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再生医療

膝の再生医療は効果がない?基礎知識や治療方法について解説!

膝の再生医療は効果がない?基礎知識や治療方法について解説!

「膝が痛くて歩くのが苦痛に感じてきた」「階段の上り下りがつらい」「スポーツ選手なのに膝が痛くてプレーに支障が出ている」とお困りではありませんか?現在日本でこのような自覚症状のある方は、約1000万人もいると言われています。痛みがあることによって歩いたり運動をしたりする機会が減ると、関節を支える筋肉が痩せてしまい、痛みをさらに悪化させてしまう恐れがあります。

一般的には、鎮痛剤などによる薬物療法や手術などで症状緩和を目指す方が多いかもしれませんが、「再生医療」という選択肢もあります。今回は、膝に対する再生医療とはどのようなものがあるのか、その再生医療には効果があるのか、詳しく解説していきます。

膝の再生医療の基礎知識

膝の再生医療の基礎知識

皆さんは「再生医療」と聞いてどのようなことを思い浮かべますか?「費用が高そう」「聞きなじみがない」などの疑問や不安を抱く方が多いかと思います。そこでまずは、再生医療の定義を始め、どのようなときに再生医療が適用となるのかなど、基礎的な部分から説明していきます。普段、なかなか考えることの少ない「膝の構造」についても解説していますので、この機会にぜひ知識を深めてみてください。

再生医療の定義

機能障害や機能不全に陥ってしまった生体組織や臓器に対して、 細胞や人工的な材料を用いて、機能の再生を図ることを再生医療と言います。治療法がないと言われていたケガや病気に対して、これまでとは違うアプローチができます。また、再生医療の技術を活用して、難病の原因を突き止めたり、新しい薬の開発を進めたりしています。中でも注目を集めているのがPRP療法で、これは歯科や歯科口腔外科領域で使用されることがほとんどでしたが、近年では、変形性関節症や筋肉・腱への治療など整形外科の分野にも広がってきています。

膝の構造

膝関節を形成している骨は3つあります。それは、太ももにある大腿骨、すねにある脛骨、膝のお皿とも呼ばれる膝蓋骨です。膝蓋骨の周りは、軟骨細胞やコラーゲン・水分などでできた軟骨で覆われており、三日月の形をした半月板とともにクッションの役割を担っています。また、膝には、前十字靱帯・後十字靱帯・内側側副靱帯・外側側副靱帯という4つの靱帯があり、膝の動きを支えています。立つ・座る・歩くといった日常の中でのあらゆる動作は、膝があることによって成り立っています。

再生医療が必要な膝の症状

膝をまっすぐに伸ばせない、立ち上がるときや歩き始めるときに膝が痛む、階段の上り下り・正座ができない、安静時にも膝が痛むという方は変形性膝関節症の可能性があります。変形性膝関節症はグレード0からグレードⅣの5つに分類され、軽症~中等症とされるグレード0、グレードⅠの場合は、ヒアルロン酸の関節内注射や大腿四頭筋訓練、足底板などの装具療法、内服薬・外用薬を用いた保存療法、温熱療法などを行うのが一般的です。しかし、これらの治療法で効果が期待できない場合や、グレードⅢ・グレードⅣにまで重症化してしまった場合は人工関節置換術という手術を行うことになります。ただ、患者さんの中には「手術をしたくない」「プロのアスリートのため長期間休むことはできない」という方もいらっしゃいます。そのような方に対して、グレードⅡ・グレードⅢのあたりで行うのが再生医療です。

膝を再生医療で治療する方法

膝を再生医療で治療する方法

再生医療にはさまざまな種類があります。その中で、変形性膝関節症に対しては、幹細胞治療やPRP療法、APS再生治療、PFC-FD(Platelet-Derived Factor Concentrate Freeze Dry)療法などが適用となります。それぞれがどのような治療法なのか、どのように実用化されているのかを詳しく説明していきますので、膝関節の治療を検討している方はぜひ参考にしてみてください。

幹細胞治療のメカニズム

人体は約60兆個の細胞からできており、それぞれの細胞には役割がありますが、中には特定の役割を持たず、さまざまな細胞に変化する可能性を持つ特殊な細胞があります。それを「幹細胞」と呼びます。幹細胞の持つ力を利用して組織の修復を目指すのが「幹細胞治療」です。幹細胞治療には、幹細胞を培養するASC(Adipose-Derived Stromal Cell)と、培養しないSVF(Stromal Vascular Fraction)があります。それぞれ、投与できる幹細胞の量が異なったり、メリット・デメリットがあったりするため、症状の進行度合いや身体の状況に合わせて選択する必要があります。

PRP療法

PRPとは、Platelet Rich Plasmaの略で、日本語では多血小板血漿(たけっしょうばんけっしょう)と言います。血小板には止血作用があることは皆さんご存じでしょう。しかし血小板の役割はそれだけではなく、傷が治るまでの過程にも関わっています。この働きを利用したのが、PRP療法です。患者さん自身の血液を用いるため、アレルギー反応や拒絶反応などの副作用が少なく、リスクも少ない治療法です。治療の流れとしては、医療機関にて採血を行い、その血液を遠心分離してPRPを生成したうえで、注射器を用いて膝に注入します。1時間程度で完了するため入院をする必要はなく、日帰りで治療を受けることができます。ただ、保険適用外の治療となるため、決して手軽とは言えないのがデメリットでもあります。また、がんと診断されたことがある方や心疾患・肺疾患・肝疾患などを抱えている方、ステロイド剤を使用している方などはPRP療法を受けられない場合があります。

APS再生治療

抽出したPRPを遠心分離して濃縮したものをAPS(Autologous Protein Solution)と言います。PRP療法をより進化させた治療のため「次世代PRP」と呼ばれることもあります。APSは、炎症を引き起こしている関節内の成分バランスを整える機能を持っています。この治療もPRP療法と同様に手術の必要がなく、所要時間が1時間程度のため日帰りで受けられます。治療後はAPSが作用するため多少の痛みを伴うことがありますが、それは正常な反応で、数日たてば落ち着きます。また、人工物を一切加えず、ご自身の血液から取り出した成分のみを用いるため、副作用のリスクが低いと言えます。初期~中期の変形性膝関節症の方、手術をしたくないと考えている方、感染症で再生医療が受けられない方、1回の受診で治療まで終わらせたいと考えている方に検討していただきたい治療法です。

PFC-FD療法

PFC-FD療法とは、生成したPRPを活性化させて血小板由来因子濃縮物(PFC)を作成し、これをさらに無細胞化し、フリーズドライ加工してできあがったPFC-FDを注入する治療法です。PFC-FDにはPRPと同量、もしくはそれ以上の成長因子が含まれており、組織の損傷を修復する力を手助けしたり、炎症の治りを早くしたりすることが期待できます。変形性膝関節症やテニス肘、ジャンパー膝、アキレス腱炎などの疾患が対象となります。この治療は、採血を行ったあと、細胞加工センターにて血液検査を行ったうえでPFC-FDを生成するため、初診から実際に治療を受けるまで3週間ほどの期間を要します。なお、注射に要する時間は5分程度で、痛みも少なく、患者さんにとっての身体的負担は少ないでしょう。注射した部位が腫れたり赤くなったりすることがありますが、3~4日ほどで治まるため心配する必要はありません。なお、この治療も保険適用外の自由診療となります。

膝の再生治療は効果なし?

膝の再生治療は効果なし? 「再生医療は本当に効果があるの?」「どんな効果がある治療なの?」と疑問や不安を抱えている方も少なくないでしょう。ここからは、再生医療を受けることでどんな効果が期待できるのか、また、なぜその効果が現れるのかを説明していきます。

膝の再生治療に期待できる効果

再生医療によって、変形性膝関節症といった進行性の膝関節疾患の進行を止めること、もしくは遅くすることが期待できます。言い換えれば、病気が進行してしまい重症化している状態だと、再生医療の効果は期待できないということです。薬物療法やヒアルロン酸注射などで治療しているけどなかなか効果が得られないという方、むしろ悪化しているという方にこそ、検討していただきたいのが再生医療です。

膝の再生治療に効果が望める理由

再生医療では、患部の痛みや炎症の緩和、関節機能の改善が期待できます。なぜその効果が望めるのかと言うと、炎症を起こした膝関節には炎症性のタンパク質が蓄積しています。例えばそこに、抗炎症性のタンパク質が含まれているAPSを注入すると、関節内の成分バランスが整い、炎症が緩和されるのです。

膝の再生医療の治療方法ごとの期待できる効果

膝の再生医療の治療方法ごとの期待できる効果

では、治療方法ごとの効果はどうでしょうか。治療方法が違えば、期待できる効果ももちろん異なります。ここからは、それぞれの治療法にはどんな効果が見込めるかをご紹介していきます。今ご自身がどのようなお悩みを抱えているのか、特に困っていることは何か、考えながら読んでみてください。

PRP療法の期待できる効果

PRPには、血管新生や細胞増殖を促す「PDGF」や「VEGF」・「FGF」といった成長因子が多数含まれています。しかし、主な効果は傷や損傷の修復ではなく痛みの軽減や抗炎症作用のほうが強く、日常生活の質が向上したり、スポーツをしている方が競技復帰できたりします。実際に、膝蓋靱帯炎(ジャンパー膝)を抱えている患者さんにPRP療法を行った際、2週間ほどで痛みが軽減したという症例があります。そしてこの患者さんは1カ月のフォローアップ期間中に、競技復帰をされたそうです。もちろん症状の程度によって得られる効果は異なり個人差もありますが、治療の目安としてイメージしていただけるでしょう。

APS再生治療の期待できる効果

血液中には抗炎症性のタンパク質が含まれています。それを濃縮し患部に注入することで、炎症が鎮まり、痛みの緩和が期待できます。また、炎症を放置してしまうと軟骨が劣化したり破壊が進んでしまったりしますが、APSには成長因子も含まれているため、軟骨を保護する効果もあります。これまで膝の痛みなどには、生理食塩水の注射治療が行われてきました。この治療法でも痛みの緩和は見込めますが、時間がたつと痛みがぶり返してしまうという報告があります。一方、APS再生療法では、1年近く治療効果が継続すると言われています。さらに、実際に、生理食塩水を注射した15人とAPS再生治療を行った30名に治療後の痛みを数値化してもらいそれぞれを比較すると、APS再生治療を受けた方のほうが有意な改善が見られているというデータも発表されています。

PFC-FD療法の期待できる効果

PRP・APS同様成長因子が含まれており、患部の痛みや腫れの緩和を目指すことができます。また、関節の可動域が広がるため、ADL(日常生活動作)やQOL(生活の質)の改善、スポーツやレクリエーション活動への復帰が期待できます。さらに、変形性膝関節症の患者さんに対して、PFC-FD療法の前後で軟骨の体積を測定すると、8カ月ほどで軟骨の体積が増加していたというデータがあります。PFC-FDは、関節に注入してから1カ月ほどの時間をかけて活発に作用していきます。即効性はありませんが、じっくりと時間をかけて組織を修復し、炎症や痛みを緩和していきます。

まとめ

まとめ いかがでしたでしょうか?今回は、膝の再生医療についてまとめました。それぞれの治療によってさまざまな効果が見込めますが、もちろん個人差があります。すべての方に100%効果が出るわけでもありません。しかし、再生医療はご自身の血液を使用するため副作用は比較的少ないですし、メスを入れることもないため手術が怖いという方でも恐怖心なく治療を受けることができます。

費用は決して安いものではないですが、歩く・立つ・座るといった基本動作に欠かせない「膝」を健康的に保ち、生活の質を向上するための選択肢として再生医療を視野に入れてみるのも良いかもしれませんね。「手術はしたくないが膝の痛みは解消したい」「薬やヒアルロン酸が効かない」とお悩みで再生医療を検討している方はぜひ一度、専門の医療機関に相談してみてください。

参考文献

この記事の監修歯科医師
松澤 宗範医師(青山メディカルクリニック院長 慶応義塾大学病院形成外科)

松澤 宗範医師(青山メディカルクリニック院長 慶応義塾大学病院形成外科)

2014年3月 近畿大学医学部医学科卒業 2014年4月 慶應義塾大学病院初期臨床研修医 2016年4月 慶應義塾大学病院形成外科入局 2016年10月 佐野厚生総合病院形成外科 2017年4月 横浜市立市民病院形成外科 2018年4月 埼玉医科総合医療センター形成外科・美容外科 2018年10月 慶應義塾大学病院形成外科助教休職 2019年2月 銀座美容外科クリニック 分院長 2020年5月 青山メディカルクリニック 開業

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