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火傷(熱傷)に対する皮膚再生|治療方法など皮膚の再生医療について解説します

火傷(熱傷)に対する皮膚再生|治療方法など皮膚の再生医療について解説します

火傷は日常生活での外傷としては非常に多いもののひとつです。

やかんやポットのお湯・熱い飲み物・天ぷらの油など高温液体が身体にかかることによって引き起こされるケースが多いでしょう。

ストーブやアイロンなどの熱製の固体に触れることでも、火傷を起こした経験がある方もいるのではないでしょうか。

火傷は熱源となる液体や固体の温度と、それが皮膚に接触していた時間によって傷の深さが異なります。

損傷の深さは「I度熱傷」「II度熱傷」「III度熱傷」の3つの段階に分類することが可能です。火傷による傷が深く範囲が広いほど重傷です。

最も深い熱傷のIII度熱傷では、皮膚組織が壊死するため皮膚の自己再生がないため、皮膚移植などの皮膚再生医療が行われます。

皮膚移植は火傷だけでなく白斑や母斑などの治療で活用されており、自家培養表皮の技術は医療現場で活用されています。

この記事では火傷の治療方法の特徴をはじめ、重症化した場合の後遺症、また皮膚再生医療について解説しています。ぜひ参考にしてください。

火傷(熱傷)に対する皮膚再生の治療とは?

火傷(熱傷)に対する皮膚再生の治療とは?

火傷ではI度熱傷では軟膏療法、II度熱傷では軟膏療法や被覆材を用いた保存的治療などが一般的な治療方法です。

III度熱傷は、軟膏療法では皮膚再生を得ることができないレベルの熱傷です。再生の可能性はあっても非常に時間がかかるため、基本的には入院して外科的な治療が必要です。

外科治療では、太ももや背中といった身体の他の部分から皮膚を移植するという「植皮術」という手術を行います。植皮術には様々な方法がありますが、火傷の範囲と部位によって適切な方法を選択します。

火傷(熱傷)の治療方法

火傷(熱傷)の治療方法

火傷をした場合、まずは何よりも「冷却」が最優先です。水道水やミネラルウォーターなどできれいに洗浄して、さらにきれいな水で濡らしたタオルなどで患部を冷やしましょう。その後、なるべく早めに病院に受診するようにしてください。

治療は火傷の深さによって異なります。

火傷(熱傷)は3つの段階に分類されますが、ひとつの傷に複数が混在していることもあり、判定困難な場合もあります。

  • I度熱傷:皮膚が赤くなる程度の火傷
  • II度熱傷:皮膚に水ぶくれができる程度
  • III度熱傷:皮膚が硬くなり、黒または黄白色に変色

3つの段階それぞれの治療方法について解説します。

I度熱傷

I度熱傷

皮膚が赤くなる程度の火傷であるI度熱傷の場合、3~4日もあれば赤みは減って、火傷の痕を残すことはありません。日焼けもI度熱傷です。

治療では軟膏療法が中心となります。

特別な治療は必要なく、患部を水で冷やす「局所冷却」やステロイド軟膏を塗布することで痛みを和らげる治療が主となります。

皮膚の赤みはおおよそ3日から4日程度で和らぎ、多くの場合は傷跡が残ることなく治癒可能です。

とはいえ、初期の段階で適切に処置しなければ治るのに時間がかかります。

火傷を負った場合には、まずは患部を冷却してその後適切に処置しましょう。「軽いから大丈夫」と思わず、専門の医師が在籍する病院に受診することをおすすめします。

II度熱傷

II度熱傷には「浅いII度熱傷」と「深いII度熱傷」の2つがあり、いずれかを判断して治療します。

肉眼で見分ける指標は熱傷部位の色です。ピンクから赤で血色に問題ない場合は、浅いII度熱傷と判断されます。

白っぽく血色も悪い場合は、深いII度熱傷の可能性が高いでしょう。濃い赤で、圧迫しても色が変わらない場合も深いII度熱傷と判断できます。

II度熱傷は真皮の途中まで熱傷が起こっている状態で、水疱ができるのも特徴です。

浅いII度熱傷では軟膏療法や被覆材を使った「保存的治療」が中心で、2週間前後で新しい皮膚が再生します。

被覆材にはハイドロコロイドドレッシングやハイドロファイバー、ポリウレタンなどを使い、高吸収コットンやガーゼで患部を覆います。

新しい皮膚に再生するまでの期間は2週間程です。色素沈着・色素脱出が起こる場合もありますが、痕が残ることはほとんどありません。

深いII度熱傷になると、3週間経ってもなかなか新しい皮膚に再生せず、治りも悪いです。痕が残る場合もあるでしょう。

感染が進行すると治癒に悪影響が出る可能性があるため、細菌培養検査を行って閉鎖療法ではなく「滲出液」が充分に排出されるような薬剤に変更します。

熱傷の範囲が小さい場合は軟膏治療が第一選択肢ですが、手術が必要になるケースもあります。

III度熱傷

III度熱傷

III度熱傷の場合には軟膏療法では皮膚が再生しないため、基本的には手術が必要です。

皮下組織まで熱傷が及んでいるため、皮膚の血流が悪くなり、見た目は蒼白です。熱傷の原因が火災の場合は炭化し、黒色になることもあります。

熱傷部位から感染するリスクが高いため、速やかにデブリードマンを行う必要があります。デブリードマンは、手術などで壊死した組織を取り除ききれいにすることです。

感染すると熱傷の治りが悪くなり、敗血症を引き起こすリスクもあります。これはIII度熱傷に限った話ではありません。

II度熱傷でも感染のリスクはあるため、患者さんに接触する可能性がある人は感染対策の徹底が大切です。

熱傷で失われた部位の皮膚を再生する手術では、患者さんの健常な部分の皮膚を採取し、皮膚がなくなった部位に移植する植皮術を行うことがあります。

採取する部位は具体的には太もも、頭皮などです。植皮術にも様々な方法があり、少ない範囲から皮膚を採取してメッシュ状に皮膚を加工するといった方法が採られることもあります。

火傷(熱傷)が重症化した場合に起こる後遺症

火傷(熱傷)が重症化した場合に起こる後遺症

浅い火傷の後遺症として代表的なのが色素沈着などの色素異常です。時間の経過とともに薄れることが多いですが、色素の沈着を予防するには紫外線対策が有効とされています。

深い火傷の場合、以下のような後遺症が残ることがあります。

  • 関節のひきつれ
  • ケロイド

本項ではこれらの後遺症について解説していきます。

関節のひきつれ

深い火傷の後遺症として多いのが「関節のひきつれ」です。ケロイドが関節部分にでき、関節が伸ばせなくなります。

小さい子どもは関節に関わらずひきつれを起こす可能性が高いです。火傷の痕が他の部位の成長についていけず、伸ばすことができなくなるためです。

改善傾向が思わしくない場合には、ひきつれを解除して皮膚を追加するような手術が必要となることもあります。ひきつれは長年放置していると傷跡から皮膚がんが生じることがあるので注意しましょう。

ケロイド

火傷の後遺症の重大なものとして「ケロイド」が挙げられます。ケロイドは火傷を負った部分がミミズ腫れのように赤く盛り上がることで、専門的には「肥厚性瘢痕」です。

ケロイドの治療で選択されるのは保存的治療です。通常、以下のように処置します。

  • テープやジェルシートなどを用いた圧迫、安静
  • 抗アレルギー薬の投与
  • ステロイド含有テープ、軟膏やヘパリン類似物質の保湿剤などの外用薬
  • ステロイドの局所注射

保存的治療で改善が見られない場合には、手術が行われることもあります。

手術が行われるか否かは「ひきつれの原因となる」「目立つ場所にある」といった要素を合わせて検討します。ケロイドは再発しやすい傾向があり、充分な検討が必要です。

術後に放射線治療を行って再発を予防することも可能です。これも副作用として「周囲の正常皮膚への悪影響」を考慮しなければなりません。

火傷(熱傷)が重症化した場合の皮膚再生医療

火傷(熱傷)が重症化した場合の皮膚再生医療

火傷が重症化したり、III度熱傷であったりする場合には手術による治療を行うほうが良いケースがあります。全身の広範囲に及ぶ熱傷では救命のために手術が必須です。

失われた皮膚を再生する手術としては患者さんの皮膚を採取して移植する「植皮術」が基本ですが、人工皮膚や自家培養表皮が用いられることもあります。

植皮術

壊死した組織を、手術などで切除してきれいにする「デブリードマン」を行い、その後皮膚を移植する手術を行います。

植皮する皮膚は「薄いほうが生着しやすい」という傾向がありますが、それだけ仕上がりが硬くなりがちです。一方、厚めに採取すると生着させることは難しいですが、生着した後は柔らかい良好な結果が得られることが多くあります。

植皮には以下の3つがあります。

  • シート植皮:顔や関節部によく用いられる
  • メッシュ植皮:網の目の隙間から滲出液などが排出されるので生着しやすい
  • パッチ植皮:広範囲を治療するのに有効だが、植皮片の間隔が広い場合上皮化までに時間がかかる

人工皮膚

患者さんの皮膚を採取するのではなく、人工皮膚を用いることもあります。

人工皮膚はウシまたはブタの皮膚から抽出したコラーゲンをスポンジ状に加工したもので、コラーゲンスポンジ層とその表面をシリコン膜で被覆した2層性人工真皮として広く用いられています。

自家培養表皮

非常に広範囲に熱傷を負った場合、移植できるほどに充分な健常な皮膚が残っていないことがあります。こうした場合に、患者さん自身の皮膚の細胞を培養して人工の皮膚を生成して移植する手術方法もあります。

日本ではJ-TEC社の自家培養表皮「ジェイス」は、全身の表面30%以上の面積に火傷を負った患者さんに対して移植することが可能です。

患者さんの皮膚を採取してJ-TEC社に送ると、約3週間後にはシート上の表皮となって戻ってきます。このシートを、皮膚が失われた部位に移植します。

火傷(熱傷)以外の皮膚の再生治療について

火傷(熱傷)以外の皮膚の再生治療について

ここまで火傷の治療としても用いられる皮膚の再生治療について解説してきました。皮膚の再生はこれ以外にも多くの治療分野で活用されています。代表的な治療として主に以下の3つがあります。

  • 白斑の治療
  • 母斑の治療
  • 表皮水疱症の治療

下記ではこれら3つの治療法について解説しましょう。

白斑の治療

白斑は、皮膚にある「メラノサイト」という色素が失われたり減少したりしたことによって、皮膚の色が白くなってしまう疾患です。後天的にメラノサイトが破壊されるケースや、先天的な遺伝子異常で発症するケースもあります。

後天的にメラノサイトが破壊される「尋常性白斑」が発症している患者さんは国内で約15万人いるとされています。先天性の遺伝子異常による白斑の発症率は「2万人から10万人に1人」の割合です。

白斑に対して採用される治療は通常、ステロイドなどの投与や紫外線照射などの治療方法です。難治性の患者さんに対しては火傷の治療と同様に「正常な皮膚を採取して移植する」という治療方法が採られることもあります。

患者さん自身の身体の一部分から小さな皮膚組織を取り出し、細胞を分離・増殖させて皮膚シートを作ります。この点では火傷治療における「自家培養表皮」と同様です。

母斑の治療

母斑の治療

母斑は一般的には肌が赤や青、茶色になる「あざ」と呼ばれる皮膚の異常な色調です。色調だけでなく隆起している「あざ」もありますが、同じく「母斑」です。

母斑は日常生活を送るうえで特に問題になることはありませんが、放置するとわずかな確率ですが「皮膚がん」になることがあります。

母斑の治療にも、火傷の治療と同じような「自家培養表皮」を用いる方法が用いられることがあります。患者さんの表皮を培養してシートにしてあざを隠すように貼るものです。

従来は「真皮がない部分への生着率は不良」という結果に終わっていました。現在では高圧処理によって母斑の細胞を死滅させ、母斑組織で真皮を再生する治療方法が確立しています。

表皮水疱症の治療

表皮水疱症は、皮膚の2つの層である表皮と真皮の接着を担っている分子が「生まれつき少ない」「失われている」ことによって、日常生活で皮膚に加わる力に耐えることができずに表皮が真皮から剥がれやすくなる病気です。

皮膚を構成するタンパクの先天的異常が要因で、全身の皮膚が弱いために少しの刺激で水ぶくれや傷を作ってしまいます。こうした遺伝子異常による病気に対しては根本的な治療方法はほぼ存在しません。

ただ、表皮水疱症の患者さんの皮膚のうち一部には「水ぶくれを作りにくい皮膚」の領域が存在することがあります。

この「健常な部分」の皮膚を採取して自家培養表皮を作成して、水ぶくれを作りやすい皮膚の部分に移植するという技術が開発されています。

皮膚の再生医療を受ける際の注意点

皮膚の再生医療を受ける際の注意点

皮膚の再生医療は、深刻な火傷であるIII度熱傷や白斑、母斑などの治療といった幅広い分野で活用されています。

しかし注意すべき点もいくつかあります。

  • 費用が高額となる恐れ
  • 症状によっては治療を受けられない

主に注意したいのはこの2点です。

費用が高額となる恐れ

皮膚の再生医療は高額になってしまう恐れがあります。

再生医療自体がまだ新しい分野であり、エビテンスを検証する段階のため医療保健が適用されないからです。ただし、保険適用となる治療もあります。

日本国内では重度の熱傷や先天性巨大色素性母斑、表皮水疱症の治療での「自家培養表皮」は保険が適用される治療です。

これらの治療方法は高額療養費制度の対象となります。そのため、ある程度の負担軽減が期待できます。

症状によっては治療を受けられない

最も重度なIII熱傷では、損傷が広範囲にわたると傷口からの滲出液が漏れ出し、また全身の水分が失われて血液中の水分が減少して臓器不全を引き起こす可能性があります。

この時期を乗り切っても、敗血症や肺血栓塞栓症・肺炎・脳梗塞といった合併症をきたすこともあります。

通常は全身の80%から90%を火傷した患者さんを助けることはかなり困難で、今後の医療の課題です。

まとめ

まとめ

火傷もI度熱傷、II度熱傷であれば軟膏や被覆材による治療が一般的で、重度であるIII度熱傷において皮膚の再生治療が行われます。

皮膚の再生医療は「植皮術」のほか、人工皮膚を使ったり自家培養表皮を使ったりすることもあります。

自家培養表皮を活用した再生医療は白斑や母斑、表皮水疱症の治療にも有効です。

皮膚組織の再生医療で他人の皮膚を移植すると「拒絶反応」が起こることがあります。全身の火傷で治療に患者さん自身の皮膚を使えない重度の場合に、拒絶反応を起こさずに他人の皮膚を移植する技術が開発されています。

将来的には他人の皮膚を使って移植する技術の開発も期待されており、「皮膚バンク」に預けられた皮膚を移植することで重度の火傷でも拒否反応なく受け入れるという時代が来るかもしれません。

参考文献

この記事の監修歯科医師
山下 真理子医師(くみこクリニック京都駅前院)

山下 真理子医師(くみこクリニック京都駅前院)

京都府立医科大学医学部医学科 卒業 / のべ10年以上の美容皮膚科勤務を経て、現在はくみこクリニック北山院に勤務している。コロナ以前は、大阪医専にて、医療従事者の教育にも関わった経験がある。

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