本記事では膝の再生医療と費用について、以下の点を中心にご紹介します。
- 膝の再生医療とは
- 膝の再生医療の費用相場
- 膝の再生医療と高額療養費制度
膝の再生医療と費用について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。 ぜひ最後までお読みください。
そもそも膝の再生医療とは?
再生医療は、損傷や老化により失われた組織や機能を回復させるための医療技術のことを指します。中でも膝の再生医療は、特に変形性膝関節症などの膝疾患に対して注目されています。 以下は、膝の再生医療の主な種類と、その概要です。
幹細胞治療(第二種再生医療)
対象疾患:主に変形性膝関節症
幹細胞は多分化能を持ち、様々な組織に変わる可能性があります。 膝関節に対する幹細胞治療では、患者自身の皮下脂肪から採取した幹細胞を培養し、変形性膝関節症の患者の膝関節に注射することで、修復作用や抗炎症作用を期待する治療が行われています。 痛みの軽減や日常生活動作の改善が期待できます。
PRP療法(第二種/第三種再生医療)
対象疾患:主に変形性膝関節症
PRPは、患者から採取した血液を遠心分離して得られる、血小板を多く含む血漿です。膝関節にPRPを注射することで、血小板内の成長因子やサイトカインの組織修復や抗炎症・除痛効果を目指す治療です。 個人差はありますが、痛みの低減や抗炎症作用が期待できます。
自家培養軟骨移植術
対象疾患:外傷性軟骨欠損症や離断性骨軟骨炎
患者自身の軟骨細胞を培養し、軟骨の欠損部分に移植する再生医療です。 軟骨の欠損部分の修復が期待されています。
膝の再生医療の費用相場
膝の再生医療は、変形性膝関節症や軟骨の損傷などの治療に用いられる治療法です。 その費用は、施術内容やクリニックによって異なりますが、以下は膝の再生医療における費用の相場です。
PRP治療:約3万円~5万円(税込)
PRP治療(ACP/APS治療):約10万円~30万円(税込)
間質血管細胞群(SVF)を用いた治療:約85万円~150万円(税込)
培養脂肪幹細胞を用いた治療:約180~200万円(税込)
これらの情報を基にすると、PRP治療の費用は3万円〜30万円(税込)、脂肪由来の幹細胞を用いた治療は85万円〜200万円(税込)程度の範囲であることがわかります。 また、自家培養軟骨移植術の材料費は約200万円(税込)程度とされていますが、その他の手術費用や入院費用を含めると、合計で約440万円(税込)ほどかかるといわれています。
再生医療の選択に際しては、治療法ごとの特性や費用についてよく調べることが重要です。 ただし、治療の内容や入院費、クリニックの設備、地域などによって費用は変動するため、具体的な治療を検討する際は、各クリニックに直接問い合わせることをおすすめします。
膝軟骨再生が保険適用になる病気
「自家培養軟骨移植術」は、2013年4月から公的医療保険の適用となっています。対象となる病気は「外傷性の軟骨欠損症」と「離断性骨軟骨炎」です。 自家培養軟骨移植術は、患者自身の健康な軟骨を採取し、培養して軟骨を増やし、その後、損傷部分に移植するものです。
外傷性の軟骨欠損症
「外傷性軟骨欠損症」は、スポーツや交通事故などの外部からの強い衝撃によって、膝の軟骨の一部が欠けたり、剝がれたりする症状を指します。 特に、スポーツ選手やアクティブなライフスタイルを持つ人々に多く見られる疾患であり、軟骨の損傷が進行すると、関節の動きに制限が生じたり、痛みが増大することがあります。
離断性骨軟骨炎(りだんせいこつなんこつえん)
「離断性骨軟骨炎」は、激しいスポーツや労働などで繰り返し膝に力が加わることで、軟骨がその下にある骨とともに剥がれてしまう症状を指します。 この疾患は、特にスポーツ選手や若い方々に多く見られます。 軟骨と骨の間の接続が弱まることで、関節の動きに制限が生じたり、痛みが発生することが特徴的です。
これらの疾患は、膝の軟骨の健康と機能を維持するための治療が必要となります。 再生医療の技術は、これらの疾患に対する新しい治療法として、大きな期待が寄せられています。
膝の再生医療における高額療養費制度
膝の再生医療は、膝の損傷や痛みを治療するための新しいアプローチとして注目を集めています。 膝の再生医療をはじめ先進医療は、国民の安全性を確保し、患者負担の増大を防ぐ観点から、保険診療との併用を認める制度として設けられています。 この先進医療における膝の再生医療と高額療養費制度の関連性や、その適用条件について詳しく解説します。
高額療養費制度とは
高額療養費制度は、一定の医療費を超えた部分の自己負担を軽減するための制度です。 例えば「自家培養軟骨移植術」の場合、健康保険と高額療養費制度を利用することで、治療費用を大幅に抑えられる可能性があります。 高額療養費制度を利用することで、患者は医療費の一部のみを負担し、残りは国や自治体が補助することとなります。
例として、年収約370万円~約770万円の69歳の方が、ケガで入院して100万円の医療費が発生した場合、医療費の負担割合は3割となりますが、高額療養費制度の適用により、自己負担の上限額は8万7,430円となり、超過分が返ってきます。
ただし制度の適用を受けるためには、一定の条件を満たす必要があります。
また、高額療養費の払い戻しを受けるためには、公的医療保険に「高額療養費支給申請書」を提出する必要があります。 しかし、支給までには3か月程度かかるため、自己負担超過分は一時的に自分で立て替える必要があります。
このような場合、事前に「限度額適用認定証」を申請し、病院や薬局に提示すると、医療費が自己負担限度額までに抑えられるため、払い戻しの手間も省けます。 この認定証は、最長で1年間有効であり、長期の治療にも利用できます。 高額療養費制度の適用条件や必要な手続きは、治療内容だけでなく、制度の申請が治療前なのか後なのか、入っている健康保険の種類は何なのかによっても変わってきます。 詳しい情報は、国や公的医療保険の公式サイトなどで確認することをおすすめします。
高額療養費制度が受けられない場合
高額療養費制度の適用を受けるためには、一定の条件を満たす必要があります。 これらの条件を満たさない場合、制度の適用を受けられないケースが生じます。 例えば、所得が一定の基準を超える場合や、適用を受けるための手続きを怠った場合などが該当します。
また、先進医療としての再生治療に関する費用は、患者が全額自己負担することとなっています。 しかし、先進医療に関連しない通常の治療部分(診察・検査・投薬・入院料など)の費用については、一般の保険診療と同様に扱われ、高額療養費制度の適用が受けられる場合があります。治療前に医師に確認してみましょう。
再生医療の分類について
再生医療は、患者の細胞や組織を利用して、損傷や疾患を治療する医療技術です。これにより、従来の治療法では難しかった疾患の治療や、臓器移植の代替となる治療が可能となりました。 日本では、再生医療の安全性と有効性を確保するために、再生医療等を3つのカテゴリーに分類しています。
第1種再生医療等
第1種再生医療等は、患者自身の細胞を採取し、特定の条件下で培養・増殖させた後、同じ患者に移植する治療を指します。 このカテゴリーの特徴は、他の人の細胞や組織を使用しないため、拒絶反応のリスクが低いことです。また、治療の効果や安全性が期待されています。 例として、皮膚の欠損部に自身の皮膚細胞を移植する治療などがあります。
第2種再生医療等
第2種再生医療等は、他の人から採取した細胞や組織を、特定の条件下で培養・増殖させ、患者に移植する治療を指します。 このカテゴリーの特徴は、多くの患者に対して一度の採取で治療が行える点です。 しかし、他の人の細胞や組織を使用するため、拒絶反応のリスクを考慮する必要があります。
第3種再生医療等
第3種再生医療等は、遺伝子組み換え技術を用いて作製された細胞を使用する治療を指します。 このカテゴリーは、特定の遺伝子を導入することで、細胞の特性を変化させ、治療効果を高めることを目的としています。 遺伝子組み換え技術を使用するため、安全性の確認が特に重要とされています。
以上が、再生医療の分類についての概要です。 更なる詳細や最新の情報は、関連する公式サイトや医療機関での確認をおすすめします。
まとめ
ここまで膝の再生医療と費用についてお伝えしてきました。 膝の再生医療と費用の要点をまとめると以下の通りです。
- 膝の再生医療は、患者の細胞や組織を使用して、膝の損傷や疾患を治療する医療技術。特に軟骨の損傷や変形性膝関節症など、従来の治療が難しかった疾患の治療に選択される
- 膝の再生医療の費用は、治療の種類や施設により異なるが、数十万円〜数百万円程度が相場とされる。先進医療としての治療には保険が適用されないため、高額な自己負担が必要となる場合がある
- 高額療養費制度は、一定の医療費を超えた部分の自己負担を軽減する制度である。再生医療の治療費については、先進医療としての部分は制度の対象外となるが、それ以外の通常の治療部分には適用される可能性がある
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。