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リウマチは完治が難しい?期待される再生医療

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リウマチは完治が難しい病気なのでしょうか? 本記事ではリウマチの治療法で期待されている再生医療について以下の点を中心にご紹介します。

  • リウマチについて
  • 関節リウマチと再生医療の関係
  • 変形性膝関節症の幹細胞治療について

リウマチの治療法で期待されている再生医療について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。 ぜひ最後までお読みください。

リウマチについて

リウマチについて

リウマチとは、関節リウマチのことですか?
リウマチは、関節リウマチを含むリウマチ性疾患の一つです。関節リウマチは、日本国内で約100万人が罹患しており、高齢者だけでなく、子どもから大人まであらゆる世代に影響を及ぼす可能性があります。女性に多い傾向があり、男女比は約1対3ですが、女性がなぜより多いのかはまだはっきりとしていません。遺伝子の影響、女性ホルモンの多さ、または男性ホルモンの少なさが関与する可能性が考えられます。
関節リウマチとはどのような病気ですか?
関節リウマチは、自己免疫疾患の一種で、関節の炎症や軟骨・骨の破壊、機能障害、関節の変形などを引き起こす病気です。特に手足の関節に多く見られ、左右対称に症状が出ることが一般的です。症状としては、関節の腫れや痛み、激しい痛みが特徴で、動かさなくても発生します。また、微熱、倦怠感、食欲不振などの全身症状が伴うこともあります。
早期の主な症状には、朝のこわばり(起床時に手が開きにくい、動かしにくい状態が30分程度続く)、関節の痛みや腫れ(左右対称に現れることが多い)、微熱や倦怠期、食欲不振が含まれます。
関節以外にも、血管、眼、肺などの臓器に影響を及ぼすことがあり、循環器系では虚血、レイノー現象、狭心症、心筋梗塞、肺高血症などのリスクが高まります。眼にはシェーグレン症候群や乾燥性角結膜炎が現れることがあります。肺では、間質性肺炎や胸膜病変、リウマチ結節などが合併することがあります。消化管への影響もあり、アミロイドーシスや虚血性大腸炎などが起こることがあります。
どうして関節リウマチになるのですか?
関節リウマチの原因は、免疫系の異常によって自己の細胞や組織が攻撃される自己免疫疾患であると考えられています。通常、免疫システムは体を外部の細菌やウイルスから守る役割を果たしますが、免疫の異常により自身の細胞や組織を誤って攻撃してしまい、それが関節の炎症、腫れ、痛みとして現れます。継続する炎症は滑膜の腫れを引き起こし、骨や軟骨の破壊につながります。
関節リウマチの発症メカニズムはまだ完全には解明されていませんが、生活習慣、遺伝的要因、感染症などが関連しているとされています。例えば、マイコプラズマ感染が関連している可能性、糖分の多い飲料の摂取がリスクを高める、歯周病患者さんで発症リスクが高まる、シトルリン酸や喫煙が関係しているという場合もあります。この要因が複合的に作用し、関節リウマチを引き起こすと考えられています。

関節リウマチと再生医療の関係

関節リウマチと再生医療の関係

再生医療とは何ですか?
再生医療は、損傷した臓器や組織の修復、または機能回復を目的とした医療技術です。これは、患者さんの自然治癒力を利用し、細胞や人工的な材料を活用して機能障害や不全に陥った生体組織や臓器の再生を図るものです。特に整形外科領域では、患者さん自身の血液や脂肪から抽出した治癒促進成分を使用し、組織の再生を促します。
再生医療は、従来の治療法では対処が困難だった病気やケガへの新しいアプローチを提供し、難病の原因解明や新薬開発にも寄与しています。日本では、この分野の推進のため、関連法律が整備され、安全基準の定める法律も改正されるなど、国を挙げての支援が行われています。2023年4月時点で、厚生労働省の承認を受けた再生医療製品は19種類に限られており、多くが効果や安全性の確認段階にあるため、今後の発展が期待されています。
関節リウマチは完治が難しいのですか?
関節リウマチは現在の医療でも治すことが難しい病気です。しかし、近年新しい薬がたくさん開発されており、薬を継続すれば、かなり多くの人で症状がない状態を維持できるようになりました。この状態を寛解(かんかい)と呼びます。
また、発症1-2年以内に正しい治療を行えば、一旦通院・薬が必要なくなる確率は高くなります。しかし、これは病気の進行や個々の体質によりますので、具体的な治療法や予後については、主治医と相談することをおすすめします。
関節リウマチの治療に再生医療はどう関係しますか?
関節リウマチにおける再生医療の応用は、新たな治療法として期待されています。破壊された関節の元の状態に戻すことは難しいため、再生医療では特に幹細胞を利用した関節機能の再生と細胞の再生に焦点を当てています。ここで重要な役割を担うのがiPS細胞と間葉系幹細胞です。
間葉系幹細胞は、骨芽細胞や軟骨細胞など関節構築に必要な細胞への分化能力を持ち、骨髄や脂肪組織から容易に採取できます。この細胞は関節リウマチにおける炎症作用に対して免疫抑制作用が期待でき、移植拒絶反応の問題を軽減させます。また、炎症性環境下でも関節組織を構成する細胞への分化が可能であり、関節破壊の抑制や炎症の制御に効果を示すことが研究で確認されています。
これまでの研究では、コラーゲン関節炎モデルのラットを用いて、関節再生におけるこれらの幹細胞の効果が確認されており、免疫抑制作用、関節破壊の抑制、関節炎の制御が誘導されることが示されています。このような研究結果は、関節リウマチ治療における再生医療の可能性を示しており、今後の治療法開発に期待が寄せられています。
再生医療なら関節リウマチは治りますか?
再生医療は、新しい細胞や組織を作り出すことで、関節の炎症を鎮めることが期待されています。しかし、リウマチ自体が治るわけではありません。ただ、炎症が落ち着けば関節の痛みが軽減する可能性があるでしょう。
現在、関節リウマチ患者さんへの臨床応用に向けてMSCの移植システムが開発中であり、治療効果の確立に向けた研究が進んでいます。この進展は、関節リウマチの治療において、関節組織の修復・再生を目指す新しい方向性を示しており、MSCの採取組織や関与するサイトカインの明確化が今後の課題となっています。
しかし、活動期の関節リウマチでは、再生医療を検討する前に、まずはリウマチの医師による診療を受け、リウマチの活動性を抑え、できるだけ寛解の状態になることが重要となります。
再生医療の適応を判断するにあたっては、現在使用している治療薬や、これまでの治療歴、血液検査の数値、関節リウマチのタイプなどを把握した上で、詳細な検討が必要となります。具体的な治療法や予後については、主治医と相談することをおすすめします。

変形性膝関節症の幹細胞治療について

変形性膝関節症の幹細胞治療について

関節リウマチと変形性膝関節症はどう関係がありますか?
関節リウマチと変形性膝関節症は、どちらも関節に影響を及ぼす疾患ですが、その原因と進行のメカニズムは異なります。
関節リウマチは、免疫系の異常により自己の関節を攻撃し、炎症を引き起こす病気です。この炎症が繰り返されることで、関節が破壊され、痛みや腫れ、機能の低下を引き起こします。
一方、変形性膝関節症は、関節を構成する軟骨がすり減り、骨同士が直接接触することで痛みや変形が生じる疾患です。
この疾患は別々の病態を持つものの、同時に発症することもあります。例えば、関節リウマチの炎症が繰り返されることで軟骨がすり減り、それが変形性膝関節症を引き起こす可能性があります。
ただし、これらの疾患はそれぞれ異なる治療法が必要であり、具体的な治療法や予後については、主治医と相談することをおすすめします。
変形性膝関節症は再生医療(幹細胞治療)でどのように治療されていますか?
変形性膝関節症の治療には、脂肪組織から抽出した間葉系幹細胞(MSC)を用いた治療があります。この治療法は、間葉系幹細胞が分化能力を持つため、損傷した組織の修復が期待できます。
具体的な治療法としては、これらの細胞をヒアルロン酸注射と同様に患部の関節内に注射するだけで、大きな麻酔も入院も不要です。重症化する前に治療が開始できれば、人工関節置換手術を受けざるを得ない重症化を防ぐことが可能になるかもしれません。
注射後には、関節の熱感や腫れが生じることがありますが、これは幹細胞が組織を修復する過程で生じる自然な反応です。治療にかかる費用は高額ですが、通院に伴う金銭的負担を軽減できる可能性があります。
ただし、注入すればそれだけで組織が修復するわけではありません。組織がきちんと形成されるには「その場所を保護する必要性」を体に伝える必要があります。そのためには、注入後にその部位に負荷をかけるストレッチや運動を行うことが大切です。
なお、再生医療はまだ発展途上の分野であり、治療費用が高額になることが多いことを理解しておくことが重要です。具体的な治療法や適応については、医療機関にご相談ください。

編集部まとめ

編集部まとめ

ここまでリウマチの治療法で期待されている再生医療についてお伝えしてきました。リウマチの治療法で期待されている再生医療の要点をまとめると以下の通りです。

  • リウマチは、関節リウマチを含むリウマチ性疾患の一つ。その中でも関節リウマチは、高齢者だけでなく、子どもでもかかる可能性がある。
  • 関節リウマチにおける再生医療の応用は、新たな治療法として期待されている。
  • 変形性膝関節症の治療には、脂肪組織から抽出した間葉系幹細胞(MSC)を用いた治療がある。

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
甲斐沼 孟医師(上場企業産業医)

甲斐沼 孟医師(上場企業産業医)

平成19年(2007年) 大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部医学科 卒業 平成21年(2009年) 大阪急性期総合医療センター 外科後期臨床研修医 平成22年(2010年) 大阪労災病院 心臓血管外科後期臨床研修医 平成24年(2012年) 国立病院機構大阪医療センター 心臓血管外科医員 平成25年(2013年) 大阪大学医学部附属病院 心臓血管外科非常勤医師 平成26年(2014年) 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医員 令和3年(2021年) 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医長 令和5年(2023年) 上場企業産業医

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