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再生医療

膝の再生医療で期待できる効果とは?効果を感じられるか心配な方へ

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膝の痛みは、加齢や運動不足、怪我などさまざまな原因で起こりますが、そのなかには軟骨や靭帯などの組織が損傷している場合もあります。そんな場合に期待されるのが再生医療ですが、再生医療による治療効果はどれほどのものなのでしょうか? 本記事では再生医療の膝への期待できる効果について、下記内容を中心に徹底解説していきます!

  • 再生医療とは
  • 再生医療で得られる効果
  • 再生医療のメリット

再生医療の膝への効果を理解するために、ぜひ参考にしてください。

そもそも再生医療とは?

そもそも再生医療とは?

再生医療とは、損傷した組織や臓器を修復、または再生する医療のことを指します。 再生医療では身体から幹細胞を取り出して増殖させ、元の身体に移植する方法があり、根本的な治療になり得るといわれています。
将来、再生医療では自らの細胞で臓器を作り、損傷した臓器と取り換えられるようになる可能性もあると考えられています。

膝の再生医療に適応できる疾患

膝の再生医療に適応できる疾患

再生医療は変形性膝関節症、腱鞘炎、腱板損傷、肉離れに適応が期待できます。 上記の疾患に対して、自分の血液から作ったPRPやAPSを患部に注射し、自己治癒力によって修復能力を高める治療法が用いられます。

膝の再生医療で期待できる効果

膝の再生医療で期待できる効果

ここでは、膝の再生医療でどのような効果が期待できるのか、治療別に紹介します。

幹細胞治療

幹細胞治療は再生医療のひとつです。 幹細胞治療は、患者さんのお腹や太腿等から脂肪細胞を採取し、そこから抽出した幹細胞を使用して損傷した組織や臓器の修復・再生を目指します。特に変形性膝関節症などの膝の疾患に対して、保存療法や手術療法の間を埋める「第3の治療法」として期待されています。
具体的な治療法としては、「脂肪由来幹細胞(ASC)治療」と「PFC-FD™療法」があります。
脂肪由来幹細胞(ASC)治療は、局所麻酔下で皮下脂肪から幹細胞を採取し、培養したのちに膝関節内に注射する方法です。注入した幹細胞が傷んだ組織に直接生まれ変わるのではなく、幹細胞から放出される液性因子に働きかけることで、患者さんの組織や細胞に抗炎症作用(痛みや腫れを抑える)や自己修復を促します。これらの働きで痛みが軽減されている間にリハビリをおこない、組織の修復を目指します。
PFC-FD™療法は、患者さんの血液中の血小板に含まれる成長因子を活用し、関節や筋腱の疾患・損傷に注射する治療法です。
患者さんの血液を遠心分離させ、血小板を濃縮抽出したものを「多血小板血漿(PRP)」といいます。PFC-FD™療法は、そのPRPから成長因子を抽出・凍結乾燥したものを指します。膝の「変形性膝関節症」や「靭帯損傷」「腱炎」等に活用されます。

PRP療法

PRP療法(多血小板血漿療法)は、患者さん自身の血液から抽出した成分を利用する治療法です。血液1mm³あたり10万〜40万個程度含まれる血小板を濃縮し、その成長因子の力を活用します。血小板は、血管の損傷時に止血と組織修復を促進する役割を担っています。具体的なPRP療法の治療の流れは以下のとおりです。

1.採血:PRPを作成するための血液を患者さんから採取します
2.分離:次に、採取した血液を遠心分離機にかけてPRPを抽出します
3.投与:抽出されたPRPを患部に注入します

PRP療法は主に、変形性膝関節症やスポーツ選手のケガの治療に活用されています。
PRP療法で期待される効果は、成長因子によって自己修復作用を引き出すことです。靭帯や腱の損傷に対しては回復を早め、変形性膝関節症では痛みの緩和や関節機能の改善が期待できます。治療後1週間〜6ヵ月ほどで組織修復が見られ、2週間〜3ヵ月ほどで効果が現れ始めるといわれています。また、免疫反応が起きにくいという点がメリットであり、PRP療法をおこなう回数に特に決まりはありません。必要に応じて繰り返し治療をおこなうことも可能とされています。
ただしPRP療法は、先進医療や高額医療の補助の対象とはなりません。また、PRP療法の実施における、痛み止めおよび湿布の処方、検査もすべて自費となります。

自家培養軟骨移植術

自家培養軟骨移植術は、患者さん自身の健康な軟骨細胞を体外で増殖させ、その後、軟骨が欠けた部分に移植する治療法です。この治療法は、外傷性軟骨欠損症や離断性骨軟骨炎の患者さんに対応しています。治療の流れは以下のとおりです。

1.軟骨組織の採取:患者さんの膝関節から0.4gの軟骨を採取します
2.軟骨細胞の培養:採取した軟骨をコラーゲンと混ぜ合わせ、4週間ほどかけて培養します
3.移植手術:完成した自家培養軟骨を軟骨が欠けた部分に移植します
4.治療後のリハビリ期間は約1年とされています

自家培養軟骨移植術の治療法の特徴は、拒絶反応が低いとされる点にあり、大きなひざ軟骨損傷にも対応できるとされる点や、保険が適用される点も特徴です。

膝の再生医療の効果の感じ方

膝の再生医療の効果の感じ方

膝の再生医療の効果はどの程度感じられるのでしょうか。また、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。以下で解説します。

再生医療の効果には個人差がある

再生医療の効果の感じ方や持続期間には、個人差があります。 再生医療は、人間がもともと持っている回復能力を利用し、組織や臓器の修復を目指す医療です。しかし、患者さん自身の再生力の違い(個体差)があるため、治療効果が異なることがあります。これは、患者さんの体質、年齢、健康状態、疾患の進行度など、さまざまな要素が影響します。
したがって、再生医療の効果はすべての患者さんに対して平等ではないといえます。

膝の再生医療におけるメリット・デメリット

再生医療は、これまで治療法がなかった疾患の治療ができるようになると期待される一方、新しい医療であることから現時点では予測できないリスクもあります。再生医療のメリットとして、以下のような点が挙げられます。

  • さまざまな疾患の根本的治療が目指せる
  • 患者さん自身の組織を使用するため、拒絶反応などのリスクが少ないとされ
  • 外科的な介入にともなう副作用や感染リスクの低減が期待できる
  • 患者さんの身体に負担がかかりにくい(低侵襲治療)
  • 入院の必要がなく、治療後すぐに普段の生活に戻れる
  • 痛みの改善や関節可動域の拡大、アレルギー発生のリスク低減なども期待される

また、再生医療は膝以外の各種疾患や美容にも効果が期待されています。 幹細胞が細胞に分化することで、創傷治癒、免疫調整、神経再生などの機能として働き、あらゆる疾患の治療に効果が期待されています。 例としては、肝障害や変形性膝関節症、皮膚の損傷、自己免疫疾患、脳梗塞など、多岐にわたります。
一方、デメリットとしては、以下のような点が挙げられます。

  • 自由診療であるため治療費が高額になる
  • 治療の効果には個人差があること
  • 根本的な治療に対する期待は限定的で、継続的な治療が必要な場合もある
  • 注射による炎症や、採血部位・治療部位での皮下出血、感染のリスクも存在する

再生医療は副作用が少ないといわれていますが、心配がまったくないわけではありません。幹細胞が入ったところに痛みや腫れが現れることがありますが、数日で治ることがほとんどのようです。

膝の再生医療の効果に関する期間

膝の再生医療の効果に関する期間

膝の再生医療の効果はどの位で現れ、どの程度の期間持続するのでしょうか。また、治療の回数はどのくらい必要なのでしょうか。以下で解説します。

再生医療の効果が現れるまで

治療する疾患や個人差によりますが、再生医療の効果が現れるまでの時間は幹細胞投与後約3ヵ月〜半年を目安に考えられます。患者さんの体質や病状、治療法により異なりますので、具体的な効果の現れ方や期間は担当の医師に相談しましょう。

再生医療の効果の持続期間

治療法や患者さんの状態によりますが、再生医療の効果は約1年〜2年間とされています。なかには、半年ほどで効果が減退したと感じる方もいるようです。しかし、これはあくまで目安で患者さんの体質や病状、治療法により異なります。

治療の回数

治療の回数は患者さんの状態によりますが、必要に応じて何回でも受けられます。早い方で1回の治療で効果を感じる方もいれば、複数回治療しないと効果が出ない方もおられます。

膝の再生医療の効果が得にくい・受けられない場合とは

膝の再生医療の効果が得にくい・受けられない場合とは

合併症や患者さんの状態によっては、再生医療の効果が得られにくいケースや、治療を受けられない状況も存在します。

合併症がある場合

膝の再生医療には、効果が得られにくい状況や合併症がいくつか存在します。

  • 肥満:肥満の方は、治療の効果が得られにくいと言われています
  • 膝関節の軟骨が完全になくなっている状態:PRP療法は、血小板が炎症を抑え、組織の回復を促すものであるため、外科的手術が適応となります
  • 悪性疾患がある場合や、重度の糖尿病や感染症のある方
  • 抗がん剤・免疫抑制剤を内服している方

これらの状況に該当する場合、再生医療の効果が得られにくい可能性や、再生医療の適応外となることがあります。

患者さんの状態による場合

患者さんの健康状態や特定の病態は、再生医療の適用を制限する場合があります。 例えば、下記に当てはまる方は治療を受けられません。

  • がん治療中の方
  • 感染症を持つ方
  • 妊娠している可能性のある女性
  • 心臓病や脳梗塞の既往がある方
  • 出血傾向の病気を持つ方
  • 血液をサラサラにする薬を服用している方
  • 肝臓疾患、自己免疫疾患、骨端線が残る中学生や高校生

また、膝の変形が重症で関節の隙間がない場合や、肥満の方は、PRP療法の効果が低下することがあります。これらの状況下での治療は、医師による厳密な評価と判断が必要です。

膝の再生医療の効果を引き出すために

膝の再生医療の効果を引き出すために

膝の再生医療の効果を得るためには、適切なアフターケアと生活習慣の調整も必要です。リハビリや生活面での工夫、そして体重管理は、治療後の回復を促進し、持続的な改善を支える重要な要素です。

リハビリのためにストレッチ

ストレッチは筋肉の柔軟性を高め、関節の可動域を改善し、膝の痛みを軽減するのに役立ちます。なかでも大腿四頭筋や中殿筋の筋力トレーニングとストレッチがおすすめです。 以下に、膝のための一般的なストレッチ方法をいくつか紹介します。

  • ハムストリングストレッチ:床に座り、片方の足を伸ばし、もう一方の足を曲げて足首を内側に引き寄せます。伸ばした足のつま先を自分に向け、上体を前に傾けて足の指に手が届くまで伸ばします。15秒間このポジションを保ち、ゆっくりと元の位置に戻します。これを反対側でも繰り返します。
  • 四頭筋ストレッチ:立った状態で、一方の足の足首を手でつかみ、膝を曲げてお尻に向けて引き上げます。膝が地面と平行になるように保ち、15秒間このポジションを保ちます。これを反対側でも繰り返します。
  • カーフストレッチ:壁に向かって立ち、一方の足を前に出し、もう一方の足を後ろに伸ばします。後ろの足の膝を伸ばしたまま、かかとを地面に押し付けます。前の足の膝を曲げ、体を前に傾けます。15秒間このポジションを保ち、ゆっくりと元の位置に戻します。これを反対側でも繰り返します。

生活面での工夫

再生医療の治療後には、日常生活上の制限がある場合があります。治療後は以下の点に注意して生活すると良いでしょう。

  • 飲酒:治療当日は、飲酒を控えることが推奨されます。
  • 入浴:関節の治療をおこなった場合は、シャワーを含めた入浴を控えることが必要です。点滴治療の場合は、シャワーのみの入浴が可能です。
  • 運動:約2〜3日間は運動を控えることが求められます。関節への投与をおこなった場合は、約1ヵ月程度の間、ウォーキングやランニングなどの過度な運動を控える必要があります。

減量

膝への負担を軽減するためには、体重管理が重要です。特に変形性膝関節症の方にとって、体重の減少は膝の関節への負担を減らすのに役立ちます。 運動療法は筋力を向上させ、膝関節を支えることに役立ちますが、肥満の改善には食事療法もおすすめです。以下に、減量に役立つ方法をいくつか紹介します。

  • 早食いを控える:早食いは体重増加につながると言われています。満腹中枢が刺激され、満足感が得られるにはある程度の時間が必要と言われています。なので満腹中枢が働く前に必要以上に食べ過ぎてしまうのです。
  • まとめ食い(ドカ食い)を控える:一度に多量に物を食べると、血糖値が急激に上昇します。血糖値の急激な上昇は体脂肪や体重の増加につながりますので気を付けましょう。2
  • ながら食い、つられ食いを控える、よく噛んで食べる:食事中に他のことをすると、食べ過ぎてしまう可能性があります。また、よく噛んで食べることで、食事をゆっくりと楽しむことができます。
  • 不要な食品を買わない、菓子類を身の回りに置かない:食べたくない食品を買わない、または身の回りに置かないことで、無意識のうちに食べ過ぎてしまうことを防ぐことができます。

体重が少しでも減少すれば、それだけ膝への負荷も軽減されるため、肥満の方は積極的な体重管理が推奨されます。

まとめ

まとめ

ここまで再生医療の膝への効果についてお伝えしてきました。 再生医療による膝への効果をまとめると以下のとおりです。

  • 再生医療とは、損傷した組織や臓器を修復、または再生する医療
  • 治療別によって違いはあるが組織や細胞に抗炎症作用や自己修復作用を促進する効果が期待できる
  • 再生医療にはさまざまな疾患の根本的治療ができる可能性や、副作用が少ないというメリットがある

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。 最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
甲斐沼 孟医師(上場企業産業医)

甲斐沼 孟医師(上場企業産業医)

平成19年(2007年) 大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部医学科 卒業 平成21年(2009年) 大阪急性期総合医療センター 外科後期臨床研修医 平成22年(2010年) 大阪労災病院 心臓血管外科後期臨床研修医 平成24年(2012年) 国立病院機構大阪医療センター 心臓血管外科医員 平成25年(2013年) 大阪大学医学部附属病院 心臓血管外科非常勤医師 平成26年(2014年) 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医員 令和3年(2021年) 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医長 令和5年(2023年) 上場企業産業医

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