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再生医療

脊髄損傷の再生医療とは?幹細胞治療やその効果について解説

再生医療 脊髄

脊髄は背骨の中にある中枢神経で、さまざまな場所の神経とつながっています。損傷すると、体の一部の麻痺などが起きるのです。

脳や脊髄といった中枢神経の細胞は一度損傷すると、自然には再生しないとされています。しかし、再生医療によって脊髄を修復できれば麻痺などの症状も治療できるのです。

脊髄損傷の再生医療とはどのようなものか・メリットやデメリットとしてはどのようなものがあるのか・治療期間や医療費はどのぐらい必要なのかについて解説していきます。

脊髄損傷の再生医療の効果やメリット・デメリット

脊髄損傷の再生医療の効果やメリット・デメリット

再生医療とはどのようなものですか?
再生医療とは疾患・外傷によって機能が損なわれてしまった臓器を、幹細胞などを使って元に戻そうとする医療行為です。脊髄のような中枢神経の細胞は、これまで一度損傷すれば再生はできないとされていました。
再生医療を利用することで、こうした従来では治しようがなかった臓器の損傷による障害も治療可能になると期待が寄せられています。臓器の機能損傷については、臓器を交換する移植医療も有力な選択肢です。しかし移植医療は拒否反応の克服という問題があるうえ、すべての臓器が移植可能というわけではありません。
脊髄をはじめとする中枢神経も、現時点では臓器そのものの移植は不可能だとされています。幹細胞を用いた再生医療の場合は、拒否反応・移植不可能の問題もクリアできるとされています。
脊髄損傷とはどのようなものですか?
脊髄は脊椎の中を通っている中枢神経で、体を動かす神経や知覚を脳に伝える神経の大半は脊髄を経由して脳に信号を伝えるのです。脊髄損傷の主な原因は、事故などで生じる脊椎の脱臼・骨折に起因する圧迫です。ポリオ(小児麻痺)感染によって起きる運動機能の障害も、脊髄損傷に含められることがあります。
脊髄損傷は軽度のものだと損傷が生じた個所から下に不完全な麻痺や知覚障害が生じ、重いものだと完全に麻痺して知覚も失われてしまいます。例えば腰椎の部分で脊髄損傷が起これば下半身に障害が起き、痛み・熱さ・冷たさを感じにくくなるのです。頚椎の部分で重度の損傷が起これば手足が完全に麻痺し、痛みをはじめとする知覚もほぼ完全に失われてしまいます。
脊髄損傷の再生医療の効果を教えてください。
脊髄損傷の再生医療の効果のひとつは、運動機能の回復です。体を動かす神経が再び脳までつながれば、脳からの信号が伝わるようになるからです。再生医療によって脳からの体を動かす命令が届くようになれば、麻痺した部位の機能回復が大きく前進します。また、脊髄損傷は痛覚をはじめとする知覚にも障害が起きます。
再生医療によって脊髄の機能が回復すれば、知覚障害も改善するのです。知覚障害のため火傷が起きていることに気が付かず重症化してしまうケースがありますが、知覚機能が改善すればこうした合併症を未然に防止することができます。
脊髄損傷の再生医療のメリットはどのようなものですか?
脊髄損傷の再生医療のメリットで大きなものは、これまで不可能だとされていた脊髄損傷に起因する運動機能・知覚の障害が改善する可能性があることです。脊髄損傷によって将来的に歩行機能・知覚の回復が絶望的だとされていた人にも、希望が見えてきたといえます。他人から臓器そのものの移植を受けることが不可能な脊髄の機能を回復させされる可能性があることも、メリットです。また幹細胞移植による再生医療は臓器移植と違い、拒否反応が起きることがほぼありません
特に国内では自分の細胞を元にして移植する幹細胞を生成するため、拒否反応は起きにくいとされています。骨髄移植で適合するドナーが見つかる確率は数百分の1とも数万分の1ともいわれる極めて低いものですが、自家移植である再生医療は自らがドナーを兼ねているため適合の問題も発生しません。
脊髄損傷の再生医療にデメリットはありますか。
デメリットといえるのが、現時点では医療行為によってどの程度まで機能が回復するか確立されていないことです。ある患者さんが脊髄損傷の再生医療によって自力歩行できるレベルまで回復したからといって、他の患者さんも同じ医療行為によって同レベルの効果が出るかどうかは未知数としかいえないのが現状なのです。
脊髄損傷の再生医療の一種であるステラミック注を行っている札幌医科大学でも、治療効果には個人差があるとアナウンスしています。再生医療にかかるコストの高さも、デメリットといえます。脊髄損傷の再生医療のうちステラミック注については医療保険が適用されているのですが、保険が適用されても患者さん側の負担は百万円単位で決して軽いとはいえません。
医療保険の適用外の再生医療については患者さん側が医療費すべてを支払う自由診療となるため、より負担が大きくなるのはいうまでもないでしょう。

脊髄損傷に対する幹細胞治療法について

脊髄損傷に対する幹細胞治療法について

脊髄損傷に対する幹細胞治療の種類は?
脊髄損傷に対する幹細胞治療としては、ステラミック注・iPS細胞由来神経幹細胞移植・Muse細胞の静脈内投与治療の3つが挙げられます。
ステラミック注は骨髄液に含まれている間葉系幹細胞を血清内で培養して、静脈注射によって移植するものです。使用する骨髄液と血清は患者さん由来のものです。患者さん本人の骨髄液から間葉系幹細胞を抽出し、患者さんの血清内で培養を行って移植を行います。ステラミック法は脊髄損傷の再生医療の中では、現時点で医療保険が適用される唯一の方法です。
iPS細胞由来神経幹細胞移植は慶應義塾大学で行われています。Muse細胞の静脈内投与治療は東北大学を中心に複数の医療機関で実施されているもので、内因性の幹細胞であるMuse細胞の静脈注射によって亜急性期の脊髄損傷の機能改善を目指しています。
iPS細胞を用いた脊髄損傷に対する再生医療法について教えてください。
iPS細胞から神経前駆細胞を作り、損傷した脊髄に移植する方法です。ステラミック注が脊髄損傷が発生して時間がたっていない急性期に行われているのに対し、iPS細胞を用いた脊髄損傷の再生治療は発生から時間がたった亜急性期での臨床研究が進められています。
慶應義塾大学による動物実験によって安全性・有効性が確認されており、現在は臨床研究の段階です。2019年3月13日に、厚生労働大臣によって正式な医療行為であると認可されています。現在では亜急性期だけでなく、患者さんの大多数を占める慢性期についてもiPS細胞を用いた脊髄損傷の再生医療の研究が進められています。
脊髄損傷の再生医療で副作用はどのようなものがありますか?
現時点で副作用として挙げられるのは、移植細胞が周囲に悪影響を与える「侵襲」のリスクです。移植細胞によってもたらされる周辺の組織への物理的な影響などが、侵襲のリスクとして考えられるものです。
侵襲防止のために使用する免疫抑制剤による感染も、懸念材料のひとつといえます。後天性免疫不全症候群(AIDS)がそうであるように、免疫を抑制することで本来ならば想定できないような細菌・ウイルスによる感染症が起きる危険性があるからです。
幹細胞がどのような形で神経を再生するか制御ができないため、痛覚過敏などの症状を引き起こすリスクがあることも指摘されています。幹細胞の品質によっては腫瘍化する可能性があることも、古くから指摘されている問題点です。iPS細胞を用いた再生医療では、動物実験で腫瘍化したケースが実際に報告されています。

脊髄損傷の再生医療の治療について

1万円札

脊髄損傷の再生医療の治療期間はどのくらいですか?
ステラミック注を行っている札幌医大によると、骨髄液を採取したあと幹細胞の培養には2週間程度が必要です。幹細胞は静脈注射により、30分から1時間かけて体内に注入されます。治療期間については、札幌医大は数ヶ月を必要とするとしています。
ただし、治療効果には個人差があるため治療期間についてはあくまでも目安のひとつにすぎないともアナウンスしています。
治療費の相場はいくらになりますか?
保険適用対象となっているステラミック注については、医療費が1回当たり14,957,755円と定められています。実際に患者さん側が支払う金額については健康保険の自己負担額の規定によって異なっています。
1割負担ならば約1,500,000円、3割負担ならば約4,500,000円という計算です。
保険適用外の再生医療は医療機関によって費用が異なる自由診療であるため、相場を出すことは困難です。患者さん側が医療費を全額負担する必要があるため、一般的に自由診療は保険医適用対象の医療行為よりも金銭的負担が高くなるとされています。

編集部まとめ

医師達

これまで治らないとされてきた脊髄損傷に起因する運動・知覚の障害について、再生医療を用いることで改善する可能性が見えてきたのは朗報といって良いでしょう。

治療法が確立されて、よりしっかりした効果が得られることや、よりコストのかからない治療法が確立されることも期待されています。

脊髄損傷による機能障害が起きても「一生このままだ」と絶望することなく、医療技術の発展に期待して回復への希望を捨てないでほしいのです。

参考文献

この記事の監修歯科医師
甲斐沼 孟医師(上場企業産業医)

甲斐沼 孟医師(上場企業産業医)

平成19年(2007年) 大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部医学科 卒業 平成21年(2009年) 大阪急性期総合医療センター 外科後期臨床研修医 平成22年(2010年) 大阪労災病院 心臓血管外科後期臨床研修医 平成24年(2012年) 国立病院機構大阪医療センター 心臓血管外科医員 平成25年(2013年) 大阪大学医学部附属病院 心臓血管外科非常勤医師 平成26年(2014年) 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医員 令和3年(2021年) 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医長 令和5年(2023年) 上場企業産業医

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