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再生医療

再生医療によるがん治療|がん免疫療法の流れ・メリット・デメリットを解説

再生医療によるがん治療|がん免疫細胞療法の流れ・メリット・デメリットを解説

再生医療は、自分自身の細胞を体外で培養・加工して再び体内に戻して、損傷した組織や臓器の再生を図る治療方法です。

現在のがんの主な治療法は、手術療法・化学療法・放射線治療の三大療法ですが、これらの治療法に加えて再生医療が注目を浴びています。

再生医療は現在も研究中の治療方法ですが、臨床で用いられている治療法も多くあり、がん治療に新たな展望をもたらす可能性があるからです。

ここでは、再生医療におけるがん治療について解説します。がん免疫細胞療法のメリットとデメリットについてもまとめているので、ぜひ参考にしてください。

再生医療でがんを治療する方法

注射器

手術療法・化学療法・放射線治療の三大療法が、現在のがんに対する標準治療法です。

しかし、これらの治療法はがん細胞以外の正常な臓器や細胞も障害する可能性があり、副作用によって治療の継続が難しくなる患者さんも多くいます。

従来の標準治療法が直接がん細胞を切除・殺傷する方法であるのに対し、再生医療におけるがんの治療は、本来備わっている免疫力を高めてがん細胞を抑える治療方法です。

この治療法をがん免疫細胞療法と呼び、従来の三大療法と併用することで相乗効果も期待されています。

がん免疫細胞療法は自分自身の細胞を使うため副作用が少なく、体力や副作用の問題で化学療法や放射線治療を行うのが難しい場合も治療が可能です。

さらに、副作用が少ないことから、患者さんのQOLを高い水準に保ちながら行えるがん治療として期待されています。

再生医療のがん免疫細胞療法とは?

注射する人

がん治療において再生療法の進展が期待されていますが、実際はどのような治療法があるのか気になる方も多いでしょう。

免疫細胞には白血球と樹状細胞があり、これらの免疫力を高める治療法が、がん免疫細胞療法です。

ここでは、リンパ球療法とワクチン療法について詳しく解説します。

リンパ球療法

体内に侵入したウイルスや細菌などの異物を排除して体を守る、人間に備わっている力を免疫といいます。その免疫反応の中心的な役割を担っているのが、リンパ球です。

さらに、リンパ球に含まれるT細胞(Tリンパ球)には、がん細胞を攻撃する性質があります。そのため、T細胞が、がん免疫細胞療法で重要な役割を担っているのです。

がん細胞は本来、免疫の力によって排除されます。しかし、T細胞の力が弱まっていたり、がん細胞がT細胞を抑制したりするとがん細胞を排除しきれないことがあります。

T細胞のがん細胞を攻撃する力を強めることで、がん細胞を排除する治療法がリンパ球療法です。末梢血液中からリンパ球を抽出する方法をLAK療法、腫瘍組織中から抽出する方法をTIL療法といいます。

がん細胞への攻撃力を高めるために、患者さん自身のT細胞を体外に取り出して遺伝子組み換えをし、培養して増やしたT細胞を再び体内に戻します。

特にCAR-T細胞療法は、現在国内で保険適用されている唯一のリンパ球療法です。

ワクチン療法

がん治療におけるワクチン療法とは、患者さん自身のがんに対する免疫を高めることでがんの進行を抑える治療法です。

ワクチンという言葉が使われているため、予防の効果を想像される方も多いでしょう。しかし、がんの予防ではなく、治療を目的に行われるものが多いです。

ワクチン療法でがん細胞を攻撃する主な免疫細胞は、キラーT細胞です。

キラーT細胞は、がん細胞が出すがん抗原の情報を発見し、がん細胞だけを攻撃します。ワクチン療法では、樹状細胞にがん抗原をもたせることで、キラーT細胞を刺激します。

樹状細胞とは、体内のがん抗原を見つけ出し、その情報をリンパ球に伝えて刺激する免疫細胞の一種です。

刺激されたキラーT細胞は増殖・活性化され、がん細胞を攻撃します。がん抗原をもたない正常な細胞は攻撃されないため、副作用は少ないです。

ただし、自由診療で行われているワクチン療法は、臨床試験による効果が証明されていない免疫療法です。

まだ医療として確立されていないため、保険診療で受けることはできません。しかし、これらの治療法は一部の民間クリニックや病院で、多く行われています。

ワクチン療法を希望される場合は治療効果だけでなく、安全性や費用の面において慎重な判断が必要です。事前に必ず担当の医師に相談しましょう。

再生医療のがん免疫細胞療法の種類

薬品

がん免疫細胞療法は、自分自身の免疫細胞を体外に取り出して、処理・加工して用いる治療法の総称です。現在は主に、Tリンパ球や樹状細胞が使用されています

ここでは、前述したリンパ球療法とワクチン療法に該当する治療法について、詳しく解説します。

樹状細胞ワクチン療法(DCワクチン療法)

DCワクチンは、免疫細胞のひとつである樹状細胞を用いたワクチン療法です。

DCワクチン療法では患者さんの血液中の免疫細胞を体外で培養して増やし、樹状細胞にがん抗原となるペプチドを覚えさせて、がん抗原をもつ樹状細胞を新たに作ります。

さらに、取り出した免疫細胞を培養して、活性化させた樹状細胞やTリンパ球を再び患者さんの体内に戻します。

樹状細胞自体は、がん細胞を攻撃しません。一方で、がん抗原を発見してその情報をキラーT細胞に伝え、攻撃するように指示をします。

1個の樹状細胞で、数百から数千個のキラーT細胞にがん抗原の情報を伝えることができます。情報を受け取ったキラーT細胞は、増殖しながらがん細胞を攻撃するため、がん細胞を効率よく排除することが可能です。

DCワクチンで用いられるペプチドは複数ありますが、WT1ペプチベータはほとんどのがんで産生されているため、幅広いがんに使用可能です。

また、WT1ペプチベータはヘルパーT細胞の働きも活発にするため、キラーT細胞の攻撃力をさらに強くします。

DCワクチンはこれまでに研究が進められ、臨床応用も始まっている治療法です。しかし、がん患者さんから採取できる樹状細胞は数が少なく、能力が脆弱なことが問題点として挙げられています。

アルファ・ベータT細胞療法(αβT細胞療法)

αβT細胞療法は、T細胞を体外で活性化・増殖させてから再び体内に戻すリンパ球療法の一つです。CD3活性化自己リンパ球療法とも呼ばれています。

T細胞受容体にはαβ型とγδ型の2種類があり、90%以上のT細胞がαβT細胞です。そのため、多くの医療機関ではαβT細胞療法と呼ばれています。

αβT細胞とは、がん細胞を含めた異常細胞すべてに対して攻撃するキラーT細胞や、ヘルパーT細胞などが含まれています。これらの細胞を活性化させることで、がん細胞に対する免疫力を高めることが可能です。

また、αβT細胞は増殖しやすい細胞です。そのため、患者さんの免疫力が低下していても、十分な量の細胞を増殖させて治療ができます

ガンマ・デルタT細胞療法(γδT細胞療法)

γδT細胞療法は、Tリンパ球中にわずかにしか存在しないγδT細胞を活性化させ、増殖させた後に再び体内に戻すリンパ療法の一種です。

γδT細胞はαβT細胞とは異なるメカニズムでがん細胞を攻撃します。αβT細胞は樹状細胞からがん抗原の情報を教えてもらいますが、γδT細胞はがん抗原の情報がなくても、がん細胞を攻撃することが可能です。

また、がん細胞の多くはIPP(イソペンテニルピロリン酸)などの物質を産生しており、γδT細胞はこのような物質を目印にしてがん細胞を攻撃できます。

γδT細胞は血液中にわずかにしか存在しないため、がん治療に利用することは難しいとされていました。しかし、近年ではゾレンドロン酸を用いてγδT細胞を大幅に増殖・活性化させることが可能です。

NK細胞療法(ナチュラルキラー細胞療法)

NK細胞は、がん細胞を含めた異常細胞を素早く発見して、攻撃する役割をもっています。このNK細胞を体外で増殖・活性化させてから再び体内に戻す治療法が、NK細胞療法です。

がん細胞はキラーT細胞の攻撃から逃れるために、目印となるがん抗原を隠すことがあります。しかし、NK細胞はがん抗原を隠された状態であっても、がん細胞を攻撃することが可能です。

さらに、さまざまながんの治療に用いられているハーセプチンやリツキサンなどの抗体製剤を併用することで、より高い治療効果を期待できます。

NKT細胞療法(ナチュラルキラーT)

NKT細胞療法を患者さんの体外で増殖・培養させてから再び体内に戻す治療法が、NKT細胞療法です。

NKT細胞はがん細胞に対して攻撃する免疫細胞ですが、血液中にわずか0.1%しか存在しないため、直接的な効果は限定的です。

一方で、糖脂質αガラクトシルセラミドと特異的に結合して活性化し、大量のサイトカインを産生します。これにより、ほかの免疫細胞を活性化させて、がん細胞を攻撃するように働きかけます。

樹状細胞・キラーT細胞・NK細胞などの免疫細胞を活性化させるため、どのような状態のがん細胞に対しても攻撃が可能です。

再生医療のがん免疫細胞療法の流れと治療期間・回数

患者と医師

がん免疫細胞療法は、患者さん自身の免疫細胞を採血で体外に取り出し、培養・加工処理をして再び患者さんの体内に戻します。これが治療の基本的な流れです。

採血で免疫細胞を取り出し、再び体内に投与するまでに、およそ2~3週間かかります。培養した免疫細胞は、注射または点滴で体内に戻します。点滴投与の時間は30分程度です。

がん免疫細胞療法の治療期間や回数は治療法によって異なりますが、おおよそ2~4週間の間隔で細胞投与を4~8回繰り返します。そのため、治療期間は2~5ヶ月ほどかかるのが一般的です。

再生医療のがん免疫細胞療法のメリット

メリット

がん免疫細胞療法には、従来の手術療法・化学療法・放射線治療にはないメリットがあります。がん免疫細胞療法と三大療法を併用することで相乗効果が高まり、より治療効果を高めることが期待されています。

また、血液がんを除くほとんどすべてのがんが対象であり、部位・進行度・再発・転移を問わずに治療が可能です。

現在も研究中のがん免疫細胞療法ですが、治療を受けるメリットを4つ解説します。

副作用が少ない

がん免疫細胞療法は患者さん自身の免疫細胞を用いるため、副作用が少ないことが大きな特徴です。

ただし、副作用が全くないわけではなく、軽度の発熱やアレルギー反応があらわれる可能性があります。

また、施術は採血と点滴もしくは注射が基本であるため、身体への侵襲が少ない治療法です。

従来の三大療法では、身体への侵襲や副作用の影響で、治療ができない患者さんも多くいました。しかし、がん免疫細胞療法では患者さんのQOLを低下させずに治療ができます。

普段の生活を送りながら治療できる

入院をする必要がないため、普段通りの生活を送りながら治療ができます。

細胞投与は2~4週間の期間を空けて行いますが、副作用も少ないため、その間に日常生活に支障をきたす可能性は低いです。

仕事や旅行など、普段と変わらない生活を送れるため、QOLを維持しながら治療ができます。

入院する必要がない

従来の手術療法や一部の化学療法では、入院して治療を受ける必要がありました。入院期間は患者さんの状態や治療によってそれぞれ異なりますが、平均して数週間から1か月かかります。

しかし、がん免疫細胞療法では外来で治療が可能なため、入院は不要です。

現在はがんの生存率向上に伴い、がん治療を受けながら仕事を続けている患者さんも多いです。入院せずにがんの治療ができるのは、仕事をしながら闘病している患者さんにとっては大きなメリットになります。

がん3大療法の効果を高める

免疫細胞療法は、ほかの化学療法や放射線治療を受けている患者さんでも併用して受けることができ、組み合わせによっては相乗効果も期待されます。

また、手術でがんを切除しても微小ながんが残ってしまい、再発するケースがあります。

免疫細胞療法では、このような微小ながん細胞に対しても攻撃することが可能です。そのため、がんの再発予防としても、効果が期待されます。

再生医療のがん免疫細胞療法のデメリット

デメリット

がん免疫細胞療法のメリットを前述しましたが、治療にはデメリットも存在します。治療を検討するうえで、メリットを把握するだけでなく、デメリットについても理解しておくことが重要です。

ここでは、がん免疫細胞療法のデメリットを3つ解説します。

健康保険が適用されない

医療費

がん細胞免疫療法のうち、治療効果や安全性が証明されている治療法は限られています。

治療効果や安全性が照明されている治療は、免疫チェックポイント阻害薬を使用した治療法と、CAR-T細胞療法です。そのため、これらの治療には保険が適用されます。

それ以外の治療法は基本的に効果が証明されておらず、前述したDCワクチン療法・αβT細胞療法・γδT細胞療法・NK細胞療法・NKT細胞療法は、いずれも保険適用外です。

保険適用外の治療は全額自己負担のため、1回の治療で数十万円(税込)かかります。また、治療は1回で終了せずに複数回行うため、総額数百万円(税込)になる場合もあります。

そのため、治療を検討する際には費用面においても慎重な判断が必要です。

効果には個人差がある

血液検査

がん免疫細胞療法に限らず、すべての治療法において効果には個人差があります。がん免疫細胞療法においては、患者さん個人の免疫力・がんの種類・進行度などが、治療効果に影響を与える可能性があります。

また、がん免疫細胞療法は臨床試験によるデータが少ないものや研究中のものが多いです。そのため、治療効果の予測が難しい場合もあります。

がん免疫細胞療法は治療効果のある治療法ではなく、効果には個人差があることを理解しておく必要があります。

副作用が出る場合がある

副作用

がん免疫細胞療法は患者さん自身の免疫細胞を使用するため、一般的には副作用は少ないです。

しかし、治療効果を得るためには副作用はつきものであり、全く副作用がないわけではありません。軽度の発熱やアレルギー反応をまれに起こすこともあります。

CAR-T細胞療法など、重症の副作用がでるものもあったりもします。入院が必要になることもあるでしょう。

また、がん免疫細胞療法は研究中の治療であり、効果や安全性が認められていない治療もあります。予測できない副作用が起こる可能性もあるため、治療前の医師の説明をよく聞いておきましょう。

まとめ

看護師と患者

従来のがん治療では、身体への侵襲や副作用が原因で治療ができなかったり、治療をしても副作用によりQOLが低下したりすることもあります。

一方で、がん免疫細胞療法は第四のがん治療として、新たながん治療の手段として研究が進められている最中です。

患者さん自身の免疫細胞を活用してがんと闘うこの治療法は、副作用も少なくQOLを低下させずにがんと闘うことができるため、今後のがん治療に希望をもたらしています。

今後の臨床試験や研究の進展により治療効果や安全性が向上し、将来的にはがん治療の一翼を担う治療法になることが期待されます。

今後も進化し続けるがん免疫細胞療法から、ますます目が離せないでしょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
上 昌広医師(医療法人鉄医会ナビタスクリニック 特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所)

上 昌広医師(医療法人鉄医会ナビタスクリニック 特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所)

1993年 東京大学医学部医学科卒業、1999年 東京大学大学院医学系研究科修了、1999–01年 国家公務員共済組合 虎の門病院 血液科医員、2001–05年9月 国立がんセンター中央病院 薬物療法部医員、2010年7月16日-2016年3月31日 東京大学医科学研究所 先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門 特任教授 、2016年4月4日~現職

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上 昌広医師(医療法人鉄医会ナビタスクリニック 特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所)

1993年 東京大学医学部医学科卒業、1999年 東京大学大学院医学系研究科修了、1999–01年 国家公務員共済組合 虎の門病院 血液科医員、2001–05年9月 国立がんセンター中央病院 薬物療法部医員、2010年7月16日-2016年3月31日 東京大学医科学研究所 先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門 特任教授 、2016年4月4日~現職

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