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PRPによるAGA治療|再生医療で毛髪を取り戻せる?メリットや治療の流れも解説

PRP AGA

薄毛の悩みは男性だけのものではありません。男性型脱毛症(AGA)は男性だけではなく、女性にも発症する可能性がある疾患だからです。

皮膚科で処方されているAGAの内服薬は、女性には処方できないという問題点を抱えています。

そのようなAGA治療の現場で注目を集めているのが、PRP(多血小板血漿)を用いた再生医療です。従来の方法より安全性が高く、女性のAGA治療にも利用できるからです。

この記事ではPRPによるAGA治療のメリット・PRPとはそもそも何なのか・治療の流れ・注意点などについて解説していきます。

PRPによるAGA治療について

注射

PRPによるAGA治療は再生医療の一種で、最近になって注目を集めています。ただ、PRPとはそもそも何なのかについて、知らない人もいるのではないでしょうか。

  • PRPとは何なのか
  • そもそもAGAとはどのような疾患なのか
  • PRPを使用したAGA治療とはどのようなものなのか
  • どのようなクリニックで行われている治療法なのか

初めは、以上のような基本的な情報についてまとめていきます。

PRP(多血小板血漿)とは

PRPとはPlatelet Rich Plasmaの略語で多血小板血漿と訳され、血液を採取したうえで、血小板の濃度を通常の3倍から7倍に濃縮したものです。血小板に含まれている成長因子を利用した再生医療です。

けがをしたときに出血が止まるとかさぶたができ、やがて剥がれて皮膚が修復されます。血小板が止血に関係しているのは広く知られていますが、働きはそれだけではありません。

実は血小板には成長因子と呼ばれるものが含まれています。傷ついた皮膚が元通りに修復されるのは、この成長因子の働きが関係しているのです。

内出血についても同様で、時間がたつとあざが徐々になくなっていきます。血小板に含まれている成長因子の働きで、組織が修復されていることの証明です。

PRPを濃縮し、成長因子の働きを高めて組織の修復に役立てようとするのがPRP療法です。既に変形性関節症の治療などで活用されています。

AGAとは

鏡を見る男性

AGAは男性ホルモン由来物質であるDHT(ジヒドロテストステロン)によって引き起こされる疾患です。DHTによって毛髪の寿命が極端に短くなってしまうことが原因です。

毛髪は活発に伸びる成長期・伸びが止まる退行期・髪が抜けて次の準備をする休止期を繰り返しています。最も長いのが、数年にわたるとされている成長期です。

DHTの働きが強くなりすぎると成長期が大幅に短縮され、太く長く成長することができずに成長不良に陥ります。そして、次の準備ができる前に毛髪が抜けてしまいます。

やがて毛髪はどんどん細く短くなり、産毛のようになるのです。最終的には毛根が死滅し、頭髪が生えなくなってしまいます。

DHTは本来、胎児期における性器の形成・筋肉や骨格の増強・記憶力や集中力のアップなど男性にとって重要な役割を持っている物質です。

一方で、DHTには毛髪の成長期を縮めてしまう働きもあります。DHTが強くなりすぎてしまうのが、AGAだと考えれば分かりやすいのではないでしょうか。

また、女性の体内でも男性ホルモンが分泌されており、女性もDHTがあります。何らかの原因でDHTの働きが抑えられなくなると、女性もAGAを発症することがあります。

PRPを使用したAGA治療

AGAによって頭髪が薄くなっても、産毛レベルのものが生えていれば毛根はまだ生きています。単に活力を失い、働きが弱くなっていることが影響しています。

PRPを使用したAGA治療は、毛根にある毛乳頭細胞を活性化させ、毛髪の成長を促すものです。

毛乳頭細胞の分裂の活性化に関係している成長因子としては、線維芽細胞増殖因子(FGF)の一種であるFGF-2・血管内皮細胞増殖因子(VEGF)などが挙げられます。

毛乳頭細胞の培養実験ではPRPを投与した場合、FGF-2もVEGFも有意に増加していることが確認されています。つまり、成長を促す力が大きくなっているわけです。

DHTの働きによってどれほど毛根の働きが弱くなっていても、PRPによって活力を取り戻すことができれば髪が元に戻るという治療法だといえます。

PRPによるAGA治療は厚生労働省の許可を得たクリニックが行う

PRPによるAGA治療を行うに当たっては、再生医療等提供計画を厚生労働省に提出して許可を受けなければなりません。届け出は、厚生労働省の「e-再生治療」サイトで行います。

PRPによるAGA治療はリスクの低い「第3種」に当たるため、e-再生治療の第3種計画の一覧を確認すれば実際に許可を受けているクリニックかどうかが確認できます。

いわば国から「お墨付き」をもらった医療機関のみで提供される治療なので、実施しているクリニックは一定の水準にあると判断できるでしょう。

そもそもAGA治療は自由診療なので、厚生労働省から認可を受けていない薬を処方するようなクリニックが存在しているのが現実です。

例えば、一部のクリニックで処方されているミノキシジルタブレットは日本皮膚科学会では使用を推奨していません。薬そのものが厚生労働省からの認可を受けていません。

しかし、ミノキシジルタブレットを処方しているクリニックがあります。違法ではありませんが、信頼できるかどうかとなると話は別です。

こうした医療機関と比較すると、厚生労働省のお墨付きをもらったうえでPRP治療を行っているクリニックの方が信頼できるのではないでしょうか。

PRPによるAGA治療4つのメリット

薬

PRPによるAGA治療のメリットとしては、以下のようなものが考えられます。

  • 男女関係なく治療できる
  • 安全性が高い
  • 持続効果が長い
  • 自然な発毛・育毛効果が期待できる

性別に関係なく治療可能で、従来のものより安全性も高いことが特徴です。

男女関係なく治療ができる

現在主流となっているAGA治療は、ミノキシジル外用薬・内服薬フィナステリドの処方です。内服薬にはより効果が高いとされるデュタステリドもあります。

フィナステリドやデュタステリドは女性への処方ができないことが問題点です。

フィナステリドの添付文書には女性に対する適応はないと明示されており、デュタステリドに至っては女性への投与が禁忌とされています。

そのため、女性に対してはフィナステリド・デュタステリドを用いないAGA治療が行われていました。代わりに処方されることが多いパントガールは、国内で承認されていません。

フィナステリド・デュタステリドが女性に処方できないのは、DHT生成の抑制によって男性胎児の性器の生成が妨げられるリスクがあるためです。

PRP治療は自分の体から採取した成分を用いて治療を行います。DHTの生成そのものを抑制するわけでもないので、男性胎児に対するリスクもありません。

安全性が高い

採血管を持つ医師

フィナステリド・デュタステリドの添付文書には性機能不全が副作用として明記されており、男性への投与もリスクを含んでいます。

ミノキシジルの添付文書にも頭皮の発疹・かぶれ・胸痛・動悸などの副作用が明記されています。因果関係は不明ですが、ミノキシジル使用者の死亡例も報告されています

未承認薬であるミノキシジルタブレットに至っては、動物実験で心臓破裂を起こしたこともあるのです。従来のAGA治療法は、安全性が担保されていません。

PRPは血小板という体内にある組織を濃縮したもので、従来治療に使用されている医薬品と比較すると健康へのリスクはないと説明されています。

持続効果が長い

フィナステリドは服用後24時間で血漿中濃度がほぼゼロになると添付文書に記載されています。ミノキシジル外用薬も、1日2回の塗布が必要だと明記されています。

つまり、これらの薬剤の持続効果は必ずしも長くないです。薬剤の使用を中止すれば元の木阿弥になるため、長期にわたって使用を続けなければなりません。

PRPの場合は個人差がありますが、1回の治療で6ヶ月から12ヶ月効果が持続すると医療機関側が説明しています。少なくとも、従来の治療法と比較すると持続効果は長くなります。

自然な発毛・育毛効果が期待できる

従来のAGA治療法は、薬の力でDHT生成を抑えます。体を自然とはいえない状態にするため、投薬を中止すると元通りに近くなるでしょう。

薄毛になった部位に後頭部から頭髪を持ってくる自毛植毛の場合は、植毛した周囲の部分が薄くなり「離れ小島」のような不自然な形になるケースもあります。

PRP治療は体内にある成分を取り出して凝縮し、再び体内に戻します。効果についても血小板の本来持っている力によって、毛乳頭細胞を活性化させるものです。

自然治癒力を高めるようなものなので、発毛・育毛効果についても自然なものが期待できます。離れ小島のような不自然な形になるようなことも考えにくいです。

PRPによるAGA治療に適している人の特徴

考える女性

PRPを使用したAGA治療に適している人としては、フィナステリド・デュタステリドが処方できない女性が挙げられます。

パントガールのような未承認薬を使用することなくAGA治療が可能になり、PRP治療を行うメリットは男性よりも大きいからです。

従来のAGA治療で用いられているフィナステリド・デュタステリド・ミノキシジルの副作用が怖い人にもPRP治療は適しています。

患者さん自身の血液を利用して治療を行うため、基本的に副作用が起きるようなことはないと医療機関側が説明していることが多いです。

経済的に余裕がある人にも適しています。先端医療の一種であるため、従来の投薬治療と比較するとどうしても費用がかかってしまうためです。

PRPを使用したAGA治療の流れ

説明する医療従事者

治療はまず、PRPを生成するための原料となる血液採取から始まります。医療機関にもよりますが、採取するのは10cc程度です。

次に、採取した血液からPRPを生成します。生成に必要な時間もクリニックによって差がありますが、おおむね20分から30分といったところです。

生成したPRPは、注射器を使って薄毛になっている部分の頭皮に注入していきます。注射器を使うので痛みはありますが、局所麻酔で痛みを抑える医療機関もあります。

治療の間隔も、クリニックによって異なることが多いです。短いところで1ヶ月後、長いところで半年後に再び施術を行うことになります。

PRPによるAGA治療の注意点

驚く夫婦

PRPを利用したAGA治療には、以下のような注意点があります。

  • 毛根が消滅している箇所には効果が得られない
  • 治療費が高額になりやすい
  • 基礎疾患等により治療を受けられない場合がある
  • 施術後に痛み・赤み・腫れなどが出る場合がある
  • 施術後しばらくは頭皮への刺激を避ける

特に、毛根が消滅していると治療効果が望めないことは重要です。

毛根が消滅している箇所には効果が得られない

耳をふさぐ男性

AGAが進行すると、最終的には毛根が完全に消滅してしまいます。そのような状態になると、PRP治療であっても効果を期待することはできません。

PRP治療は活力を失った毛根を活性化させるものです。PRP治療で消滅した毛根を蘇らせることはできません

現時点では毛根が消滅している部位の治療は、植毛が第一選択です。日本皮膚科学会のガイドラインでは、人工毛植毛より自毛植毛の方が推奨です。

また、iPS細胞を利用して毛包を再生させる医療も研究が進められています。ただし、費用は高額になることが予想されています。

治療費が高額になりやすい

そもそもAGA治療は健康保険の適用外で、全額を患者さん側が負担しなければなりません。そのため、どうしても治療費の負担は高くなってしまいます。

投薬によるAGA治療の費用は月額数万円程度です。これに対して、PRPを利用したAGA治療は1回10万円(税込)を超える医療機関が多くなります。

治療の頻度が投薬より低いことが救いですが、いずれにしても費用が高くなってしまうことは間違いありません。

基礎疾患等により治療を受けられない場合がある

基礎疾患がある・特定の薬を服用中である場合、PRP治療を受けられないことがあります。具体的には、以下のような人は治療できません。

  • 貧血
  • がん
  • 感染症
  • 発熱
  • 薬剤過敏症
  • 免疫抑制剤の服用

PRP治療を行う場合、必ず事前に問診が行われます。上記の基礎疾患の有無の申告は正確に行うようにしてください。

施術後に痛み・赤み・腫れなどが出る場合がある

PRP治療は毛根を活性化させるものですが、施術後3日程度は細胞分裂が活発に行われる炎症期に入っています。そのため、痛み・赤み・腫れが出現することがあります。

ただし、腫れはしばらくすれば引きます。心配する気持ちは理解できますが、治療効果が出ている証拠だと思って必要以上に気にしないでください。

施術後しばらくは頭皮への刺激を避ける

PRP治療はその性質上、施術後の痛み・赤み・腫れのリスクをゼロにすることはできません。症状が出ている間に頭皮に刺激を与えると、炎症が悪化するリスクがあります。

施術を行った部位については炎症を悪化させないようにするため、外部からの刺激を1週間程度は控えることが必要です。

PRPによるAGA治療の費用相場

財布と紙幣

PRPを利用するものに限らず、AGA治療は健康保険の適用外です。自由診療は医療機関によって費用が異なるため、一般的な相場を出すのはやや無理があります。

PRPを使用したAGA治療についても、医療機関によって費用には大きな差があるでしょう。安いところは1回10万円(税込)を切りますが、高いところは20万円(税込)近くなります。

従来の投薬治療と比較すると、費用負担が大きいです。前もって、各クリニックの料金などを比較しておきましょう。

まとめ

医療スタッフ

PRPを利用したAGA治療は従来の投薬よりも副作用のリスクが小さく、女性にも施術が可能であるという大きなメリットがあります。

ただし、投薬治療と比較すると費用負担は大きくなります。また、毛根が消滅している場合には治療効果が期待できません。

AGAは死病ではありませんが、薄毛の問題は当事者にとっては重要です。PRP治療を検討するに当たっては、コスト・安全性のどちらを取るか熟考しましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
高藤 円香医師(自衛隊阪神病院)

高藤 円香医師(自衛隊阪神病院)

防衛医科大学校卒業 / 現在は自衛隊阪神病院勤務 / 専門は皮膚科

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