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人工関節のデメリットは?治療法の詳細や人工関節を使わない治療法まで解説

人工関節のデメリットは?治療法の詳細や人工関節を使わない治療法まで解説

現在、日本では後期高齢化社会に伴いお年寄りの人口が増加し、膝や腰、肩、肘、手足などの関節に異常を抱える方が多くいらっしゃいます。関節に痛みがあったとしても、ただの疲れだと思ってしまう方はいるかもしれませんが、60代以降の方は変形性関節症の可能性が高いため、早めに医療機関を受診することが大切です。医療機関を受診するべきか判断できるよう、本記事では人工関節のメリット・デメリット、手術の流れ、PRP療法の特徴、費用などについてわかりやすくまとめました。

人工関節について

人工関節について 関節疾患は症状がゆっくりと進行するため、「加齢」という理由で見過ごされてしまうことも珍しくありません。ただ、発症している疾患によっては寝たきりになってしまう恐れがあります。変形性関節症の場合は、人工関節の治療を受けることで、その状態を回避することができます。人工関節の誕生は1890年で、現在の医療として世の中に広まったのは1960年とされています。そんな人工関節の概要や使われる部位、人工関節が用いられる症例について詳しく解説します。

人工関節とは

人工関節とは、病気や外傷などを理由に損傷した関節を、人の手によって作られた関節に入れ替える治療方法です。治療を受けることで、関節の痛みや変形の改善が見込めます。人工関節置換術を受けた場合は、術後にリハビリを開始することで、2週間から3週間ほどで歩けるようになります。人工関節の素材には、コバルトクロム合金・チタン合金、プラスチック(ポリエチレン)、セラミックなどの種類があり、金属アレルギーを持っている方もアレルギー反応の出ない素材を選ぶことができます。

人工関節が使われる体の箇所

人工関節が治療に用いられるようになったのは1890年です。初めは、ドイツで象牙を用いた膝関節の治療が行われました。そして、1960年にはイギリスで人工関節システムの原型ともいえる概念が考案され、1980年からは股をはじめ、膝、肘、肩、手の指など、あらゆる関節の治療で用いられるようになりました。ただし、整形外科を専門とする医療機関であっても、部位によっては材料や体制などの兼ね合いで対応していない場合がありますので、ホームページを確認するか、医院に直接問い合わせをする必要があります。

人工関節が用いられる症例

人工関節は前述したように、股・膝・肘・肩・手の指といった関節の治療で用いられます。具体的な疾患としては、変形性股関節症、変形性膝関節症、変形性肘関節症、大腿骨頭壊死症、大腿骨内顆骨壊死症、関節リウマチ、感染症・骨折による下肢関節変形などです。「人工関節」という言葉を聞くと、お年寄りの方が受ける治療のイメージがありますが、病気やケガで歩行が困難な若い方が治療を受けたというケースもあります。「薬の服用やリハビリ治療を受けても痛みが改善されない」「足が変形し、つえがないと歩けない」といった悩みがある場合は、医療機関に相談することをおすすめします。

人工関節を用いた治療法

人工関節を用いた治療法 人工関節のおおまかな概要はご理解いただけたかと思います。ただ、どうやって骨に人工関節を装着するのか、手術後の過ごし方について気をつけておくべき点など気になることがたくさんあるかと思いますので、ここからは人工関節置換術の詳細や手術の流れについてお伝えします。

人工関節置換術について

人工関節置換術は、損傷した関節を人工関節に置き換える手術です。人工関節の固定方法には、2種類あります。1つ目は、直接固定法(セメントレス固定)です。こちらはセメントを使用せずに、骨と人工関節を直接固定する方法で、骨の成長によって人工関節に密着することで、はずれにくくなります。ただし、完全接着するのに時間を要しますので、早期の緩みには注意する必要があります。また、直接固定法は、骨そのものが丈夫でないと適応にならないため、関節リウマチによって関節の損傷がひどい方、骨粗しょう症を患っている方は実施することができません。2つ目の間接固定法(セメント固定)は、骨と人工関節の接着面にセメントを入れるため、関節や骨に何らかの異常がある方でも装着することができます。接着のスピードが速いため早期の緩みは起こしにくいですが、直接固定法と比べると人工関節が劣化しやすいのがデメリットとして挙げられます。

人工関節置換術を受ける目安

人工関節置換術は、60歳から65歳のタイミングが手術を受ける1つの目安となっています。その理由は、人工関節の耐久年数が15年ほどのため、1回の手術で死ぬまで使用できるよう考慮したことと、体力のある60代に受けたほうがいいとされているからです。ただ、近年では手術方法や手術機器の改良により体への負担が少なく、再置換術を行えるケースも増えているため、整形外科疾患が原因で関節を損傷した30代・40代の若い方や、80代・90代の患者さんの手術に応じることが可能となっています。

人工関節置換術の術前から手術までの流れ

手術前には、エックス線検査や血液検査などで、全身の状態をくまなくチェックします。なぜなら、患者さんによって関節の損傷具合が異なったり、症状を訴えている箇所以外にも人工関節置換術が必要になったりする場合があるからです。そのほか、歯周病や虫歯などがあると、細菌感染を起こすリスクがあるため、手術を受ける前に歯科医院で治療を済ませる必要があります。手術の日程が決まりましたら禁煙に努めましょう。タバコを吸うと、血液中の酸素濃度が低下し、手術後の治りが遅くなってしまいます。また、手術に時間を要する場合は、あらかじめ入院前に自己貯血をする必要があります。他人の血を輸血するよりも自己貯血を使うことで、免疫反応による異常を阻止することができます。手術前日に入院をし、医療機関が用意した食事を済ませ、睡眠をしっかり取って手術日に備えます。

術後について

手術は1時間半ほどで終わりますが、麻酔が落ち着くまで1日から2日ほど体を休ませます。そして、1週間から3週間、歩行訓練のリハビリを受け、歩けるようになったら退院となります。リハビリ期間は、患者さんの年齢や重症度などで変わります。そのため、入院する期間が予定よりも延びる可能性があります。

膝や股関節の人工関節のデメリットやリスク

膝や股関節の人工関節のデメリットやリスク 人工関節置換術を検討している場合は、良い面だけでなくデメリットなどについてもしっかりと理解しておくことが大切です。ここからは合併症や血栓ができるリスク、人工関節の耐用年数などを詳しく説明します。

合併症のリスクがある

手術で置き換えた人工関節に細菌が侵入する「早期感染症」と、皮膚疾患や歯周病などの原因で血液をたどって、二次的に感染症を引き起こす「遅発感染症」のリスクがあります。これらの感染症は関節リウマチや糖尿病などの治療を受けている方が、発症しやすいとされています。感染症による症状が軽い場合は薬物治療で様子を見ることができますが、重症化した場合は再度手術を受けなければなりません。このようなリスクを防ぐために、手術室や院内の衛生管理が整っている医療機関を選ぶようにしましょう。また、虫歯や歯周病がある方は、人工関節置換術をする前に歯科医院で治療を受ける必要があります。さらに、手術後は抗生剤を処方するなど、予防的処置を図るのが一般的です。

血栓ができやすくなる

人工関節置換術を行うと体内で出血が起こり、自己防衛反応からその出血を固めようとする作用が働きます。こうして血栓ができやすくなるのがデメリットです。そのため、人工関節置換術と並行して、深部静脈血栓症を防ぐことが重要になります。予防策としては、術後早期から自分で患部を動かすことです。そのほか、血栓を予防するストッキングやフットポンプをつけたり、抗凝固薬を服用したりすることで、血栓症の発症を防ぐことができます。なお、手術前後には血流の状態を確認するため、超音波検査を受ける必要があります。

耐用年数がある

人工関節がいくら丈夫だからといって、耐用年数には限りがあります。耐用年数は、患者さんによって異なりますが、およそ10年から15年とされています。人工関節の劣化を早めてしまう原因は、過度の運動や体重の増減、筋力の低下、日常生活による人工関節への負担などが挙げられます。具体的には、球技などよりも水泳やウオーキングなどで無理なく筋力を鍛え、体形を維持することが、人工関節の寿命を延ばすことにつながります。 ​​

人工関節のデメリットを補う治療法

人工関節のデメリットを補う治療法 人工関節以外の治療の手段としては、PRP療法があります。PRP療法という言葉を聞くと、「どんな治療をするの?」と疑問を抱く方もいらっしゃるかもしれません。そうした方々にも理解できるよう、PRP療法の種類・特徴、治療の流れ、費用を詳しく説明します。

PRP療法(ACP療法)

PRP療法(ACP療法)とは、多血小板血漿を用いた再生医療のことを指します。ACPとはAutologous Conditioned Plasmaの略称で、日本語で自家調整血漿といいます。日本では、2018年にACP療法による治療が可能になりました。この治療の特徴は、白血球がほとんど含まれていないため、投与後に痛みを伴ったり腫れたりしないことです。注射を打つことで、関節の痛みが和らぎ、軟骨破壊を抑制する作用も期待できます。

次世代型のPRP療法(APS療法)

APS療法とは、Autologous Protein Solutionの略称で、自己タンパク質溶液とも呼びます。血液から取り出したPRPをさらに専用のキットで抗炎症成分を抽出します。ACPの作用に加え、APSには関節内の炎症物質と抗炎症物質の不均衡を整える働きがあります。APS療法は、ACP療法と比べると新しくできた治療となります。

治療の流れ

変形性関節症と診断を受けた方で、PRP療法を希望する場合は、採血を行います。約55mlの血液を採取した後、専用の機械で成分の抽出をし、ACPまたはAPSを関節に注射します。採血から注射までの時間は40分から1時間ほどです。回数に制限はありませんので、担当の医師と相談しながら決めましょう。

治療の費用

変形性関節症に対するPRP療法は保険適用として認められていないため、料金が高額になる場合があります。ACP療法は1回につき5万円から6万円、APS療法は1回につき29万から30万が相場となっています。医療機関によっては、ウイルス・細菌の検査代が別途かかります。

人工関節ではなく再生医療を受ける際のデメリットやリスク

人工関節ではなく再生医療を受ける際のデメリットやリスク PRP療法のメリットだけ聞くと、いいことばかりだと思われるかもしれませんが、もちろんデメリットも存在します。PRP療法を受けることのリスクや作用の持続期間について詳しく解説します。

根本的な治療にはならない

PRP療法におけるデメリットは、腫れや痛みを軽減できたとしても、変形してしまった関節を元の状態に戻すことはできないということです。再生医療の場合は、作用が現れるのに個人差がありますが、人工関節の場合はそうしたリスクがほとんどありません。また、PRPの費用は自由診療となるため高額で、何回も治療を受ける必要があります。一方で人工関節置換術は保険診療に加え、公的制度を利用することができます。

効果や持続期間に個人差がある

再生医療による作用は、早い方で3日から4日、遅い方でも1カ月から2カ月ほどで現れます。1回の注射で作用が現れる方もいれば、2回目の注射で作用が現れる方もいらっしゃいます。また、作用の持続期間は、1カ月から2年とされています。このように、作用が現れるまでにかかる時間と、作用が持続する期間には個人差があります。

まとめ

まとめ 人工関節・PRP療法のそれぞれのメリット、デメリットについてご理解いただけたでしょうか。変形性関節症の治療を受けられる方はもちろん、そのご家族の方は不安でいっぱいだと思います。本記事を読むことで治療に対する不安が和らぎ、前向きに治療と向き合える方が一人でも増えることを切に願っています。

参考文献

この記事の監修歯科医師
甲斐沼 孟医師(上場企業産業医)

甲斐沼 孟医師(上場企業産業医)

平成19年(2007年) 大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部医学科 卒業 平成21年(2009年) 大阪急性期総合医療センター 外科後期臨床研修医 平成22年(2010年) 大阪労災病院 心臓血管外科後期臨床研修医 平成24年(2012年) 国立病院機構大阪医療センター 心臓血管外科医員 平成25年(2013年) 大阪大学医学部附属病院 心臓血管外科非常勤医師 平成26年(2014年) 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医員 令和3年(2021年) 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医長 令和5年(2023年) 上場企業産業医

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