラブルを改善できるのに加えて、エイジングケアの作用も期待できます。また、ACRS療法は薄毛治療にも用いられ、育毛に必要な細胞を増殖させ、毛細血管の新生や修復作用を高めることができます。ほかの再生医療と同様に、患者さん自身の血液を利用した治療となるため、免疫機能による拒絶反応の恐れもありません

再生医療による皮膚への美容目的の治療はすべて自費診療

再生医療による皮膚への美容目的の治療はすべて自費診療 保険診療による再生医療の料金は固定されていますが、自由診療による再生医療は医療機関ごとに異なります。自由診療を行っている医療機関を選ぶ際は、料金だけに目を向けるのでなく、施術内容や診療体制、医師の専門性を見るのもポイントです。「金額は高いけど、サポート体制が充実している」など、それぞれの医療機関によって特色があります。シミ・ニキビ跡・しわ・たるみ・薄毛など、誰しもコンプレックスとなる部位を、手ごろな金額でいち早く解消したいと思いますが、焦る気持ちを抑えて、しっかり情報を調べることが得策と言えます。

再生医療による皮膚への美容目的の治療費用の相場

美容を目的とした再生医療における費用の相場は、数十万から数百万とされています。料金が高額になる理由は、施術費のほかに、血液採取費・血液感染症の検査費、薬剤の作成費、麻酔代などがかかるからです。このように料金がかかりますが、再生医療には、肌の見た目をただきれいにするのではなく、実際に若い状態にするといったメリットがあります。

ただ、医療機関によっては、施術内容や取り入れている薬剤、医師の技量などにより、同じ再生医療であっても、治療費用が異なる場合がありますので注意が必要です。

費用は治療方法や医院ごとに違う

再生医療を受ける医療機関を、施術費用だけを見て選ぶのは良くありません。施術内容や医師の専門性などの情報にも目を通すことが大切です。詳しく施術内容を把握せずに、再生医療を受けたことにより、皮膚にしこりやふくらみができたり、感染症にかかってしまったりするなど、トラブルに合う患者さんは少なくありません。また、強引に治療を提案する医療機関もありますので、受診する際は注意しましょう。

正しい判断をするためにも、雑誌や本で調べたり、複数の医療機関から説明を受けたりすることもおすすめします。説明当日に治療を受けることを決断するのでなく、一度自宅に帰って情報を整理することも覚えておきましょう。

まとめ

まとめ 再生医療は、皮膚の損傷を改善させたり、美容の悩みを解消させたりするなど、画期的な治療ということが理解できたかと思います。ただ、新しい治療であるがゆえに、さまざまな情報が混在しており、治療におけるメリットやデメリットなどの情報もご自身の手で得る必要があります。料金も高額になるため、医療機関に相談するだけでなく、治療を受ける前に、患者さん自身も再生医療について理解を深めることが大切です。

参考文献

この記事の監修歯科医師
松澤 宗範医師(青山メディカルクリニック院長 慶応義塾大学病院形成外科)

松澤 宗範医師(青山メディカルクリニック院長 慶応義塾大学病院形成外科)

2014年3月 近畿大学医学部医学科卒業 2014年4月 慶應義塾大学病院初期臨床研修医 2016年4月 慶應義塾大学病院形成外科入局 2016年10月 佐野厚生総合病院形成外科 2017年4月 横浜市立市民病院形成外科 2018年4月 埼玉医科総合医療センター形成外科・美容外科 2018年10月 慶應義塾大学病院形成外科助教休職 2019年2月 銀座美容外科クリニック 分院長 2020年5月 青山メディカルクリニック 開業

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