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臍帯血幹細胞とは?臍帯血幹細胞を使った治療のメリット・デメリットを解説

臍帯血幹細胞とは、体のさまざまな部分にある幹細胞の中でも臍帯(へその緒)血に含まれる幹細胞です。他の幹細胞と比較して若返り因子と呼ばれる「GDF-11」を多く分泌します。アメリカのハーバード大学が研究したGDF-11は、「若返り因子」としての臨床研究結果が注目された成分です。年齢とともに減少していく成分で、細胞の元となる幹細胞やコラーゲン、エラスチンなどの増殖を促し、皮膚の再生やエイジングケア作用が期待できます。この記事では、臍帯血幹細胞を用いた治療の効果やメリット・デメリット、その培養上清液の特徴などについて解説します。

臍帯血幹細胞について

臍帯血とはどういうものですか?
赤ちゃんと母体とを繋ぐへその緒のことを「臍帯」と呼びますが、この臍帯の中にある、赤ちゃんが成長するために必要な血液が「臍帯血」です。
臍帯血幹細胞とはどんなものですか?
臍帯血の中には未分化細胞や幼若細胞が数多く含まれています。これらは人体を形成していく過程にある細胞で、「臍帯血幹細胞」と呼ばれています。この細胞が分裂・分化を繰り返すことで身体の組織や器官などを作り出していきます。

臍帯血幹細胞培養上清液について

臍帯血幹細胞培養上清液とはどんなものですか?
幹細胞を培養する培養液から生じる上澄み液のことを「幹細胞培養上清液」といいます。この上澄み液の中には、幹細胞が出したシグナルや栄養成分が多く滲み出しており、この有効成分を取り入れる治療が、幹細胞培養上清液による治療です。細胞の持つシグナルや栄養成分は、細胞の外に細胞間シグナルとして放出される際に、小胞体(エクソソーム)という形態をとります。幹細胞が細胞間コミュニケーションをとるための、よい効果をもたらす形のことです。一方で、細胞のごみが含まれた有効成分の少ない小胞体をアポトーシス小体といいます。幹細胞培養上清液の中には、これらのエクソソームや細胞から出て不要となったアポトーシス小体なども含まれています。
臍帯血幹細胞培養上清液を使った治療とは?
幹細胞培養上清液の中のサイズの大きい蛋白質と小さい蛋白質をフィルターにかけて抜いたものを「エクソソーム点滴」といいます。フィルターにかけることで、ゴミであるアポトーシス小体や一部の炎症性サイトカインなどの除去ができるという利点があります。逆に、人体にいい働きをする一部のサイトカインも除去されます。

臍帯血幹細胞を使った治療について

臍帯血幹細胞を使った治療のメリットは何ですか?
幹細胞自体の治療と違ってDNAや細胞表面の抗原を持っていないので、「上清液」は使う人を選ばずに、誰にでも使用することができます。通常の幹細胞の「細胞自体を使う治療」では、他人の細胞を体にいれると異物だと認識されて拒絶反応が起こるために、免疫抑制等の厳重な対策を取らなければなりません。上清液の有効なたんぱく質は、細胞を識別せず誰にでも同じように効果をだすことができます。もう一つのメリットは、これら上清液中に含まれるエクソソームのサイズは一般の細胞の大きさの1/100〜1/1000と小さく、拡散の能力が高いです。また成分に十分な量の中にリン脂質を含むため、同じリン脂質で構成される細胞の膜も自由に出入りでき、生体の組織への浸透性が高いです。
臍帯血幹細胞を使った治療のデメリットは何ですか?
デメリットは、細胞本体が入らないため効果の持続期間が短いこと、他人の細胞を用いることによる感染症のリスクなどがあげられます。
他の治療との違いはどんなものですか?
臍帯血幹細胞に似た他の治療として、多血小板血漿(PRP)による治療があります。指や手を切ってしまったとき、傷が塞がりカサブタが出来て、やがて元通りに治った経験があると思います。実は、この一連の治癒過程には、血液の中に含まれる”血小板”が重要な役割を果たしています。そのため、血小板が少ない方では血が止まりにくく傷の治りも遅くなります。また、打撲や捻挫をした時には、怪我した部分が腫れることがあると思いますが、この腫れは皮膚の下で出血したことによるものです。打撲や捻挫でも、皮膚を切った時と同じように、血小板から傷んだ組織の修復を促進する物質(成長因子)が供給され、傷んだ組織を元通りに治そうとする自己治癒力が働いています。

PRP療法は、この自分で自分を治す力をサポートする治療法です。自分の血液を約20㏄とり、特殊な技術を用いて血液中の血小板が多く含まれる部分のみを抽出し、自己PRPを作成します。このPRP中には、成長因子が豊富に含まれますので、これを自分の身体の傷んだ部分に注射することにより、その部分の組織の修復が促進され、早期治癒や疼痛の軽減などの効果をもたらします。

臍帯血幹細胞培養上清液を使った治療の費用はどれぐらいかかりますか?
臍帯血幹細胞培養上清液を点滴する場合の費用は、5mlあたり10万〜20万円程度です。
臍帯血幹細胞培養上清液を使った治療の効果はどのくらいの期間持続しますか?
早い場合には投与後2〜3週間で効果が期待できるでしょう。一回の施術でも効果を期待できますが、高い効果を持続させたいという場合には、複数回の施術が必要です。2週間〜1ヶ月間隔で3〜5回行います。多くの場合、2回投与以降で効果を実感できるでしょう。
臍帯血幹細胞培養上清液を使った治療の流れについて教えてください。
臍帯血幹細胞培養上清液を点滴や注射する場合の治療の流れは、治療の前に対象の部位の確認をし、カウンセリングを行って、患者さんに十分な説明を行います。その後、治療部位に注射や点滴を行います。治療直後から、洗顔や化粧をしても問題ありません。注射や投与は複数回行うことで効果を持続することができるでしょう。

編集部まとめ

今回は臍帯血幹細胞について説明し、それを用いた治療のメリットとデメリットを解説しました。さらに、臍帯血幹細胞培養上清液について紹介し、それに似た他の治療方法である多血小板血漿(PRP)療法と比較しました。最後に、臍帯血幹細胞培養上清液を使った治療の費用や効果期間、治療の流れについて説明しました。この記事が臍帯血細胞について理解する一助になることができたら幸いです。

参考文献

この記事の監修歯科医師
山下 真理子医師(くみこクリニック京都駅前院)

山下 真理子医師(くみこクリニック京都駅前院)

京都府立医科大学医学部医学科 卒業 / のべ10年以上の美容皮膚科勤務を経て、現在はくみこクリニック北山院に勤務している。コロナ以前は、大阪医専にて、医療従事者の教育にも関わった経験がある。

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