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変形性膝関節症は若い人でも発症する?変形性膝関節症の原因と気になる症状を解説

変形性膝関節症は若い人でも発症する?変形性膝関節症の原因と気になる症状を解説

変形性膝関節症というと、中高年世代が多く悩む代表的な病気として知られています。加齢とともに患者数が増加するこの病気には年齢が大きく関わっていますが、加齢だけが原因ではないともいわれています。

原因は膝の使いすぎで、若くとも変形性膝関節症を発症することもあるからです。特にスポーツなどで膝に負荷をかけていた場合には要注意です。年齢に関係なく変形性膝関節症についての理解を深め有効な治療に結びつけましょう。

変形性膝関節症の概要

変形性膝関節症の概要 変形性膝関節症とはいったいどのようなものでしょうか?

その原因や症状、気になる発症の年齢、さまざまな治療方法、また各治療のメリットや安全性などの疑問にお答えします。

変形性膝関節症について教えてください
変形性膝関節症とは、関節でクッションの役割をしている軟骨がすり減って痛みが生じる疾患です。軟骨がすり減ることにより、膝関節内の骨が変形していきます。それが神経を刺激して痛みを感知するのです。また、痛みの原因としてもう一つ考えられているのは炎症性の痛みです。軟骨が削られると細かい破片が関節内に散らばり、これが関節液を作り出している部分に付着して炎症を起こし、周辺神経を刺激し痛むこともあります。さらに進行すると軟骨がなくなり、骨同士が直接ぶつかり合うため、激しい痛みを引き起こすのです。
変形性膝関節症はどのような原因で起こりますか?
変形性膝関節症の原因は、ほかの病気やケガがもとで発症する二次性である場合もありますが、ほとんどは直接的な原因が明らかではない一次性です。一次性の変形性膝関節症で研究されているのは、たんぱく分解酵素、一酸化窒素が軟骨の破壊に関与していることや、遺伝子との関係ですが、完全な原因究明にはいたっていないのが現状です。しかし、関節に過度なストレスがかかれば、軟骨が傷むのは明らかで、肥満、重度のO脚やX脚、スポーツなどによる膝への過剰な負荷は発症への要因となります。
若い人でも変形性膝関節症になる可能性はありますか?
20代などの若い世代でも変形性膝関節症を発症する場合はあります。若年層での発症の原因はおもに半月板や靭帯(じんたい)のトラブルで、膝の使いすぎによる筋肉や腱(けん)、靭帯などに炎症が起こる靭帯炎や筋炎になることから発症します。また、接触プレーが少なくないサッカーやラグビーなどで受傷し、靭帯損傷や半月板損傷が引き金になったりもします。これらの炎症が慢性化し、症状が悪化、進行することで変形性膝関節症になる可能性があるのです。さらに肥満やO脚、X脚も膝への負担が考えられます。若くても膝への負担を大きくかけ続ければ、軟骨はすり減り変形性膝関節症を発症することを知っておいてください。

変形性膝関節症の診断と治療

変形性膝関節症の診断と治療 変形性膝関節症の疑いがあれば、まずは受診して診断を受けるようにしたいものです。しかし、受診といってもどのような病院でどのような治療を受けられるのかを知りたいところです。

変形性膝関節症の診断は何科を受診しますか?
一般的には整形外科を受診するとよいでしょう。ただし、ほかの病気が膝の痛みの原因であることがわかれば、他科の紹介を受けることもあります。例えば、膝の痛みは関節リウマチなどが起因することもあるので、その場合は、リウマチ科や膠原病内科などの紹介を受けることもあります。
変形性膝関節症の治療方法について教えてください。
変形性膝関節症の治療方法には大きく分けて2種類あるといわれています。一つは手術をしないで症状を緩和させる保存療法、もう一つは手術による手術療法です。

ここでは保存療法について説明します。保存療法とは、運動によって機能障害の改善や回復を図る運動療法と、炎症や痛みの緩和を内服薬や外用薬で行う薬物療法のことです。運動療法は筋肉をほぐし、血行の促進や筋力の向上、運動機能の回復を目的とします。医師や理学療法士と相談し自宅で行える手軽な治療です。また、薬物療法では消炎鎮痛剤や抗炎症剤、ヒアルロン酸などが処方されます。

なお、これらの治療はあくまでも対症療法として機能改善や痛みの緩和が目的です。これまでは、効果が持続しなければ手術療法の検討が一般的でしたが、近年では再生医療でも変形性膝関節症の治療が実用化されています。

変形性膝関節症に用いることができる再生医療はありますか?
前述のとおり、保存療法は対症療法ですので効果には限度があり、痛みや症状に耐えられなくなったら手術療法へという方法が順当でした。しかし、手術はできれば避けたいという方も少なくありません。こうした方々に一定の成果を上げている治療が再生医療です。再生医療には、さまざまな方法が実用化されていますが、変形性膝関節症の治療にはPRP療法や幹細胞治療などがあります。

変形性膝関節症のPRP療法について

PRP療法とは自己治癒力を利用した治療です。指を切ったとき、傷がふさがり、かさぶたができ、やがて傷が治るように、血液中の血小板のなかには傷んだ組織を治そうとする自然治癒力があります。この自然治癒力を利用した治療がPRP療法です。PRPとは多血小板血漿(しょう)のことで、自身の血液を遠心分離機にかけた後の血小板を多く含む血漿のことです。

PRP療法とはどのような療法か教えてください。
自身の血液を少量採取し、遠心分離機にかけ、血小板が豊富に含まれる多血小板血漿だけを抽出します。そのPRPを膝関節内に注射するだけの治療で、入院や手術をしなくても治療ができます。自分自身が持っている潜在的な修復力を使ったしくみです。

治療にあたっては、安全性が担保されている医療機関を選ぶことが大切です。厚生労働省に再生医療等提供計画書と特定細胞加工物製造届が提出され、それが受理された医療機関であることを確認しましょう。

PRP療法はどのような効果が期待できますか?
PRPは組織の修復を促したり、関節の炎症を抑制したりする効果が期待できます。薬物療法で痛み止めの内服薬やヒアルロン酸注射での効果がなくなってきた方には、PRP療法により痛みがとれる効果が期待できます。なにより、自分の血液を使った治療のため、副作用のリスクがとても少ないことが、この治療が広く支持されている理由の一つです。
PRP療法のデメリットがあれば教えてください。
PRP療法では、通常3~4週間の間隔で3回のPRP療法を1クールとし、治療開始から半年後に所見の評価をする、というように治療期間が長期になることが否めません。

また、日本ではまだ保険診療ではなく、自由診療となるため費用はかさみます。加えて、医療保険も先進医療にも適用されず、高額医療費制度による補助の対象にもなっていないので、費用面でのデメリットは大きいのではないでしょうか。

変形性膝関節症の幹細胞治療について

幹細胞治療とは体内のいろいろな細胞から幹細胞を採取し、そこから抽出した幹細胞を患部に注射する方法です。幹細胞がほかの細胞に変化する特性を利用して再生医療への転用が実用化されています。現在手軽に採取できると注目されているのが、脂肪細胞に含まれる幹細胞、つまり脂肪由来幹細胞です。変形性膝関節症の再生医療では、この脂肪由来幹細胞を使います。

幹細胞療法とはどのような療法なのかを教えてください。
まず、自身のお腹や太ももから脂肪細胞を採取します。脂肪由来幹細胞を使う治療では、幹細胞を培養する場合と培養しない場合がありますが、どちらを選択するかは医療機関で決められます。培養する場合は細胞加工機関で脂肪から幹細胞のみを取り出して培養し、6週間後に膝の関節内に注入します。
幹細胞治療はどのような効果が期待できますか?
幹細胞には、抗炎症、鎮痛効果のある物質を作り出す能力があるといわれており、鎮痛効果については論文発表されています。データからは幹細胞の注入後、膝の痛みの度合いを示すスコアが徐々に減少していくことがわかり、膝関節内での有効性が示されました。また、痛みの緩和効果だけではなく、膝軟骨の厚みが増した例も論文で報告されていることから、幹細胞の秘めた力を示唆するとの見方もあり、更なる研究に期待がかかります。
幹細胞治療のデメリットがあれば教えてください。
幹細胞治療は自身の細胞を使った治療なので、理論上は拒絶反応などのリスクは低いと考えられます。しかし医療行為である以上、リスクがないといいきれないのも事実です。脂肪由来幹細胞の採取時には、血中に脂肪が混入して血管がつまる脂肪塞栓症の危険や、感染や神経、血管の損傷リスクも可能性としては考えられます。また、人によって効果に差があり、費用もPRP療法と同様に自由診療であるため高価になることから、費用対効果としてデメリットとなる場合もあるようです。

編集部まとめ

変形性膝関節症は、膝に負荷をかけ続けることで膝軟骨がすり減り痛みが生じる病気です。老化も原因の一つではありますが、若い人でもスポーツや肥満などが原因で膝に大きな負荷をかけることもありえます。しかし、現在は幅広い治療法があるため、早めの受診で治療の選択肢を有効に使いましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
松繁 治医師(新東京病院)

松繁 治医師(新東京病院)

岡山大学医学部卒業 / 現在は新東京病院勤務 / 専門は整形外科、脊椎外科

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