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変形性膝関節症は両膝同時に治療できる?再生医療という選択肢についても紹介

変形性膝関節症は両膝同時に治療できる?再生医療という選択肢についても紹介

変形性膝関節症による膝の痛みは、日常生活やスポーツなどに影響を及ぼします。両膝ともに症状に苦しむ方は、同時に治療ができるのでしょうか。また、治療の選択肢として再生医療があることをご存じですか。
本記事では変形性膝関節症は両膝同時に治療できる?について以下の点を中心にご紹介します。

  • 変形性膝関節症の治療法
  • 変形性膝関節症は両膝同時に治療が行えるのか
  • 変形性膝関節症の再生医療について

変形性膝関節症は両膝同時に治療できる?について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

変形性膝関節症について

変形性膝関節症について

変形性膝関節症とは、膝の関節における軟骨の摩耗が進行することで、関節の機能が低下し、痛みや動きの制限が生じる疾患です。膝の軟骨は、関節の動きを滑らかにし、衝撃を吸収するクッションの役割を果たしています。しかし、軟骨が摩耗すると、関節の隙間が狭くなり、最終的に骨同士が直接接触することで痛みが発生します。

この病気には、一次性変形性膝関節症と二次性変形性膝関節症の二つのタイプがあります。一次性変形性膝関節症は、特に外傷やほかの疾患が原因でなく、主に加齢による自然な軟骨の劣化が原因です。対照的に、二次性変形性膝関節症は、靭帯の損傷や半月板の損傷などの外傷やほかの病気に起因して発症します。

症状としては、膝の曲げ伸ばしが困難になり、なかでも階段の昇降や立ち上がり時に痛みを感じやすくなります。また、膝に水がたまることで腫れが見られ、これがさらに痛みを引き起こすこともあります。症状が進行すると、関節の変形が起こり、膝がO脚やX脚のように変形することもあります。

変形性膝関節症のリスクは、肥満や運動不足による筋力の低下、そして加齢によるものが大きいとされています。体重が増加すると、それが膝に直接的な負担となり、軟骨のすり減りを早めるといわれています。そのため、適度な運動と体重管理が予防策として重要です。

変形性膝関節症のステージ分類

変形性膝関節症のステージ分類

ここでは、変形性膝関節症のステージ分類、診断方法、MRI検査の重要性について、以下に詳しく解説します。

変形性膝関節症のステージ分類

変形性膝関節症のステージを評価する際に用いられるKellgren-Lawrence(ケルグレンローレンス)分類(以下:KL分類)は、レントゲン検査(X線検査)をもとにして、膝関節の変形の進行具合を0~4のグレードに分けています。

グレード0:
初期の段階で、X線上で膝関節に異常が認められない正常な状態を指します。この段階では、膝の関節間に適切な隙間が保たれています。

グレード1:
軽度の変形が始まり、関節の周辺で小さな骨棘が見られることがあります。また、骨自体にも変化が見られることがあり、骨のう胞や骨硬化などが発生する場合があります。

グレード2:
関節の隙間が狭まり始めますが、まだ正常の半分以上の隙間は残っている状態です。この段階で関節の変形が顕著になり、機能的な問題が出始めることもあります。

グレード3:
関節の隙間が正常の半分以下まで狭まり、関節の機能に明確な制限が見られるようになります。このステージでは、痛みや動きの困難さが増し、日常生活に支障をきたすこともあります。

グレード4:
状態が進行した状態で、関節の隙間がほとんどまたはすべてが失われ、骨同士が直接触れ合うようになります。明らかな骨棘の形成が見られ、大腿骨と脛骨の位置関係にも異常が生じることが特徴です。

KL分類は、あくまでX線画像上の評価基準であり、必ずしも患者さんの痛みの程度と一致するとは限りません。そのため、臨床症状やMRI検査などを併用して総合的に判断することが重要です。

ステージの診断方法

前述したKL分類を用いて変形性膝関節症を評価するためには、レントゲン検査が欠かせません。

レントゲン撮影の際には姿勢が重要で、立っている状態(荷重位)で撮影された状態で関節の隙間を正確に確認することが大切です。逆に、寝ている状態(非荷重位)で撮影すると、関節間の隙間が実際よりも広がって見え、誤った診断につながるリスクがあります。

撮影されたレントゲン画像をもとに、大腿骨と脛骨の隙間を詳しく観察し、膝の構造的変化を確認し、グレード1〜グレード4のどの状態にあるのかを見極めます。

MRI検査の重要性

上記で解説したように、KL分類はレントゲン写真をもとに変形性膝関節症の重症度を評価しますが、この方法だけでは病状のすべてを把握することは難しく、軟骨や半月板の損傷などの自覚症状に大きく影響する要素はレントゲンでは確認ができません。そのため、実際には重い痛みを伴う進行状態であっても、レントゲン検査だけでは初期と判断されることがあります。このような誤診を避けるため、MRI検査を組み合わせて使用し、より総合的な診断を行う医療機関が増えています。

MRI検査は、関節軟骨の減少状態や薄くなっている部分、半月板の損傷や変位、さらには関節滑膜の炎症や腫れ、骨の微細な損傷や骨髄浮腫までを詳細に把握できます。骨髄浮腫の発見は、変形性膝関節症の進行が速いことを示唆し、将来的に人工関節置換などの重い手術が必要になる可能性が高まるとされているため、MRI検査を通じて得られる情報は、治療計画を立てる際に医師が考慮すべき重要な要素となります。

変形性膝関節症の治療法

変形性膝関節症の治療法

ここからは、変形性膝関節症の治療法について解説します。

保存的療法

変形性膝関節症の初期から中期にかけての治療には、保存的療法が推奨されており、病状の進行を抑え、患者さんの生活の質を維持することを目的としています。
具体的な治療方法には、運動療法、ヒアルロン酸やステロイドの関節内注射、外用薬や口服薬による薬物療法が含まれます。また、サポーターや中敷きなどの装具療法、温熱療法や電気療法を含む物理療法も効果が期待されています。症状が重くなった場合には、外科的治療も検討されます。

再生医療

変形性膝関節症に対する再生医療は、手術を回避したいと考えている方にとって症状の改善が期待される治療法です。
ここでは、膝関節の治療に実用化されているいくつかの再生医療について解説します。

幹細胞治療

膝の再生医療にはいくつかの方法がありますが、まずは脂肪由来の幹細胞治療について解説します。この方法では、患者さん自身のお腹や太ももなどの脂肪組織から幹細胞を少量採取し、幹細胞を抽出し、膝関節に注入します。幹細胞はさまざまな細胞へ変化するため、損傷した組織の修復や再生を助ける効果が期待されます。

痛みの軽減や日常生活の質の向上が見込まれており、軽度から中等度の症状を持つ患者さんで、手術を避けたい場合の選択肢として検討されることが多いようです。

多血小板血漿(PRP)療法

多血小板血漿(PRP)療法は、変形性膝関節症に対する再生医療の一つです。この治療では、患者さん自身の血液から成長因子を豊富に含むPRPを抽出し、膝の患部に直接注射します。成長因子は組織修復を助け、炎症を抑制する役割を担います。

PRP療法は、軽度の関節変形や十分な軟骨が残っている患者さんにおいて、痛みの緩和や関節機能の改善をもたらすことが期待されています。PRP療法は副作用が少ないとされ、自身の血液を使用するためアレルギーや拒絶反応のリスクも低いといわれています。

次世代のAPS療法

APS療法は、自身の血液を使用し、特殊な処理を施すことで、抗炎症作用や組織修復を助けるタンパク質を濃縮した溶液を作り出します。この溶液を患部に直接注入することにより、従来のPRP療法を超える効果が期待されます。

APS療法の利点は、従来のPRPよりも高い成分を抽出し、より長期間にわたる痛みの軽減と炎症抑制の効果が期待されている点で、中等度の膝関節症においても効果が期待されており、注射後24ヵ月まで症状の改善が確認されています。

この次世代の治療法は、手術を避けたい方や、従来の治療法で満足のいく結果が得られなかった方に選択されています。

再生医療の関連技術・PRP-FD

PRP-FD技術は、PRP療法を応用した治療法です。この技術では、患者さん自身の血液から多血小板血漿を作り、さらにこれをフリーズドライ化して活性化された成長因子を含む製品を作ります。

PRP-FDは主に変形性膝関節症の治療に用いられますが、そのほかにも半月板損傷や肩の炎症、テニス肘などさまざまな関節の疾患治療に応用されています。この技術による注射は、関節内の炎症を抑え、痛みや腫れの軽減をもたらす効果が確認されており、軟骨の修復にも寄与する可能性が示唆されています。

手術

変形性膝関節症が進行している重度の方は、手術による治療が行われます。 主な手術について、以下に解説します。

関節鏡視下手術

関節鏡視下手術は、変形性膝関節症を含むさまざまな関節疾患に対する手術技術です。関節鏡視下手術では、従来の切開手術とは異なり大きな切開を避けて皮膚にわずかな穴を開けることで、患者さんへの負担を軽減します。手術中に関節内に光ファイバーが内蔵された高解像度の小型カメラを挿入することで、関節の内部を詳細に観察し、精密な治療を行います。
手術は全体をモニターで確認しながら行われ、関節の裏側など見えにくい部位の詳細も把握できます。

関節鏡視下手術の利点には、手術後の回復が早く、感染リスクが低い、痛みが少ない、そして手術痕が目立ちにくいメリットもあります。

膝周囲骨切り術

膝周囲骨切り術は、変形性膝関節症によるO脚やX脚の矯正を目的としています。体重が膝の健康な部分に均等に分散するように、膝の変形を正すことを目指しており、一方の膝だけに過度な負担がかかっている場合に効果的が期待できるといわれています。

手術では、膝周りに小さな切開を入れて、膝の負担がかかる向きを調整することで、残っている健全な軟骨に適切に体重が分配されるようになり、膝の機能が改善されます。膝周囲骨切り術は、膝の動きが良好で、深く曲げたり伸ばしたりできる患者さんに選択されます。膝が硬く動かしにくい場合や、軟骨の損傷が進行している場合は、ほかの手術方法が推奨されることもあります。

人工膝関節置換術

人工膝関節置換術は、変形性膝関節症や関節リウマチなどで損傷した膝関節を取り除き、機能的かつ耐久性のある人工関節に置き換える手術です。この手術によって、痛みが軽減され、関節の動きが改善されることで、歩行や日常活動が楽になります。

手術では、主に金属、ポリエチレン、セラミックなどの材料を使用し、膝の大腿骨部、脛骨部、膝蓋骨部をカバーします。これにより、膝関節の滑らかな動きが再現され、自然な膝の機能に近い状態を取り戻します。

手術方法には、全置換術と片側置換術があります。全置換術は膝関節全体を人工関節で置き換える手法で、重度の変形が見られる場合に選択されます。一方、片側置換術は膝の一部分だけが損傷している場合に、その部分のみを置き換える方法です。

人工膝関節置換術は筋力が衰えている場合、術後のリハビリテーションが鍵となります。適切なリハビリを行うことで、手術の効果を活かし、早期に日常生活への復帰を目指します。

変形性膝関節症は両膝同時に治療できるのか

変形性膝関節症は両膝同時に治療できるのか

変形性膝関節症の進行に伴い、両膝の同時治療が必要になることがあります。
人工膝関節置換術を含む手術治療においては、両膝が同時に手術されることもあります。これは、全体の身体バランスを改善し、手術後のリハビリテーションの効率を高めるためです。
両膝同時手術の適用は、患者さんの健康状態や体力に依存します。そのため、80歳以下で、内科的な問題がない方が対象とされることが多い傾向にあります。

また、再生医療では、医療機関によって両膝同時に治療を行う場合と、片膝ずつ治療を行う場合があります。これは、術後の炎症や痛みの管理を考慮して、よりよい治療方針を決定するためです。

変形性膝関節症の再生医療のメリット・デメリット

変形性膝関節症の再生医療のメリット・デメリット

最後に、変形性関節症の再生医療におけるメリットとデメリットを解説します。

メリット

変形性膝関節症に対する再生医療の主なメリットは、以下のとおりです。

  1. 合併症のリスクが低い
    患者さん自身の細胞を使用するため、外部からの物質が原因で起こる拒絶反応やアレルギー反応が少ないとされています。
  2. 手術に比べて侵襲性が低い
    麻酔や大がかりな手術が不要なため、手術が困難な持病を持つ患者さんにも適用しやすい治療法です。
  3. 通院での治療が可能とされている
    日帰りで治療が行われるため日常生活や仕事への影響を抑えられます。
  4. 持続的な改善
    関節内部のダメージに直接アプローチして修復を助けるため、ヒアルロン酸注射や物理療法では得られない持続的な改善が期待できます。これにより、症状が長期間にわたって軽減される可能性があります。

再生医療は、こうした特性により、これまでの治療で十分な効果が得られなかった場合にも新たな選択肢として提供され、患者さんのニーズに応じた柔軟な治療計画が立てられています。

デメリット

変形性膝関節症に対する再生医療の主なデメリットは、以下のとおりです。

  1. 高額な自己負担
    再生医療は保険適用外の自費診療となるため、高額な費用がかかります。
  2. 未知のリスク
    再生医療は新しい治療法であり、長期的な副作用や未知のリスクが把握されていない可能性があります。
  3. 個人差が大きい
    治療効果には個人差が大きく、同じ治療を受けても効果の感じ方や持続期間に差が出ることがあります。
  4. 個人差が大きく、期待する効果が得られない可能性がある
    一部の患者さんには十分な効果が得られない場合があります。
  5. 小さな傷が残る可能性
    脂肪を採取する場合、1cm程度の小さな傷が残ることがあります。

これらの点を考慮し、再生医療を選択する際には、事前の詳細なカウンセリングや検査を通じて、患者さん個々の状況に応じた治療計画を立てることが重要です。

まとめ

まとめ

ここまで変形性膝関節症は両膝同時に治療できる?についてお伝えしてきました。変形性膝関節症は両膝同時に治療できる?の要点をまとめると以下のとおりです。

  • 変形性膝関節症の治療法には、保存的療法、再生医療、手術などがあり、患者さんの状態や希望に応じて選択される
  • 変形性膝関節症は両膝同時に治療が行えるが、患者さんの健康状態を考慮する必要がある
  • 変形性膝関節症の再生医療は、メリットとリスクを十分に理解し、医師と相談のうえで選択することが重要

変形性関節症には、さまざまな治療法があります。両膝同時に治したいという方も、ご自身に合った選択肢を見つけることが大切です。

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
吉川 博昭医師(大阪府内複数医療機関 勤務医)

吉川 博昭医師(大阪府内複数医療機関 勤務医)

大阪府出身。都内医学部を卒業し、医師免許取得後は麻酔科やペインクリニックを専攻し、複数の医療機関で臨床業務に携わってまいりました。記事の執筆や健康に関連した商品の監修には、平易でわかりやすい表現を用い、「健康を通じたハッピーな生活をお手伝いしたい」を日常的にモットーにしています。

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