薄毛に悩んでいる方は少なくないですが、どの診療科を受診すればいいのか、どの治療がいいのか分からないということも少なくありません。薄毛とAGA（男性型脱毛症）の違いや、それぞれの治療法についても理解が必要です。この記事では、薄毛の主な原因から治療法、さらに再生医療による治療について詳しく解説します。 薄毛に適した診療科の選び方も紹介しているので、薄毛に悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
薄毛の主な原因
薄毛の原因は多岐にわたりますが、大きく分けると生活習慣や環境の要因、ホルモンバランスの乱れ、遺伝的要因が挙げられます。ここでは、それぞれの要因がどのように薄毛を引き起こすのかを詳しく見ていきましょう。
生活習慣や環境の要因
現代社会において、ストレス、食生活の乱れ、睡眠不足など、生活習慣や環境が薄毛を引き起こす主な原因となっています。例えば、頭皮にはたくさんの毛細血管がありますが、過度のストレスは血行不良を招き、頭皮への血流が減少することで髪の成長が妨げられます。また、バランスの悪い食事は、髪の健康に必要な栄養素が不足する原因です。タバコやアルコールの過剰摂取も、髪に悪影響を与えることが知られています。さらに、頭皮環境の悪化も見逃せない要因です。シャンプーやワックスなどのヘアケア剤、紫外線などの外的要因によって、薄毛が進行することがあります。
ホルモンバランスの乱れ
ホルモンバランスの乱れは、AGAの主な原因のひとつであるといわれており、特に男性に大きな影響を与えます。男性ホルモンの一種であるテストステロンは、体内の還元酵素5αリダクターゼと結びつくことによってDHT（ジヒドロテストステロン）に変換されます。このDHTが前頭部や頭頂部の男性ホルモン受容体と結びつくことで、毛の成長サイクルに悪影響を及ぼし、薄毛を引き起こすのです。
遺伝的要因
遺伝的要因も、薄毛の大きな原因です。家族に薄毛の方がいる場合、その傾向が遺伝します。遺伝による薄毛は、特にAGAに関連しており、若年層から発症することもあるのです。遺伝的要因の予防は難しいですが、早期発見と適切な治療で進行を遅らせることが可能です。
一般的な脱毛症とAGA（男性型脱毛症）との違い
薄毛とAGAは同じ脱毛症状を指しますが、原因や進行の仕方が異なります。ここでは、薄毛とAGAの違いを明確にし、見分け方やセルフチェックの方法について解説します。自分の脱毛症状がどのタイプに当てはまるのか、参考にしてください。
AGA以外の脱毛症とAGA（男性型脱毛症）の見分け方
薄毛は全体的に髪の密度が減少する症状を指しますが、AGAは特に男性に多く見られる脱毛症の一種です。AGAは遺伝的な要因や男性ホルモンが関わっている説が有力で、主に頭頂部や前頭部の髪が薄くなるのが特徴です。AGAが原因で抜ける毛髪は、通常より細くて短いです。これには成長期・退行期・休止期という、毛髪の成長に関わるヘアサイクルが関係しています。AGAの場合、このヘアサイクルが乱れて成長期が短くなるため、毛髪が細く短くなります。もし、抜けた髪が通常より細く短いと感じる場合は、AGAの可能性があります。一方、薄毛はストレスや栄養不足などの一時的な要因でも起こり、頭皮全体に均等に影響が現れる傾向があります。見分ける際には、脱毛のパターンと進行速度、抜けた毛髪が重要なポイントとなります。
セルフチェックの方法
セルフチェックとして、まず鏡を使って頭頂部や前頭部の髪の密度を観察する方法が有効です。特に髪が薄くなっている部分がないかを確認してください。また、手で髪を引っ張ってみて、抜け毛の量や根元の状態を確認することも役立ちます。親族に薄毛の方がいるのか、家族歴を調べることで遺伝的な要因があるかどうかの確認をすることが可能です。 髪が細くて短い毛が抜けている、生え際が後退している、頭皮のかゆみやべたつきが気になる場合はAGAが疑われ、生活習慣の乱れによって薄毛の進行が進むこともあります。
薄毛に対する治療法
薄毛に対する治療法にはさまざまな選択肢がありますが、どの治療法が自分に適切か分からず、悩む方も少なくありません。かつては薄毛の治療は難しいとされていましたが、現在では薬を用いた治療から、レーザーや超音波による治療、植毛、再生医療まで、さまざまな方法があります。ここでは、一般的な治療法から新しいの再生医療による治療法まで詳しく紹介します。
投薬治療
投薬治療の代表的な薬剤は、フィナステリドやミノキシジルといった、主にAGAの治療薬です。フィナステリドは、AGAの原因となるDHTの生成を抑制する効果があり、ミノキシジルは血行を促進し、毛母細胞の活性化を促す効果があります。
投薬治療は、効果が高い反面、副作用のリスクも伴います。フィナステリドは性機能障害や肝機能障害などの副作用が報告されており、ミノキシジルも頭皮のかゆみや赤みなどの副作用が生じることがあるのです。そのため、医師と相談しながら、副作用を注意深く監視しつつ治療を進めることが重要です。
レーザーや超音波による治療
レーザーや超音波を用いた治療は、近年注目を集めている新しいアプローチです。低出力レーザー治療（LLLT）は、特定の波長のレーザー光を頭皮に照射することで血行を改善し、毛根の細胞を刺激して発毛を促進します。レーザー治療は痛みや副作用もないので、薬での治療が難しい方も受けられます。1回の施術は15〜30分程度で完了し、一部の低出力レーザー装置は家庭用としても販売されているため、クリニックに通うことなく自宅でのケアが可能です。
また、超音波治療は非接触振動圧刺激とも呼ばれ、高周波の音波を利用して毛根に振動を与えて細胞を活性化させます。この振動により毛根の血流が改善され、栄養供給が増加し、毛髪の成長が促進されるのです。超音波は薬剤の浸透を助ける効果もあり、薬剤を併用することでより高い治療効果が期待できます。1回の施術は20〜30分程度で完了し、痛みや副作用もないためリスクの少ない治療法といえます。
植毛
植毛は、患者さん自身の健康な毛根を薄毛部分に移植する治療法です。自分の髪を使用するため、自然な見た目と長期的な効果が期待できます。FUE（Follicular Unit Extraction）やFUT（Follicular Unit Transplantation）など、さまざまな技術がありますが、医師とのカウンセリングで適切な方法を選ぶことが重要です。
FUEは、毛包をひとつずつ個別に採取し、薄毛部分に移植する方法です。この手法のメリットは、ドナー部位に線状の傷跡が残らないことです。FUEは精密な技術を要するため、手術時間が長くなる傾向がありますが、回復が早く、自然な仕上がりを求める方に適しています。
FUTは、頭皮の帯状の部分を切り取ってから、毛包単位に分割し、薄毛部分に移植する方法です。この手法では一度にたくさんの毛包を移植できるため、広範囲の薄毛に対して効果的です。ただし、ドナー部位には線状の傷跡が残ることがあるため、短髪にした際に目立つ可能性があります。FUTは短時間で大量の毛包を移植できるため、特に広範囲の薄毛に悩む方にとって有効です。
再生医療
再生医療は新しい技術です。幹細胞やPRP（Platelet Rich Plasma）を用いて、毛根の再生を促進します。幹細胞治療では、患者さん自身の幹細胞を抽出し、髪の成長をサポートする成分を注入します。PRP療法では、患者さんの血液から抽出した成分を用いて、毛根の再生を促進するのです。これらの治療法は、今後ますます注目されることが予想されます。
薄毛に適した診療科の選び方
薄毛の治療を受ける際には、適切な診療科を選ぶことが重要です。皮膚科や専門クリニック、内科との連携など、各診療科にはそれぞれの特徴があります。ここでは、自分の症状に適した診療科を選ぶためのポイントを解説します。
皮膚科
皮膚科は、髪の毛や頭皮に関する病気を扱っており、薄毛の診断と治療を行う基本的な診療科です。薄毛に関する初めての相談先として適切です。
皮膚科では、薄毛の原因を特定し、適切な治療法を提案します。特に、薄毛の原因が皮膚や毛根に関する場合、皮膚科の専門知識が不可欠です。皮膚科の受診が特に推奨されるのは、薄毛に加えて頭皮の湿疹やかゆみがある場合や、AGAで見られる前頭部や頭頂部以外の薄毛がある場合です。AGA以外の薄毛かどうかをまず調べてから治療を検討したい方や、頭皮以外の皮膚の症状も相談したい方は、皮膚科を受診しましょう。初期段階での診断と治療が重要なため、薄毛が気になり始めたら早めの受診がおすすめです。
専門クリニック
薄毛やAGA治療に特化した専門クリニックでは、新しい治療法や技術を提供しています。これらのクリニックでは、薄毛治療に関する豊富な経験と知識を持つ医師が診療を行い、個々の患者さんに適切な治療プランを提案します。専門クリニックでは、薬物療法、レーザー治療、植毛手術など、さまざまな治療の選択が可能です。特に再生医療技術を取り入れた先進的な治療も多数用意されており、新しい治療を希望する方には適切です。
さらに、ほどんどのAGA専門クリニックではオンライン診療に対応しており、自宅からでも手軽に相談や受診ができます。多忙や遠方に住んでいる場合でも、スムーズな治療が受けられます。
内科との連携
薄毛の原因がホルモンバランスの乱れや全身の健康状態に関係している場合、内科との連携が重要です。内科医は、薄毛の原因となる基礎疾患やホルモン異常を診断し、必要な治療を行います。特に、甲状腺疾患や糖尿病などの全身疾患が薄毛の原因となっている場合には、内科医との連携が不可欠です。内科と皮膚科、専門クリニックの連携によって、包括的なアプローチが可能となり、自分に合った効果的な治療を受けることができます。
再生医療による薄毛治療とは
再生医療は、近年注目を集める先進的な薄毛治療法です。幹細胞治療やPRP療法など、再生医療技術を利用した治療法が開発され、従来の治療法とは一線を画す効果が期待されています。ここでは、各治療法の概要と今後の展望や研究について詳しく解説します。
幹細胞治療
幹細胞治療は、自分の皮下脂肪から採取した幹細胞を利用して、毛髪の再生を促進する治療法です。幹細胞は再生能力が高く、損傷した組織の修復や再生を助けるため、薄毛治療においても効果が期待されています。薄毛の原因のひとつとして、髪の成長を担う毛包幹細胞が休眠状態にあることが考えられます。治療の過程では、自身の脂肪から幹細胞を採取し、特殊な処理をして頭皮に注入するのです。幹細胞は、毛母細胞を活性化させ、ヘアサイクルを整えます。この治療法は、特に進行した薄毛や、ほかの治療で効果が得られなかった場合に有効です。
PRP療法
PRP（多血小板血漿）療法は、自分の血液から得られる血小板を利用して毛髪の成長を促進する治療法です。血小板には成長因子が豊富に含まれており、これが毛母細胞を活性化し、毛髪の再生を促します。治療の過程では、まず患者さんの血液を採取し、遠心分離機を使用して血小板を濃縮します。この濃縮された血小板を頭皮に注入することで、毛髪の成長を促進するのです。PRP療法は、安全性が配慮された治療法であり、副作用も少なく、さまざまな患者さんにとって有効な治療となっています。
今後の展望と研究
再生医療技術は日々進化しており、今後さらに効果的な治療法が開発されるでしょう。現在も研究が進んでおり、幹細胞や成長因子の利用方法の改善、新たな再生因子の発見などが行われています。また、内服薬や外用薬、レーザー治療、PRP療法などを組み合わせた治療法が進むと予想されています。これにより、各治療法の相乗効果をよりしっかりと引き出すことが可能になるのです。
将来的には、より短期間で効果を実感できる治療法や、さらに副作用の少ない治療法が登場すると期待されています。遺伝子治療による毛包再生や、3Dプリント技術を用いた人工毛包の作製なども研究されており、個々の患者さんの遺伝情報に基づいた医療を受けられる時代が来るかもしれません。
編集部まとめ
薄毛治療にはさまざまな選択肢があり、個々の状況に応じた適切な治療法を選ぶことが重要です。皮膚科、専門クリニック、内科との連携を活用し、包括的なアプローチで薄毛の原因を特定して適切な治療を受けましょう。特に、再生医療技術の進歩により、従来の治療法では得られなかった効果を期待できる新しい治療が提供されています。薄毛に悩む方は、専門医と相談しながら適切な治療を行い、QOLの向上を目指しましょう。
参考文献
電話コンシェルジュで地域の名医を紹介します。