変形性膝関節症という疾患を知っていますか?変形性膝関節症は、歳を重ねるに伴い、ひざに痛みが出る原因の一つで、O脚とも関係があるといわれています。今回は変形性膝関節症とO脚の関係性や治療法、予防法などについて紹介します。疾患の特徴を知って、早めに対処できるようにしておきましょう。
変形性膝関節症とは
まずは、変形性膝関節症について説明します。
- 変形性膝関節症とはどんな病気ですか?
- 膝関節の軟骨がすり減り、炎症を引き起こす疾患です。 原因は老化であることがほとんどですが、肥満などの体型的要因や遺伝的要因もあります。また、外傷をきっかけに変形性膝関節症になる人もいるため、骨折や靱帯損傷、半月板損傷などにも注意が必要です。男性よりも女性の方が罹患数が約4倍多く、年を重ねるごとに罹患率は高まります。
- 変形性膝関節症にはどんな症状がありますか?
- 初期段階では膝関節の腫れや痛みが起こります。 軽度の間は立ち上がりなどの動きはじめに痛みを感じますが、その後しばらくすると痛みが薄れ、普段通り生活できるようになります。しかし症状が進行するにつれ、安静にしているときでも関節まわりが痛んだり、関節が変形して歩行が困難になったりすることがあるので、高齢の場合は、年だから仕方がないと軽視してしまうことがありますが、早めの治療が大切です。
O脚とは
変形性膝関節症とO脚は関係性があるとされています。では、O脚とは正しくはどういった状態のことをいうのでしょうか。O脚について、詳しく説明します。
- どういった状態をO脚というのですか?
- 脚が両側に弯曲した状態のことを指します。 両足のくるぶしを付けてまっすぐに立った際、両膝の間に隙間ができる場合はO脚といえます。O脚にはいくつかの種類があり、原因により生理的O脚、構造的O脚、機能的O脚、病的O脚に分けられます。 通常、2歳くらいまでのこどもは生まれながらにして全員がO脚で、これを生理的O脚とよびます。生理的O脚の場合は、なにも治療をしなくても成長の過程で徐々に改善していきます。 遺伝的な要因でO脚の場合は構造的O脚、普段の生活習慣が原因でO脚になる場合は機能的O脚、靱帯損傷などの外傷や形態異常をきっかけにO脚になるものを病的O脚と呼びます。なお、基本的に、生理的O脚以外は自然には治りません。
- O脚は治療、予防することができますか?
- 生活習慣の改善のほか、整形外科での治療が可能です。 先述したように生理的O脚の場合は自然と改善していくので治療は必要ありません。機能的O脚の場合は、O脚になった要因である姿勢や歩き方を改善したり、脚を組む癖を改めたりすることで改善が期待できます。 構造的O脚や病的なO脚の場合は整形外科的治療が効果的です。また、生理的O脚だと思っていても、左右の形が左右対称じゃない場合やO脚がひどすぎる場合などは、治療が必要なケースがあります。O脚の中には手術を要するものもあるため、異変を感じたら早めに整形外科を受診するようにしましょう。
変形性膝関節症とO脚の関係
ここでは、変形性膝関節症とO脚にはどのような関係があるのかについて紹介します。
- O脚と変形性膝関節症は関係があるのですか?
- O脚になると変形性膝関節症になるリスクが高まるといわれています。 O脚では、本来膝に対してまっすぐにかかるべき体重の負担が、関節の内側のみにかかってしまいます。そのため、膝の外側よりも内側の軟骨の減りが早くなり、変形性膝関節症につながります。
- O脚からほかの疾患に発展することはありますか?
- 足底腱膜炎や外反母趾、腰痛につながることがあります。 O脚の状態だと正しいバランスで動作ができないため、足腰に大きな負担がかかり、慢性的な疾患に悩まされる可能性があります。
変形性膝関節症の治療
ここでは、変形性膝関節症の診断や治療について紹介します。
- 変形性膝関節症はどのように診断するのですか?
- まずは膝の内側を触診し、痛みがあるかどうかを調べます。その後レントゲンやMRIなどの画像診断を行い、正式な診断につなげます。診療科は、整形外科となります。
- 変形性膝関節症はどのような治療を行いますか?
- 症状が軽い場合は、消炎鎮痛剤を服用しながらリハビリテーションを行います。 関節機能改善や可動域を広げることを目的とした運動療法、膝まわりを温める物理療法などが効果的です。場合によっては、足底や装具を装着する場合もあるほか、症状が進行していて歩行困難などを来している場合には、手術を行うこともあります。
変形性膝関節症への新たな治療:再生医療
変形性膝関節症の患者さんで、薬やリハビリテーションによる保存療法で改善が見られない場合、次の選択肢として用意されているのは手術療法です。また近年は、手術療法以外の第3の選択肢として再生医療が注目されています。ここでは、変形性膝関節症への再生医療について紹介します。
- 変形性膝関節症ですが、手術は避けたいです。ほかに効果が期待できる治療はありますか?
- 再生医療を用いた治療を行えることがあります。 患者さん本人の血液からとった組織を利用して治療を行う再生医療は、注射のみで完結する治療なので、手術と比べて体への負担が小さいのが特徴です。日帰りで治療を受けられ、入院が必要ないため、誰でも受けやすい治療です。
- 変形性膝関節症への再生医療での治療にはどのようなものがありますか?
- 幹細胞治療とPRP療法が行われています。 幹細胞治療とは、ほかの細胞に変化することができる幹細胞という細胞を利用した再生医療です。患者さんの脂肪などから幹細胞を摘出し、それを加工したものを膝まわりに注射します。 PRP療法では、患者さんの血液から血小板を多く含むPRPという組織を摘出し、それを幹細胞治療と同様に注射器で関節へ注入します。これらの治療を行うことで膝の痛みの改善や、それに伴う動作範囲の拡大などが期待できます。魅力的な再生医療ですが、現在は自由診療での治療となるため、医療費が高額になるということがネックです。
変形性膝関節症の予防・進行を抑えるために
変形性膝関節症の治療法は多様にありますが、予防したり、重症化を防いだりすることも大切です。ここでは予防としてできることや、進行を食い止めるために行うべきことを紹介します。
- 変形性膝関節症を予防することはできますか?
- トレーニングやストレッチをすることで予防が期待できます。 筋力が衰えると、体重を支える部分が不安定になり、膝関節が負担を受けやすくなってしまうので、膝の痛みを感じる前から筋力トレーニングを行うことで予防しましょう。 大腿四頭筋とよばれる太ももの前にある筋肉を鍛えるために、仰向けに寝転がった状態で脚を上げたり、いすに座った状態で脚を上げキープしたりといったトレーニングを日常に取り入れると良いでしょう。また、ストレッチを行って膝の可動域を狭めないようにすることも大切です。肥満気味の人は膝にさらに負担をかけることになってしまうので、減量を行い、生活習慣を見直しましょう。
- 変形性膝関節症になった場合、日々の生活で気を付けることはありますか?
- 膝に負担をかけない生活をすることが大切です。 ストレッチやトレーニングも過度に行うとかえって症状を悪化させてしまうことがあります。定期的に整形外科の医師や理学療法士、作業療法士と相談し、無理をしない範囲で行動しましょう。痛みを我慢して無理をすると、膝以外の部分を痛めることもあります。年齢を理由に諦めるのではなく、医療機関で治療を受けながら改善を目指しましょう。
まとめ
O脚は、放っておくことで変形性膝関節症という病気につながる可能性があります。そのため、習慣や姿勢の改善で正しい姿勢になおしていくほうがいいでしょう。また、変形性膝関節症は年齢とともに症状が現れますが、正しい治療と生活習慣の改善で進行を食い止めることができるほか、再生医療による治療も可能です。予防できることは意識して、見直すようにしましょう。
参考文献