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再生医療に使われるエクソソーム(MSC)とは?エクソソーム点滴療法について解説

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近年、ヒトの細胞を利用した再生医療の中で「エクソソーム」という存在が注目され始めています。

エクソソームを使用する再生医療は、細胞自体を使用する再生医療とどのような点が違うのでしょうか。

この記事では、エクソソームとはどのようなものか、またエクソソームを利用した点滴療法の特徴・効果についても解説します。

再生医療に使われるエクソソーム(MSC)とは?

再生医療に使われるエクソソーム(MSC)とは?

MSCとはmesenchymal stem cell(間葉系幹細胞)の略で、脂肪組織・骨髄・歯髄などに存在する幹細胞です。

下記のような特徴があるため、現在すでに提供されている幹細胞再生医療ではMSCを使用している場合が多いでしょう。

  • 成人の脂肪組織・骨髄など体表に近い部位から採取できる
  • ES細胞・iPS細胞より倫理的課題が少ない

MSCを含む多くの細胞は、細胞間で情報伝達を行うためにセクレトーム(細胞分泌物)と呼ばれる物質を出しています。

近年、この細胞分泌物に含まれる「エクソソーム」という小胞が、MSC自体と同じく抗炎症作用・組織修復作用を持つことが分かってきました。

エクソソームは細胞自体よりも採取・培養・保管・輸送などが容易であることから、エクソソームを利用した治療は細胞を用いない「セルフリー治療」とも呼ばれ注目されているのです。

エクソソーム点滴療法の特徴

エクソソーム点滴療法の特徴

エクソソームを利用した再生医療では、主に点滴での投与が行われます。エクソソーム点滴療法は、どのような特徴のある治療法なのでしょうか?

エクソソーム点滴療法について、点滴で投与を行うメリットと、エクソソームの作用という2つの面から紹介していきます。

全身に作用し機能回復に導く

全身に作用し機能回復に導く

薬剤・栄養分などを人体に投与する方法としては、点滴のほかに経口投与があります。この2つの方法を比較すると、点滴にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

実は、経口投与された場合は消化の過程で必要な作用の一部が失われることがあります。また、腸からは摂取した物質を100%吸収できるわけではありません。

一方、点滴療法では消化液などにより必要な成分が破壊されることもなく、また血管に直接投与することで効率的に必要な成分を取り込めるという点がメリットです。

エクソソーム点滴療法においても、点滴を用いることでエクソソームを効率的に全身へ送り出すことができると考えられます。

点滴療法の場合は、生理食塩水にエクソソームを含む「幹細胞培養上清液」を溶かして点滴を行う方法が一般的でしょう。

認知症予防にも期待できる

エクソソームによる認知機能・神経障害の改善効果については、まだ臨床研究の段階であり明確な効果は証明されていません。

しかし、エクソソームが神経細胞・血管の修復を促進すると考えられるため、認知症を予防する効果が期待されています。

脳の疾患に対する予防・治療目的の投与は、静脈からの点滴ではなく点鼻での投与となる場合も多いでしょう。

新型コロナウイルス感染症後遺症の改善にも期待できる

新型コロナウイルス感染症後遺症の原因は現時点でははっきり分かっておらず、医療機関での治療も対症療法が中心です。

しかし、後遺症の原因は各臓器の組織損傷・免疫の過剰な反応などが原因ではないかと考えられています。

エクソソームには組織修復・抗炎症作用があるとされているため、後遺症の原因となっている組織の修復・過剰な免疫の抑制にエクソソーム点滴療法が役立つ可能性があります。

抗老化作用がある

生物の老化は活性酸素による「身体のサビ」であり、特に中年期以降に老化が目立つのは、この活性酸素を取り除く抗酸化酵素が衰えるためというのが現在の通説です。

つまり活性酸素を取り除くことができれば老化を抑えることができると考えられますが、エクソソームには、その活性酸素除去効果が期待できます。

エクソソーム点滴療法で期待できる効果

エクソソーム点滴療法で期待できる効果

ここまでの解説でも「エクソソーム点滴療法の特徴」でも、根本的治療方法のない病気・症状に対するエクソソームの有効性について触れてきました。

ここからは、さらに具体的に期待される効果を挙げていきます。「気になるけれど何に効くのだろう」と感じている方はぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。

エイジングケア

エクソソームには組織修復効果があるとされ、これを応用することでシワ・たるみなどを改善できる可能性があるでしょう。

特に肌のエイジングケアについては、エクソソームに含まれるaFGF(線維芽細胞成長因子)が真皮の線維芽細胞を刺激することによるシワ改善・美白効果が期待されます。

また、体内から活性酸素を取り除く作用により、皮膚だけでなく体内の細胞全体のアンチエイジングにつながる可能性があります。

アレルギー疾患の改善

アレルギー疾患の改善

免疫自体は自分の身体を守るために必要なものですが、免疫が過剰に反応することで呼吸器・皮膚・消化器などの症状が現れた状態がアレルギーです。

エクソソームには免疫調整作用があると考えられており、過敏になった免疫反応を正常な状態に調整できる可能性があります。

加えて、アレルギーを発症すると免疫が過剰に反応することで、体内に炎症が起きる場合が多いでしょう。

このような炎症に対しても、エクソソームに含まれるTGF-β(トランスフォーミング成長因子)のはたらきにより症状を抑える・軽減するなどの効果が期待できます。

慢性疲労の改善

「疲れが長引くのは十分に休息する時間が無いから」「疲れを感じるのは年のせいで、仕方のないこと」と考えている方も多いかもしれません。

しかし、強いストレスなどをきっかけにホルモン・免疫などのバランスが崩れ、恒常的に強い疲労感をおぼえるようになる「慢性疲労症候群」という病気もあります。

慢性疲労症候群になった場合、免疫力を高める薬物療法や、活性酸素を除去するためにビタミンCを多量に服用することが主な治療方法です。

そのため、エクソソームの免疫調整作用・抗酸化作用を利用することで、慢性的な疲労の改善も期待できると考えられます。

また、慢性疲労症候群の重症例では、脳の複数個所で神経炎症が発見されたという研究結果があります。

このような状態の改善を目指す場合も、エクソソームの抗炎症作用・神経修復作用が役立つのではないでしょうか。

腰痛の改善

腰痛の改善

生涯のうち一度も腰痛を患わない方は5人に1人程度しかいないといわれており、腰痛は非常に身近な症状です。腰痛には下記のようにいくつかの原因があります。

  • 筋肉・靱帯の挫傷
  • 脊椎の変形・圧迫骨折
  • 脊柱管狭窄症

このうち、手術の必要がなく安静にすることで徐々に治癒していく可能性のある「筋肉・靱帯の挫傷」「脊椎の圧迫骨折」はエクソソーム点滴療法による症状改善が望めるでしょう。

まず、筋肉や靱帯が挫傷した場合は、エクソソームの組織修復作用・抗炎症作用により治癒の促進・疼痛軽減が期待できます。

また、圧迫骨折に対しては一般的な治療法であるコルセットでの固定・安静にエクソソームを併用することで早期回復・疼痛抑制の可能性があります。

さらに、エクソソームに含まれるbFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)は骨の形成にも深く関与しており骨粗鬆症を予防する効果が期待できる因子です。

そのため、エクソソームを投与することは圧迫骨折による腰痛の改善だけでなく、圧迫骨折自体の予防になる可能性があります。

不眠症の改善

不眠症には複数の原因がありますが、ホルモンの分泌量も睡眠コントロールに関わっているといわれています。

特に、夜間のみ分泌される「メラトニン」というホルモンは、体内時計の調整・ホルモン分泌の調整に深い関わりがあり、不足すれば不眠につながりやすいでしょう。

メラトニンの分泌量は加齢とともに減る傾向があるため「ストレスが増えたわけでもないのに最近寝付けない」という方はメラトニン不足による不眠症の可能性があります。

このような場合に、エクソソームの細胞活性化・機能回復作用・抗酸化作用を利用することで、メラトニンの分泌量低下を防ぎ不眠症を改善できるかもしれません。

疼痛軽減効果

痛みを主訴に医療機関を受診しても、処置を必要とするような原因が見つからなければ安静にする・痛み止めを飲むといった対策しか提案されない場合もあるでしょう。

こうしたケースでも、治療方法の選択肢となり得るのがエクソソームです。特に、炎症による関節の痛みはエクソソームの抗炎症作用・組織修復作用により改善が期待できます。

全身性の痛みに対しては点滴でのエクソソーム投与を行いますが、膝など局所的な痛みに対しては、幹部に注射での投与を行うことも可能です。

抜け毛の軽減

抜け毛の軽減

抜け毛には年齢・生活習慣・性別などによりさまざまな原因がありますが、主な原因はホルモンバランスの乱れ・毛穴や毛根の機能低下・頭部の血行不良です。

こうした原因を解決するために、エクソソームのホルモンバランスの調整作用・機能回復作用のほか、血管再生作用が役立つと考えられます。

加えて、エクソソームに含まれるKGF(上皮細胞成長因子)には毛母細胞を刺激して育毛・発毛を促進する効果が期待されています。

そのため、毛髪が抜けるのを防ぐだけでなく、健康的な毛髪の増量も望める可能性があるでしょう。

疾病の予防

エクソソーム点滴療法は、疾病を発症してからは「手術が適応にならない場合の選択肢」「症状緩和のための治療法」という位置づけにとどまりがちです。

しかし、エクソソームが持つ損傷した組織の修復・免疫調整・血管再生・抗酸化といった作用により疾病を予防する効果も期待できます。

組織修復作用

エクソソームのさまざまな効果には、組織を修復する作用が大きく関わっています。エクソソームに含まれる因子の中で、組織修復に寄与する可能性が高いのは下記の因子です。

  • aFGF(線維芽細胞成長因子)
  • PDGF(血小板由来成長因子)

aFGFは美肌効果があるとして注目される場面が多いですが、皮膚の創傷治癒にも効果があるとされています。

また、PDGFは組織修復に関与する細胞を刺激し、分裂を促進するはたらきを持つ因子です。このような作用がはたらくことで、自己治癒力が向上し症状の改善を助けると考えられます。

エクソソーム点滴療法の副作用

エクソソーム点滴療法の副作用

エクソソーム点滴療法は、副作用の少ない治療法といわれています。しかし、エクソソームを投与することや点滴をすることでいくつかの副作用が起こる可能性があります。

まず、代表的な副作用として挙げられるのがアレルギー・アナフィラキシーショックです。強い症状が起こることは稀ですが、発疹・かゆみなどが現れることがあるでしょう。

エクソソーム点滴療法で使用される幹細胞培養上清液はヒト由来であることが多いですが、もともと人の中に存在する成分であってもアレルギーは起こり得ます。

そのため、点滴実施後に体調不良・気になる症状が現れたら「重い症状ではない」と感じても、医療スタッフに相談することをおすすめします。

また、エクソソームを投与することにより血栓ができやすくなる可能性が指摘されているため注意が必要です。

そのため、点滴を実施する医療機関により、事前に血栓症のリスクが高い方かどうかを確認するための血液検査を行う・禁煙を推奨するなどの対策を取っている場合があります。

加えて、エクソソームに限らず点滴をすることによるリスクとしては下記のようなものが挙げられます。

  • 穿刺部の内出血
  • 静脈に刺した針が末梢神経に触れ神経障害を起こす

内出血については時間の経過とともに薄くなることが多いですが、静脈穿刺による末梢神経障害は症状が長く持続し治療が難しい場合もあるでしょう。

なお、自分自身から採取した幹細胞による「幹細胞治療」と混同されがちですが、エクソソーム点滴療法で使用するのはドナーの幹細胞培養上清液です。

そのため、自分自身の細胞を用いた治療よりはアレルギーのリスクは高く、また人工的に製造された製品である以上は細菌・ウイルスが発生する可能性もゼロではありません。

加えて「医療機関で提供されている治療だから安全なのではないか」と考える方も多いかもしれませんが、エクソソーム点滴は法的保証が十分とは言えません。

なぜなら、エクソソームを用いた再生医療は細胞自体を用いないため、細胞を用いた再生医療を対象とする「再生医療等安全性確保法」の規制対象にならないからです。

もちろん、多くの医療機関は使用するエクソソームの製造元についても患者さんに情報提供を行い十分な管理のもと施術を行っているため、心配しすぎる必要はありません。

ただし、不十分な法規制の下で実施されている自由診療であり、安全性・効果が法的に保証された医療ではないという認識をしっかり持っておきましょう。

エクソソーム点滴療法にかかる費用について

エクソソーム点滴療法にかかる費用について

エクソソーム点滴療法は医療保険適用外の治療方法です。そのため、治療費は自己負担であり、平均的な費用は1回で6万円(税込)前後となります。

しかし、医療機関内での培養・品質管理にこだわっている場合や、濃度の違いなどにより1度の点滴で50万円(税込)ほどとしている医療機関もあるようです。

また、医療保険が適用されている治療は全国一律の価格で受けることができますが、エクソソーム点滴療法は自由診療のため価格設定は各医療機関に任されています。

このような理由から、治療にかかる費用は患者さんにとって大きな負担となる可能性があり、実施施設によって大きく異なるでしょう。

さらに、医療機関によって1回分の費用・複数回をセット料金・投与量での価格表示など、表示方法にも差があります。

そのため、表示されている費用から「希望する回数の点滴を受けたらいくらになるか」を計算して費用を比較することをおすすめします。

もちろん、医療機関を選ぶ際には費用だけでなく、医師からの説明・同意書の文言などに納得できる医療機関であるかといったポイントも重要です。

まとめ

研究

エクソソーム点滴療法とは、幹細胞から放出される細胞分泌物を用いた再生医療です。

細胞分泌物には、細胞自体よりも扱いやすく治療も安価で提供できるというメリットがあります。

一方で、再生医療自体が新しい医療であるため、治療の効果・安全性が検証中の段階にあるという点はリスクもあるといえるでしょう。

さらに、エクソソーム点滴療法を含む「細胞自体を用いない再生医療」は法整備が追いついておらず、規制が不十分であるという現状もあります。

そのため、エクソソーム点滴療法を希望される方は、医療機関の信頼性・価格設定などを慎重に見極めながら施術を受けることをおすすめします。

参考文献

この記事の監修歯科医師
山下 真理子医師(くみこクリニック京都駅前院)

山下 真理子医師(くみこクリニック京都駅前院)

京都府立医科大学医学部医学科 卒業 / のべ10年以上の美容皮膚科勤務を経て、現在はくみこクリニック北山院に勤務している。コロナ以前は、大阪医専にて、医療従事者の教育にも関わった経験がある。

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