AGA治療には、薬物療法や外科的治療、近年では再生医療も注目を集めています。内服薬や外用薬での治療以外にも、様々な治療法を選択できる時代になりました。治療法を選択するに当たって気になるもののひとつが副作用です。AGA治療の副作用にはどのようなものがあるのでしょうか。また、再生医療とはどんな治療なのでしょうか。AGA治療の種類とリスクを解説します。
AGA(男性型脱毛症)とは
AGAに悩む人は多く、近年ではAGA治療専門のクリニックも多く展開されています。そもそもAGAとは何なのでしょうか。その原因や症状、遺伝との関係について紹介します。
AGAの原因
AGAは男性型脱毛症とも呼ばれる脱毛症の一つです。男性ホルモンであるテストステロンが、頭皮の5αリグクターゼと結合しDHT(ジヒドロテストステロン)という男性ホルモンになることで生じます。このDHTが毛母細胞のホルモン受容体へ作用することで、髪のヘアサイクルが乱れてしまい薄毛になってしまうのです。 AGAは、遺伝や加齢が原因となって起こることがほとんどです。その他にも、栄養バランスの偏り、睡眠不足、ストレス、飲酒など、生活習慣も抜け毛や薄毛の原因となるといわれています。
AGAの症状
AGAによりヘアサイクルが乱れると、毛髪が太く成長する前に抜けてしまうようなサイクルを繰り返すことになります。これにより、十分に成長できない毛髪が多くなり、次第に薄毛が目立つようになるのです。薄毛のパターンには、大きく分けると、生え際から後退するM型と、頭頂部から薄くなるO型の2種類があります。また、薄毛の進行を判定する指標「ハミルトン・ノーウッドの分類」によって、7つの段階に分類されています。
AGAと遺伝の関係
AGAは「Androgenetic Alopecia」の頭文字をとったもので、Androgenは男性ホルモン、geneticは遺伝という意味を持つ言葉です。名前にある通り、AGAは遺伝的要因が影響する病気といえるでしょう。 一卵性の双子を対象に行った調査では、全く別の人生を送っていた双子であっても、髪の毛はほとんど同じように変化していくことがわかりました。なお、薄毛の81%程度の原因は遺伝によるものだという報告もあります。 AGAはDHTとホルモン受容体が結合することで発症しますが、このホルモン受容体の数は人によって異なり、ホルモン受容体の数が多い人ほどAGAの発症リスクは高まります。ホルモン受容体は遺伝子レベルで決まっているため、薄毛も遺伝するということができます。
AGA治療法
AGAの治療を行っているクリニックは多くありますが、AGAの治療法とはどのようなものなのでしょうか。ここでは、一般的に多い薬物療法をはじめ、外科的治療や自然療法などについても紹介します。
薬物療法とその効果
AGA治療は、内服薬や外用薬による薬物療法が選択されるのが一般的です。内服薬として多く用いられるのは、プロペシアやザガーロで、どちらもAGAの原因となるDHTの産出を抑える効果を持つ薬剤です。外用薬としては、血管拡張作用を持つミノキシジルがあります。ミノキシジルは毛細血管を広げることで、毛根への栄養補給をしやすくし、発毛力を補う効果が期待できます。プロペシアやザガーロと併用して使用することもある薬剤です。 なお、薬物療法は時間をかけて行うことが一般的であり、効果を得るためにはしばらくの間は治療を続ける必要があります。即効を期待する場合には向いていない治療法と言えるでしょう。また、治療薬には副作用やリスクもあります。必ず医師の指示の元、用法や用量を守って適切に服用しましょう。
外科的治療オプション
薬物療法によらない方法としては、注入療法や植毛などがあります。注入療法とは、頭皮に発毛因子を直接注入する治療法のことです。発毛メソセラピーやHARG療法と呼ばれる方法があり、それぞれ使用する薬剤と注入方法が異なります。薬物療法とあわせて行うこともあります。 植毛は、一般的に自分の毛根を採取して薄毛部分に移植する治療法です。薬物療法による改善が認められない場合などは植毛術が有効な可能性があります。後頭部に毛包が残っているのであれば、植毛が可能です。
自然療法と代替治療
クリニックではなく、自分で取り組めるものとしては、まずは生活習慣を見直すことです。AGAは加齢や遺伝が主な原因ですが、生活習慣も影響していると考えられています。栄養がありバランスの取れた食事、十分な睡眠、過度な飲酒を避ける、ストレスを溜めないなど、体に良い生活を心がけることで、抜け毛予防をしましょう。頭皮のツボを押しながらマッサージするのもおすすめです。 ただし、残念ながらAGAは自分で治すことは難しい病気です。効果のある治療をしたい場合は、適切な治療を行えるクリニックを受診しましょう。
再生医療によるAGA治療
最先端治療として注目されているのが再生医療です。AGAの再生医療とはどのようなものなのかチェックしておきましょう。再生治療として注目されている、幹細胞再生治療について解説します。
幹細胞療法の基本原理
脂肪に含まれる幹細胞は、新しい血管や脂肪、毛髪の元になる細胞です。頭皮の皮下組織にある脂肪が少なくなると、脂肪前駆細胞の働きが落ちて、AGAの原因になります。幹細胞療法では、体内の別の場所にある脂肪幹細胞を頭皮に移植することで、脂肪前駆細胞と毛包幹細胞の働きを活性化させます。これにより成長因子が分泌されて毛包幹細胞に作用し、毛髪が成長期に移行、発毛を促すという仕組みです。幹細胞療法では、お腹やお尻、太腿の細胞から脂肪細胞を採取し、そこから脂肪由来幹細胞を抽出し、頭皮へ注入します。
再生医療の先進的技術と進歩
再生医療は先進的技術の進歩によって発展してきました。毛髪の再生医療として、幹細胞再生治療は注目を集めています。施術に当たっては専門的な技術が求められる中、専門機器を用いることで、安全性の高い手術が実現できています。 また、幹細胞療法の他にも、PRP毛髪再生療法も同じく再生医療として注目されている治療です。PRPとは多血小板血漿のことを指します。PRP毛髪再生療法は、血液中にある血小板の成長因子が持つ組織修復機能を利用して治癒力を高めることで、結果的に薄毛にアプローチする治療です。治療では血小板を濃縮したものを直接注入することで、細胞増殖を活性化させ、毛母細胞の生成を促し、ヘアサイクルの乱れを直す効果が期待されています。 これらに代表されるように、先進的技術の進歩によって、現在もAGAの再生医療は発展を続けています。
再生医療によるAGA治療の将来展望
従来のAGA治療は、薬物療法や植毛がほとんどでした。再生医療の登場によって、髪の成長因子に働きかけ、自毛の発毛力や育毛力を高めるという、根本的な治療が可能になりつつあります。AGA治療は、自毛を育てて再生する時代に入ったといえるでしょう。今後も更なる効果の増進に向けて、専門機関が研究を続けています。
AGA治療における一般的な副作用
AGA治療には、薬物療法や外科的手術を行うのが一般的です。これらの治療における副作用にはどのようなものがあるのでしょうか。
薬物療法に伴う副作用
プロペシアおよびザガーロの副作用として報告されているのは、性欲減退、勃起機能不全、肝機能障害などがあります。臨床試験においては、プロペシアは安全評価対象のうち約4%の割合、ザガーロは安全評価対象17.1%程度で副作用が認められています。 ミノキシジルの副作用としては、適用部位のそう痒感、発疹、めまい、動悸、血圧上昇など。2009年のモニター店による調査では、副作用の発現率は約8%でした。 その他、薬剤ごとに使用できる人や条件は異なっています。服用の際には必ず医師の指示に従い、副作用が出た場合は早急に医師に相談しましょう。
外科的手術のリスクと管理
発毛メソセラピーは、一般的に副作用の少ない施術だといわれています。針を使った施術のため多少の痛みや出血を伴うこともありますが、患部の冷却や麻酔によって軽減することが可能です。また、施術直後は患部周辺の赤みや腫れ、かゆみが現れることがありますが、ほとんどが一時的なもので、数時間~数日程度で症状は収まるでしょう。副作用としては、まれに施術後にアレルギー反応や感染症が発生する場合があります。 HARG療法の場合も、一般的に副作用のリスクは低い施術だとされています。同じく頭皮に直接注入する治療であるため、皮膚の炎症などの副作用が起きるケースもあるでしょう。また、注入方法によって異なりますが、治療後に痛みや痒み、発疹などの皮膚症状、腫れや赤み、一時的な内出血の報告も、まれにではありますがされています。 注入療法においては基本的に副作用のリスクは低いとされていますが、それでも報告はゼロではありません。副作用や気になる症状があれば、早めに医師に相談しましょう。
副作用の予防と対処法
AGA治療においては、副作用が起きる頻度は高くはありません。しかし、少しでもリスクは軽減したいものです。副作用を予防するために大切なのは、まずは医師の指示に従うことです。薬物治療においては、決められた用法や用量を必ず守りましょう。勝手に服薬をやめたり、飲む量を増やしたりしては、本来の効果が得られないばかりか、健康に害が及ぶ可能性もあります。外科的治療を行う場合も、治療前後の行動などについても医師の指示に従いましょう。 適切な治療を行ったうえで副作用が出た場合は、まずは医師に相談しましょう。自己判断で服用を中止したり継続したりすると、症状が悪化する恐れがあります。また、医師の判断によって別の薬に変更となったり、薬が減らされたりすることもあります。副作用によって薬を変更する場合や減らす場合は、AGA治療の効果自体が変わる可能性もあるでしょう。必ず医師の説明を聞き、今後の治療方針について納得したうえで臨むことをおすすめします。
AGA治療と生活習慣の関係
薄毛や抜け毛といったAGAの症状は、生活習慣にも影響を受けると考えられています。AGAに影響する生活習慣と気を付けるべきポイントをご紹介します。
食生活とAGAの関連性
栄養素の不足は抜け毛の原因になるといわれています。特にアミノ酸や亜鉛が不足すると、髪を構成する成分が作られにくくなります。また、鉄不足で貧血状態となると、髪の成長に必要な酸素と栄養分が届かず、髪が抜ける原因にもなるでしょう。ビタミンも他の栄養素の補助を行うものとして重要です。バランスの取れた食事をとることが、AGA予防の第一歩と言えます。
ストレス管理と髪の健康
自律神経には交感神経と副交感神経の2つがあり、これらがバランス良く機能することで、心身の健康が保たれています。しかし、ストレスによって自律神経のバランスが乱れ、交感神経が優位な状態になると、毛細血管の収縮が起こって血流が低下します。頭皮の血流が悪くなることで、抜け毛の原因になるといわれています。 また、ストレスがかかると副腎の副腎皮質からコルチゾールというホルモンが分泌されます。慢性的なストレスによってコルチゾールが過剰分泌されることで、免疫機能が抑制されてしまい、頭皮環境が悪化。抜け毛を引き起こす可能性があります。
運動と頭皮の血行促進
適度な運動は頭皮の血行促進に良いとされています。運動は血流を良くして成長ホルモンの放出を促す効果が期待できます。また、ストレス解消にも有効です。ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動と、筋トレなどを組み合わせて行うと、AGA対策としてより効果的だといわれています。
AGA治療の費用と保険適用
AGA治療を行う場合にはどのくらいの費用がかかるのでしょうか。保険適用できるかどうかも合わせてチェックしておきましょう。
AGA治療の平均コスト
AGA治療の費用は、治療内容によって異なります。 薬物療法の場合、内服薬であれば月々4000~1万3000円程度が相場です。外用薬の場合は5000~2万円程度となります。薬を組み合わせた場合は、さらに費用がかかります。注入療法となると費用は上がり、1回につき5万~20万円程度です。再生医療の場合はさらに高額となり、幹細胞再生治療の場合は150万円程度かかるといわれています。
保険適用の可能性と制限
AGA治療は、どの方法であっても基本的には保険が適用されません。一方で、円形脱毛症、びまん性脱毛症、脂漏性脱毛症など特定の病気の場合は、保険適用される可能性もあります。ただし、治療法が限られている点や、保険診療と保険外診療の併用ができない点に注意が必要です。条件に合うかどうかは、事前に確認してから治療を受けるようにしましょう。
治療費用の効果的な管理
AGA治療は比較的高額です。費用を抑えるためには、できるだけ早期に治療を行うことが大切です。症状が進行するほど、治療費も高額になる傾向があります。早い段階であれば、比較的安価な薬物療法のみで改善が見込めるでしょう。また、治療薬についてはジェネリック医薬品を選択するのも一つの手です。
まとめ
多くの人が悩みを持つ薄毛や抜け毛は、その多くがAGAを原因としています。AGA治療においては、一般的には薬物療法が選択されますが、そのほかにも外科的治療や再生医療も選べるようになりました。リスクは比較的低いといわれていますが、治療法ごとにそれぞれ副作用も報告されていますので、治療を行う際には医師の指示に従い、気になる点があればすぐに医師に相談しましょう。
参考文献