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幹細胞はどこにある?基礎知識や種類について解説!

私たちの身体には、皮膚や血液のように一つひとつの細胞の寿命が短く、絶えず入れ替わり続ける組織を保つために、失われた細胞を再び生み出して補充する能力のある細胞を持っています。こうした能力を持つ細胞が「幹細胞」です。幹細胞には2つの能力があります。皮膚、赤血球、血小板など、私たちの身体を構成するさまざまな細胞を作り出す能力(分化能)、もう1つは自分とまったく同じ能力を持った細胞に分裂することができるという能力(自己複製能)です。今回は、この幹細胞の役割や能力、幹細胞を用いた治療方法などについて解説します。

幹細胞の基礎知識

そもそも幹細胞とは、どういうものでしょうか。細胞には、寿命が短いものが多く存在しています。そうした寿命の短い細胞が、常に入れ替わり続ける組織を保つために、失われた細胞を再び生み出し、補充する能力を持った細胞が必要となります。また、大きな怪我をしたり体の組織がダメージを受けたりしたときにも、失われた組織を補充する能力を持った細胞が必要です。これらの能力を持った細胞が「幹細胞」と呼ばれています。この幹細胞があることで、私たちは受精卵から成長し誕生することができました。そして、成人してからも日々の身体を維持することができているのです。

幹細胞の役割や能力は何ですか?
幹細胞が持つ能力には、分化能と自己複製能があります。それぞれどのような能力なのか見ていきましょう。
・分化能
細胞が異なる細胞種へ分化する能力のことです。分化全能性・複能性・分化多能性・寡能性・単能性などがあります。
例えば、分化全能性は三胚葉(内胚葉(胃の内膜、消化管、肺)、中胚葉(筋肉、骨、血液、泌尿生殖器)、および外胚葉(表皮組織および神経系))のどの系統にも分化できる能力を持っています。複能性は複数かつ限定された数の系統の細胞へと分化できる能力となり、幹細胞によって持つ能力が異なります。

・自己複製能
分裂・増殖過程を経ても同じ特性を維持して複製する能力のことです。例えば、私たちの体内で寿命の短い細胞(皮膚・血液など)が新しく入れ替わるときに発揮される能力です。この能力があることで、生命維持をスムーズに行うことができるのです。

幹細胞にはどんな種類がありますか?
幹細胞の種類には、組織幹細胞と多能性幹細胞があります。

・組織幹細胞
骨髄や肝臓などに存在する未分化な細胞(様々な細胞に分化できる能力がある細胞)を組織幹細胞と呼びます。ES細胞のように全ての種類の細胞に分化させることはできませんが、シャーレの中で様々な細胞に変化させることができるため、ES細胞と並んで再生医療への応用が注目されてきました。治療効果を持つ組織幹細胞を体内から確実に採取でき十分量培養できる場合には、組織幹細胞による細胞療法が有効です。しかし、一般には治療に必要な多くの細胞を得ることができません。組織幹細胞を用いた治療法の中で安全性と有用性が確認されているのは、白血病などの血液腫瘍性疾患に対して造血幹細胞を移植する骨髄移植の分野です。

・多能性幹細胞
多能性幹細胞とは、体を構成するほとんどすべての細胞に分化できる幹細胞です。多能性幹細胞にはいくつか種類があり、現在までに樹立されている多能性幹細胞として、ES細胞、EG細胞(胚性生殖細胞)、およびiPS細胞があります。

代表的な幹細胞にはどのようなものがありますか?
多能性幹細胞の代表的なものとして、ES細胞とIPS細胞があります。ES細胞は受精卵が分裂を繰り返した後の、胚盤胞期の胚の一部から作成される細胞です。国内では、不妊治療で余った廃棄予定の凍結受精卵の提供を受けて、ES細胞が樹立されています。EG細胞は、精子や卵子のもととなる細胞(始原生殖細胞)から作成される細胞で、ES細胞とほぼ同じ性質をもちます。iPS細胞は体細胞に特定の遺伝子を導入することで未分化の状態に初期化(リプログラミング)した細胞です。iPS細胞の樹立により、ES細胞と同様の細胞をドナーから得ることができるようになりました。組成幹細胞の代表的なものは間葉系幹細胞です。間葉系幹細胞は、発生過程で中胚葉から分化する脂肪や骨にすることができ、その上、成人の骨髄、脂肪組織や歯髄などから比較的容易に得ることができます。これまでの研究で、間葉系幹細胞は中胚葉系の骨芽細胞、脂肪細胞、筋細胞、軟骨細胞などだけではなく内胚葉系の内臓組織や外胚葉系の神経などの細胞にも分化する能力を持つことがわかりました。また近年、免疫抑制作用を持つことや腫瘍に集積する性質があることが報告されており、移植後の拒絶防止に利用する研究やがんの遺伝子治療薬の運び屋として利用する研究も進められています。

幹細胞はどこにあるのですか?

幹細胞のある場所はその種類によって異なります。

幹細胞はどこにあるのですか?
ES細胞は胚から細胞を取り出します。それに対して、iPS細胞は皮膚や血液などから体細胞を採取して作ることができます。間葉系幹細胞はMSCとも呼ばれている細胞で、骨髄、脂肪、皮膚などのさまざまな場所に存在しています。また、免疫調整機能が備わっているため、移植しても拒絶反応やガン化のリスクが少ないという特徴があります。ES細胞やiPS細胞はまだまだ研究段階であるのに対して、間葉系幹細胞を用いた治療はすでに実用化されています。骨髄由来が発見されて以降、多くの骨髄由来の間葉系幹細胞治療が進められてきましたが、脂肪由来の間葉系幹細胞が採取できることが判明し、治療の幅が広がっています。骨髄由来の間葉系幹細胞は、骨髄の中にある細胞の内、およそ0.01%なのに対して、脂肪組織に含まれる脂肪由来の間葉系幹細胞はその500倍もの量が含まれています。また、間葉系幹細胞は通常、加齢とともに減少していきますが、脂肪由来のものは高齢者から得た場合でも問題なく増殖することができるという点においても、脂肪由来の幹細胞が優れているといえます。脂肪由来の間葉系幹細胞が発見されてから、さまざまな症状や疾患において、幹細胞治療を行うことができるようになりました。研究や治験が進められていることで今後の治療分野の拡大への期待も高まっています。ここからは、幹細胞を用いた治療について解説します。

幹細胞を用いた治療について

幹細胞を用いた治療にはどのようなものがありますか?
・シワ・たるみの治療
肌は真皮層にあるコラーゲンやエラスチンによって弾力性やハリが保たれています。しかし、コラーゲンやエラスチンは紫外線の影響で破壊されたり、加齢によってコラーゲンやエラスチンを作る線維芽細胞の働きが低下したりします。肌の表面にシワやたるみが生じるようになり、ターンオーバーが正常に行われなくなります。皮下脂肪が厚くなったり、筋力が衰えて皮膚や皮下脂肪を支えきれなくなったりして、重力によって余計にたるみが現れるようになります。シワやたるみの治療としてヒアルロン酸注射やボトックス注射が行われますが、これらは持続性がないために、定期的に治療を受ける必要があります。しかし、シワやたるみの気になる部位に幹細胞を培養したものを注射すれば、線維芽細胞を活性化させてコラーゲンやエラスチンを増生するため、根本的な治療に繋がります。・関節への治療
代表的な関節の病気として、膝や鼠径部の関節の筋力が低下することや、加齢、肥満などの原因によって関節の機能が低下し、軟骨がすり減ることによって変形し断裂してしまう変形性関節症が挙げられます。変形性関節症は、初期の段階では歩きはじめや立ち上がったときに痛みが生じる程度ですが、病気が進行してしまうと、何もしていないときや寝ているときにも痛みを感じるようになり、日常生活に支障をきたします。間葉系幹細胞を患部に直接注射することで、幹細胞が軟骨を含むさまざまな細胞に分化し、傷ついた軟骨を再生させることができます。さらに、脂肪由来幹細胞の炎症を抑える効果によって、症状の悪化を防いだり、痛みを緩和させたりすることもでき、症状の改善が期待できます。

・筋肉・腱・靭帯への治療
筋肉や腱、靭帯をスポーツで痛めてしまうことは多くあります。従来の治療では、どのような治療であったとしても一定期間の安静が求められ、組織が回復して治癒するまでには数週間〜数か月程度は必要でした。しかし、損傷した部位に間葉系幹細胞を注射することで、組織を修復して再生させることができます。そのため、本来なら手術をしなければならないほどのケガでも治療期間を短縮でき、早期復帰が可能となります。手術後に心配される後遺症のリスクも回避できます。

・脳梗塞の後遺症への治療
脳梗塞は脳の血管が詰まることで発症しますが、発症から4〜5時間以内に血栓を溶解する作用のある薬によって回復させることが必要となります。しかし、発症から時間が経ってしまっていることなどが原因となり、機能障害が後遺症という形で残ってしまうことがあるのです。脳は一度損傷を受けると再生しないとされていましたが、さまざまな研究によって幹細胞を投与することで、脳梗塞や脳梗塞の後遺症に対して効果があることがわかっています。

編集部まとめ

今回は、幹細胞について、その役割や能力などの基礎知識を説明し、種類や採取できる場所、それを用いた治療法を解説しました。この記事が幹細胞治療を検討されている方のお役に立つことができたら幸いです。

参考文献

この記事の監修歯科医師
山下 真理子医師(くみこクリニック京都駅前院)

山下 真理子医師(くみこクリニック京都駅前院)

京都府立医科大学医学部医学科 卒業 / のべ10年以上の美容皮膚科勤務を経て、現在はくみこクリニック北山院に勤務している。コロナ以前は、大阪医専にて、医療従事者の教育にも関わった経験がある。

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