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関節リウマチで手がこわばる?具体的な症状や治療法を解説します

関節リウマチで手がこわばる?具体的な症状や治療法を解説します

関節リウマチという名前を聞いたことがある方は多いと思います。しかし、その具体的な説明までできる方は、そう多くないのではないでしょうか。インフルエンザや生活習慣病などのように、ニュースなどで目にする機会が多い病気ではないため、身近な疾患とはとらえづらいかもしれません。

しかし、関節リウマチは毎年1万人以上の方が発症するといわれている、いつ誰がかかってもおかしくない病気です。また、早期発見ができれば関節の破壊を食い止めることもできます。原因や症状、治療法などを知ることで、発症や進行を予防できるように努めましょう。

関節リウマチとは

関節リウマチとは 関節リウマチは、免疫異常によって起こる病気です。女性に多い病気であり、リウマチ内科や膠原病内科などを標ぼうしているクリニックで、専門的な治療を受けることができます。

病気の概要

関節リウマチは、手や足をはじめとした全身の関節が炎症を起こし、軟骨や骨が破壊されていく病気です。徐々に関節の機能が損なわれていき、ひどくなると関節が変形してしまいます。炎症を起こしている関節に痛みや腫れといった症状が出るだけでなく、発熱や倦怠感、食欲不振など全身症状も現れます。代表的な症状として「朝のこわばり」が知られており、起床してすぐに身体の動かしにくさを感じる場合は、関節リウマチのサインの可能性があります。

メカニズム

関節リウマチは、免疫異常によって起こる病気だと考えられています。そもそも免疫とは、身体に異物が侵入してきた際に、それらを攻撃し排除する役割を担っています。これを一般に「免疫機能」などと呼びますが、この免疫機能が正常に働かない状態が「免疫異常」と呼ばれる状態です。関節リウマチでは、免疫異常により自分自身の細胞や組織を誤って攻撃してしまうことで、関節に炎症が起き、痛みや腫れといった症状が現れます。

発症の原因ときっかけ

関節リウマチの原因は免疫異常だと考えられていますが、すべてが解明されているわけではありません。ただ、過労やストレス、細菌感染、喫煙、出産、けがなどが、発症のきっかけにつながることがわかっています。また、男性と女性では女性のほうが発症する方が多く、特に30代から50代での発症が多いということもわかっています。30代から50代の女性の場合、自分が「関節リウマチかもしれない」とは考えづらいかもしれませんが、こわばりなどの症状を感じた段階で診察を受けておくことが、症状を進行させないためには大切です。

関節リウマチの症状

関節リウマチの症状 関節リウマチには、「関節の痛みや腫れ」「朝のこわばり」をはじめとして、いくつかの症状があります。どのような症状があるかを知っておくことで、兆候が見られた際にもすぐ気づくことができるようになっておきましょう。

関節の症状

前述した「朝のこわばり」は、関節に起こる代表的な症状です。手や足などに起床後のこわばりや動かしにくさを感じる場合は、「一時的なものだろう」と放置するのではなく一度医療機関で診てもらいましょう。また、関節炎や関節水腫が起こることもあります。関節炎は関節が腫れて痛みを持っている状態であり、関節水腫は炎症した関節に液体がたまってしまうことです。

関節水腫になると、関節の周囲が袋状に膨らみます。そのほかには、腱鞘炎や滑液包炎、関節変形も関節リウマチの症状として挙げられます。関節変形は、関節リウマチが進行することで起こる症状です。手足の指が反るように変形したり、外反母趾のような形になったりといった症状が現れます。これらの関節の症状は、手の指の第二関節・付け根、足の指の付け根、手首、肩、ひじ、股関節、ひざ、足首に症状が出やすいことが知られています。

関節以外の症状

関節以外に生じる症状としては、リウマトイド結節、肺障害、悪性関節リウマチ、二次性アミロイドーシスなどがあります。リウマトイド結節は、ひじやひざといった圧迫されやすい部分にできる、硬いしこりのことです。数mmから数cmまで大きさはさまざまですが、基本的に痛みはありません。肺障害はリウマチの合併症として知られており、息切れをはじめとする症状が現れます。

悪性関節リウマチとは、関節リウマチが悪化して血管にも炎症を起こした状態を指します。悪性関節リウマチになると、心筋梗塞や間質性肺炎、腸間膜動脈血栓症などの合併症を伴うリスクが高まります。また、アミロイドというたんぱく質が身体のいたるところにたまる「二次性アミロイドーシス」では、心不全や腎不全のリスクがあります。このように、関節リウマチは関節そのものだけでなく、全身疾患を引き起こすリスクにもつながるため、このような症状が出る前に治療を開始して症状をコントロールすることが大切です。

全身の症状

前述したように、関節リウマチでは発熱や倦怠感、食欲不振といった全身症状が現れることがあります。発熱の場合、37℃台の微熱がよく見られるため、「高熱じゃないから」と放置するのではなく、少しでも違和感がある場合は医師に相談してみましょう。これらのほかには、体重の減少や貧血、目や口の渇き、息切れなども関節リウマチの症状です。

関節リウマチの合併症

関節リウマチの合併症 関節リウマチには、肺障害などの合併症があることをご説明しました。では、具体的にはどのような疾患が関節リウマチの合併症なのでしょうか。

骨粗しょう症

関節リウマチの合併症の中でも、特に罹患する人が多いのが骨粗しょう症です。骨粗しょう症は、代謝バランスが崩れて骨量が減少し、骨がもろくなってしまう病気だということは、知っている人が多いのではないでしょうか。カルシウムやマグネシウムの不足、加齢や過去の骨折歴などが発症のリスクを高める病気であり、特に閉経後の女性に多い病気です。関節リウマチの合併症として多い理由は複数ありますが、その一つが過剰に分泌されたサイトカインによる骨吸収の促進および骨形成の抑制です。

サイトカインは細胞から分泌されるたんぱく質であり、情報伝達の役割を担っています。このサイトカインが、関節の炎症によって過剰に分泌されることで、骨を壊す働きを持つ細胞を活性化させ、骨粗しょう症を進行させると考えられています。また、関節リウマチの治療のために用いるステロイド剤や、痛みによる運動量の減少、ビタミンDの不足なども、骨粗しょう症の悪化の原因となっています。そのため、関節リウマチを発症した場合は、定期的に骨密度検査や血液検査などを受けることで骨粗しょう症の進行予防にも努めることが大切です。

間質性肺炎

間質性肺炎も関節リウマチの合併症として知られており、関節リウマチを患っている方は半数近い割合で間質性肺炎を合併するというデータが出ています。これは、関節リウマチによって間質に炎症が起こり、次第に線維化していくためです。間質性肺炎を合併していないかどうかを確かめるための検査としては、背中から聴診器を当てて息を吸ったときの音を観察する聴診や、肺活量を調べる呼吸機能検査、肺に影がないかなどを調べるCT検査が行われます。肺の線維化が進むと、治療では改善が難しいため、このような検査を定期的に受けることが重要です。

貧血

関節リウマチの合併症として、骨粗しょう症に次いで多いのが「貧血」だといわれています。貧血は、赤血球に含まれるヘモグロビンという物質の量が少なくなり、倦怠感やめまいなどの症状が現れる疾患です。極端なダイエットや生理などによる鉄の不足が、その原因としてよく知られています。関節リウマチの場合には、骨粗しょう症の原因の一つとして説明した「サイトカイン」が、貯蔵鉄の利用障害や消化管での吸収抑制を起こすことで貧血になると考えられています。

身体に蓄えられている鉄をうまく使うことができずに貧血を起こしてしまうのです。そのため、鉄分を補給しても貧血が改善されないことも多く、改善のためには関節リウマチによる炎症を抑えることが不可欠となります。また、貧血が慢性化すると息切れや倦怠感、心臓への負荷につながることもあります。この状態が続くと心不全のリスクも高くなってしまいますので、「たかが貧血」と甘く見ず、適切な治療を受けるようにしましょう。

関節リウマチの治療法

関節リウマチの治療法 では、実際に関節リウマチを発症してしまった場合は、どのような治療を行うのでしょうか。リハビリ、薬物療法、手術という3つの治療法をそれぞれ解説します。

リハビリ

関節リウマチによる動作困難を防ぐためには、早い段階でリハビリを始めておくことが大切です。関節リウマチに対するリハビリとしては、理学療法や作業療法などが行われます。具体的には、関節の可動域を広げるための運動や、階段昇降運動、筋力増強のための運動などです。関節の保護や痛みの緩和、関節変形予防のために、コルセットやサポーターを用いた装具療法を行う場合もあります。また、自宅でできるトレーニング方法の指導なども行われています。

薬物療法

薬物療法では、目的に合わせて非ステロイド性抗炎症薬や副腎皮質ステロイド薬、抗リウマチ薬、生物学的製剤などが処方されます。非ステロイド性抗炎症薬は、痛みや炎症の軽減のために用いられる薬です。関節リウマチの進行抑制作用はないため、抗リウマチ薬の補助として使用されます。副腎皮質ステロイド薬も同様に抗リウマチ薬の補助として使われる薬ですが、作用が出るのが早いという特徴があります。しかし、ステロイドの長期間の使用は骨粗しょう症や糖尿病などを合併しやすくなるというリスクがあるため、ほかの薬の作用が出るまでの一時的な期間に使われることがほとんどです。

抗リウマチ薬は、関節リウマチの薬物療法のメインとなる薬です。複数の種類があり、作用の出方などを考慮して、どの薬を何種類使うかが決定されます。生物学的製剤は、サイトカインの働きを抑える作用がある注射薬です。抗リウマチ薬で改善が見込めない場合に使用されるなど、その作用には期待ができますが、副作用があったり値段が高かったりといったデメリットもあります。リスクを抑えて使用するためには、専門知識を持つ医師に処方してもらうことが大切です。

手術

関節リウマチの症状が、日常生活に支障をきたしはじめている場合は、手術も治療の選択肢となります。また、進行を予防する目的で手術が行われることもあります。代表的な4つの治療方法をご紹介するので参考にしてみてください。

1つ目は、滑膜切除術です。これは炎症による痛みを取り除くことを主な目的として行われる手術であり、ひじや手首、指や足の関節などに対して行われることが多い方法です。

2つ目は人工関節置換術と呼ばれる方法であり、関節の骨や軟骨がすり減っている場合に行う手術です。膝関節や股関節の治療法として、よく選択されます。

3つ目の関節固定術は、関節破壊が著しい場合に行う手術です。関節を固定するため可動性は失われますが、痛みを軽減することが可能です。

4つ目の関節形成術は、関節の形を整えることで機能や見た目を改善させる方法です。関節の形が残っている、初期から中期にかけて行われます。

再生医療を用いた先進的治療法

再生医療を用いた先進的治療法 最後に、関節リウマチ治療において期待が高い、再生医療について説明します。

変形膝関節症治療の応用

ここまでお伝えしてきた治療法は、関節リウマチによる炎症や関節破壊を抑制するためのものであり、壊れてしまった関節機能を再生させるものではありませんでした。そこで期待されているのが、幹細胞治療です。この治療は、自己増殖能力、自己複製能を持つ間葉系幹細胞を分化させて関節を再生することを目的としており、変形性膝関節症に使用されています。そして、それを応用させることで関節リウマチの症状改善にも期待が高まっています。

自家脂肪由来間葉系幹細胞を用いた治療

現在開発中の治療法として、自己の脂肪由来の間葉系幹細胞を使った治療が注目されています。この方法は、患者の自己脂肪から取り出した間葉系幹細胞を体外で培養し増やした後、体内に再投与することで、Treg細胞の増加を促し、炎症を引き起こす細胞と抗炎症細胞のバランスを整えることを目的としています。

これにより、免疫システムを調節し、症状の軽減が期待されます。患者自身の細胞を使用するため、安全性が高いと見込まれていますが、まだ実験段階であり、安全性や有効性に関する確固たるデータは報告されていません。この治療法は、関節リウマチにおける新しいアプローチとして、従来の治療と組み合わせて行われることで、患者の生活の質の向上を目指しています。

まとめ

まとめ 関節リウマチの原因や症状、合併症、治療などについてまとめましたが参考になったでしょうか。関節リウマチが若いうちから発症する病気であり、重篤な合併症を発症する、早期治療が大切な疾患であるということはおわかりいただけたかと思います。症状が進行すると、生活の質を著しく落とす要因にもなりますので、少し違和感を覚えた段階で医療機関を受診するなど早期発見・早期治療に努めましょう。また、発症のきっかけとなる過労やストレス、喫煙などに気をつけることも大切です。

参考文献

この記事の監修歯科医師
甲斐沼 孟医師(上場企業産業医)

甲斐沼 孟医師(上場企業産業医)

平成19年(2007年) 大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部医学科 卒業 平成21年(2009年) 大阪急性期総合医療センター 外科後期臨床研修医 平成22年(2010年) 大阪労災病院 心臓血管外科後期臨床研修医 平成24年(2012年) 国立病院機構大阪医療センター 心臓血管外科医員 平成25年(2013年) 大阪大学医学部附属病院 心臓血管外科非常勤医師 平成26年(2014年) 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医員 令和3年(2021年) 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医長 令和5年(2023年) 上場企業産業医

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