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ES細胞(embryonic stem cell)が再生医療で注目される理由とは?メリットやデメリットも併せて解説!

ES細胞(embryonic stem cell)が再生医療で注目される理由とは?メリットやデメリットも併せて解説!

ES細胞(胚性幹細胞)は、損傷した組織の修復が可能になることから再生医療の分野で研究が進められています。しかし、ES細胞の使用には倫理的な議論や技術的な課題も存在します。 本記事では細胞の再生医療について以下の点を中心にご紹介します。

  • ES細胞について
  • ES細胞と再生医療の関係について
  • ES細胞とiPS細胞について

細胞の再生医療について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。 ぜひ最後までお読みください。

ES細胞(embryonic stem cell)について

ES細胞(embryonic stem cell)について

ES細胞とはどのような細胞ですか?
ES細胞(胚性幹細胞)は、受精から約一週間経った人間の胚盤胞から取り出される細胞で、特定の条件下での培養によって得られます。
ES細胞は多能性を持ち、さまざまな細胞に分化する能力を持っています。しかし、ES細胞を作製する過程で受精卵を破壊する必要があり、深刻な倫理的議論を引き起こしています。 さらに、ご自身以外のES細胞を利用した場合、免疫拒絶反応が起きるリスクも指摘されています。
ES細胞の作り方を教えてください
不妊治療で余剰となった胚を使用します。胚は、受精後約一週間で発達し、約100個の細胞からなる胚盤胞と呼ばれる段階に達します。胚盤胞の内部にある細胞群から、ES細胞を取り出します。取り出した細胞は特別な培養液のなかで培養されます。細胞は無限に増殖し、さまざまな種類の細胞に分化する能力を維持します。
ES細胞は自身の受精卵からは作れないのですか?
ES細胞(胚性幹細胞)はご自身以外の受精卵から得られるため、ご自身の受精卵からは作れません。ES細胞が特定の段階の胚から取り出される必要があるためで、胚を用意すること自体が技術的にも倫理的にも困難です。

さらに、ES細胞を使用する場合、異なる遺伝的背景を持つ細胞を使用するため、免疫拒絶反応の問題が発生します。この問題を解決するために、iPS細胞(人工多能性幹細胞)が開発されました。iPS細胞は患者さん自身の体細胞からの作製が可能で、拒絶反応のリスクを減少させます。iPS細胞の登場により、個々の患者さんに合わせた再生医療が期待されており、ES細胞の問題点を克服する可能性を持っています。

ES細胞(embryonic stem cell)と再生医療の関係について

ES細胞(embryonic stem cell)と再生医療の関係について

再生医療でES細胞が用いられる場合のメリットを教えてください
ES細胞は多能性により、人体のあらゆる種類の細胞に分化する能力を持っています。このため、損傷した組織や臓器を修復するために、特定の細胞タイプへの分化が期待されています。例えば、心筋梗塞後の心筋細胞の再生や、糖尿病患者さんのためのインスリン産生細胞の提供などが研究されています。

さらに、ES細胞は理論的には無限に増殖する能力を持ち、大量の細胞が必要な治療での資源になる可能性を秘めています。一度に複数の患者さんに対する治療の提供が可能になるかもしれません。

再生医療でES細胞が用いられる場合のデメリットを教えてください
ES細胞はご自身以外の受精卵から得られるため、移植後に患者さんの体が異物と認識し、免疫拒絶反応を引き起こす可能性があります。この問題を解決するためには、長期間にわたる免疫抑制剤の使用が必要となり、その結果、感染症への感受性が増すリスクも生じます。

加えて、ES細胞は無限の増殖能力を持つことから、腫瘍形成の可能性も指摘されています。治療目的で使用した際に予期せぬ細胞増殖が起こり、がん化するリスクがあることを意味します。

さらに、ES細胞の取得には胚を破壊する必要があるため、倫理的な議論が常に伴います。受精卵は潜在的な生命と見なされることから、ES細胞の研究や使用は倫理的な問題に直面し続けています。倫理的な問題は、ES細胞の臨床応用での重要な課題となっています。

再生医療でES細胞の効果が期待できる病気を教えてください
再生医療で用いられるES細胞は、多能性により、さまざまな細胞や組織に分化する能力を持っているため、さまざまな疾患の治療に適用が期待されます。パーキンソン病や脊髄損傷などの神経系疾患、心筋梗塞後の心筋細胞の再生、さらには白血病などの血液疾患治療において、効果的な治療方法として研究されています。

また、肝機能障害の治療においても、ES細胞由来の肝細胞を使用して肝細胞の機能を回復させる試みが行われており、一部では成功例もあります。従来の治療方法では治癒が難しいケースも多く、ES細胞の活用が新たな治療の選択肢となることが期待されています。

ES細胞は再生医療以外の分野でも期待できることはありますか?
ES細胞は再生医療以外にも創薬研究での利用が期待されています。ES細胞は大量のヒト組織細胞を供給する能力があり、新薬の開発過程で有用です。例えば、ES細胞から生成された組織細胞を用いて、新薬候補の毒性スクリーニングを行うことが可能とされています。開発初期段階での毒性評価が迅速かつ効率的に実施でき、不適切な薬剤の早期排除が可能になり、リソースと時間の節約が図れます。このように、ES細胞は医薬品の効果の評価に重要な役割を担うため、創薬研究において重要な資源とされています。

ES細胞(embryonic stem cell)とiPS細胞(induced pluripotent stem cell)について

ES細胞(embryonic stem cell)とiPS細胞(induced pluripotent stem cell)について

ES細胞とiPS細胞の違いを教えてください
ES細胞とiPS細胞は、再生医療において重要な役割を担いますが、起源と応用には違いがあります。ES細胞は受精後の胚盤胞から取り出され、すべての種類の細胞に分化する能力を持つ一方で、倫理的問題や免疫拒絶反応のリスクが伴います。
これに対し、iPS細胞は体の成熟した細胞(例えば皮膚細胞)を遺伝的に”再プログラム”することで作成され、ES細胞と同様の多能性を持ちます。iPS細胞の利点は、患者さん自身の細胞から作製できるため、移植した際の拒絶反応がほとんどないといわれています。個々の患者さんに合わせたカスタマイズされた治療が可能となり、再生医療の成果の向上が期待されています。
ES細胞とiPS細胞の拒絶反応について教えてください
拒絶反応に着目すると、ES細胞とiPS細胞は異なる特性を持ちます。ES細胞はご自身以外の受精卵から作られるため、移植した際に患者さんの免疫系が異物と認識し、拒絶反応が起こるリスクがあります。拒絶反応を避けるためには、免疫抑制剤を長期間使用する必要がありますが、感染症にかかりやすくなるデメリットが伴います。
一方、iPS細胞は患者さん自身の体細胞から作製でき、移植後の拒絶反応が起こりにくいことが特徴です。
ES細胞とiPS細胞の今後の課題を教えてください
ES細胞とiPS細胞はともに再生医療に革命をもたらす可能性がありますが、それぞれに課題があります。ES細胞の主な課題は、倫理的問題と免疫拒絶反応です。ヒトの受精卵の使用による倫理的な懸念や、異なる遺伝的背景を持つ細胞の使用による拒絶反応が挙げられます。
一方、iPS細胞は患者さん自身の細胞から作製するため拒絶反応は少ないですが、細胞の腫瘍化リスクや遺伝子導入の際の癌化リスクが存在します。さらに、iPS細胞の品質の均一性の確保、未分化細胞の除去など、技術的な課題も多く残されています。これらの課題に対する解決策が、今後の医療の進展には不可欠です。

編集部まとめ

編集部まとめ

ここまで細胞の再生医療についてお伝えしてきました。細胞の再生医療の要点をまとめると以下のとおりです。

  • ES細胞(胚性幹細胞)とは、受精から約一週間経った人間の胚盤胞から取り出される細胞
  • ES細胞は再生医療の細胞の分化に役立つが、免疫反応を引き起こす可能性もある
  • ES細胞は受精後の胚盤胞から取り出され、すべての種類の細胞に分化する能力を持つ一方で、iPS細胞(人工多能性幹細胞)は体の成熟した細胞(例えば皮膚細胞)を遺伝的に”再プログラム”することで作成される

ES細胞とiPS細胞の効果と課題をしっかりと理解しておくことが大切です。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
松澤 宗範医師(青山メディカルクリニック院長 慶応義塾大学病院形成外科)

松澤 宗範医師(青山メディカルクリニック院長 慶応義塾大学病院形成外科)

2014年3月 近畿大学医学部医学科卒業 2014年4月 慶應義塾大学病院初期臨床研修医 2016年4月 慶應義塾大学病院形成外科入局 2016年10月 佐野厚生総合病院形成外科 2017年4月 横浜市立市民病院形成外科 2018年4月 埼玉医科総合医療センター形成外科・美容外科 2018年10月 慶應義塾大学病院形成外科助教休職 2019年2月 銀座美容外科クリニック 分院長 2020年5月 青山メディカルクリニック 開業

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