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再生医療

外科の再生医療(人工関節など)|整形外科の人工関節置換術と再生医療の比較も紹介

外科の再生医療(人工関節など)

再生医療とは、けがや病気・加齢などによって失われた機能を、薬ではなく人体の「再生する力」を利用して修復を目指す医療のことです。幹細胞などを用いて組織や臓器の欠損部分を補うことで再生を促しますが、2006年に作製されたiPS細胞を利用した再生医療が期待されており、現在研究が行われています。

整形外科の分野では、代表的な治療方法に人工関節置換術と再生医療が挙げられます。これらについて解説するので、ぜひ参考にしてください。

外科の再生医療とは?

外科の再生医療

整形外科の再生医療とは、自分の組織を用いて損傷した臓器や組織・機能の修復を目指す医療です。

従来より整形外科の分野では、傷んだ関節を人工関節に置き換える「人工関節置換術」が行われています。傷んだり変形したりした関節を摘出し、代わりに人工関節を入れて関節の機能を取り戻すのが目的です。しかし、手術が高額であったり、治療期間が長かったりする点がデメリットといえるでしょう。

再生医療の場合、手術をしないため体への負担や入院期間が短く済む点がメリットといえます。

人工関節置換術と再生医療の比較

人工関節置換術 再生医療 比較

人工関節置換術とは、傷んだ関節を金属やセラミックなどでできた人工の関節に置き換えることで、痛みを軽減し能力を回復させる手術のことです。

軟骨が破壊されてしまった変形性股関節症や関節リウマチなどに対して、現時点での再生医療では根本的治療が期待できません。そのため現在は、人工関節置換術が有効かつメジャーな手術となります。これは、関節の痛みの原因となっている部位を丸ごと取り換えるため、痛みを取り除く効果が高い手術です。

これに対して再生医療とは、幹細胞や血液などを利用して組織や軟骨を作り出す医療技術となります。血液や脂肪など自分由来の組織を利用するため拒絶反応や副作用が少なく、また手術を行わないため体への負担も少ない点がメリットです。

ここでは、人工関節置換手術と再生医療の違いを解説します。

治療にかかる日数

治療にかかる日数

治療にかかる日数は各治療によって異なります。

まず、人工関節置換術は傷んだり変形したりした関節を抽出し、人工関節に入れ替える手術です。症状や施設によって異なるものの、手術を含めた入院期間は1~4週間程度です。長い間動けないことで筋力が低下した人や、関節の変形が強い人は入院期間が長くなる傾向にあります。

一例ですが、入院スケジュールは以下のとおりです。

  • 手術当日または翌日:ベッドから起き上がる練習・車いすの乗り降り・トイレ動作など
  • 手術後1週間:歩行器や平行棒を使用した歩行訓練・手術部位周辺の筋肉をつける訓練など
  • 手術後2~3週間:杖を使っての歩行訓練・階段の上り下り・屋外での歩行訓練などを行い、問題なければ退院が可能

次に再生医療ですが、PRP療法の場合、患者さんご自身の血液を加工して抽出されたPRPを患部に注入するため1時間程度で済みます。

採血と注射のみなので体への負担が少ないことが特徴です。注射後、1~4週間程度で組織修復が開始し、2週間~3ヵ月程度で効果が期待できます。

治療費用

治療費用

人工関節置換術の費用相場は総額で200万円前後で、これには人工関節置換術にかかる手術費用に加え入院費用も含まれています。保険適用の場合は、3割負担で60万~80万円程度となります。また、高額療養費制度の対象となります。

再生医療のPRP療法の費用相場は、1回の注射で5~10万円(税込)程度が目安となります。PRP療法は日本ではまだ保険適用外のため、全額自己負担となります。

医療機関によっても金額が異なるため、詳細は医療機関にお問い合わせください。

治療にともなうリスク

治療方法によってリスクにも違いがあります。それぞれのリスクをみていきましょう。

人工関節置換術の主なリスクは以下の3つです。

  • 感染リスク
  • 人工関節の緩み
  • 血栓症

本術式に限りませんが、手術には感染のリスクがあるため、術後の感染予防は大切です。

特に人工関節置換術は、人工関節の表面および周囲に細菌が増殖してしまう感染症が懸念されます。発生確率は0.3〜3%といわれています。

仮に感染した場合、早期であれば抗生物質などで治療ができますが、発見が遅くなれば手術のやり直しをする必要性も出てきます。

次に人工関節の緩みについてです。人工関節の耐用年数は15年程度といわれており、長期間使用していると金属部品と骨との接着面に緩みが生じる可能性があります。

人工膝関節の場合、体重増加・膝関節に負担の大きい作業や仕事・激しいスポーツによって人工関節が緩むことも懸念されます。このため、体重管理をしっかり行う、重い荷物を持つ仕事は避ける、激しいスポーツは行わないなどの配慮が必要です。

最後に血栓症についてです。人の体には、出血時に血を固まりやすくして多量出血を防ぐ防御反応があります。これは手術時にも同様で、手術の際に出血量を抑えるため血栓ができやすくなります。手術時には血液の凝固作用をコントロールする薬剤を投与するなど、工夫が必要といえるでしょう。血栓自体は自然に消えることもあります。

ですが、次第に大きくなって血流をふさいでしまうと、むくみ・痛み・血栓が血流にのって肺や脳の血管にまで達し肺塞栓や脳塞栓などの深刻な病気を引き起こすことにもなりかねません。そのため、手術前に血流状態を調べ、医師に相談するようにしましょう。また、手術後はなるべく早めにリハビリを始め、体を動かすことも大切です。

次に、再生医療の主なリスクです。

  • 個人差がある
  • 費用が高い
  • 感染リスク

PRP療法は、患者さんご自身の血液から作られた薬液を使用するため、効果に個人差があります。

また、PRP療法は保険適用ではないため、医療費が高額になる可能性がありますので、あらかじめ医師に確認しましょう。

そして人工関節置換術と同様、PRP療法でも感染症のリスクはあります。ご自身の身体にほかの病原菌が潜んでいないか、いま一度確認のうえ、病気などが完治してからPRP療法に臨むことをおすすめします。

再生医療で使用される人工骨

再生医療で使用される人工骨

再生医療で使用される人工骨には、以下のものがあります。

特にハイドロキシアパタイトがメジャーですが、ほかにも数種類有効なものがあります。

  • ハイドロキシアパタイト
  • アルミナ
  • バイオグラス

これらを解説します。

ハイドロキシアパタイト

ハイドロキシアパタイト

骨や歯を構成するリン酸カルシウムの一種であり、コラーゲンとともに代表的な物質の一つです。

歯のエナメル質の97%、骨では65%を占めています。生体組織になじみやすく吸着性があり、毒性がない点がメリットです。

再生医療で使用される人工骨の場合、このハイドロキシアパタイトでできた歯科用の人工骨が用いられます。骨や歯の主成分であるため高い生体親和性を示し、安全性が高いことが特徴です。

なお、歯科用以外の人工骨や人工関節にもハイドロキシアパタイトを使用した製品が開発されています。

アルミナ

アルミニウムの酸化物である酸化アルミニウム(Al2O3)です。

歯科用インプラントのほか、半導体やポンプ製品にも使用されている程身近な素材がアルミナであり、日常的に目にすることができます。その硬度はダイヤモンドに次ぐとされ、かなりの硬度を有することでも知られています。

現在は、アルミナセラミックとして人工骨の作成に利用されています。

バイオグラス

人工歯根や骨充填剤として用いられるガラスです。

体内に入れても毒性や発がん性がなく生体親和性にも優れており、体内で長期にわたって劣化しない特徴があります。耳小骨や歯槽骨補填材として利用されることが多いようです。

軟骨の再生医療の流れとは?

軟骨における再生医療の流れ

上述したとおり、軟骨は一度損傷すると再生できません。そのため、患者さん自身の軟骨片から軟骨を採取して培養し、もとに戻す再生医療は大変画期的なものでした。

2013年4月から自家培養軟骨移植術は保険適用の医療となっています。日本で2番目に認可された再生医療です。

ここからは軟骨の再生医療の流れを解説します。

軟骨片の採取

患者さんご自身の関節非荷重部から0.4グラム程度の軟骨を採取します。関節鏡による手術となり、手術時間は30分~1時間程度、入院期間は1日程度です。

酵素処理

軟骨組織の採取後、酵素処理を施して軟骨細胞を分離します。

その後に単層培養で増殖させ、トリプシンを用いて回収し患者さんご自身の欠損部へ注入します。

アテロコラーゲンゲルに包埋

採取された軟骨組織はアテロコラーゲンというゲルと混合して培養され、約4週間後には自家培養軟骨が完成します。

完成した自家培養軟骨は500円玉程度のゲル状の固さのものです。

コラーゲンゲル内培養

ゲル状のアテロコラーゲン内で三次元培養を行い、軟骨様組織を作製します。この三次元培養を行うことで、軟骨細胞の本来の形質を保つことが可能となります。

作製した軟骨様組織を軟骨欠損部に移植

でき上がった培養軟骨は、約4週間後に体内へ戻します。リハビリ期間は術後約1年間とされていますが、個人差によりさらに早くリハビリが完了する人もいます。

なお、半月板損傷や変形性膝関節症は対象外となっています。

移植された軟骨がゆっくり時間をかけて固さを得ていくため、慎重な経過観察が欠かせません。保険適用となるのは外傷性軟骨欠損症または離断性骨軟骨炎の場合となります。

まとめ

まとめ

長い間、関節部位は人工関節置換術が取り入れられてきました。現在ではiPS細胞が作製された経緯もあり、再生医療の分野が少しずつ進歩してきています。

手術は少なからず痛みをともないます。また、リハビリ期間の長期化や金銭面での負担を強いられることから、今後は再生医療が関節部位治療の中心になる日が来るかもしれません。

病気やけがを治すだけでなく、その後の患者さんのクオリティオブライフがしっかり担保される医療技術の開発に期待が寄せられています。

参考文献

この記事の監修歯科医師
甲斐沼 孟医師(上場企業産業医)

甲斐沼 孟医師(上場企業産業医)

平成19年(2007年) 大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部医学科 卒業 平成21年(2009年) 大阪急性期総合医療センター 外科後期臨床研修医 平成22年(2010年) 大阪労災病院 心臓血管外科後期臨床研修医 平成24年(2012年) 国立病院機構大阪医療センター 心臓血管外科医員 平成25年(2013年) 大阪大学医学部附属病院 心臓血管外科非常勤医師 平成26年(2014年) 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医員 令和3年(2021年) 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医長 令和5年(2023年) 上場企業産業医

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