日本でも多くの人が悩んでいる薄毛や抜け毛。そのほとんどが、男性ホルモンの影響によって引き起こされる脱毛症、AGAといわれています。AGAは近年広く知られるようになり、AGA治療専門クリニックも増えてきました。多くの人が治療を受ける中で、「効果が出ない」という声があるのも事実です。どうして効果が出ないと言われるのか、その原因を探っていきましょう
AGA(男性型脱毛症)とは
AGAとは「Androgenetic Alopecia」の略で、日本語では「男性型脱毛症」と呼ばれます。まず、AGAとはどういった病気なのかを知っていきましょう。また、自分がAGAに該当するかどうか、セルフチェックする方法もご紹介します。
- 薄毛の原因とされるAGAとはどういった病気ですか?
- AGAによる薄毛の原因は、ヘアサイクルの乱れにあります。AGAとは、男性ホルモンの作用によって起こる脱毛症です。男性ホルモンであるテストステロンは、5αリダクターゼという還元酵素によってDHT(ジヒドロテストステロン)という脱毛ホルモンに変換されます。このDHTが頭皮にある毛乳頭細胞の男性ホルモン受容体と結合すると、本来では毛髪が太く成長してから抜け落ちるヘアサイクルが、十分成長する前に脱毛を繰り返すようになります。こうして十分に成長できなかった毛髪が増えることで、薄毛が目立つようになるのがAGAの仕組みです。
- 自分がAGAかどうかを簡単に確認できますか?
- AGAの診断には医師にかかる必要がありますが、AGAの疑いが強いかを自分でチェックすることはできます。最も大きなポイントは、抜け毛の増加です。髪を軽く掴むだけで毛が簡単に抜けてしまったり、落ちている髪の毛が多くなっている自覚がある人は、AGAの疑いがあります。 また、抜けた髪の様子もよく見ておきましょう。細くて弱々しい毛や、毛根部分が丸くない場合は要注意です。現時点で薄毛の自覚は無くても、将来的に急速に薄毛が進行する可能性があります。 そのほかにも、主なチェック項目として「家族や親族に薄毛の人がいる」「額の生え際が後退してきた」「頭頂部の地肌が透けて見える」「同世代より髪が薄いと感じる」「頭皮が脂っぽくベタベタしている」「脂肪分の多い食事をしがち」「喫煙者である」などが挙げられます。これらに該当するものが多ければ多いほど、AGAになるリスクが高いです。心当たりがある場合は、早めに専門クリニックを受診しましょう。
AGAを引き起こす原因
AGAは、男性ホルモンの作用によってヘアサイクルが乱れることで引き起こされる脱毛症です。ここでは、ヘアサイクルが乱れるとはどういうことなのかをご紹介します。
- AGAの原因であるヘアサイクルの乱れについて、詳しく教えてください。
- ヘアサイクルとは、髪の毛が生え始めてから成長して伸びる「成長期」、髪の成長が遅くなっていく「退行期」、成長が止まって抜け落ちていく「休止期」をへて新しい髪の毛が生えるまでの周期のことです。 このうち最も長い期間は成長期で、一般的には2年〜6年程度続くといわれています。成長期になると毛母細胞が活発に分裂し、髪の毛が長く太く成長していきます。やがて成長期が過ぎると、髪の毛の成長が停止する2週間〜3週間程度の退行期に移行します。その後は髪の毛が抜け落ちていく休止期に入ります。休止期には毛穴の奥で成長し始めた新しい髪の毛に押し出されて、古い髪の毛が抜け落ちます。 AGAになってしまうと、このヘアサイクルの中の成長期が極端に短くなります。成長期が短くなることで髪の毛が十分に成長しないまま、退行期や休止期へと移行してしまうのです。その結果、生える毛髪よりも抜ける毛髪の方が多くなっていき、薄毛となってしまいます。
- ヘアサイクルが乱れる原因はなんですか?
- すでに説明した通り、DHTが発生することによってヘアサイクルが乱れてAGAとなります。そして、AGAの原因としては遺伝的要素や加齢など、複数の要因が挙げられます。 なお、自身がAGAになりやすい遺伝子を持っているかどうかを検査できる専門クリニックもあるので、気になる人は問い合わせてみるのもいいでしょう。AGAは早期に治療を開始することで、その進行を抑えることができます。 このほかにも、栄養バランスの偏りや生活習慣の乱れ、過度な飲酒などは、薄毛や抜け毛の原因となります。AGA治療中だけでなく、健康な髪を保つためには普段から規則正しい生活を送ることが重要です。
AGAの治療方法
AGAの治療方法は、薬剤を使った投薬治療が一般的です。しかし、植毛、増毛、光治療、再生医療など、その選択肢は多くあります。それぞれの特徴を知って、自分に合った治療方法を見つけましょう。
- AGAの治療法について教えてください。
- AGAの治療法には、内服薬や外用薬を用いた投薬治療、植毛、増毛、光治療、再生医療などがあります。一般的には投薬治療が選択されることが多く、別の治療法と組み合わせる場合もあります。
- AGA治療薬にはどのような種類がありますか?
- 内服薬治療では、プロペシア(フィナステリド)が多く用いられます。プロペシアにはAGAの根本原因となるDHTの産出を抑制する作用があります。ザガーロ(デュタステリド)も多く用いられる内服薬のひとつです。ザガーロもDHT産出を抑制する作用を持っているため、プロペシアで効果が薄かった場合などの第二選択薬として使用されることも多い内服薬です。 外用薬治療には、主にミノキシジルが用いられます。ミノキシジルは、血管拡張作用が主効能の外用薬です。毛根への栄養供給ルートである毛細血管を広げることで、毛根に栄養を届けて髪の毛が成長しやすい環境を作るといった治療法です。また、ミノキシジルには内服薬もあります。
- 光治療とはどのような治療法ですか?
- 光治療とは、LEDの光を薄毛治療に利用した治療法です。頭皮の奥深くまで入るLED光を照射することで、髪を作り出す毛母細胞を活発化します。薄毛部位や植毛の傷跡を改善して、発毛や育毛を促します。頭皮の環境を整えることで、髪の毛に潤いやハリを与える効果もあるとされています。
- AGAに対する再生医療とはどのような治療法ですか?
- 再生医療を使ったAGA治療には、幹細胞再生治療とPRP毛髪再生療法があります。 幹細胞再生治療は、専用機器を使って自分のお腹やお尻、太ももなどから採取した脂肪幹細胞を頭皮に注入することによって、脂肪前駆細胞と毛包幹細胞を活性化させます。その結果として、毛髪の健全な成長期ヘアサイクルを確立し、発毛を促していく治療法です。 PRP毛髪再生療法は、血液中の血小板の成長因子が持つ組織修復能力を利用して、治癒力を高めることでAGAにアプローチする治療法です。成長因子は、頭皮において毛髪の生成を促す役割を持っています。PRPとは血小板を濃縮した「多血小板血漿」であり、これを直接頭皮に注入することで細胞の増殖を促進・活性化させて、毛母細胞の成長を促します。PRP毛髪再生療法もまた、ヘアサイクルの乱れを改善させる効果が期待されています。
AGA治療の効果
AGA治療を行った人の中には、あまり効果が感じられなかったというケースもあります。どうして効果を感じられなかったのか、よくあるケースやその原因をご紹介します。
- 「AGA治療に効果がない」という話を聞きましたが、本当ですか?
- すでに説明したように、AGA治療では一般的に投薬治療が選択されます。投薬治療を受けても効果がないと感じる場合、よくあるのは以下のようなケースです。 まずは、治療を始めて間もない場合。投薬治療による効果が感じられるのは、平均で6ヶ月程度かかるといわれています。特に投薬治療の場合は即効性はありませんので、継続した治療と経過観察が必要です。また、主にミノキシジルを用いた場合、初期脱毛として抜け毛が生じる場合があります。
これはヘアサイクルが正常化する過程で起きる現象ですが、不安を覚える人も多くいます。しかしこうした初期脱毛はむしろしっかりと効果が得られているサインでもあるのです。 中には、処方薬の用法や用量を守っていないために効果が出ていないケースもあります。薬剤は正しく服用・使用することで効果を発揮します。薬剤治療を行う場合は、きちんと用法や用量を守りましょう。 また、AGA治療に用いられる薬は、個人の体質やAGAの進行度によって効果が異なります。処方された薬が自分に合っていないために効果が見られない場合もあります。治療薬が合っていないと感じた場合は、遠慮なく担当の医師に相談しましょう。
- 現在AGA治療を受けていてあまり効果を感じられない場合、どうすればいいですか?
- 繰り返しになりますが、用法や用量を守って投薬治療を続けていても、あまり効果が感じられない場合もあります。特に薄毛の状態が進行してしまっていると効果を感じづらい人もいるでしょう。 こうした場合は、別の治療方法を試すのもひとつの手です。投薬治療だけでなく、再生医療を用いた治療なども検討してみてください。ただし、再生医療を用いた治療でもすぐに毛髪が増えたりはしません。AGA治療は時間がかかるものなので、現在の不安や費用面などを医師と相談しながら、自分に合った治療内容を選択しましょう。
編集部まとめ
この記事では、AGAやその治療法について詳しく説明してきました。AGAの投薬治療を続ける人の中には、効果がないと感じて不安になっている人もいるかもしれません。あまり効果が感じられない場合でも、まずは薬の用法や用量を守っているかを確認し、半年ほどは様子を見ることが重要です。それでも効果を感じられない場合は担当医に相談し、治療方法を再検討してみましょう。
参考文献