「変形性関節症」と「リウマチ」は、両方とも手や足などの関節に、痛み・腫れ・変形などの症状が起きる疾患です。症状だけに着目すると、どういった違いがあるのかと疑問に感じる方も多くいると思います。そこで本記事では、変形性関節症とリウマチの違いについて、原因や発症しやすい人の傾向、病気の種類、診断方法などを基にまとめています。ぜひ参考になさってください。
変形性関節症とリウマチの違いを正しく理解しよう
この項目では、変形性関節症とリウマチの原因や発症しやすい年齢、症状の現れ方などを解説します。
変形性関節症とは?
変形性関節症は、骨と骨の間の軟骨がすり減ることで、関節が変形し、痛みや腫れなどの症状が現れる疾患です。原因は、加齢による身体の変化や、運動・ケガ・体重の増減などの機械的な刺激、感染症による炎症などとされています。変形性関節症は、早いと40代から発症することがあり、80代になるとほとんどの方がこの病気を患います。また、男性の方よりも女性の方がなりやすいと言われています。関節の変形は、数年から数十年かけて進行していきます。変形してしまった関節は元の状態に戻すことが難しいため、手首や膝などに何らかの違和感があれば、早めに医療機関に相談することが大切です。
リウマチとは?
リウマチとは、自己免疫疾患の総称です。代表的な疾患に関節リウマチがあり、この病気は自己免疫機能の異常により、手足の指・手首・膝・足首などの関節に炎症が生じます。この炎症が続くと、軟骨や骨などの組織が破壊され、痛みや腫れといった症状が現れます。また、症状が悪化すると、関節に変形が起こり身体が固まってしまうため、日常的な動作を取ることが困難になります。関節リウマチが発症する原因は明らかになっていませんが、30代から50代の女性の方がなりやすいとされています。重症化すると、薬を服用しても改善されない場合がありますので、筋肉痛でもないのに手に痛みを感じたり、日常的な動作がいつものようにできなくなったりといった違和感を覚えたら、医療機関を受診しましょう。
変形性関節症とリウマチの見分け方とは
ここからは、変形性関節症とリウマチ、そのほかの病気の見分け方について説明します。変形性関節症とリウマチは、症状だけ並べてみると、ほとんど違いがあるようには見えませんが、腫れ方や症状の現れる部位が異なることがあります。また、変形性関節症の場合は、生活習慣による影響が大きいのも特徴です。反対に、リウマチは炎症性疾患のため、血液検査から判明する情報が多くあります。そうした見分け方についても詳しくお伝えします。
指がカクンとはねる場合
指は、腱によって、曲げたり伸ばしたりする動作を取ることができます。この腱が、腱を包んでいる腱鞘と摩擦を起こし炎症した状態が腱鞘炎です。加齢や遺伝、手の使い過ぎなどが原因で腱鞘炎になると、痛み・腫れ・熱感などの症状が現れます。ゴルフやテニスなどのスポーツをしている方、仕事でパソコンやマウスの操作をする機会が多い方、更年期・妊娠出産期の女性の方、関節リウマチ・糖尿病などを患っている方がなりやすいとされています。さらに悪化すると、腱の癒着や腱鞘が狭くなるなど、変形が起こります。こうした状態になると、手の指を伸ばしたときに、カクンとはねることがあり、これを「ばね指」と呼びます。ばね指は、関節リウマチの場合に起こりやすいとされています。
指がまっすぐ伸ばせない場合
指をまっすぐ伸ばすという動作が困難な場合、骨・筋肉の外傷以外に、関節リウマチや変形性関節症などの疾患が考えられます。これらの疾患は、似たような症状が起こりますが、症状の現れ方が異なります。変形性関節症の場合は、膨らみが硬いのに対し、関節リウマチの場合は膨らみがやわらかいのが特徴です。また、親指の第三関節に変形が起きたら、変形性関節症の可能性が高いとされています。
炎症を表すCRPや血沈の上昇など検査上の異常
変形性関節症は、関節リウマチと違い、炎症を表すCRPや血沈の上昇などの血液検査項目で異常を確認することができません。なぜなら、変形を起こす原因が、炎症ではなく、加齢で軟骨がすり減ることだからです。反対に、関節リウマチは自己免疫機能の暴走により、関節を守る組織や骨、軟骨を外敵とみなし、攻撃することで炎症を起こします。そのため、CRPの異常や血沈の上昇を確認することができます。
変形性関節症の種類とは
変形性関節症は、肘関節・膝関節・股関節にも現れますが、今回は手指にできる「ヘバーデン結節」「ブシャール結節」「母指CM関節症」について、それぞれの症状や原因を解説します。
ヘバーデン結節
ヘバーデン結節では、手指の第一関節が変形し、腫れ・ゆがみ・関節が曲がらないなどの症状が現れます。また、指を動かしているときだけでなく、安静時にも痛みを感じます。水ぶくれのようなでっぱりができるのも、特徴の一つとされています。発症の原因はいまだに解明されていません。男性の方よりも女性の方が発症する割合が多く、40歳を超えると発症する確率が高くなります。
ブシャール結節
ブシャール結節は、人さし指・中指・薬指・小指の第二関節が赤く腫れたり、曲がったりするなどの症状が現れる病気です。痛みの現れ方には個人差がありますが、「牛乳パックが開けられない」「字を書くのが困難」「雑巾がうまく絞れない」など、日常生活に支障をきたすことがあります。ヘバーデン結節と同様に、原因は明らかになっていません。ただ、日常的に手や指を使う方、更年期障害の方、ご年配の方は発症しやすいとされています。
母指CM関節症
母指とは親指のことで、CM関節とは親指と手首の間にある小さな関節を指します。このCM関節にある軟骨が擦り減り、痛みや変形などが生じる状態を母指CM関節症と呼びます。母指CM関節症になると、ドアノブを回したりホチキスを使ったりするなどの動作をした際に、親指の付け根に違和感を覚えたり、痛みを強く感じたりします。原因は、手の使い過ぎや加齢などが考えられ、女性の場合はホルモンバランスの変化が関係するとされています。そのため、更年期を過ぎると、症状が落ち着く方もいます。
リウマチの種類とは
リウマチ性疾患のなかでも代表的な関節リウマチの診断方法や治療の流れを説明します。そのほか、リウマチ性疾患の種類やその症状についてもいくつか紹介します。
リウマチ性疾患
リウマチ性疾患とは、関節・筋肉・骨・皮膚などに異常が現れる疾患です。関節リウマチをはじめ、シェーグレン症候群、全身性強皮症、脊椎関節炎、リウマチ性多発筋痛症、線維筋痛症、全身性エリテマトーデスなどがあります。いずれの病気も、自己免疫機能の異常によって発症しますが、免疫機能に異常が生じる原因は明らかになっていません。症状は病気によって異なりますが、目や口が渇く、皮膚や内臓が硬くなる、関節に痛みを感じる、手がこわばる、皮膚疾患はないのに赤い発疹ができるなどが代表的です。リウマチは寛かいが難しい疾患ですが、できる限り早めに治療を行うことで、症状の悪化を防ぐことができます。
関節リウマチ
関節リウマチとは、自己免疫の異常で、手に痛みやこわばりを感じる疾患です。手や指の関節以外にも、肘、肩、膝、足、足の指にも症状が現れます。関節リウマチの診断のためには、視診や触診で関節の状態を確認するほか、いくつかの検査を受ける必要があります。検査は、エックス線検査・超音波検査・MRI検査・関節液の検査・関節組織の検査・血液検査などです。治療は、生物学的製剤やJAK阻害薬などで症状をコントロールします。
変形性関節症の原因と症状とは?
変形性関節症によって起きる手指の腫れ・痛みなどが、何が原因で、どのように発症するのかを説明します。また、男性の方より女性の方が変形性関節症を患う確率が高いとされる理由についてもお伝えします。
エストロゲンの急激な低下
変形性関節症の原因は、エストロゲンの低下と深く関与しています。エストロゲンとは、女性ホルモンの一種で、骨を丈夫にし、肌の潤いを保つ役割があります。産後授乳期や更年期を機に、エストロゲンが低下すると、関節周囲・腱・腱鞘周囲にある滑膜の腫れを抑制する作用が失われます。そうすると、滑膜に炎症が起こり、手指などの関節に異常をきたします。そのため、男性の方よりも女性の方のほうが変形性関節症になりやすいとされています。加えて、ほてりや動悸、頭痛、疲労、イライラ、意欲の低下などの更年期症状もエストロゲンが関与していますので、閉経を迎えたら一度医療機関を受診しましょう。
手指の腫れ
手指の変形性関節症には、ヘバーデン結節やブシャール結節、母指CM関節症などの種類が存在します。これらの疾患で指が腫れてしまう原因は、加齢のほか、スマートフォンやパソコンの操作、ピアノ、編み物といった手先の使い過ぎです。腫れ方の特徴としては、変形した箇所の骨がトゲのように削られるため、触ったときにゴツゴツとした感触があります。一方で、関節リウマチによる指の腫れは、自己免疫機能の異常によって起こるため、関節の部位に熱を感じ、やわらかいのが特徴です。また、ぷっくりと赤く腫れあがり、しわもありません。
手指の痛み
変形性指関節症は、ほかの関節症と同様に軟骨がすり減ることで発症します。軟骨には、骨同士がぶつからないようにするためのクッション的な役割があります。その機能が失われると、骨が不安定になり、関節に大きな負担がかかります。そうすると、指を動かした際に痛みを感じます。さらに、骨と骨がぶつかることで、骨にトゲができます。この段階を迎えると、指の関節に激痛が走ります。
手指の変形
腫れや痛みを伴いながら、手指に変形が起こるのも、変形性指関節症の症状です。骨同士がくっつき、変形や炎症が落ち着くと、腫れや痛みも治まります。ただ、指の変形は自然に治ることはありません。変形が落ち着く時期には個人差があり、1年という方もいれば、5年と長い年数がかかる方もいらっしゃいます。
リウマチの原因と症状とは?
関節リウマチの症状や原因について説明します。
関節の内面を覆っている滑膜細胞の増殖が原因
関節リウマチでは、免疫細胞が過剰に活性化し、関節を包む膜である滑膜に炎症が起こることで、関節に痛みやこわばりなどの症状が現れます。この異常をきたす免疫細胞は、滑膜細胞です。滑膜細胞の数が増殖すると、関節液が増加し、軟骨や骨を外敵とみなして攻撃することで、さまざまな症状が現れるのです。痛みやこわばりの症状以外にも、疲労感や微熱、食欲不振、体重減少などの症状が見られることがあります。
全身の関節(主に手指、足趾、手首の関節)の痛み
関節リウマチになると、手指や足趾、手首などの関節に痛みが現れます。初期段階は、常時痛みがあるわけではありません。ものをつかむなどの動作を取ったときや、腫れている箇所を触ったときに痛みを感じます。症状が進行すると、安静にしているときも、しめつけられるような強い痛みを覚えます。前述した痛みは炎症によるものですが、さらに症状が悪化すると、関節破壊による骨の痛み、神経痛といった症状が現れるので、早期に治療を開始することが大切です。
全身の関節(主に手指、足趾、手首の関節)の腫れ
リウマチが原因で関節炎になると、熱っぽくなって手指や手首が腫れますが、真っ赤に腫れあがることはほとんどありません。腱鞘に炎症が生じる場合は、腫れると手足が動かしにくくなります。症状がひどくなると、手のこわばりを強く感じ、ペットボトルのキャップが回せなくなったり、家の鍵がうまく開けられなくなったり、箸を使えず食事が困難になったりと、日常生活に大きな支障をきたします。
まとめ
変形性関節症とリウマチの違いについて紹介しましたが、参考になったでしょうか。見分けるのはなかなか難しいと感じた方も多いかと思います。また、どのような症状においても言えることではありますが、自己判断でケアをしたり、受診を見送ったりすることは症状悪化のリスクになります。ケガをしていないのに手に痛みを感じたり腫れたりした場合は、一人で判断せず、医療機関に相談しましょう。
参考文献