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再生医療

再生医療の将来性は?再生医療のメリット・デメリットや安全性、課題を解説

再生医療の将来性は?再生医療のメリット・デメリットや安全性、課題を解説

再生医療は、傷ついた臓器や組織を修復・再生し、患者さん自身の細胞を活用して治療する医療分野です。その一方で、安全性やコスト、倫理的な課題も議論の対象となっています。

本記事では再生医療の将来性について以下の点を中心にご紹介します。

  • 再生医療とは
  • 再生医療のメリットやデメリット
  • 再生医療の将来性

再生医療の将来性について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。

再生医療について

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再生医療とは何ですか?
再生医療とは、機能が損なわれた生体組織や臓器に対し、細胞や人工的な材料を利用して、その機能を回復・再生させる治療法です。

これまで有効な治療法がなかった病気や怪我に対し、新たな可能性を提供する先端医療とされています。 さらに、再生医療の技術は、難病の原因解明や新薬の開発などにも応用されています。

日本では、再生医療の普及と発展を目指し、法律や規制の整備が進められています。医療機器や薬品の安全基準を明確にするための法改正や、再生医療を推進するための特別な制度が導入され、国全体で新たな医療技術を支える体制が整えられています。

しかし、2023年現在、厚生労働省の承認を受け、健康保険が適用される再生医療製品はまだ限られており、今後の技術的進展と安全性の確認が課題とされています。

再生医療の適応症例を教えてください
再生医療の適応症例は多岐にわたり、特定の条件下で保険診療として実施される場合や、自由診療として提供されるケースがあります。 以下に健康保険が適用される症例と自由診療での適応例をご紹介します。現在、健康保険が適用される診療では、患者さん自身の組織から採取された細胞を使用した治療が行われることがあります。例えば以下のようなケースが挙げられます。

【皮膚や軟骨の再生】
外傷や病気による損傷を修復するために、患者自身の細胞を培養し、再生を促す治療法

【筋組織の再生】
筋損傷や障害を対象にした治療法

【幹細胞を活用した治療】
間葉系幹細胞(体性幹細胞の一種)を用いた治療法

美容医療や自由診療の分野でも、再生医療が活用されています。 以下が適応例です。

【皮膚の症状の改善】
しわやハリ不足の改善を目的とした治療

【脱毛症の治療】
発毛促進治療

上記のように、健康保険が適用される症例と自由診療での適応例は、それぞれ特徴や目的が異なります。

再生医療で利用される細胞にはどのようなものがありますか?
再生医療では、細胞を利用して損傷した組織や臓器の機能を回復させます。使用される細胞にはさまざまな種類があり、それぞれ特有の役割や特性を持っています。 以下に、再生医療で利用される主な細胞について解説します。

【体細胞】
成熟し、特定の組織や臓器を構成する細胞のことです。これらの細胞は、体内で機能を果たしながら、その組織を維持します。

【幹細胞】
幹細胞は、さまざまな種類の細胞に分化する能力を持ち、組織や臓器を構築する源となる細胞です。幹細胞の”幹”という言葉は、木の幹に例えられ、幹から分岐して枝葉が生まれるように、さまざまな細胞へ分化する特性を表しています。

【多能性幹細胞】
多能性幹細胞は、どのような細胞にも分化できる能力を持つ特別な幹細胞で、以下のような細胞があります。

    1. ES細胞(胚性幹細胞) 受精卵から得られる細胞で、すべての体細胞へ分化可能とされています。無限に増殖する能力を持つ一方、免疫拒絶反応のリスクや倫理的課題が指摘されています。
    2. iPS細胞(人工多能性幹細胞) 体細胞に特定の遺伝子を導入し、未分化な状態に戻した細胞です。ES細胞と同様の多能性を持ちながら、患者さん自身の細胞を使用することで免疫拒絶のリスクを回避できます。また、倫理的問題が少ない点も特徴です。

体性幹細胞は、分化できる細胞の種類が限られているものの、がん化のリスクが低いため、安全性が高く、現在臨床応用が進んでいる幹細胞です。例えば、骨髄から採取される造血幹細胞は、白血病などの治療に用いられるほか、骨や軟骨、脂肪細胞といった特定の細胞に分化する能力を持ち、医療現場で広く活用されています。

再生医療の治療の流れを教えてください
再生医療を受ける際の治療の流れは、事前のカウンセリングからアフターケアまで、患者さん一人ひとりに合わせた丁寧なプロセスで進められます。以下に具体的な手順を説明します。
  1. ご相談・ご予約
    治療は予約制で行われており、電話またはメールでご連絡いただいた後に予約が確定します。初診時には、医師が丁寧にカウンセリングを行い、症状に合わせた治療法をご提案します。 自己脂肪由来幹細胞治療やPRP療法など、さまざまな治療法について詳しく説明を受けられます。また、直近1年以内の関節疾患のMRI画像をお持ちの方は持参するのがおすすめです。
  2. 初診・カウンセリング
    カウンセリングは問診票を記入後、健康状態や症状を詳細に確認し、治療内容や治療期間の目安、料金について説明を受けます。初診・カウンセリングで疑問点を解消し、納得したうえで次のステップに進みましょう。
  3. 治療計画の提案
    MRI画像や健康状態の確認をもとに、患者さんに合わせた治療計画を立案します。治療内容に加え、費用や治療のスケジュールについても詳細に説明を受けられます。
  4. 再生医療の開始
    【自己脂肪由来幹細胞治療の場合】
    血液検査を行い、感染症などの有無を確認します。少量の脂肪細胞(米粒2~3つ分程度)を採取し、CPC(細胞加工施設)で1ヶ月程かけて幹細胞を培養します。培養された幹細胞を点滴または注射器で投与します。
    【PRP療法の場合】
    10~20ccの血液を採取し、専用の遠心分離器で血漿成分を抽出します(30分程)。 抽出された血漿成分を治療部位に1~3cc注射します。この治療法は採取から投与までが当日中に完了します。
  5. 経過観察とフォローアップ
    治療後、効果が徐々に現れるまで数日〜数週間かかるとされています。治療後の注意事項を説明を受けられ、万が一不安があればいつでも相談が可能とされています。経過観察を通じて治療の進捗を確認し、必要に応じてフォローアップが行われます。

再生医療のメリット・デメリット

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再生医療のメリットは何ですか?
再生医療のメリットを以下で解説します。
  1. 体への負担が少ない 患者さん自身の細胞を活用するため、副作用のリスクが低く、薬物療法や外科手術に伴う合併症の心配が少ないとされています。また、細胞採取時にも大きな傷を伴わず、出血や感染、痛みといった負担を抑えられる治療法です。
  2. 難治性疾患への可能性 従来の治療では難しかった病気や慢性疾患の根本的な治療が期待できます。例えば、細胞の老化が原因の慢性疾患や、腎臓・心臓などの臓器に対する再生が可能になる未来が期待されています。
  3. 脳卒中の再発予防 特に脳卒中の治療において、再生医療が新たな希望をもたらしています。一度損傷した脳細胞はもとに戻らないとされていましたが、幹細胞の投与によって脳の機能を部分的に回復させ、再発リスクを減少させる効果が確認されています。
再生医療にデメリットはあるのでしょうか?
再生医療のデメリットを以下で解説します。
  1. 効果が保証されない 再生医療の効果には個人差があり、すべての患者さんが期待どおりの結果を得られるわけではありません。体質や病状により、治療効果を十分に実感できない場合や、効果が現れるまでに時間がかかるケースもあります。
  2. 経済的負担が大きい 現在、再生医療は自由診療として提供されることが多いとされ、保険適用外のため治療費が高額になりがちです。このため、治療を希望しても経済的理由で受けられない方がいるのが現状です。

再生医療の将来性

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再生医療は安全なのでしょうか?
再生医療は、使用する細胞の種類や技術に応じて以下のようなリスクの分類が行われています。
  • 第1種再生医療など(高リスク)
  • 第2種再生医療など(中リスク)
  • 第3種再生医療など(低リスク)

上記の厳格な法制度や審査体制のおかげで、再生医療は安全性が十分に考慮された上で提供されています。

再生医療の課題を教えてください
現在の再生医療が直面している課題には、大きく二つのポイントが挙げられます。まず、幹細胞を目的とする各種細胞に分化させるプロセスには、高いコストがかかるという問題があります。

二つ目は、再生医療を実現するためには、専門知識やスキルを持つ人材の育成が不可欠であることです。この分野の研究や治療を進めるには、生物学や医学だけでなく、化学や工学の知識も求められるため、幅広い分野での高度な教育体制が必要です。

再生医療の将来性や期待できることは何ですか?
社会の高齢化が進むなかで、慢性疾患や重篤な病気に苦しむ患者さんが増加しており、その結果、再生医療への需要がますます高まっています。
そのため、再生医療技術の開発に取り組む企業や研究機関への期待が拡大しており、市場全体の規模も年々増大している状況です。

編集部まとめ

編集部まとめ

ここまで再生医療の将来性についてお伝えしてきました。再生医療の将来性の要点をまとめると以下のとおりです。

  • 再生医療とは、機能が損なわれた生体組織や臓器に対し、細胞や人工的な材料を利用して、その機能を回復・再生させる治療法のことである
  • 再生医療のメリットは体への負担が少ないことや難治性疾患への可能性があることである。デメリットは効果が保証されないことや費用が高いことが挙げられる
  • 高齢化と慢性疾患の患者さんの増加に伴い、再生医療の需要が拡大している。研究開発が進み、市場規模も成長しており、社会的期待が高まっている

再生医療は安全性や倫理的課題、普及に向けたコスト削減など、まだ克服すべき問題も少なくありません。しかしさまざまな課題を乗り越えることで、より多くの患者さんに希望を届ける未来が実現するでしょう。

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
松澤 宗範医師(青山メディカルクリニック院長 慶応義塾大学病院形成外科)

松澤 宗範医師(青山メディカルクリニック院長 慶応義塾大学病院形成外科)

2014年3月 近畿大学医学部医学科卒業 2014年4月 慶應義塾大学病院初期臨床研修医 2016年4月 慶應義塾大学病院形成外科入局 2016年10月 佐野厚生総合病院形成外科 2017年4月 横浜市立市民病院形成外科 2018年4月 埼玉医科総合医療センター形成外科・美容外科 2018年10月 慶應義塾大学病院形成外科助教休職 2019年2月 銀座美容外科クリニック 分院長 2020年5月 青山メディカルクリニック 開業

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