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再生医療

血管再生医療とは?血管再生治療が有効とされる病気についても合わせて解説!

再生医療 血管

血管再生医療をご存じですか? 本記事では、血管再生医療について以下の点を中心にご紹介します!

  • 血管再生医療の概要
  • 再生治療を活用した血管関連疾患の治療
  • 血管再生医療による閉塞性動脈硬化症の治療

血管再生医療について理解するためにもご参考いただけると幸いです。 ぜひ最後までお読みください。

そもそも再生医療とは?

そもそも再生医療とは?

再生医療とは、病気や事故などの理由によって失われたか損傷した組織を再生することを目指した医療技術です。 再生医療では、生きた細胞を使ったり、人工材料をうまく使ったり、遺伝子を入れた細胞を使うなど、さまざまな新しい技術を使用します。 再生医療は、現在も基礎研究や臨床試験が進められています。 日本では、2014年に「再生医療等安全性確保法」が施行されました。 この法律は、再生医療の安全性や品質を確保するために、厳しい審査や監視を行うことを定めています。 また、2018年には、「iPS細胞バンク」が開設されました。 iPS細胞とは、体細胞に遺伝子を導入することで、幹細胞に戻せる細胞です。 iPS細胞バンクでは、さまざまな型のiPS細胞を提供しています。 再生医療は、将来的にはさまざまな病気や障害の治療法となる可能性があります。 例えば、心筋梗塞や脳卒中などの循環器系の病気や、パーキンソン病やアルツハイマー病などの神経系の病気や、膝関節症や骨粗しょう症などの運動器系の病気や、AGAや白内障などの老化関連の病気に対して、幹細胞や人工組織などを使って治療することが期待されています。

血管再生医療とは?

血管再生医療とは?

血管再生医療とは、血管内皮細胞になる基の細胞(血管内皮前駆細胞)を使って、血流の悪い場所の筋肉に注入し、新たな血管を再生することを目指した医療技術です。血管内皮細胞とは、血管の内側を覆っている細胞で、血液の流れや血圧を調節する働きがあります。血管内皮前駆細胞とは、幹細胞の一種で、自己複製能と分化能を持つ細胞で、血管内皮細胞に変化できます。 血管再生医療は、現在も基礎研究や臨床試験が進められています。 日本では、2012年に「再生医療等安全性確保法」が施行されました。 この法律は、再生医療の品質を確保するために、厳しい審査や監視を行うことを定めています。 また、2016年には、「臍帯血バンク」が開設されました。臍帯血バンクでは、さまざまな型の臍帯血を提供しています。 血管再生医療は、将来的にはさまざまな循環器系の病気に対して、良い治療法となる可能性があります。 例えば、心筋梗塞や末梢動脈閉塞症といった虚血性心疾患や、動脈硬化や高血圧などの動脈壁障害に対して、新たな血管を作ることで、組織の酸素供給や代謝を改善することが期待されています。

血管の役割と構造

血管の役割と構造

血管再生医療について理解を深めるためにも、まずは血管の役割や構造をみていきましょう。

血管の主な役割

血管の重要な役割は、血液を体中に運ぶことです。 血液は、酸素や栄養素、ホルモンなどの必要な物質や、二酸化炭素や老廃物などの不要な物質を運びます。 血液は、心臓から動脈と呼ばれる血管を通って全身に送られ、毛細血管と呼ばれる細い血管で細胞と物質の交換を行い、静脈と呼ばれる血管を通って心臓に戻ります。 血管のもう一つの役割は、体温を調節することです。 体温が高くなると、皮膚の表面に近い血管が拡張して血流が増え、熱を放出します。逆に、体温が低くなると、皮膚の表面に近い血管が収縮して血流が減り、熱を保持します。 血管のさらにもう一つの役割は、免疫の防御をすることです。 血液中には、白血球と呼ばれる細菌やウイルスなどの異物を攻撃する細胞があります。 白血球は、血管から組織に移動して異物と戦います。また、リンパ管と呼ばれる別の種類の管腔構造も免疫に関係しています。 リンパ管は、組織間液と呼ばれる細胞外の液体を回収してリンパ節と呼ばれる場所に運びます。リンパ節では、異物が濾過されて白血球によって処理されます。

血管の構造

血管には、大きく分けて3つの種類があります。 動脈、静脈、毛細血管です。動脈とは、心臓から全身に血液を送る血管です。 静脈とは、全身から心臓に血液を戻す血管です。 毛細血管とは、動脈と静脈をつなぐ細い血管で、細胞と物質の交換をする場所です。 血管には、内側から外側に向かって3つの層があります。 内皮層、中膜層、外膜層です。内皮層とは、血管の内側を覆っている一枚の細胞層で、血液の流れや凝固を調節する働きがあります。中膜層とは、内皮層の外側にある筋肉や弾性線維でできた層で、血管の収縮や拡張を行う働きがあります。 外膜層とは、中膜層の外側にある結合組織でできた層で、血管を保護したり固定したりする働きがあります。 血管の太さと長さは、種類によって異なります。 動脈は、心臓から遠ざかるにつれて細くなります。最も太い動脈は大動脈で、直径約2.5cmです。最も細い動脈は細動脈で、直径約0.1mmです。 静脈は、心臓に近づくにつれて太くなります。 最も太い静脈は大静脈で、直径約2.5cmです。最も細い静脈は細静脈で、直径約0.1mmです。毛細血管は、最も細くて短い血管で、直径約0.01mm、長さ約1mmです。全身の血管の長さは合計で約10万kmにもなります。

血管再生治療が有効とされる病気

血管再生治療が有効とされる病気

血管再生治療はどのような病気の治療で活用されているのでしょうか。代表的な病気について解説します。

閉塞性動脈硬化症・バージャー病

閉塞性動脈硬化症とは、動脈の内壁にコレステロールやカルシウムなどの物質が沈着してプラークを形成し、血管が狭くなったり詰まったりする病気です。 血管が狭くなると、血液の流れが悪くなり、酸素や栄養素が不足することで、筋肉や臓器に虚血や壊死を起こします。 閉塞性動脈硬化症は、心臓や脳などの重要な臓器に影響すると、心筋梗塞や脳卒中などの重篤な合併症を引き起こす可能性があります。 バージャー病とは、手足の末梢の動脈に炎症が起こり、血管が詰まることで虚血を起こす病気です。 バージャー病は、喫煙が主な原因とされており、若い男性に多くみられます。 バージャー病は、手足の冷えやしびれ、色素沈着、これにより、潰瘍や壊死といった症状が発生します。 重度の場合は、手足の切断を余儀なくされることもあります。

虚血肢

虚血肢とは、手足の動脈が狭くなったり詰まったりすることで、血液の流れが悪くなり、酸素や栄養素が不足することで、筋肉や皮膚に損傷を起こす状態です。 虚血肢は、閉塞性動脈硬化症やバージャー病などの原因で起こります。 虚血肢は、手足の冷えやしびれ、色素沈着や潰瘍、壊死などの症状を引き起こします。 重度の症状では、手足の切断が避けられない場合もあります。

遺伝子治療による血管再生療法

遺伝子治療による血管再生療法

遺伝子治療とは、病気の原因や治療に関係する遺伝子を細胞に導入することで、病気の予防や治療をする医療技術です。遺伝子を細胞に導入する方法には、ウイルスやリポソームなどのベクターを使う方法や、電気や音波などの物理的な刺激を使う方法などがあります。 遺伝子治療を活用した血管再生治療においては、患者さん自身の筋肉にベクターを使ってVEGFやHGFなどの遺伝子を取り込むと、筋肉から分泌されたVEGFやHGFが周囲の組織に、新しい血管を創出します。これに伴って、虚血による疼痛や壊死などの症状が軽減されたり、手足の切断が回避されたりすることが期待されます。

血管再生医療による閉塞性動脈硬化症の治療

血管再生医療による閉塞性動脈硬化症の治療

血管再生医療を閉塞性動脈硬化症の治療に適用した手段について、具体的にどのように血管を再生させていくのか詳しくみていきましょう。

閉塞性動脈硬化症について

閉塞性動脈硬化症は、動脈の内壁にコレステロールやカルシウムなどの物質が沈着してプラークを新しい血管が生成され、それにより、血管が狭まったり、詰まったりする病状が発生します。 閉塞性動脈硬化症の原因には、高血圧や高脂血症、糖尿病、喫煙などの生活習慣や、加齢や遺伝などの要因があります。 閉塞性動脈硬化症の症状には、手足の冷えやしびれ、歩行時の筋肉の痛み(跛行)、皮膚の色素沈着や潰瘍、壊死などがあります。 閉塞性動脈硬化症の診断には、血圧や血液検査、超音波検査や血管造影などの画像検査が行われる手順であり、閉塞性動脈硬化症の治療に関しては、生活習慣の改良、薬による治療、外科的介入、あるいは血管内での治療などがあります。 生活習慣の改善では、禁煙や適度な運動、食事の見直し、体重管理などが重要です。 薬物治療では、血液をサラサラにする抗凝固剤や血管を拡張する血管拡張剤などが用いられます。 外科手術では、バイパス手術や人工血管置換術などで、詰まった血管を迂回させたり取り替えたりします。 血管内治療では、カテーテルと呼ばれる細いチューブを血管に挿入して、バルーンやステントと呼ばれる器具で詰まった部分を広げたり固定したりします。

血管の再生方法

血管再生医療の目的は、血管が詰まって血流が悪くなった部位に新しい血管を作ることで、酸素や栄養素の供給を改善し、症状を軽減することです。 血管再生医療の手順は、大きく分けて3つの段階に分かれます。 まず、患者さんから血液を採取し、血液に含まれる血小板を濃縮させた「培養液」を作ります。 その後、局所麻酔を用いて骨髄を採取し、その中に存在する「間葉系幹細胞」を、先程調製した培養液を用いて増やします。 最後に、血流が充分でない下肢に対して、培養に成功した間葉系幹細胞を患部に投与します。 念のため、発熱や腫れがないか確認のために治療を受けた後、数日間は病院での観察が必要ですが、それでも負担は軽微で、大抵の場合は翌日には歩行が可能となります。 血管再生医療では、間葉系幹細胞が注入された部位で新しい血管を作ることに期待を寄せています。 間葉系幹細胞とは、自己複製能と分化能を持つ細胞で、血管内皮細胞や平滑筋細胞などに変化できます。 血管内皮細胞とは、血管の内側を覆っている細胞で、血液の流れや凝固を調節する働きがあります。 平滑筋細胞は、血管の中膜層に存在する特定の筋肉で、血管の収縮や拡張を行う働きがあります。 これらの細胞が協力して新しい血管を形成し、新たに形成された血管は、既存の血管と結びつき、血流を増加させる役割を果たします。 これにより、虚血による疼痛や壊死などの症状が軽減されたり、手足の切断が回避されたりすることが期待されます。

血管再生医療の効果

血管再生医療は、現在臨床試験の段階であり、有効性が確認されていません。 しかし、5名に行った臨床研究での結果は、1年間の観察期間を通じて、下肢の虚血症状の深刻さが軽減されたことが確認されました。 また、本治療が原因となる重篤な有害事象は起こりませんでした。 入院期間は5日としていますが、これは患者さんの安全性を最優先するための手段です。 手術を必要とせず、足への注射だけで済むため、体へのストレスは非常に少なく、既存の疾患を抱える方でも治療を受けられる方法です。 血管再生医療によって新しい血管が作られると、酸素や栄養素の供給が改善されます。 これにより、虚血による疼痛や壊死などの症状が軽減されたり、手足の切断が回避されたりすることが期待されます。 また、従来の治療法では効果がなく手術も行えない重度の閉塞性動脈硬化症に対しても役立つ治療法として期待されます。

まとめ

まとめ

ここまで血管再生医療についてお伝えしてきました。 血管再生医療の要点をまとめると以下の通りです。

  • 血管再生医療とは、血管内皮細胞になる基の細胞を使って、血流が乏しい筋肉領域に対して、新たな血管を再生することを目指した医療技術である。
  • 動脈が硬化し閉塞する「閉塞性動脈硬化症」「バージャー病」「虚血肢」などの血液の流れが悪い病気の治療で、血管再生医療の活用が期待されている。
  • 血管再生医療は、臨床試験の段階であるが、臨床研究での結果はいずれも一定の病状の改善が見られ、更なる応用が期待される。

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
甲斐沼 孟医師(上場企業産業医)

甲斐沼 孟医師(上場企業産業医)

平成19年(2007年) 大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部医学科 卒業 平成21年(2009年) 大阪急性期総合医療センター 外科後期臨床研修医 平成22年(2010年) 大阪労災病院 心臓血管外科後期臨床研修医 平成24年(2012年) 国立病院機構大阪医療センター 心臓血管外科医員 平成25年(2013年) 大阪大学医学部附属病院 心臓血管外科非常勤医師 平成26年(2014年) 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医員 令和3年(2021年) 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医長 令和5年(2023年) 上場企業産業医

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