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再生医療

肘の再生医療とは?治療法のメリット・デメリット、注意点などを徹底解説!

再生医療 肘

肘の再生医療にはどのようなものがあるかご存知でしょうか。
再生医療は、肘の痛みに悩まされてきた方にとって、新たな治療法として注目されています。
本記事では、肘の再生医療について、以下の点を中心にご紹介します。

  • 肘の痛みの原因
  • 肘の再生医療の1つであるPRP療法について
  • 肘に対するPRP療法以外の再生医療

肘の再生医療について理解するためにも、ご参考いただけると幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

再生医療とは

再生医療とは

再生医療とは、機能障害や機能不全に陥った生体組織や臓器に対して、細胞や人工的な材料を利用して、損なわれた機能の再生を目指す医療技術です。 再生医療は、これまで治療法のなかったケガや病気に対して、新しい医療をもたらす可能性があり、再生医療の技術を用いた難病の原因解明や薬の開発も進められています。

再生医療では、生きた細胞や人工材料、遺伝子を入れた細胞を使うなど、さまざまな新しい技術を使用した基礎研究が実施されています。皮膚や軟骨などすでに製品化されているものがある一方で、肝臓や腎臓など複雑な臓器を作る技術はまだ研究の段階にあります。

再生医療には、組織や臓器を作り提供する企業・施設や病院だけでなく、患者さんの深い理解と協力も必要です。

肘の痛みと代表的な病気

肘の痛みと代表的な病気

肘の痛みや代表的な病気には、どのようなものがあるのでしょうか。
以下で詳しく解説します。

テニス肘

テニス肘は、肘の外側から前腕にかけて痛みが出現する病気です。
この痛みは、ものをつかんで持ち上げる動作や、タオルを絞る動作をする際に特に顕著になりますが、多くの場合、安静時に痛みはありません。テニスをしない方にも発症することがあります。検査の際に、肘外側から前腕にかけての痛みが誘発された場合、テニス肘と診断されます。

治療は保存療法が実施され、手首や指のストレッチ、スポーツや手をよく使う作業の休止、湿布や外用薬の使用、肘の外側に局所麻酔薬とステロイドの注射、テニス肘用のバンドの装着などが含まれます。保存療法が無効な場合には、手術療法が実施されることもあります。

ゴルフ肘

ゴルフ肘(内側上顆炎)は、肘の内側にある内側上顆に過度な負担がかかることによって炎症が起こり、痛みが生じる疾患です。この病気は、ゴルフで無理なスイングをしすぎた場合に発生することから、ゴルフ肘とも呼ばれます。

ゴルフ肘の主な症状は、手首を曲げたりひねったりする動作の際に、肘や前腕の内側に痛みを感じることです。特に、手首を手の平側に曲げると痛みが強く出ることが特徴です。また、加齢による筋力の低下や柔軟性の衰えも、ゴルフ肘を発症する要因の1つです。
初期段階では痛みはそれほど強くないため、一定期間休むことでほとんどが回復します。運動後に痛みが残っている場合は、患部を冷却し、肘のストレッチをすることが推奨されます。

野球肘

野球肘とは、主に野球選手に見られる肘の障害で、特に投球動作によって肘に過度なストレスがかかることで発生します。
この症状は、成長期の子どもや若い選手に多く見られ、肘の骨や軟骨、靭帯に損傷を与える可能性があります。
野球肘は、肘の内側に痛みを感じることが多く、特に投球時に痛みが強くなることが特徴です。

野球肘は、痛みの部位や投球動作時の症状、レントゲンやMRIなどの画像診断によって診断されます。治療は、まず安静にし、痛みや炎症を和らげるために冷却や薬物療法が実施されます。重症の場合や保存療法で改善が見られない場合には、手術療法が検討されることもあります。

肘部管症候群

肘部管症候群は、肘の内側にある尺骨神経が圧迫されることによって起こる神経障害です。
肘の内側から小指と薬指の外側にかけてしびれが出現することが特徴で、肘の内側を軽く叩くだけで痛みが出ることがあります。
症状が進行すると、手の筋肉が萎縮したり、指の変形が起こったりすることもあります。

肘部管症候群は、症状の特徴や神経伝導検査、画像診断などによって診断されます。
治療には、保存療法があり、安静、薬物療法、物理療法、装具の使用などが含まれます。
保存療法で症状の改善が見られない場合には、手術療法が検討されることもあります。

肘内障

肘内障は、主に小さな子どもに見られる肘の障害であり、肘の輪状靭帯と橈骨頭が部分的に外れる、いわゆる亜脱臼が起こっている状態を指します。
特に、歩き始めから小学校入学前の子どもに多く見られ、女児にやや多い傾向があります。

症状としては、肘内障を起こした子どもは痛みを伴い、泣き出すことが多いとされています。腕が動かせなくなり、片腕をだらんと垂らした状態になることが一般的です。

肘内障には徒手整復術という治療法があり、手術や全身麻酔を必要とせず、数秒で終了することがほとんどです。整復後は、子どもが手を動かせるかどうかを確認します。整復術後もしばらくは再発しやすいため、注意が必要です。

PRP療法について

PRP療法について

PRP療法とは、どのような治療法なのでしょうか。
以下で詳しく解説します。

PRP療法とは

PRP療法(多血小板血漿療法)は、患者さん自身の血液から血小板を濃縮して作成した血漿を患部に注入する再生医療の一種です。
この治療法は、特にスポーツ医学の分野で、肘、膝、靭帯損傷、骨折の治癒を促進する目的で実施されています。

PRP療法は、テニス肘やゴルファー肘、ジャンパー膝、アキレス腱炎、足底筋膜炎などの腱の病変、筋肉の断裂や靭帯損傷などのスポーツ障害や慢性的な腱や靭帯由来の痛みに対して役立つとされています。また、膝の変形や痛みに対しても有効とされており、関節炎の治療にも応用されています。

PRP療法は、患者さん自身の血液を使用するため、ウイルス感染やアレルギー反応のリスクが低いとされています。ただし、注射後には患部を約1時間安静にし、激しいトレーニングやマッサージ、飲酒、喫煙を控えることが推奨されます。また、注射後数週間は医師の診察を受けて経過を観察することが重要です。

PRP療法の対象となる疾患

PRP療法の対象となる疾患には、以下のようなものがあります。

  • 膝関節、足関節、股関節、指関節などの変形性関節症
  • 肘関節、膝関節、足関節などの靭帯損傷
  • 上腕骨外側上顆炎(テニス肘)
  • 上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘)
  • 肘内側側副靭帯損傷(野球肘)
  • アキレス腱炎
  • 膝蓋腱炎(ジャンパー膝)
  • 足底腱膜炎
  • 手根管症候群
  • 半月板損傷
  • 肉離れ
  • 四十肩、五十肩
  • TFCC損傷

PRP療法をおすすめできる方と受けられない方

PRP療法は、自身の血液を使用するため、重篤な副作用のリスクが低く、注射のみで済みます。PRP療法をおすすめできる方は、以下のような特徴を持つ方です。

  • 保存療法(例:ヒアルロン酸注射)を試したが、痛みが取れない方
  • 手術は避けたいが、痛みを和らげたい方
  • 高齢者や合併症があり、手術が困難な方
  • 人工関節にするほどではないが、定期的な注射を必要とする方
  • 膝に水が溜まり、曲げにくい方

一方で、PRP療法を受けられない方は以下の通りです。

  • 重篤な感染症や血液疾患を持つ方
  • 抗凝固剤や抗血小板薬を服用している方
  • 妊娠中または授乳中の方
  • 重度のアレルギー反応の既往歴がある方

PRP療法のメリット

PRP療法の主なメリットは、以下の通りです。

  • 患者さん自身の血液を使用するため、アレルギーや拒絶反応などの副作用のリスクが非常に低いとされている
  • 注射による治療であり、外科手術を必要とせず、身体への負担が少なく、目立つ傷痕も残らない
  • 治療は外来で実施され入院の必要がないため、治療後はほぼ通常通りの生活ができる
  • 急性期から慢性期まで、どの段階でも治療を受けられる
  • 必要に応じて繰り返し治療を受けることが可能で、慢性的な痛みや損傷に対して持続的な治療成果が期待できる
  • 筋、腱、靭帯など運動器の大半の治療に対応しており、スポーツ障害や慢性的な腱や靭帯由来の痛みに対しても有効とされている
  • 患部の自然治癒力を高め、組織の修復を促進できる

PRP療法のデメリット

PRP療法の主なデメリットは、以下の通りです。

  • 治療結果や持続期間には個人差があり、すべての患者さんに同じ変化が期待できるわけではない
  • がん治療中の方や関節リウマチ・膠原病・心疾患・肺疾患・肝疾患・腎疾患のある方、薬剤過敏症の診断を受けたことのある方には適さない場合がある
  • 注射後、数日から1週間程度、痛み、熱感、赤み、腫れ、治療部位に皮下出血などが起こることもある
  • ほかの手術や注射療法と同様に、感染のリスクがある
  • 保険適用外の自由診療であるため、治療費は全額自己負担となる
  • 治療後の管理が必要で、医師から指示に従わない場合、硬い組織となり、長期的な痛みの原因になる可能性がある

PRP療法は、スポーツ傷害や慢性的な痛みの治療に有効とされる治療法ですが、上記のデメリットを考慮し、治療を受ける前に医師と十分に相談することが重要です。

PRP療法の治療方法と注意点

PRP療法の治療方法と注意点

PRP療法の治療はどのような流れで実施され、どのような注意点があるのでしょうか。
以下で詳しく解説します。

PRP療法の流れ

PRP療法の流れは、以下のステップで構成されています。

1.患者さんから血液を採取します。

2.採取した血液は遠心分離され、通常の血液よりも3〜7倍濃縮された自己血小板豊富血漿(PRP)が作製されます。

3.作製されたPRPは、損傷部位に注入されます。

4.治療1週間後からは、必要に応じてリハビリテーションを進めます。PRP療法後3ヶ月と6ヶ月にはMRI検査を実施し、状態の確認をします。

5.部位によっては、スポーツ復帰まで1ヶ月程かかることがあります。

PRP療法での治療後の注意点

以下は、PRP療法後に患者さんが守るべき主な注意点です。

  • 治療当日は激しい運動や飲酒、マッサージなど、治療部位に刺激が加わるような活動は避ける
  • 治療当日は、感染予防のために、投与部位を浴槽につけないようにする
  • 違和感や不具合が生じた場合は、自己判断での処置を避け医師の指示を仰ぐ
  • 1週間以降は診察で経過を確認しながら、各疾患に応じたリハビリテーションを進め、PRP療法3ヵ月後、6か月後にはMRI検査を実施する必要がある
  • スポーツ復帰には最低1か月かかることがあり、体の自然治癒過程を活性化させるため、治療後はできるだけ患部を動かさず、サポーターなどで保護をする必要がある
  • 治療後は、処方された鎮痛剤以外の使用は避ける

治療後の経過については、定期的に医師の診察と適切なアドバイスを受けることが重要です。

PRP療法以外の再生医療

PRP療法以外の再生医療

PRP療法以外の肘に対する再生医療には、どのようなものがあるのでしょうか。
以下で詳しく解説します。

幹細胞治療

幹細胞治療は、再生医療の一環として、損傷した組織や器官の修復や再生を目指す治療法です。幹細胞は、骨、軟骨、腱、神経、皮膚など、体を構成するさまざまな細胞に変化する能力を持ち、体内の損傷部位を修復する働きがあります。

幹細胞治療は、厚生労働省が認めた特定認定再生医療等委員会で、治療の妥当性・安全性・医師体制・細胞加工管理体制が審査され、適切と認められれば実施が可能です。
治療は、細胞の再生・再生能力、免疫適合性、安全性を考慮して実施され、心筋梗塞、脳卒中、関節炎、糖尿病、癌など、さまざまな病気やけがに対して適用されています。

APS療法

APS療法(自己タンパク質溶液療法)は、PRP療法をさらに進化させた再生医療の一種です。APS療法では、患者さん自身の血液からPRPを分離し、特別な加工を加えることで、炎症をおさえるタンパク質と軟骨を守る成長因子を高濃度に抽出します。
この抽出物を患部に注射することで、関節の痛みや炎症が軽減し、軟骨の変性や破壊の抑制されることが期待できます。

APS療法の特徴は、軟骨の破壊成分を作り出す炎症性サイトカイン(IL-1、TNFα)の働きをおさえる良いタンパク質(IL-1ra他)を高濃度で含む点にあります。これにより、関節内の炎症バランスを改善し、痛みの軽減や軟骨の保護が期待されます。
APS療法は、従来の保存的治療や手術療法の中間的位置付けとして、特に手術の決心がつかない患者さんや従来の治療で改善しなかった患者さんにとって、新たな治療選択肢となります。

再生因子注入療法

再生因子注入療法は、PRPから白血球などの細胞を取り除き、濃縮した再生因子濃縮液を患部に注入する治療法です。再生因子には、損傷した組織の修復を促す働きがあり、軟骨、腱、筋肉などの損傷部の修復が期待できます。

再生因子注入療法のメリットは、拒絶反応やアレルギーのリスクが低く、何度でも治療を受けられる点です。また、外来で治療が可能であり、治療後の回復期間が短いことも利点として挙げられます。
一方で、自由診療であるため治療費が全額自己負担となること、悪性腫瘍や感染症がある場合には使用できないこと、個人差があることなどのデメリットもあります。

まとめ

まとめ

ここまで、肘の再生医療についてお伝えしてきました。
肘の再生医療の要点をまとめると、以下の通りです。

  • 肘の痛みの原因には、テニス肘やゴルフ肘、野球肘、肘部管症候群、肘内障などがある
  • PRP療法とは、患者さん自身の血液から血小板を濃縮して作成した血漿を患部に注入する再生医療の一種であり、ウイルス感染やアレルギー反応のリスクが低いとされている
  • 肘に対するPRP療法以外の再生医療には、幹細胞治療、APS療法、再生因子注入療法などがある

これらの情報が、少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
眞鍋 憲正医師(UT Austin)

眞鍋 憲正医師(UT Austin)

信州大学医学部卒業 / 信州大学大学院疾患予防医科学専攻スポーツ医科学講座 博士課程修了 / UT Southwestern Medical Center, Internal Medicine, Visiting Senior Scholar / Institute for Exercise and Environmental Medicine, Visiting Senior Scholar / UT Austin, Faculty of Education and Kinesiology, Cardiovascular aging research lab, Visiting Scholar

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