AGA(男性型脱毛症)は、頭髪が薄くなる男性特有の病気です。年齢とともに発症すると思われがちですが、遺伝や生活環境、男性ホルモンの影響などによって若い人でも発症の可能性があります。この記事では、AGAの予防に効果のある方法や、医療機関で受けられるAGAの治療法をQ&A方式で解説します。また、AGAの予防となる食生活や生活習慣なども紹介しますので、抜け毛や薄毛が増えてきたと感じている方はぜひ参考にしてみてください。
AGAを予防する方法
- AGAを予防できる内服薬はありますか?
- AGAの進行を抑える内服薬には、デュタステリドとフィナステリドの2種類があります。これらは 5α-還元酵素阻害薬 であり、DHT(ジヒドロテストステロン)の生成を抑えることで、抜け毛の進行を遅らせる効果が期待できます。ただし 「予防薬」としての適応はなく、進行を抑制する薬である点に注意が必要 です。また、メカニズムがデュタステリドとは異なりますが、フィナステリドにも短くなったヘアサイクルを正常化する効果が期待できます。どちらの内服薬が適しているかは、現在の頭皮の状態やAGAの進行具合などによって変わります。処方された薬は医師の指導のとおり正しく服用するようにしましょう。
- 育毛剤の使用はAGAの予防効果が期待できますか?
- 一般的な育毛剤には、髪や頭皮の保湿や血行促進の効果が期待されますが、 AGAの進行を抑える医学的根拠は十分ではありません。一方で、 ミノキシジルを含む外用薬は科学的に効果が認められており、医療機関での治療の一環として推奨されています。また、市販の育毛剤のなかにはミノキシジルなどの有効成分を配合したものもありますが、病院で配合するものよりは成分も少なく、効果も明確ではありません。育毛剤の使用が頭皮に悪影響を及ぼすわけではありませんが、医療機関で処方された薬などと併用した方が効果を実感しやすいでしょう。
- シャンプーを選ぶときの注意点を教えてください
- 市販の石油系シャンプーは、泡立ちがよく洗い上がりがさっぱりはするものの、界面活性剤が髪や地肌を痛めてしまう可能性があります。できれば天然由来のオーガニックシャンプーなどを使用するようにしましょう。髪を洗う際は、地肌を指の腹でマッサージしながら優しく洗うようにします。爪を立てないように気をつけましょう。また、シャンプーの成分が頭皮に残ると炎症などの原因となり、頭皮環境に悪影響を及ぼします。シャンプー後は必ずよくすすぐようにしてください。
- サプリメントのAGA予防効果を教えてください
- AGAに対する サプリメントの直接的な予防効果は確認されていません。しかし、 亜鉛・ビタミンB群・鉄分などの栄養素は健康な髪の成長をサポート するため、 栄養不足の補助としては有用 です。ただし 発毛やAGA進行抑制の効果は期待できません。たんぱく質、亜鉛、ビタミン群などをサプリメントから摂取することで頭皮環境を整える効果が期待できます。ただし、栄養をサプリメントに頼って肝心の食生活が乱れていては意味がありません。サプリメントはあくまでもバランスのよい食生活を補助するものととらえ、上手に摂取するようにしましょう。また、サプリメントには、新たに髪を生えさせる発毛効果はありません。発毛効果を得たい場合は、サプリメントではなく、医療機関での治療をおすすめします。
AGAの治療法
- AGAの進行を抑える治療法を教えてください
- AGAの進行を抑制する治療法は、内服薬、外用薬、再生医療の三つがあります。主な内服薬はプロペシアやフィナステリド錠(プロペシアジェネリック)、ザガーロなどがあり、どれもヘアサイクルを正常に戻し、抜け毛や薄毛の進行を抑える効果が期待できます。その他にも、アメリカで有効性を認められ、世界各国でAGA治療薬として承認を受けているミノキシジルタブレット(ミノタブ)は日本国内でAGA治療薬としては未承認 であり、 副作用(血圧低下・動悸・浮腫など)が報告されているため、医師の指導のもと慎重に使用する必要があります。なお、 外用ミノキシジルは日本でも承認されており、第一選択薬として推奨されています。外用薬には、ミノキシジルの塗り薬タイプなどがあります。外用薬は内服薬よりもやや効果が劣る面があるものの、副作用が少ないというメリットがあります。また、薬物治療以外の治療法として、現在では、再生医療(幹細胞再生治療)という選択肢もあります。なお、再生医療は、厚生労働省への届出が受理された施設において、許可を得た医師によってのみ治療を受けることができます。
- AGAに対して行う幹細胞再生治療とは何ですか?
- 幹細胞再生治療とは、自分の皮下脂肪から幹細胞を取り出して培養したものを頭皮に直接注入し、髪の毛を作る細胞の活性化を促す方法で、新しい治療法として注目されています。ヘアサイクルが乱れると抜け毛や薄毛の原因となりますが、幹細胞を注入することで毛包幹細胞を活性化させ、正常なヘアサイクルへ導くことが期待されます。
- PRP療法はAGAに対してどのような効果をもたらしますか?
- PRPとはPlatelet-Rich Plasma(多血小板血漿)のことで、血液に含まれる血小板を濃縮して活性化させたものです。このなかには成長因子が多く含まれているため、組織を修復したり、炎症を抑えたりする効果があります。PRP療法では 血小板由来の成長因子が毛包に作用する可能性があるものの、AGA治療としての確立された治療法ではありません。また、 治療効果には個人差があり、標準治療(フィナステリド・デュタステリド・ミノキシジル)と比較すると、エビデンスが限定的 です。また、効果のあらわれ方も穏やかで違和感がなく、頭皮自体が元気な皮膚に生まれ変わるために、効果が持続しやすいという特徴もあります。
自宅でできるAGA予防と生活習慣の改善
- どのような食生活がAGAの予防になりますか?
- 食生活の改善は髪の健康を維持するために重要ですが、AGAの進行を直接防ぐことはできません。バランスの取れた食事は 頭皮環境の改善には役立ちますが、医学的にはAGAの進行抑制とは別問題 です。日頃から規則正しい生活を心がけ、バランスのとれた食事を摂るようにしましょう。特に、AGA予防に欠かせない栄養素は、たんぱく質、ビタミン、亜鉛といわれています。髪の毛はケラチンと呼ばれるたんぱく質で構成されているため、良質のたんぱく質を摂ることによって健康的な髪の毛を生成します。たんぱく質は、肉類、魚介類、大豆製品、卵類、乳製品などに多く含まれているので、こうした食材を毎日の食事に上手に取り入れるようにしましょう。また、体内でたんぱく質を作り出すためには、ビタミンや亜鉛が必要です。髪の毛の生成に必要なビタミンは、緑黄色野菜、豚肉、柑橘類、いちごなどに、亜鉛は牡蠣、レバー、ナッツ類などに豊富に含まれています。
- 睡眠とAGAにはどのような関係がありますか?
- 十分な睡眠も、AGA予防の大切なポイントです。成長ホルモンは睡眠中に分泌されますが、 AGAの主因であるDHT(ジヒドロテストステロン)の影響とは異なります。 睡眠不足はストレスの増加を招き、間接的に頭皮環境を悪化させる可能性がありますが、直接的なAGA予防効果はありません。できることなら、この時間の前までには就寝することが望ましいでしょう。また、睡眠時間の確保も重要です。なるべく7〜8時間はとれるように心がけてください。さらに、睡眠の質を上げるためには副交感神経を優位にすることが大切です。寝る前にはスマートフォンやテレビなどの強い光を避けて、軽いストレッチを行うなど、リラックスした状態で眠れるような環境を整えましょう。
- その他に生活習慣で気をつけることがあれば教えてください
- AGAの予防には、過度な飲酒や喫煙を避けることも重要です。飲酒や喫煙は頭皮の血流を悪くするため、頭皮環境の悪化につながります。AGA以外のほかの病気の原因ともなりますので、節度のある適切な飲酒や禁煙をおすすめします。また、過度なストレスもホルモンバランスが崩れる原因となり、頭皮に悪影響を及ぼします。ストレスを溜め込みすぎずに、自分に合った発散方法を見つけるようにしましょう。
編集部まとめ
AGAの対策には市販の育毛剤やサプリメントなどさまざまな種類の商品がありますが、医学的根拠に基づいた治療を受けるのであれば、医療機関を受診することが大切です。AGA治療には、内服薬、外用薬、再生医療などの選択肢がありますので、自分に合った治療法を選ぶようにしましょう。また、治療だけではなく、食生活や生活習慣を見直すことでAGAの予防を行うことも必要です。バランスのよい食事や十分な睡眠をとって、頭皮に優しい生活を送りましょう。
参考文献