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再生医療

再生医療の現状とは?治療や治験での応用や課題についても詳しく解説!

再生医療 現状

再生医療にはどのような現状があるのかご存知ですか? 本記事では再生医療の現状について以下の点を中心にご紹介します。

  • そもそも再生医療とは?
  • コストの問題
  • 日本の法律と再生医療実用化の問題

再生医療の現状について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。 ぜひ最後までお読みください。

そもそも再生医療とは?

そもそも再生医療とは?

再生医療とは人間の自然治癒力を活かす治療法で、機能障害や機能不全に陥った生体組織・臓器の再生を目指します。
再生医療は、人間が持つ幹細胞が重要な役割を果たします。幹細胞は、他の細胞が損傷や減少したりするとそれらの細胞の代わりとして働きます。再生医療の技術は主にES細胞、iPS細胞、体性幹細胞の3種類に分類され、すべて幹細胞を用いた治療法です。これにより、今まで治療法のなかったケガや病気に対して新しい医療の可能性が開かれます。

再生医療で健康保険を適用できる疾患

再生医療で健康保険を適用できる疾患

再生医療は、患者さんの体内で組織や器官を再生させることを目指す医療技術で、健康保険の適用範囲も拡大しています。
主に以下のような疾患の治療に用いられています。

  • 重症熱傷
  • 先天性巨大色素性母斑
  • 表皮水疱症
  • 膝関節の外傷性軟骨欠損症や離断性骨軟骨炎(変形性膝関節症を除く)
  • 造血幹細胞移植後の急性移植片対宿主病
  • 虚血性心疾患による重症心不全
  • 脊髄損傷に伴う神経症候及び機能障害の改善
  • 再発または難治性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病やびまん性大細胞型B細胞リンパ腫
  • 慢性動脈閉塞症における潰瘍の改善
  • 脊髄性筋萎縮症(遺伝子検査により脊髄性筋萎縮症の発症が予測されるものも含む)
  • 角膜上皮幹細胞疲弊症
  • 悪性神経膠腫
  • 再発または難治性の多発性骨髄腫
  • 非活動期または軽症の活動期クローン病の患者さんにおける複雑痔瘻の治療

再生医療は、火傷や軟骨損傷、心不全、骨髄移植の際の合併症、脊髄損傷などを対象に保険診療としても認可されています。

iPS細胞を用いた治験

iPS細胞を用いた治験

iPS細胞を用いた治験は再生医療の発展に重要です。以下で解説していきます。

心筋シート

再生医療の一環として、iPS細胞を用いた心筋細胞シートの治験が進行中です。大阪大学の研究グループは、2020年に重い心臓病の患者さんに対して、iPS細胞から作った心筋細胞シートの移植手術を初めて行いました。この手術は、治療法としての可能性を探るための治験として行われ、効果が期待できるとされています。
また、2022年12月に慶応大学の研究者らが設立した医療ベンチャー企業が、重い心臓病の患者さんに対してiPS細胞から作った心筋細胞を球状に加工して注射し、移植する手術を行いました。これも治験として行われ、効果の確認が進められています。
心筋梗塞に対する標準治療(薬物治療、カテーテル治療、冠動脈バイパス手術)受けたが心臓の機能が回復せず心不全が進行し、重症心不全というNYHA心機能分類Ⅲ以上、左室駆出率35%未満になってしまった患者さんが対象です。
心筋シートの治験は世界初となる心不全治療の再生医療治療であり、再生医療の可能性をさらに広げるものと期待されています。

加齢黄斑変性

2014年、神戸市の理化学研究所などのグループが世界初のiPS細胞から作った組織の移植を、「加齢黄斑変性」という重い目の病気の患者さんに対して行いました。その後、神戸の病院では他の目の病気に対する臨床研究も進行中です。
さらに2019年には大阪大学のグループが重い角膜の病気の患者さんに対して、iPS細胞で作成した角膜の組織をシート状に培養し移植する臨床研究を行い、効果が期待できると確認されました。
「滲出型加齢黄斑変性」に対するiPS細胞由来網膜色素上皮シート移植は、世界初のiPS細胞由来組織のヒト体への移植であり、その成功は医療の未来を切り開く一歩となりました。

パーキンソン病・脊髄損傷

京都大学の研究グループは2018年から、パーキンソン病の患者さんに対してiPS細胞から作った神経のもとになる細胞の移植治験をしており、新たな治療法としての承認を目指しています。
また、慶応大学の研究グループは、脊髄損傷患者さんに対してiPS細胞から作った神経のもとになる細胞の移植を行う臨床研究を進めています。2021年に初めての手術をし、その後も移植が続けられています。
これらの治験は、脊髄損傷から2〜4週間の亜急性期の完全麻痺患者さんを対象とし、1年間の経過を確認します。また、リハビリをし、細胞移植を行わない患者さんに改善があるかどうかを検証します。

再生不良性貧血・血小板減少症

京都大学の研究グループは、2019年に「再生不良性貧血」の患者さんに対してiPS細胞から作った血小板の投与をし、期待できる効果が確認されました。再生不良性貧血は血小板などが少なくなる難病で、この研究はその治療法の開発に大きな一歩となりました。
また、同じ研究者が創業した京都市の企業も、血小板減少症の患者さんに対してiPS細胞から作った血小板の投与をする治験を進めています。血小板減少症は出血を止めるのに必要な血小板が少なくなる病気で、この治験ではその治療法の開発に期待が寄せられています。

再生医療の現状や課題

再生医療の現状や課題

再生医療にもさまざまな課題が存在します。以下で解説していきます。

コストの問題

再生医療は大きな期待が寄せられていますが、その一方で、高額な治療費が課題となっています。現在、再生医療は保険診療、自由診療、治験の3つに分類されます。
保険診療では、例えば、造血幹細胞移植の費用相場は約15万円、脊髄再生治療は300万〜450万円程度となります。
一方、自由診療では幹細胞投与だけで100万円以上、PRP(多血小板血漿療法)では20万〜30万円程度かかる場合もあります。
さらに、治験では患者さんが負担する費用はありませんが、服用している薬や検査費用などは一部負担することもあります。
これらの費用は、患者さんだけでなく社会全体にも影響を及ぼします。特に、自由診療で提供される再生医療には、医師・医療機関と患者さんとの間の財政的リスクがあることが指摘されています。
したがって、自由診療で提供される再生医療の担保に国が責任を持つこと、再生医療等安全性確保法に問題があれば法改正することも視野に入れ、対応を検討することが必要と考えられます。再生医療のコスト問題については、さらなる研究と議論が必要となります。

日本の法律と再生医療実用化の問題

再生医療にはコストの問題以外にも、法律との関係が課題となっています。 日本では2013年に「再生医療推進法」が交付され、これを踏まえて具体的な施策が検討されて2014年に「再生医療等安全性確保法」と「医薬品医療機器等法」が成立しました。
これらの法律は、再生医療の基準を設け治療を行うと治療件数、治療経過や治療についての評価をまとめて厚生労働大臣に報告する義務を与えています。
しかし、これらの法律で治療結果を報告することは大変なことですが、再生医療が患者さんにとってより身近になるためにはとても大切なことです。

まとめ

まとめ

ここまで再生医療の現状についてお伝えしてきました。再生医療の現状の要点をまとめると以下の通りです。

  • 再生医療とは人間の自然治癒力を活かす治療法で、機能障害や機能不全に陥った生体組織・臓器の再生を目指している
  • 保険診療では「造血幹細胞移植の費用相場は約15万円、脊髄再生治療は300万〜450万円程度」、自由診療では「幹細胞投与だけで100万円以上、PRP(多血小板血漿療法)では20万〜30万円程度」、治験では「服用している薬や検査費用などは一部負担する可能性がある」ため、高額な治療費が課題となっている
  • 「再生医療推進法」「再生医療等安全性確保法」「医薬品医療機器等法」は治療を行うと治療件数、治療経過や治療についての評価をまとめて厚生労働大臣に報告する義務を与えていることが課題となっている

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
松澤 宗範医師(青山メディカルクリニック院長 慶応義塾大学病院形成外科)

松澤 宗範医師(青山メディカルクリニック院長 慶応義塾大学病院形成外科)

2014年3月 近畿大学医学部医学科卒業 2014年4月 慶應義塾大学病院初期臨床研修医 2016年4月 慶應義塾大学病院形成外科入局 2016年10月 佐野厚生総合病院形成外科 2017年4月 横浜市立市民病院形成外科 2018年4月 埼玉医科総合医療センター形成外科・美容外科 2018年10月 慶應義塾大学病院形成外科助教休職 2019年2月 銀座美容外科クリニック 分院長 2020年5月 青山メディカルクリニック 開業

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