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再生医療による膵臓治療の未来への一歩を解説!

再生医療 膵臓

膵臓は血中の糖分量を調節する重要な役割を担う臓器です。ここがダメージを受けると深刻な糖尿病に罹患してしまいます。

一度罹患すると長期にわたり治療が必要でした。しかし再生医療の進歩により、治療法に明るい兆しが見えてきているようです。

本記事では、再生医療による膵臓治療について解説します。膵性糖尿病・再生医療における今後の課題なども紹介するので、参考にしてください。

膵臓の疾患による糖尿病について

膵臓の疾患による糖尿病について

どのくらいの患者さんがいて、どんな人に多いですか?
人口10万人あたり約15人、1年間の新規発症数は約1人といわれています。発症のきっかけとして考えられている病気は主に3つです。

  • 慢性(急性)膵炎
  • 慢性石灰化膵炎
  • 膵がん

上記の病気のなかでは慢性石灰化膵炎が70〜80%と高い確率で発症します。また、2022年の調査で慢性膵炎についても38.1%の患者さんに合併症として発症することがわかりました。
その主な原因としてあげられるのがアルコールで発症率67.8%と高く、次いで特発性25.6%、胆石性4.9%となっています。この結果から、飲酒は膵性糖尿病を引き起こす危険因子であるといえるでしょう。
なお、上記3つの病気以外にも粘液産生腫瘍・先天性膵形成不全・膵摘出術なども膵性糖尿病を引き起こすきっかけとされています。

この病気の原因について教えてください。
膵性糖尿病の原因は、インスリン分泌不全です。インスリン分泌不全とは、膵臓の機能が低下してインスリンが作れない状態のことで、この状態になるとどんどん痩せてしまいます。インスリンは体内に取り込まれた糖分を分解し、ブトウ糖に変化させるのが仕事です。ブドウ糖は人間が日常的に活動するための重要なエネルギー源ですが、そのブドウ糖が体内で生成されなくなると代わりに脂肪・筋肉などを分解します。
これらに含まれるタンパク質をエネルギー源として利用するのです。食べ物として摂取された糖分は分解されずに体外に排出され、日常的に消費されるエネルギー源の補給として体内に蓄積された脂肪・筋肉が分解され続けます。
「糖尿病」という病名から、肥満の人をイメージするかもしれません。しかし膵性糖尿病はインスリン分泌不全が原因で引き起こされる病名であるため、痩せ型の人に多い特徴があることもあわせて覚えておくとよいでしょう。
現在の治療法について教えてください。
現在の主な治療法は以下の2通りです。

  • インスリン療法
  • 膵外分泌酵素の補充

インスリン療法は1型糖尿病でも用いられている治療法ですが、膵性糖尿病もインスリン分泌不全が原因のため、この方法が適応とされています。軽症の場合は経口血糖降下薬を使用しますが、症状が重い場合は注射を必要とするケースもあるでしょう。
ただし、以下のような副作用があるので注意が必要です。

  • インスリン依存状態
  • 低血糖

低血糖についてはいつどのようなタイミングで起こるかわからないため、ブドウ糖を常備しなければいけません。また、膵性糖尿病では消化吸収障害を併発するケースもあります。膵臓から分泌されるはずの消化酵素が分泌されず、不足してしまうからです。
その場合はパンクレリパーゼなどの消化酵素を用いた膵外分泌酵素の補充が必要になります。

新しい細胞を使った膵臓ができるまでの過程について

新しい細胞を使った膵臓ができるまでの過程について

膵臓に関する発生の研究について教えてください。
膵臓の発生における最初の研究段階は、成体幹細胞増殖の観察でした。成体幹細胞とは体の組織に存在する幹細胞のことで、通常は眠った状態です。細胞が死んだり損傷したりした場合に目を覚まし、新しい細胞の供給・組織の再生といった役割を担っています。
しかし身体に存在する組織には盛んに再生を繰り返すものとそうでないものがあり、肝臓はそうではない細胞だったため、ES細胞・iPS細胞での研究に切り替えました。
これらの細胞を使って膵臓発生を調べるには、膵臓になる遺伝子を知ることが重要です。ES細胞・iPS細胞から膵臓を発生させる場合、以下のような順番が必要であることがわかりました。

  • ES細胞・iPS細胞から内胚葉が作製
  • 前駆細胞(肝臓になるための細胞)を作製
  • 内分泌前駆細胞が作製
  • β細胞などに分化

2002年から開始され、2008年ごろに「ES細胞・iPS細胞で膵臓の前駆細胞作製に成功した」と発表されました。上記は研究の内容・経緯を簡潔に表現したものですが、実際の研究期間としてはES細胞・iPS細胞から内胚葉を経て前駆細胞が形成される段階まで4年の歳月を要しています。肝臓の発生を調べるだけでも、それだけの長い年月が必要だったのです。

ES細胞とiPS細胞の違いは?
ES細胞とiPS細胞はどちらも幹細胞の一種ですが、作製方法が異なります。ES細胞は胚盤胞から細胞を取り出し、培養して作製しなければいけません。採取は受精後6~7日の受精卵と制限があり、自分の細胞を使って作成することは難しいでしょう。その結果、組織・細胞などの移植を行った場合は拒絶反応が出るリスクを考慮しなければいけません。
しかしiPS細胞は、皮膚・血液などに存在する体細胞で作製します。成人してからでも採取できる体細胞を使用するため、自分の細胞から作成することが可能です。そのため、移植をした場合にも拒絶反応のリスクは軽減されるでしょう。
β細胞の発見について教えてください。
β細胞は前述した前駆細胞から内分泌前駆細胞を経て分化されることが、膵臓の発生における研究の成果で発見されました。しかし、ここで終わりではありません。目的は膵臓の生成であって、β細胞の発見ではないからです。次にβ細胞の作製研究に取り掛かります。
細胞の分化だけでみた場合、特定の低分子化合物を加えることで分化が促進されることは知られていました。しかし、β細胞に関しては分化の促進ができなかったため、目的に合致した化合物の特定をしなければいけません。約1120種類の化合物を調べた結果、ドンペリドンという化合物が目的に合致したものであると突き止めます。
しかし、化合物だけでは不十分であることも同時にわかりました。分化の促進には成功しましたが、腫瘍になる危険性が高い未分化細胞もできてしまったからです。そこで、未分化細胞をつくらずに効率よくβ細胞を作製する方法を模索します。すると、正常な細胞作製にはアミノ酸が関係していると判明。アミノ酸といっても、ヒトのタンパク質に関係しているものは20種類もあります。正常なβ細胞の作製に関係しているアミノ酸を見つけ出すためには、1種類ずつ調べるしかありません。
さまざまな培地で細胞を育ててみると、メチオニンがない培地だけ未分化細胞が消滅してβ細胞になりやすくなることを突き止めました。効率よくβ細胞まで作製できるこの研究成果・技術は、複数の企業と連携することで再生医療・細胞治療への活用・さらなる研究に役立てられています。

β細胞による成熟膵臓について

β細胞による成熟膵臓について

研究を行った背景について教えてください。
世界における糖尿病人口は4億人を超えると推定されており、その原因として社会環境・生活習慣の変化があげられます。また、糖尿病は網膜症・腎障害といった合併症を引き起こす要因の1つです。
腎障害に至っては重症化すると人工透析をしなければいけません。世界でみた場合の糖尿病及び合併症の医療費は年間90兆円とされています。この金額は医療費圧迫の原因の1つとされ、社会問題になっているというのが研究の背景です。
MYCL遺伝子について教えてください。
MYCL遺伝子は簡単に説明すると、膵島細胞の増殖をコントロールする役目を担っています。膵島細胞は出生の前後には活発に増えますが、成熟過程で増殖・自己複製などの機能はほとんど失われることがわかっていました。そこで細胞の発現を調べてみたところ、MYCLの同時発現を確認したのです。次に遺伝子を壊してみたところ、本来なら活発に増えるはずの出生前後で、反対に増殖低下する結果となりました。これらの解析・研究結果からMYCL遺伝子は出生の直前直後で増殖を促進させる一方で、成熟すると増えすぎないように抑える役目も担っているといえます。
成熟膵島細胞増幅によって治療はどうなりましたか?
成熟膵島細胞増幅を使用して糖尿病モデルマウスの治療を試みたところ、以下のような結果が出ました。

  • MYCL発現誘導によって血糖値が改善
  • MYCLで増幅させた膵島細胞の移植によって血糖値が改善

発現誘導の実験は、体内で行われたものです。一方の膵島細胞の移植は試験管内で増殖させたものを使用しています。これらの結果から、体内外どちらにおいても糖尿病の治療が可能であることが示されたといえるでしょう。

今後の課題と展望について教えてください。
マウスによる糖尿病治療実験は成功しました。また脳死ドナーから採取した膵島細胞でも、自己増殖活性の浮揚が可能であることは証明されています。しかし実際の再生医療で応用するためには、体外増殖による膵臓細胞の体内細胞移植療法MYCL遺伝子を使用した体内での膵島細胞増殖技術などの開発を進めなければいけません。これらの技術開発が進めば、糖尿病治療にも応用可能になるでしょう。

編集部まとめ

白衣

再生医療と膵臓について解説しました。

膵臓に関する再生医療の開発・研究が進めば、膵性糖尿病をはじめとするさまざまな膵臓に関係した病気の治療が可能になるでしょう。

しかしそのためには再生医療だけではなく、医療技術・設備の開発・進歩も必要不可欠です。

現在、多くの医師・研究者が実際の治療に役立てようと日夜励んでいます。その努力が報われる日を願いつつ、実際の治療に応用される日を待ちましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
中路 幸之助医師(医療法人愛晋会中江病院 内視鏡治療センター)

中路 幸之助医師(医療法人愛晋会中江病院 内視鏡治療センター)

1991年に兵庫医科大学を卒業後、 兵庫医科大学、獨協医科大学を経て、1998年 医療法人協和会に所属。 2003年から現在まで、医療法人愛晋会中江病院の内視鏡治療センターで臨床に従事している。 専門分野はカプセル内視鏡・消化器内視鏡・消化器病。学会活動や論文執筆も積極的に行っており、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本消化器病学会専門医・指導医・学会評議員、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医・学術評議員、日本消化管学会代議員・近畿支部幹事、日本カプセル内視鏡学会認定医・指導医・代議員を務めているほか、 米国内科学会(ACP)の上席会員(Fellow)でもある。

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