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再生医療の細胞培養について徹底解説!培養の方法についても紹介します

再生医療 細胞培養

再生医療の細胞培養と聞いて、あなたはどのようなイメージをお持ちでしょうか。有名なものだと、2006年に登場したiPS細胞による将来の再生医療の期待などでしょうか。

しかし、iPS細胞の培養方法などは研究者にしかわからないような専門的なイメージが強く、やや難しい話に感じるでしょう。

そこで、この記事では再生医療の細胞培養について、徹底解説します。培養の方法についても紹介するので、細胞培養に興味がある方はぜひ参考にしてください。

再生医療の細胞培養について

再生医療の細胞培養について

細胞培養とは?
細胞培養とは生物から取り出した細胞を人工的に育てて増やすことです。細胞を増やすためには温度・湿度・気体組成を整えた環境づくりが大切です。
インキュベーターと呼ばれる空気調整機能付きの保温器を使えば、細胞を培養するのに適した環境をつくれます。一般的に温度は37度・湿度は約95%・空気組成は酸素5〜20%・二酸化炭素5〜10%が細胞培養にぴったりな環境といわれています。
ただし、培養する細胞株によって空気組成が異なるため注意が必要です。細胞培養技術は日々の研究の積み重ねによって得られた、人類の努力の結晶といえるでしょう。
再生医療における細胞培養の役割は?
再生医療とは、機能低下した臓器・生態組織を正常な状態に戻すことを目的に行う治療の一つです。正常な状態に戻すには多量の幹細胞を得るための細胞培養が必要不可欠です。人間の身体でつくられる細胞の数には上限があります。しかし、細胞培養では適した環境下であれば無限に増やすことができます。
体外で細胞を増やして、体内に戻せば自身の再生する力で治療できるというわけです。再生医療に用いられる細胞として体性幹細胞・ES細胞・iPS細胞が挙げられますが、日本の保険診療では体性細胞由来の皮膚・軟骨・心筋、および間葉系幹細胞の4種類だけが対象です。
細胞培養技術が高まり、再生医療の認知が広がれば用いられる細胞の種類も増えていくでしょう。細胞培養は治療法がなかった病気に対して新たな治療法の選択肢を増やす可能性を秘めているため、再生医療にとって欠かせない存在といえるでしょう。
再生医療の細胞培養でどのような疾患の治療ができますか?
再生医療の疾患対象として以下に例を挙げます。

  • 脳梗塞後遺症
  • 認知症
  • 筋萎縮性側索硬化症
  • 難治性アトピー性皮膚炎
  • 動脈硬化症
  • 加齢黄斑変性症
  • 軟骨疾患 など

再生医療はさまざまな疾患に対して有効であるといわれていますが、まだまだ臨床実績が少ないので疾患は限られています。
なお、再生医療の細胞培養では患者さん自身の細胞を用いるため拒絶反応が少なく、高い治療効果が期待できます。過去に治療しても改善できなかった疾患や治療法が見つかっていない疾患に対して、有効な治療法として期待できるでしょう。

幹細胞治療とは何ですか?
幹細胞治療とは患者さん自身の幹細胞を培養してから、体内に戻す治療法です。幹細胞は分化能・自己複製能に優れており、身体のあらゆる部位を修復・再生する働きがあります。培養した幹細胞を体内に戻すことで修復・再生を促すということです。
幹細胞治療では間葉系幹細胞といわれる骨髄・脂肪組織・歯髄などに存在する幹細胞を用います。理由として、脂肪組織などの採取しやすい場所にあることが挙げられます。
並びに組織の再生を促すだけでなく、免疫抑制の効能や病変部位に集積する特徴を併せ持つため、高い治療効果が期待できるのです。
ES細胞について教えてください。
ES細胞とはあらゆる細胞に分化できる能力をもった幹細胞です。胚性幹細胞とも呼ばれ、胚の内部細胞塊を用いて作られます。胚とは初期の卵細胞のことで、ES細胞をつくるには多くの卵細胞が必要となるため、女性から提供してもらう必要があります。
ES細胞は他者の細胞であるため、移植により拒絶反応が起きる点が問題点です。また、倫理的な問題もあり後ろ向きな意見が多いですが、あらゆる細胞に分化できる「万能細胞」としての再生医療への期待は高いといえるでしょう。
iPS細胞について教えてください。
iPS細胞とは、ES細胞と同じくさまざまな組織や臓器に分化できる能力と、ほぼ無限に増殖する能力を合わせ持つ細胞のことです。人工多能性幹細胞とも呼ばれ、少数の因子を導入した体細胞を培養してつくられるため、倫理的な問題はありません。
また、患者さん自身の細胞を用いるため移植による拒絶反応が起こりにくい点も評価できるでしょう。ES細胞と同じく「万能細胞」として期待されるiPS細胞は、拒絶反応が起こりにくい点と体細胞を利用する点から、患者さんへの負担が少ない特徴があります。

細胞培養の方法や種類

細胞培養の方法や種類

どのように細胞培養を行うのですか?
細胞培養は細胞が元気に育つように十分な栄養を与え、かつ汚染されないように滅菌された環境で行う必要があります。加えて適正なpHと温度の安定が求められます。細胞培養の手順は無菌状態をつくり出す安全キャビネット内で培地に細胞を加えて、インキュベーターで培養する流れです。
培地には必須アミノ酸・脂肪酸・ビタミンなどの豊富な栄養素が入っているため、細胞の増殖が促されます。また、インキュベーターの安定した温度管理により、細胞が育つベストな環境を維持できるのです。一定期間で培地を取り換え、操作を繰り返すことで十分な量の細胞が確保できたら細胞をクリーニング処理して取り出します。
ここまでの期間は細胞の必要数にもよりますが、およそ3〜4週間で培養できるといわれています。
細胞培養の種類について教えてください。
細胞培養の種類は接着培養と浮遊培養の2種類あります。人間の大部分の細胞は足場依存性があり、細胞培養処理をして細胞を接着させる必要があります。接着とは細胞と培養容器をくっつける処理のことで、基本的に細胞は単体では増殖できないため接着培養で管理する必要があるのです。
なお、造血細胞など一部の細胞は浮遊したままでも増殖できるので浮遊培養で管理します。浮遊培養では攪拌する操作が必要ですが、細胞の増殖量が多い特徴があります。

再生医療について

再生医療について

再生医療のメリットを教えてください。
薬物治療や外科的な処置と異なり、身体への負担が少ないことが大きなメリットといえます。自身の細胞を培養したものであれば拒絶反応が起こりません。処置による大きな傷ができる心配もないため、症状によっては治療後すぐに日常生活に戻れるでしょう。
また、難病や特効薬のない疾患に対して有効である場合があり、副作用を心配せずに治療できるのは患者さんにとって安心感が大きいでしょう。疾患だけでなく、加齢にともなう体力の低下や肌のしわなどに対しても、細胞を活性化させて改善することも期待できます。
再生医療にデメリットはありますか?
再生医療は薬機法の規制や知的財産権の問題により実用化までに時間を要しています。そのため、エビデンスが少なく安全の保障がされていません。治療費が高額な傾向があり、保険適用になる疾患もきわめて少ないです。
実施している医療機関が限られていることもデメリットといえるでしょう。また、倫理的な問題も、解決するための大きな課題だと考えられます。

編集部まとめ

再生医療 細胞培養 まとめ

この記事では細胞培養と培養方法について解説しました。

細胞培養とは生物から取り出した細胞を人工的に育てて増やすことです。細胞が元気に育つためには無菌状態で、十分な栄養と適切な温度管理が良質な細胞を増やすポイントです。

また、細胞培養は接着培養と浮遊培養の2種類があり、細胞の特徴に合わせて選択します。なお、浮遊培養の方が一度に多くの細胞を培養できる特徴があります。

再生医療では患者さん自身の細胞を用いる方法があり、身体への負担が少ないというメリットがあります。デメリットはエビデンスが少なく安全保障が保障されていないことです。

最後に、再生医療と細胞培養は密接な関係があり、細胞培養技術の向上が再生医療を導くといっても過言ではありません。細胞培養について少しでも参考になれば幸いです。

参考文献

この記事の監修歯科医師
松澤 宗範医師(青山メディカルクリニック院長 慶応義塾大学病院形成外科)

松澤 宗範医師(青山メディカルクリニック院長 慶応義塾大学病院形成外科)

2014年3月 近畿大学医学部医学科卒業 2014年4月 慶應義塾大学病院初期臨床研修医 2016年4月 慶應義塾大学病院形成外科入局 2016年10月 佐野厚生総合病院形成外科 2017年4月 横浜市立市民病院形成外科 2018年4月 埼玉医科総合医療センター形成外科・美容外科 2018年10月 慶應義塾大学病院形成外科助教休職 2019年2月 銀座美容外科クリニック 分院長 2020年5月 青山メディカルクリニック 開業

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