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人工関節に変わる新しい膝の治療方法とは?再生医療のメリットや種類について解説

人工関節に変わる新しい膝の治療方法とは?再生医療のメリットや種類について解説

膝は、歩く・座るといった生活の中で当然のようにする行為を支えています。そのため、その膝に痛みや腫れを感じる場合、生活に支障が出ているという方も少なくないのではないでしょうか。その中には「加齢だから仕方ない」「手術では治療が難しいといわれた」とあきらめてしまっている方もいらっしゃるかと思います。この記事では、そのような方に向けて膝の代表的な治療法や、新しい治療法である再生医療についてご紹介します。

代表的な膝の疾患について

まずは、膝に痛みや腫れ、動かしにくさを感じる場合に考えられる疾患について解説します。

代表的な膝の疾患について教えてください。
膝の代表的な疾患としては、変形性膝関節症、関節リウマチが挙げられます。変形性膝関節症は、膝関節の軟骨がすり減ることで、膝に痛みや変形が生じる病気です。加齢とともに軟骨がすり減ることが原因ではありますが、そのすり減りを加速させる要因として肥満が挙げられます。そのため、肥満を解消し膝にかかる負担を減らすことが、何よりの予防法です。関節リウマチは、免疫異常によって関節の組織が破壊されていく病気であり、膝はもちろん、手首・足首や、手足の指などにも症状が現れます。変形性膝関節症も関節リウマチも、男性よりも女性のほうが発症する割合が多いといわれています。
変形性膝関節症の治療法にはどのようなものがありますか?
症状がそこまで進行していない場合であれば、保存療法が選択されることが多くなっています。保存療法には、内服薬の処方や、関節注射による処置、運動療法や装具療法などのリハビリテーションといった種類があります。一般的には、これらを複数組み合わせることで症状の進行を予防します。症状が進行し、膝の変形が進んでいる場合には手術が適応となり、主に人工膝関節置換術が用いられます。
関節リウマチの治療法にはどのようなものがありますか?
関節リウマチに対しては、抗リウマチ薬をはじめとした進行を抑える薬や、関節の炎症や痛みを抑える薬の処方、運動療法・物理療法・装具療法といったリハビリテーションが行われます。また、生物製剤による治療も近年で広がってきています。しかし、重症化し関節の変形が起こっている場合には、変形性膝関節症と同様に人工膝関節置換術などの手術が選択される場合もあります。

人工関節による膝の治療

人工関節による膝の治療 変形性膝関節症・関節リウマチともに、人工関節置換術が代表的な手術方法であるということをお伝えしました。では、その人工関節置換術がどのような手術なのかをご説明します。

人工関節置換術とはどのような治療方法ですか?
人工関節置換術は、損傷し変形してしまった関節を、金属やセラミックなどでできた人工関節と置き換える手術です。膝関節を置き換える手術は、人工膝関節置換術と呼ばれます。手術では、傷んでしまった太ももとすねの表面の骨を切除し、その部分に人工関節を固定することで、膝の痛みを取り除きます。術後は、歩行訓練などのリハビリテーションを行うほか、減量を心がけたり、運動を習慣化したりすることが大切です。
人工関節置換術による膝の治療のメリットについて教えてください。
人工関節置換術による膝の治療には、複数のメリットがあります。まず、切開範囲が狭く低侵襲であるということです。医療機関にもよりますが、切開範囲は10cm以下で済むことも多く、患者さんへの負担が抑えられています。また、低侵襲であることからもわかるように、術後数日すれば歩行訓練などを行えるようになります。できるだけ早く歩行訓練や立位訓練を開始し寝たきりの状態を避けることは、筋力低下や床ずれ、認知症の発症予防にもつながります。
人工関節置換術による膝の治療のデメリットについて教えてください。
人工関節置換術のデメリットとして挙げられるのが、手術による合併症のリスクです。まれなことではありますが、術後に出血したり、血栓ができたりする可能性があります。血栓によってエコノミークラス症候群になってしまうこともあるため、早期のリハビリテーションで予防することが大切です。また、骨の弱さなどによっては術中に骨折を起こして追加の固定が必要になったり、細菌感染を起こして抗生剤の投与が必要になったりすることもあります。合併症によるリスクのほかには、正常な膝のように可動域が戻るわけではないこと、人工関節には寿命があることもデメリットといえるでしょう。人工関節によって膝の痛みをとることはできますが、正座などがしやすくなるわけではなく、人工関節は摩耗やゆるみが起きる可能性があると理解しておくことが大切です。

再生医療とは

再生医療とは 人工関節置換術には、メリットとともにデメリットがあることをおわかりいただけたかと思います。そこで期待が高まっているのが再生医療です。ここからは、膝の再生医療についてご説明します。

再生医療とはどのようなものですか?
再生医療は、人間に備わっている再生能力を使い、損傷してしまった組織の修復を目指す治療法です。患者さんの身体から細胞を取り出して増やし、再度身体に戻すことで細胞の再生を促します。
再生医療のメリットについて教えてください。
再生医療のメリットとしてまず挙げられるのが、治療による副作用や合併症が少ないという点です。薬剤を服用したり外科的処置を施したりするのと違い、患者さん自身の細胞を利用して行う治療法のため、拒絶反応やアレルギー反応を起こしにくいというメリットがあります。また、薬では改善しなかった症状の改善が見込めることもメリットといえるでしょう。膝関節への再生医療の場合、軟骨を再生させることで症状の改善を促せたり、手術が必要になるリスクを減らせたりします。
再生医療のデメリットについて教えてください。
治療費が高額であるということが、再生医療の大きなデメリットといえます。再生医療の中には一部保険適用となるものもありますが、まだその種類は少なく、多くの再生医療は自由診療です。自由診療のため医療機関によって費用は異なりますが、数万円から数十万円ほどかかるため、治療を受けたいと思っても手が出しづらいというのが現状です。

再生医療による膝の治療法の種類

再生医療による膝の治療には、いくつかの種類があります。

幹細胞による膝の治療法について教えてください。
幹細胞を利用した膝の再生医療は、患者さん自身の脂肪から取り出した幹細胞を膝関節に注入することで、痛みや炎症の緩和を図る治療法です。採取した幹細胞を培養して、数週間後に注入するため、入院の必要はありません。また、採取する脂肪の量はおちょこ1杯分程度であり、注射器を用いて採取するため、身体への負担が抑えられているという特徴があります。
PRP療法とはどのような治療方法ですか?
PRP療法は、患者さんの血液から取り出した成分を用いて、痛みの緩和や変形性膝関節症の進行予防を図る方法です。PRPは多血小板血漿のことであり、血液を遠心分離して抽出します。幹細胞を用いた治療と同様に、入院の必要はなく、副作用の心配も少ないというメリットがあります。
APS療法とはどのような治療方法ですか?
APS療法は、PRPから抗炎症物質や成長因子などの成分を取り出し、それを関節内に注射することで、痛みや炎症の軽減を図るものです。PRPの成分をさらに高濃度に抽出したもののため、作用が出るまでの期間が早いことや、関節変形を抑制することなどが期待できます。また、持続的な痛みの緩和が期待できる点も特徴です。

編集部まとめ

関節リウマチや変形性膝関節症は、加齢とともに発症する方が増える病気であり、国民病と呼ばれることもあります。減量などで予防するに越したことはありませんが、もし発症してしまった場合には進行をできる限り遅らせるために、早めに手を打っておきましょう。人工関節置換術や再生医療といった、重症化した際の治療法について知識を深めておくことも大切です。

参考文献

この記事の監修歯科医師
甲斐沼 孟医師(上場企業産業医)

甲斐沼 孟医師(上場企業産業医)

平成19年(2007年) 大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部医学科 卒業 平成21年(2009年) 大阪急性期総合医療センター 外科後期臨床研修医 平成22年(2010年) 大阪労災病院 心臓血管外科後期臨床研修医 平成24年(2012年) 国立病院機構大阪医療センター 心臓血管外科医員 平成25年(2013年) 大阪大学医学部附属病院 心臓血管外科非常勤医師 平成26年(2014年) 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医員 令和3年(2021年) 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医長 令和5年(2023年) 上場企業産業医

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