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抜け毛になる病気とは?脱毛症の種類や一般的な治療方法に加えて再生医療を使った治療法まで幅広く解説

抜け毛になる病気とは?脱毛症の種類や一般的な治療方法に加えて再生医療を使った治療法まで幅広く解説

毎日何本もの髪の毛が自然に抜けていきますが、抜け毛には病気が原因の場合もあります。一般的によく知られている「円形脱毛症」などが、その一例です。では、そのほかにはどのような病気で抜け毛が生じてしまうのでしょうか。この記事では、さまざまな脱毛症の種類や治療法を解説します。ぜひ参考にしてみてください。

抜け毛が起きる脱毛症について

抜け毛が起きる脱毛症について 前述した円形脱毛症は、抜け毛が症状として現れる疾患です。免疫機能の異常により、突如として円形や楕円形の脱毛班ができます。免疫機能が正常に働かなくなる原因は明確には判明していませんが、ストレスや内分泌異常、神経障害などが影響していると考えられています。治療は塗り薬や飲み薬、紫外線照射療法などで行われ、それと同時にストレス対策や生活習慣の見直しをすることも重要です。では、円形脱毛症のほかにはどのような脱毛症があるのでしょうか。男性型脱毛症(AGA)、脂漏性(しろうせい)脱毛症、粃糠性脱毛症、びまん性脱毛症の4つを解説します。

男性型脱毛症(AGA)

まずは、成人男性の抜け毛・薄毛の代表的な原因ともいえる、男性型脱毛症(AGA)です。男性型脱毛症は、遺伝や男性ホルモンの影響により、頭頂部や生え際を中心に抜け毛が増え、髪が薄くなっていく疾患です。思春期以降であれば年齢に関係なく発症する恐れがあり、日本の成人男性の約3割が発症すると考えられています。男性型脱毛症は進行性のため、放っておいても自然によくなることはありません。

脂漏性(しろうせい)脱毛症

脂漏性(しろうせい)脱毛症は、脂漏性皮膚炎がきっかけとなり起こる脱毛症です。脂漏性皮膚炎とは、皮脂の過剰分泌によりニキビや湿疹などの症状が現れる皮膚の病気です。この病気が進行した結果、抜け毛の症状が現れた場合を脂漏性脱毛症と呼びます。皮膚の常在菌であるカビや、ホルモンバランスの変化、洗髪のし過ぎなどが原因で脂漏性脱毛症になると考えられています。

粃糠性脱毛症

粃糠性脱毛症は、フケの量が増えて毛穴やその周辺をふさいでしまい、老廃物が正常に排出されなくなったり、毛根の菌が異常に増えてしまったりすることで起こる脱毛症です。フケが増える原因としては、生活習慣の乱れやアレルギー、ホルモンバランスの乱れ、正しくシャンプーができていないことなどが挙げられます。フケがたまることが原因のため、頭皮の一部だけでなく、全体にかけて症状が出ることもあります。

びまん性脱毛症

びまん性脱毛症は、女性ホルモンの乱れや生活習慣の乱れ、ストレス、頭皮への負担、男性ホルモンの一種であるジヒドロテストステロンの影響により発症する脱毛症です。「びまん」とは「広がりはびこること」という意味であり、その名の通り頭皮全体に抜け毛の症状が現れます。女性ホルモンが影響していることもあり、女性の抜け毛の原因としてよく知られています。「昔より髪のボリュームが減ってきた」「髪が細くなってきた気がする」という場合には、びまん性脱毛症を発症している可能性があります。

抜け毛の原因となりうる病気について

抜け毛の原因となりうる病気について 上記で挙げた各種の脱毛症以外にも、抜け毛の原因となりうる病気があります。ここでは、鉄欠乏性貧血・甲状腺機能亢進症(バセドウ病)・梅毒の3つを紹介します。

鉄欠乏性貧血

鉄欠乏性貧血は、体内の鉄分が不足していることが原因で起こる貧血です。鉄分の摂取不足や鉄の吸収障害、長期的な出血などが原因で起こります。生理中の女性の方や、成長途中の子どもなどによく起こる貧血として知られています。そして、この鉄欠乏性貧血が原因となり、抜け毛が増えることがあるのをご存じでしょうか。それは、貧血により赤血球やヘモグロビンが不足し、頭皮や毛母細胞へ酸素が行きわたらなくなってしまうためです。また、鉄やビタミンB12、葉酸といった栄養が不足して鉄欠乏性貧血になっている場合、これらの栄養素は髪にとっても重要なため、不足すると髪の成長を妨げ、薄毛を助長してしまいます。

甲状腺機能亢進症(バセドウ病)

甲状腺機能亢進症の一つであるバセドウ病でも、抜け毛の症状が出ることがあります。これは、過剰に分泌された甲状腺ホルモンの影響で、新陳代謝が活発になりすぎて、成長途中の髪の毛が抜けてしまうためです。女性に症状が出る場合が多く、びまん性脱毛症と同様に頭皮全体的に抜け毛が目立つようになります。また、同じく甲状腺疾患である橋本病でも、抜け毛が症状として現れることがあります。橋本病の場合は、甲状腺ホルモンの分泌が減少することで、髪を作る毛母細胞の働きを鈍くさせてしまうためです。バセドウ病や橋本病といった甲状腺疾患は、疲労感やイライラ、無気力、動悸といった不定愁訴と間違われやすい症状が出るため、気になる症状がある場合は内分泌内科など専門的な診療が可能な医療機関を受診しましょう。

梅毒

性感染症の一つである梅毒でも、抜け毛が増えることがあります。抜け毛が確認され始めるのは、感染から3カ月程度たってからであり、その症状はさまざまです。全体的に髪が抜け始める場合もあれば、円形脱毛症のように円形に抜けたり、まだらに抜けたりする場合もあります。梅毒の治療を開始すれば徐々に脱毛も改善されていくため、早めに治療を開始することとともに、コンドームを使うなど感染リスクを下げるための努力も大切です。

脱毛症が原因の抜け毛の治療法

脱毛症が原因の抜け毛の治療法 抜け毛が症状として現れる病気はいくつもあることをお分かりいただけたかと思います。ここからは、それぞれの病気の一般的な治療法について解説していきます。

男性型脱毛症(AGA)の一般的な治療法

男性型脱毛症は、フィナステリドやデュタステリドといった内服薬を用いて治療を行うのが一般的です。これらは、男性型脱毛症の原因物質であるジヒドロテストステロンの生成抑制作用を持っており、服用を続けることで抜け毛の減少や薄毛の改善が見込めます。ただし、髪を作る毛母細胞には寿命があり、抜け落ちて生え変わるというサイクルを頻繁に繰り返していると死滅してしまいます。また、これらの内服薬に即効性はなく、長期的に飲み続ける必要があります。そのため、毛母細胞が死滅する前の早い段階から、長期的に治療に取り組むことが、抜け毛・薄毛を改善させるためには大切だといえます。

脂漏性(しろうせい)脱毛症の一般的な治療法

脂漏性脱毛症の一般的な治療法は、ステロイド剤や抗真菌薬、抗生物質やビタミン剤、尿素が配合されたローションなどです。カビが原因となっているのか、ホルモンバランスや生活習慣といったほかの原因で症状が出ているかによっても治療法は異なりますので、医師の診察を受けましょう。生活習慣が発症に影響している場合は、薬の服用だけでなく生活習慣の改善も必要です。脂っこい食事は控える、コーヒーやアルコールなどの刺激物は避ける、髪は指の腹で優しく洗う、過剰な洗髪を控えるといったことに気をつけましょう。

粃糠性脱毛症の一般的な治療法

粃糠性脱毛症では、フケによって生じている炎症を抑える治療を行います。具体的には、ステロイド外用薬や抗真菌薬の処方が行われます。また、日頃使っているシャンプーが原因となっている場合には、使用するシャンプーを変えたり、洗い方を見直したりする必要もあります。これは、シャンプーの洗浄力が強すぎたり、ごしごしと強く洗いすぎたりしていることが原因で、頭皮に必要な皮脂までを落としてしまい、フケが発生していると考えられる場合です。また、生活習慣の見直しも重要です。規則正しい生活をする、ビタミンやミネラルを含んだ栄養のある食事をとる、ストレスをためないようにするなどが、粃糠性脱毛症の改善につながります。

びまん性脱毛症の一般的な治療法

びまん性脱毛症の治療では、内服薬・外用薬・注入治療などが、症状や患者さんの希望によって選択されます。内服薬で使用されるのは、主にミノキシジルタブレット・パントガール・スピロノラクトンなどであり、ミノキシジルは外用薬でも使用されます。また、びまん性脱毛症の予防や進行を防ぐための対策としては、生活習慣の改善も重要です。例えば、レバーや牡蠣といった亜鉛を含む食材や、アボカドやマグロなどのビタミンB群を含む食材を意識して取り入れるようにしましょう。もちろん、暴飲暴食などを避けることも大切です。また、ストレス対策をしたり、ぐっすりと眠れるように睡眠環境を整えたり、飲酒や喫煙を控えたりすることも、頭皮環境にいい影響を与えます。

病気が原因の抜け毛の治療法

病気が原因の抜け毛の治療法 次に、抜け毛が症状の一つとなっている、脱毛症以外の病気の一般的な治療法を解説します。

鉄欠乏性貧血による脱毛の一般的な治療法

鉄欠乏性貧血で抜け毛が起きている場合、貧血症状を改善させる行動をとることが抜け毛の改善にもつながります。まずは、レバー、赤身肉、魚、卵、豆類、緑黄色野菜といった鉄分を多く含む食材や、鉄分補給のためのサプリメントをとることで、鉄分不足を解消しましょう。また、体内への鉄分の吸収を妨げる飲酒や喫煙は控えることも重要です。こういった生活習慣の改善で変化がない場合は、ほかの病気の可能性もありますので、なるべく早く医療機関を受診しましょう。医療機関での治療は、一般的に鉄剤の処方が行われます。

甲状腺機能亢進症(バセドウ病)による脱毛の一般的な治療法

バセドウ病の場合、甲状腺ホルモンの分泌を抑える抗甲状腺剤の処方や、甲状腺ホルモン産生組織を切除する、放射線を出すヨードを内服するアイソトープ治療が行われます。また、円形脱毛症とバセドウ病や橋本病といった甲状腺疾患は、どちらも免疫機能が影響しており、円形脱毛症を発症した方は甲状腺疾患も合併しやすいといわれています。そのため、円形脱毛症の治療をきちんと行っておくことで、合併症を予防することが大切です。円形脱毛症の場合、ステロイド外用薬の処方やステロイド局所注射療法、局所免疫療法などが行われます。

梅毒による脱毛の一般的な治療法

梅毒に感染して抜け毛が起きている場合は、梅毒の治療を行う必要があります。一般的な治療法としては、飲み薬と注射があります。飲み薬は、2週間から1カ月程度服用を続けることで、症状を改善に導くものです。症状が治まったからといって服用を途中でやめてしまうと、その後悪化してしまう可能性があります。そのため、医師の指示に従って服用を続けることが大切です。それに対し注射で治療を行う場合は、一度の注射で治療が完了するという利点があります。

抜け毛に対する再生医療の方法

抜け毛に対する再生医療の方法 最後に、抜け毛に対する再生医療について説明します。再生医療は、新しい治療法のためまだ対応している医療機関が少なく、治療費も高めという難点がありますが、効果が出るまでの時間が早く、発毛・育毛が期待できるという利点があります。

エクソソーム治療

エクソソーム治療は、ヒト羊水幹細胞培養液を主成分とするエクソソームと呼ばれる薬液を患部に注入する治療法です。エクソソームには多様な成長因子が含まれており、注入することで皮膚や毛髪の修復・再生が期待できます。フィナステリドやデュタステリドといったAGA治療薬よりも効果が出るまでの期間が短いこと、副作用の心配が少ないこと、男性・女性を問わず使えることなどのメリットがあります。自由診療のため治療費が高額なこと、注射の際に痛みがあることなどのデメリットはありますが、約1カ月に一度治療を行うと3、4回目からは変化が見られるため、気になる方は医療機関でカウンセリングを受けてみることをおすすめします。

PRP療法

PRP療法は、患者さんの血液から血小板という細胞成分を取り出し、それを濃縮して作った多血小板血漿を患部に注入する治療法です。エクソソームと同じように、血小板にもさまざまな成長因子が含まれており、その作用を活用して髪の成長期の延長や細胞寿命の延伸、毛根幹細胞の分化の促進を促します。一般的に2、3カ月に1回の注入が推奨されており、個人差はありますが1~3回程度で変化が見られるようになります。エクソソームとの違いは、PRPは自己血由来であるという点です。そのため、副作用や拒否反応が起こりづらいという特徴があります。

まとめ

まとめ 脱毛症やそのほかの病気など、抜け毛が症状の一つとなっている病気について説明しましたが参考になったでしょうか。抜け毛や薄毛は、内服薬・外用薬・注射・紫外線療法・再生医療など、幅広い治療法が適応されます。どの治療法が、ご自身やご自身の症状に合っているかは、医師に正しく診断してもらうことが大切です。どの病気が原因になっている場合も、早めの検査・治療が肝心ですので、違和感を覚えた段階で相談することをおすすめします。

参考文献

この記事の監修歯科医師
高藤 円香医師(自衛隊阪神病院)

高藤 円香医師(自衛隊阪神病院)

防衛医科大学校卒業 / 現在は自衛隊阪神病院勤務 / 専門は皮膚科

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