注目のトピック

再生医療

再生医療で脳性麻痺を治療できる?臍帯血などを用いた治療法についても解説

再生医療 脳性麻痺

再生医療とは、機能障害や機能不全になった組織や臓器を人工材料や細胞を利用して失われた機能を再生する医療です。

また、臍帯血移植は白血病の治療に効果をもたらすことがわかり、臍帯血の提供などを促すニュースを見たことがあるのではないでしょうか。

そして、自己臍帯血は低酸素性虚血性脳症で産まれた新生児に投与することで、脳性麻痺の予防につながることも報告されています。

そこで本記事では、再生医療で脳性麻痺の治療ができるのか、また、その治療法などを解説します。

再生医療や臍帯血を利用した治療法を知りたい方はぜひこの記事を読んで参考にしてください。

再生医療で脳性麻痺を治療できる理由・原因

再生医療で脳性麻痺を治療できる理由・原因

脳性麻痺に罹患する原因は何ですか?
脳性麻痺は出生児500児に1児の割合で発生する脳機能障害です。
受精から新生児期までに脳の血流が低下したり感染症にかかったりすることによって引き起こされるとされています。
また、周産期の低酸素性虚血性脳症は、出生時の脳への血流遮断により脳神経細胞が低酸素と低血糖に陥ることで脳に障害が生じるといわれています。
この周産期の低酸素性虚血性脳症は脳性麻痺の主な原因であるとされ、低体温療法などの治療を行っても半数ほどは脳性麻痺などの重篤な後遺症が残る可能性があるのです。
再生医療で脳性麻痺を治療できる理由を教えてください。
アメリカで出生時に凍結保存していた自己臍帯血に含まれる幹細胞を、脳性麻痺の治療に利用したところ、脳性麻痺の機能が改善したという研究結果がDuke大学研究室から発表されました。
その後アリゾナ大学・ジョージア医科大学・カリフォルニア大学でも臨床研究が行われるようになりました。また、日本でも臍帯血を利用した研究が行われ平成27年4月29日大阪私立大学大学院において国内第一例目となる臨床治療が新生児低酸素性虚血性脳症の男児に実施され1ヶ月後に無事退院しています。
臍帯血幹細胞を利用した治療法を教えてください。
低酸素性虚血症性脳症には、免疫拒絶反応が少ない自己臍帯血幹細胞で治療を行います。
この場合は、採取された臍帯血を遠心分離器にかけ造血幹細胞を分離し、生後3日間のうちに3回に分けて直接点滴することで脳性麻痺の予防が見込まれるのです。
また、脳性麻痺の自己臍帯血を用いた治療法は以下になります。

  • 使用日まで自己臍帯血を液体窒素下で保存する
  • 輸血当日に解凍、最終的に臍帯血を総量100mlに調整する
  • 投与30分前にプレドニゾロン1mg/kgを30分かけて点滴する
  • その後、調整した臍帯血を1時間以上かけて点滴する
  • 輸血終了後、全身状態観察

上記は、高知大学医学部附属病院で、7歳未満の小児脳性麻痺・低酸素性虚血性脳症・脳室周囲白質軟化症の診断を受けている患児を対象にした治療法の症例です。
入院期間は、自家臍帯血輸血療法を行う2週間前から検査を行い、医師が可能と判断した場合に自己臍帯血の移植を実施します。退院は経過観察が必要なため実施後1週間後になります。

歯髄幹細胞を利用した治療法について教えてください。
歯髄とは「歯の神経」といわれる場所です。歯髄には幹細胞があり、この歯髄幹細胞は、自己複製をしながら象牙芽細胞と線維芽細胞を形成するのです。象牙芽細胞は象牙質を作り、線維芽細胞は歯髄そのものが形成されます。
乳歯から採取した幹細胞は永久歯から採取したものと比較すると増殖能力が高いのです。また、歯髄幹細胞は採取が容易なことも利点といえるでしょう。
さらに、歯髄幹細胞は脊髄損傷の治療にも期待されています。現在では、脊髄損傷した患者さんから歯髄幹細胞を採取し2週間程培養して増殖させ患部に点滴投与する治療が行われているのです。
この治療法は早期の投与で悪化の抑制や改善が期待されるので、あらかじめ細胞を保存しておき、脊髄損傷直後に投与することができればより治療効果が期待できるでしょう。

再生医療で脳性麻痺治療を受ける場合のポイント

再生医療で脳性麻痺治療を受ける場合のポイント

再生医療で脳性麻痺治療を受ける場合のポイントはありますか?
再生医療で脳性麻痺治療の認可を受けている医療機関はまだ多くありません。
また、研究段階のため治療の対象となる要件もあり、治験参加者の募集が終わっている場合もあるので脳性麻痺治療を希望されるのであれば、かかりつけの医療機関に相談することをおすすめします。
再生医療で脳性麻痺治療を受けるメリット・デメリットを教えてください。
再生医療は、患者さん本人から採取した細胞を利用する場合が多く、この本人から採取した細胞を「自家細胞」といいます。自家細胞は拒絶反応が少ないというメリットがありますが、採取から培養まで時間がかかることがデメリットです。
一方、他家細胞は他人の細胞を移植するので、事前準備が可能ですが自家細胞と比較すると拒絶反応のリスクが高くなります。
また、再生医療後には拒絶反応を抑える薬の服用が必要になるでしょう。ただし、海外では拒絶反応が出ない他家細胞を利用した再生医療が実現しています。
再生医療で脳性麻痺治療を行った際予後はどのようになりますか?
日本で脳性麻痺児を対象とした自己臍帯血幹細胞輸血治療の認可がおりたのは、平成23年10月が最初であるため症例数が少なく、正式な治療後の経過報告はされていません。
ただし、ラット脳梗塞モデルの研究では臍帯血幹細胞移植では行動学的な改善効果が報告されています。
また、以前から研究が進められているデューク大学では脳性麻痺の治療効果について、臍帯血細胞投与1年後に有害事象はなく改善効果が認められるとの評価が出ました。
そのうえ、メキシコからは非自己臍帯血を脳性麻痺児に投与した内の75%に症状の改善を認めたという報告があります。
臍帯血や歯髄幹細胞を使用した治療は安全性が確保できていますか?
臍帯血幹細胞や歯髄幹細胞は、優れた神経再生能力や炎症抑制能力があり脳性麻痺の機能障害を抑制し機能獲得の可能性があるとされています。
名古屋大学附属病院と東京医科歯科大学の共同研究では、さまざまな疾患に対して再生医療の研究を行っているのです。
また、脳性麻痺の治療研究でも豊富な研究実績を有しています。なお、研究過程で移植した歯髄幹細胞による腫瘍の形成は確認されず、ヒト歯髄幹細胞は移植の安全性が高く、優れた神経再生能力がある成体幹細胞であると明かされています。
また、幹細胞療法は動物モデルの非臨床試験で有効性や安全性が確認されているのです。

再生医療で脳性麻痺治療をするときに知っておきたいこと

再生医療で脳性麻痺治療をするときに知っておきたいこと

再生医療で脳性麻痺治療前に知っておきたいことはありますか?
再生医療は研究段階のものも多く、必ず効果があると断言できるものはありません。治療を受けたいと思ったらまず医療機関に相談したり、情報収集をしたりすることで治療するかどうかをご自身で判断しましょう。
日本再生医療学会では「再生医療を受けてみたい皆さまへ」というチェックリストを作成しています。このチェックリストは、治療の振り返りや治療への正しい理解を深めるものとなっています。
また、信頼できる医療機関を選ぶ基準にもなることでしょう。そのうえで治療を受けるかどうかの判断をしてください。
再生医療で脳性麻痺治療を行なう際の治療費はどのくらいかかりますか?
再生医療の脳性麻痺治療は研究段階のため治療費は高額になります。事前に実施医療機関に問い合わせるとよいでしょう。
なお「産科医療補償制度」に加入している産科医療機関で出産した際に、出生した子どもが重度脳性麻痺と診断された場合、要件を満たしていると産科医療補償を受けることができます。
申請期限は満5歳の誕生日までです。それ以外では、高額療養費制度や医療費助成制度などがあります。このような制度は、各制度ごとに条件などが変わるのでかかりつけの医療機関に問い合わせるとよいでしょう。

編集部まとめ

再生医療 脳性麻痺 まとめ

本記事では、自己臍帯血幹細胞や歯髄幹細胞の治療法について解説しました。新生児の脳性麻痺予防に自己臍帯血が有効であると考えられる臨床治療結果はでています。

しかし、日本ではまだ症例数が少なく、脳性麻痺の治療としての臨床データが少ないのが現状です。今後の自己臍帯血の応用の課題として以下の研究が進められています。

  • 脳性麻痺
  • 低酸素脳症
  • 水頭症
  • 外傷性脳障害

自己臍帯血の研究の先進国であるアメリカでは、兄弟の臍帯血が脳性麻痺の機能改善に有効であるという研究結果が報告されています。

日本は、倫理上の問題から人による臨床研究が他国の研究に一歩遅れを取っているものの、臍帯血や歯髄幹細胞の研究をする機関は増えつつあります。

脳性麻痺は発症してしまうと治癒することが難しいとされている難病です。そのため、脳性麻痺の治療の進歩に期待したいところです。

脊髄損傷や脳性麻痺などの治療に有効とされる歯髄幹細胞や臍帯血幹細胞などで、人が本来持っている治癒力で難病を克服できる日が待ち望まれます。

参考文献

この記事の監修歯科医師
甲斐沼 孟医師(上場企業産業医)

甲斐沼 孟医師(上場企業産業医)

平成19年(2007年) 大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部医学科 卒業 平成21年(2009年) 大阪急性期総合医療センター 外科後期臨床研修医 平成22年(2010年) 大阪労災病院 心臓血管外科後期臨床研修医 平成24年(2012年) 国立病院機構大阪医療センター 心臓血管外科医員 平成25年(2013年) 大阪大学医学部附属病院 心臓血管外科非常勤医師 平成26年(2014年) 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医員 令和3年(2021年) 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医長 令和5年(2023年) 上場企業産業医

記事をもっと見る

注目の記事

RELATED

PAGE TOP