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人工関節置換術とは?治療の効果とリスクや術後の生活についても解説

人工関節置換術とは?治療の効果とリスクや術後の生活についても解説

「人工関節置換術」という言葉を聞いたことがある若い方は、そう多くはないかと思います。なぜなら、変形性関節症といった、関節の病気を患う若い方は少ないからです。

そこで、ご家族またはご自身に治療が必要となったときに慌ててしまうことのないよう、本記事では手術内容をはじめ、医療費、手術のリスク、日常生活での注意点などについてまとめています。これを機会に、人工関節置換術に関する知識を身につけましょう。

人工関節置換術とは

人工関節置換術とは ここでは、人工関節置換術の概要をはじめ、治療を受けることのメリット、適応可能な疾患、適応年齢について紹介します。

人工関節置換術の内容

人工関節置換術とは、傷んでしまった関節を人工の関節に置き換える手術です。肩、肘、手指、股、膝、足などの関節を手術することができます。人工関節置換術と聞くと、加齢で関節や骨が弱くなった60代以上の患者さんが治療を受けるイメージがありますが、交通事故やリウマチ性疾患などを理由に関節を傷めた若い方の治療の選択肢の一つになる場合もあります。

人工関節は金属・セラミック・プラスチックなどさまざまな素材があり、金属アレルギーがある方も受けることができます。ただし、医療機関によって、扱っている素材が異なっていたり、患部によって対応できなかったりする場合があります。詳しくは医院のホームページまたは電話にて確認を取るようにしましょう。

人工関節置換術の作用

人工関節置換術を受けることで、長い期間続いていた痛みを和らげたり、変形した関節をもとに近い状態に戻したりすることができます。その結果、以前よりも関節の動きがスムーズになり、下肢に自然と筋力がつき、ほかの関節への負担が少なくなるといった二次的なメリットもあります。具体的には、変形性関節症になってしまった膝をカバーするために腰に負担がかかっていたが、治療を受けることで、膝だけでなく腰への負担も軽減できるなどです。

また、補助がなくても自分の足で歩けることで、仕事や趣味といった有意義な時間をより過ごせるようになる場合もあります。ただし、サッカーやバスケットボール、バレーボールなど接触するリスクが多いスポーツは、人工関節の劣化を早める原因になりますので控えるようにしてください。

人工関節置換術を行う主な疾患

人工関節置換術を行う主な疾患は、「変形性関節症」「関節リウマチ」「大腿骨顆部壊死」などです。また、「運動時のケガ」「交通事故による骨折」などで関節を傷めてしまい、リハビリテーションを行っても改善が見られない場合も、人工関節置換術をすることがあります。手術ができる箇所は、膝・足・股・肘・手指・肩などです。「薬を飲んでも関節の痛みが治まらない」「痛みで出歩くこともままならない」「関節の変形で身体の見た目が変わってしまった」など生活に支障をきたしている方は、医療機関を受診しましょう。

人工関節置換術の適応

人工関節置換術は、変形性関節症・関節リウマチ・大腿骨顆部壊死などの疾患を患っていたり、足や手などを骨折をしていたりする場合には、基本的に何歳からでも受けられる手術です。年齢に関係なく、30代でも40代でも受けることができ、医療機関によっては、90代の方にも手術を行える場合があります。ただし、手術を受けるのにある程度の体力が必要になり、人工関節の耐久年数は15年から20年ほどとなっているため、60代以上の方が手術されることがほとんどです。人工関節置換術を検討する方は、医師とよく相談して決めることが大切です。

人工関節置換術の治療について

人工関節置換術の治療について 手術から退院までの流れ、人工関節の手術方法、治療費について詳しく説明します。特に治療費は、高額療養費制度や更生医療制度などの公的制度を利用することで、金額の負担を抑えられる可能性があるため、ぜひ参考にしてください。

人工関節置換術の治療の流れ

人工関節置換術を希望する場合は、一度医療機関を受診する必要があります。そこで、現在抱えている疾患、関節の状態、服用中のお薬などを確認します。そうした情報をもとに、手術の適応有無を判断し、患者さん一人ひとりに合った治療プランを立ててもらうという流れが一般的です。

また、タバコを吸われている方、虫歯や歯周病がある方がそのまま手術を受けてしまうと、手術の進行がさまたげられるリスクがあります。具体的には、タバコを吸うと、体内の酸素が少なくなり、血液循環が悪くなった結果、関節の具合が良くなるまでに、時間を要します。また、虫歯や歯周病があると、細菌が血液に流れ、人工関節に入り込んで感染症を発症する原因になる恐れがあります。治療期間中は、禁煙を徹底し、早めに歯科治療を済ませしょう。

全身の検査で特に問題なければ、手術日の日程を決めます。手術前日・前々日には入院し、医師の指示のもと、食事を控えます。手術当日は、術衣に着替え、手術室に移動します。手術中は全身麻酔を投与しますので、痛みの心配はありません。手術2日後から2週間ほどは入院しながらリハビリテーションを受け、歩行ができるようになったら退院する流れとなります。なお、関節の状態を定期的に確認するため、1年に3回ほどは受診する必要があります。

人工関節の固定方法

人工関節の固定方法には、間接固定法と直接固定法があります。間接固定法は、骨と人工関節との間にセメントを入れる方法です。固定する力は強いですが、使用年数が長くなるにつれて、セメントにひびが入るなど、劣化する恐れがあります。

直接固定法は、人工関節に直接骨を埋め込む方法です。この方法は、セメントを使用しないため、劣化の心配がなく、長期の耐用に期待できますが、密着するのに半年ほどの時間がかかります。そのため早期の緩みに注意する必要があります。しかし、手術時間が短く、手術中の感染症のリスクを軽減できるといったメリットがあります。ただし、関節リウマチや骨粗しょう症などの疾患で骨がもろくなってしまった方で、直接固定法による手術が困難な場合は、間接固定法が適応となります。

人工関節置換術の治療費

人工関節置換術は、保険適用にて受けられます。治療費には、検査費、手術費、麻酔費、入院費、薬代、食事代が含まれます。医療費は、およそ200万から250万円かかりますが、自己負担額が3割だと60万円から80万円です。医療費が変わるのは、人工関節を入れる部位によって料金が異なるからです。また、高額療養費制度や更生医療制度を利用することで、医療費の負担を抑えることができます。そのため、年齢や所得、健康状態などに応じて、患者さんごとに支払う医療費も変わりますので、詳しくは医療機関のホームページまたは、直接医院に確認を取りましょう。

人工関節置換術のリスク

人工関節置換術のリスク ここでは、感染症・人工関節の緩み・深部静脈血栓症、塞栓症といった手術におけるリスク、リスクに対する予防対策について解説します。

感染症

どの手術でもそうですが、感染症を引き起こすリスクはつきものです。手術の合併症としての感染症には、手術中に細菌が関節に入り込むことで起きる早期感染症と、手術後に皮膚の傷や歯槽膿漏などから二次的に細菌感染する遅発感染症があります。関節リウマチで薬物治療を受けている方、ステロイド剤の治療を受けている方は感染症にかかりやすいとされています。また、早期感染症により症状が悪化している場合は、再手術を行わなくてはなりません。それほど症状がひどくなければ、薬物療法にて様子を見ます。

ただし、医療機関ではそうした細菌感染のリスクを抑えるため、手術前の全身検査を徹底しています。また、手術中はウイルスや細菌が少ない環境のなかで治療を行い、手術後は予防的な処置として抗生剤を数日間処方しています。

人工関節の緩み

人工関節の寿命は15年から20年とされているため、個人差はありますが15年を過ぎたころから関節にさまざまな症状が現れることがあります。具体的には、痛みを感じたり、動作を取ることが困難になったりするといった症状です。そうした症状がある場合は、人工関節が劣化し、骨との接着面に緩みが生じている可能性が高いと言えます。緩みが進行すると、日常生活に悪影響を及ぼしますので、早めに医療機関を受診しましょう。また、その結果手術を再度検討する必要が出てくる可能性もあります。予防策としては、激しい運動や控えることと、太り過ぎに気をつけること、筋力を維持すること、骨粗しょう症の治療をしっかり行うことなどが大切です。

深部静脈血栓症、塞栓症

手術をすると、自己防御反応から、出血した血液が固まりやすくなります。また、下肢を動かすことができないため、血流が滞留することで静脈内に血栓ができます。これを深部静脈血栓症と呼びます。この血栓がはがれ落ち、血栓が肺や心臓などの臓器に移動し、血栓が詰まった状態を塞栓症と言います。塞栓症の状態を放置すると、命を脅かすような疾患を招くことがありますので、早期に治療を受けることが大切です。こうした状態を招かないよう、手術前にエコー検査を行って、血流や血栓の状態を確認します。また、血栓予防のストッキングを履いたり、足に空気ポンプを使用したり、血栓を予防する治療薬を服用したりするといったことを行う場合もあります。さらにフットケアも受けることで、血栓の発症を防ぎやすくなります。

術後の生活について

術後の生活について 手術と聞くと、「どれくらいの入院期間が必要になるか」「歩行はいつからできるのか」「いつから仕事や運動をはじめても良いのか」など気になることがたくさんあるかと思います。そのような疑問を解消できるよう、退院までにかかる期間や、運動や運転の再開可能時期などを説明します。

退院までにかかる時間

入院期間は、およそ2週間から4週間とされています。多くの場合は、手術を受けた翌々日からリハビリテーションが行われますが、症状や年齢などにより、日常生活が問題なく送れるようになるまでの時間は異なります。そのため、予定していた退院時期よりも数日ほど早く退院できる場合もあれば、遅くなる場合もあります。

歩行できるようになるまでにかかる時間

入院期間と同様に、手術を受けてから2週間から4週間ほどです。手術後、少しのリハビリテーションだけで歩けるようになる方もいますが、筋力が落ちてしまっている方や、関節の変形が重度な方は、誰の力も借りずに歩けるようになるまでに、長い時間を要する場合もあります。また退院後も、人工関節がはずれるリスクがあることから、定期的な通院が必要になります。通院頻度は、医療機関によって多少違いはありますが、術後2カ月、3カ月、半年、1年と、徐々に期間を空けていくのが一般的です。また、痛みや腫れなど違和感を覚えた場合は、医療機関から通知された定期検診日を待たずに受診することが大切です。

術後の運動について

サッカーやバスケットボール、テニス、バレーボールなどの激しい運動は、人工関節の緩みの原因になる場合がありますので、できる限り控えるようにしてください。ゴルフやサイクリング、水泳、ウォーキングなど関節への負担が少ない運動はしても構いません。ただし、運動開始の時期は、医師とよく相談して決めるようにしましょう。関節に負担があるからと言って、運動することをやめてしまうと、ストレスの蓄積・筋力低下などにつながる場合がありますので、適度な運動も大切です。

術後の車の運転について

術後の車の運転は、リハビリテーションで問題なく歩けるようになり、人工関節が完全に接着したら可能です。目安は、術後約2カ月から3カ月です。ただし、足や腕の状態は患者さんによって異なりますので、一人で判断せず担当医に確認を取ってください。また運転に関しても、術後の体力や筋力の低下などが原因で交通事故を招く恐れがありますので、医師の指示に従いましょう。

まとめ

まとめ 最後まで記事をご覧いただきありがとうございます。人工関節置換術の概要や手術後のメリットについて理解できたでしょうか。本記事を読んだことで、現在治療を検討されている方や、これからご両親が治療を受けられる方の不安な気持ちがなくなり、人工関節置換術の治療に対して、少しでも前向きな気持ちになってもらえたら幸いです。

参考文献

この記事の監修歯科医師
甲斐沼 孟医師(上場企業産業医)

甲斐沼 孟医師(上場企業産業医)

平成19年(2007年) 大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部医学科 卒業 平成21年(2009年) 大阪急性期総合医療センター 外科後期臨床研修医 平成22年(2010年) 大阪労災病院 心臓血管外科後期臨床研修医 平成24年(2012年) 国立病院機構大阪医療センター 心臓血管外科医員 平成25年(2013年) 大阪大学医学部附属病院 心臓血管外科非常勤医師 平成26年(2014年) 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医員 令和3年(2021年) 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医長 令和5年(2023年) 上場企業産業医

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