PRP療法(Platelet-Rich Plasma療法)は、医療と美容の世界で注目されている治療法です。
このPRP療法は、美容分野ではしわやたるみの改善・目の下のくまやくぼみの解消・ニキビ跡の修復など、多くの肌の悩みに対する効果が期待されています。
また、こうした効果が期待されながらも、副作用が少ないという点もこの治療方法のメリットの1つです。
しかし、PRP療法は万能ではありません。場合によっては期待した効果が得られなかったり、失敗してしまったりすることもあります。
そこで、本記事ではPRP療法の基本的な知識から美容目的での効果・失敗例やその原因・失敗時の修正方法に至るまで、幅広い情報を提供します。
PRP療法について正しい知識を持ち、リスクについて納得したうえで治療できるように本記事ではお手伝いできれば幸いです。
PRP療法とは?
PRP療法(Platelet-Rich Plasma療法)は、患者さん自身の血液から血小板を濃縮し、特定の部位に注入する再生医療です。
ほとんどの人は怪我をして出血した際に、かさぶたができて傷がいつの間にか治っていたという経験をしているのではないでしょうか。
これは血の中に含まれる血小板に傷んだ組織を修復する作用があるために生じる現象です。
この血小板がもつ傷んだ組織を修復する作用を利用しているのが、PRP療法です。
PRP療法の特徴は、患者さん自身の血小板を使用するため、拒絶反応やアレルギー反応のリスクが低い点にあります。
このPRP療法は関節の痛みの治療・スポーツにおける外傷など形成外科の分野だけでなく、美容においても活用されています。
ただし、このPRP療法は日本においては保険適用ができない自由診療となります。そのため、治療費が高額になりやすい点や医療機関によって価格が違う点には注意が必要です。
例えば、顔全体にPRP療法を施す場合、25万円の費用がかかる医療機関もあれば40万円以上かかる医療機関もあります。
このように、治療費が高額になりやすく、また医療機関によっても金額が異なります。そのため、複数の医療機関の情報を綿密に調べることが重要です。
PRP療法を美容目的で行う場合の効果
PRP療法を美容目的で利用する場合には、以下の効果が期待できるとされています。
- しわの改善
- たるみの改善
- 目の下のくまやくぼみなどの改善
- ニキビ跡の改善
PRP療法を美容目的で行う場合の4つの効果について、ここでは詳しく解説を行いましょう。
しわの改善
PRP療法を美容目的で行う1つ目の効果は、しわの改善です。
血小板由来の成長因子が皮膚の細胞を活性化し、コラーゲンの生成を促進することで、しわの改善が期待できるとされています。
ただし、PRP療法単独では効果がでるのが50%未満とされており、眉間や額などに刻まれた深いしわには特に効果が低いようです。
そのため、日本美容外科学会では、PRP療法を希望する患者さんには弱く推奨される治療法とされています。
こうしたことから、しわを改善させるためには、PRP療法だけでなくほかの治療方法も組み合わせることも検討することをおすすめします。
たるみの改善
PRP療法は、皮膚のたるみを改善する効果があります。PRP療法により、血小板の成長因子が皮膚の弾力性を高め、引き締まった肌を実現することが可能だからです。
特に、加齢や日焼けによる肌のたるみが気になる方にとって、PRP療法は効果的な選択肢となります。
また、治療は自己の血液を使用するため、アレルギーや感染のリスクが非常に低いのも大きなメリットです
たるみの改善もまた日本美容外科学会では、PRP療法を希望する患者さんには弱く推奨される治療法とされています。
また、しわやたるみの改善を目的にPRP療法を行う場合、医療機関は厚生労働省への届け出が必要となっています。
そのため、しわやたるみの改善でPRP治療を検討している場合には、その医療機関が厚生労働省に届け出を出しているかどうかを確認するようにしましょう。
目の下のくまやくぼみなどの改善
目の下のくまやくぼみの改善にもPRP療法が効果的です。
目の下のくまは、目の周りにある眼輪筋が衰えて目の下の脂肪がたるんでしまうことで、影ができて老けて見えしてしまう状態です。
PRP療法を用いることで、血小板中の成分が血行を促進し、皮膚の新陳代謝を活発させることが期待できます。
それによって、目の下の暗い影やくぼみを明るくし、若々しい印象を与えられるようになります。
特に、疲労や睡眠不足などで目の下が暗くなりがちな方にとって、PRP療法は見た目の改善に役立つでしょう。
ニキビ跡の改善
ニキビ跡の改善においても、PRP療法は有効です。
肌の凹みを生じさせているニキビ跡は、皮膚組織がニキビの炎症によって破壊されることで生じています。そのため、自然に回復する可能性は低いとされています。
しかしながら、PRP療法では血小板の働きによって皮膚の再生能力を高め、ニキビ跡や色素沈着を改善させることが可能となるのです。
PRP療法の失敗例
PRP療法は副作用が生じにくく、効果的な治療方法とされています。しかしながら、必ずしもPRP療法がうまくいくとは限りません。
PRP療法を行うことによって、以下のような思わぬ結果になることもあります。
- 思ったような効果が得られなかった
- 効果が出すぎて膨らみすぎてしまった
- しこりのようなものができてしまった
ここでは、これら3つの失敗例について詳しく解説をします。
PRP療法に限らず、治療を受ける際にはリスクについても理解しておくことが重要です。そのため、これらの失敗例があるという点も頭に入れておきましょう。
思ったような効果が得られなかった
PRP療法による失敗例の1つ目は、思ったような効果が得られなかったという事例です。
治療の効果には個人差が大きいため、一部の患者さんでは目に見える改善が少ないか、期待した程度の結果が得られない場合があります。
また、医師の説明不足とそれによって患者さん自身が特別な効果を得られると誤解して、過度な期待を抱いてしまっている場合もあります。
効果が出すぎて膨らみすぎてしまった
PRP療法による失敗例の2つ目は、逆に効果が出すぎて膨らみすぎてしまったという事例です。
PRP療法では、皮膚に血小板を注射し、組織の再生能力を高めます。しかし、この血小板による再生能力の高まりが過剰に生じた場合に、局所的な膨らみが生じる場合があります。
しこりのようなものができてしまった
PRP療法による失敗例の3つ目は、しこりのようなものができてしまう事例です。
PRP療法では、血小板を皮膚に注入することで、再生能力を高めてコラーゲンやヒアルロン酸の生成を促します。
しかし、このコラーゲンやヒアルロン酸が過剰に生成されてしまった際には、しこりのようなものができてしまいます。
通常、PRP療法によるしこりはコラーゲンやヒアルロン酸は時間とともに体内に吸収されていくため、自然と解消されることが多い現象です。
ただし、症状が気になる場合は、担当の医師に相談をするようにしましょう。
PRP療法の失敗の原因は?
PRP療法が失敗してしまう原因には、以下の3つの要因が考えられています。
- 効果の出方に個人差がある
- 注入量が多すぎる
- PRPの濃度が高かった
ここでは、PRP療法が失敗してしまう3つの原因について詳しく解説をします。
効果の出方に個人差があるため
PRP療法が失敗してしまう1つ目の原因は、個人差があるということです。
個人の健康状態・年齢・肌質・生活習慣など多くの要因が影響を及ぼし、思ったような効果が得られないことがあります。
また、PRP療法に用いる血液の中に含まれる血小板の数にも個人差があります。
このように個々人によって状況が異なるため、PRP療法によって必ず効果が得られるというわけではありません。
注入の量が多すぎたため
PRP療法が失敗してしまう2つ目の原因は、注入量が多すぎたということです。
PRP療法で使用される血小板濃縮液の注入量が多すぎると、再生能力が高まりすぎて、局所的な腫れや異常な皮膚の膨張を引き起こす可能性があります。
そのため、適切な量の血小板濃縮液を注入する必要がありますが、人によって適切な量が異なっています。そのため、しばしば注入量が多すぎたというケースが生じてしまうのです。
PRPの濃度が高かったため
PRP療法が失敗してしまう3つ目の原因は、PRPの濃度が高かったためということです。
血小板濃縮液の濃度が高すぎると、注入量が多い場合と同様に、患者さんの再生能力を高めすぎてしまう場合があります。
その結果として、効果が出すぎて膨らんでしまったり、しこりができてしまったりという失敗に繋がってしまうのです。
PRP療法の失敗の修正方法
PRP療法が失敗するかどうかは、その治療を受けてみないと分かりません。そのため、もし失敗してしまったらどうその失敗を取り戻すのかという点も重要です。
PRP療法が失敗してしまった場合の修正方法としては、以下の3つが代表的です。
- ケナコルト注射
- 外科的手術
- 再度PRP療法で治療を行う
ここでは、PRP療法が失敗してしまった際の3つの修正方法について詳しく解説を行います。
ケナコルト注射
PRP療法が失敗してしまった際の1つ目の修正方法は、ケナコルト注射です。ケナコルトはステロイド薬で局所的な炎症を抑えて、腫れを減少させる効果があります。
そのため、PRP療法で膨らみすぎたりしこりができたりした場合には、ケナコルト注射によってその膨らみやしこりを解消させることが期待できます。
ただし、ケナコルト注射はステロイドを注射する治療法であるため、副作用には注意が必要です。
ステロイドを皮膚に注射すると、その周囲の皮膚が菲薄化といわれる老化したような状態になることがあります。
その場合、皮膚が少し圧迫されただけで皮下出血や紫斑を伴いやすくなってしまいかねません。
また、女性の場合、ケナコルト注射を繰り返すと生理不順になってしまう危険性もあります。
そのため、ケナコルト注射を行う場合には、医師の指示に従って慎重に行うことが重要です。
外科的手術
PRP療法が失敗してしまった際の2つ目の修正方法は、外科的手術です。
PRP療法による重大な合併症や不自然な皮膚の変形が発生した場合には、外科的手術による修正が必要になることがあります。
また、PRP療法による効果が見られなかった場合にもフェイスリフトなどの外科的手術によって、しわやたるみなどを改善させることも可能です。
効果が得られなかったケースの場合は再度治療を行う
PRP療法が失敗してしまった際の3つ目の修正方法は、再びPRP療法を行うことです。
PRP療法は1回目で期待されるほどの効果がでなかったとしても、複数回の治療を継続的に行うことで、より高い効果を得られるとされています。
そのため、PRP療法において失敗してしまった際には、再度PRP療法による治療を行う場合があります。
ただし、再治療を行う前に最初の治療で効果が見られなかった原因を医師と十分に検討し、改善策を講じることが重要です。
PRP療法で失敗した場合の対処法
PRP療法で失敗した場合には、医師の診察を受けることが重要です。
PRP療法によって生じる副作用や合併症は一時的なもので時間とともに自然に解消されるものも多いです。そのため、多くの場合はそのまま放置していても問題はありません。
しかし、患者さん自身にはPRP療法によって生じた肌の膨張やしこりが自然に治るものなのかどうか、あるいは治るとしてもどれぐらいの期間で治るのかは分かりません。
そのため、必ず担当の医師に症状等を相談し、判断を仰ぐようにしましょう。
そうすることで、医師が症状に応じて再治療か経過観察か、あるいはその他の治療を行うのかを判断してくれることになります。
もし、担当の医師の診断に不安が生じた場合には、セカンドオピニオンに頼ることも検討しましょう。
まとめ
PRP療法(Platelet-Rich Plasma療法)は、再生医療の一環として、美容目的や医療治療に広く利用されている治療方法です。
この治療法は、患者さん自身の血液から血小板を濃縮し、症状が気になる箇所に注入する治療方法です。それにより、肌の再生・修復などさまざまな美容効果が期待されます。
より具体的には、PRP療法はしわの改善・たるみの緩和・目の下のくまやくぼみの改善・ニキビ跡の修復などに効果的です。
しかし、PRP療法には個人差があり、全ての人に同様の効果が得られるとは限りません。
治療においては、効果が出ない・逆に効果が出すぎてしまう・しこりができるなどの失敗例が報告されています。
これらの問題の原因としては、個人差による効果の出方の違い、注入量やPRPの濃度の誤りが挙げられます。
万が一PRP療法が失敗した場合には、医師による判断を仰ぐことが重要です。決して、自分自身で判断して行動しないようにしましょう。
PRP療法は、その安全性と自然な効果により注目されています。しかし、治療を受ける際には、しっかりと事前に情報収集を行って信頼できる医療機関を選ぶことも重要です。
参考文献