頭頂部の薄毛は、主に男性に見られる頭のてっぺんのつむじ周辺から始まる脱毛現象です。自分では見えにくい頭頂部に起きる脱毛症状であるため、初期段階ではなかなか気付きにくいことも特徴といえるでしょう。多くの人が悩む頭頂部の薄毛はどうして起きるのでしょうか。頭頂部の薄毛の原因をはじめとして、一般的な薄毛の治療方法、近年注目を集めている毛髪再生医療について解説します。
頭頂部の薄毛の症状について
頭頂部の薄毛にはどのような症状が出るのでしょうか。初期症状や原因、なりやすい人の特徴を解説します。
頭頂部の薄毛の初期症状
頭頂部の薄毛の初期症状としては、ボリュームの減少が挙げられます。触ったときに毛量が減っているように感じたときは注意が必要です。つむじ付近を触ったときに、広がっている感じがした場合も初期症状の可能性があります。 また、毛が細くなることも原因のひとつです。頭頂部やつむじ付近の毛髪が徐々に細くなったり色が薄くなったりする場合は、髪に十分な栄養が行き渡っていない可能性があります。洗髪のときや朝起きて枕に抜け毛が付いていたときなど、細い毛や短い毛がないかチェックしてみましょう。 頭頂部の薄毛はつむじから徐々に広がるように進行します。これらの初期症状が見られた場合には、できるだけ早く対処するようにしましょう。
頭頂部の薄毛の原因
頭頂部の薄毛の主な原因はAGA(男性型脱毛症)です。AGAは男性ホルモンがヘアサイクルを乱すことで脱毛が促進され、薄毛が進行していく脱毛症です。毛根が一度死滅してしまうと、毛髪は二度と再生されません。AGAが疑われる場合はできるだけ早めに対処することが望ましいでしょう。 睡眠不足や生活習慣の乱れも薄毛の原因になります。睡眠不足、偏った栄養バランス、運動不足といった好ましくない生活習慣は、ホルモンバランスや自律神経の乱れにつながります。これにより毛髪の成長サイクルに乱れが生じ、薄毛の原因となってしまいます。
過度なストレスも薄毛の原因のひとつです。特に20代から30代の若い世代が薄毛になるのは、ストレスによる影響が大きいと考えられています。過度なストレスは円形脱毛症も引き起こしやすくなります。日頃からストレスを溜めないようにすること、上手にストレスを発散することを心がけましょう。
頭頂部が薄毛になりやすい人の特徴
頭頂部の薄毛は遺伝的要因が大きく影響していると考えられています。父親や祖父にAGAの症状がある人は、自分も同じような薄毛になる可能性があります。
また、薄毛の原因となる生活習慣を続けている人や、過度なストレスがかかっている人も薄毛になりやすいといえるでしょう。
頭頂部の薄毛は治る?
多くの人が悩んでいる頭頂部の薄毛は、治るのでしょうか。薄毛対策のポイントは早めの予防対策と早期治療を行うことです。薄毛を改善するために注意すべき点を解説します。
早期の治療が重要
AGAなどの薄毛治療は、できるだけ早期に始めることが重要です。AGAを発症すると毛母細胞のヘアサイクルが短くなってしまいます。一度寿命を迎えた毛母細胞は回復することはありません。早期治療によって毛母細胞の寿命をできるだけ延ばすようにしましょう。
またAGA治療は進行段階によって治療方法が異なります。進行度が高い程時間や費用もかかりますので、早めの対策がおすすめです。薄毛や抜け毛が気になったらすぐに治療を始めるとよいでしょう。
生活習慣の見直しも有効
薄毛の原因には生活習慣が大きく影響しています。食事面では、ビタミンA、ビタミンE、亜鉛、鉄分などが頭皮や毛髪の健康に重要だといわれています。タンパク質、ビタミン、ミネラルが豊富な食事を心がけ、バランスの取れた食事をとりましょう。
睡眠不足や運動不足にも注意が必要です。睡眠中に分泌される成長ホルモンは髪の成長によい影響を与え、適度な運動が血流の促進やストレスの軽減にもつながります。生活習慣を見直すことは、薄毛対策として有効です。
頭頂部の薄毛の治療法
頭頂部の薄毛の治療法としては、投薬治療と外科的治療があります。軽度であれば投薬治療で改善が見られますが、症状が進行している場合は外科的治療に移ります。薄毛の主な治療法と、毛髪再生医療による治療法についてご紹介します。
従来の治療法
薬物療法で用いられる薬には、発毛を促す薬と抜け毛を防ぐ薬があります。発毛を促す薬としてはミノキシジルが主に用いられます。ミノキシジルは毛細血管を広げて血液の流れをスムーズにする薬です。毛乳頭細胞に働きかけてヘアサイクルを延長させる効果を持っています。ミノキシジルには内服薬と外用薬があり、症状に応じて処方されます。
抜け毛を防ぐ薬としてはフィナステリドとデュタステリドがあります。これらの薬は、頭皮にある還元酵素5αリダクターゼの働きを阻害して、男性ホルモンのテストステロンと結び付かないようにすることで、脱毛の原因物質であるジヒドロテストステロン(DHT)の生成を防ぎ、抜け毛を抑えようとするものです。また、発毛に有効な栄養剤が処方されることもあります。
症状が進んでいる場合には、メソセラピー(注射療法)が行われることがあります。メソセラピーは、毛髪の成長因子やビタミンなどの成分を加えた薬剤を、頭皮下の組織に注入する治療法です。これにより幹細胞の活性化を促すことで発毛を導きます。
症状がさらに進んでいる場合には、自毛植毛が行われます。自毛植毛は自らの毛根を採取し、薄毛部分に移植する治療のことです。後頭部や側頭部から毛髪を採取して、頭頂部の薄毛が気になる箇所に移植します。毛の総本数自体は変わりませんが、薄毛が目立つ部分をカバーすることができる治療法です。
毛髪再生医療による治療法
毛髪再生医療とは、自身の皮下脂肪から取り出した幹細胞を使った再生医療のことです。毛髪再生医療による治療では、取り出した脂肪組織由来幹細胞を頭皮に直接注入し、髪を作る細胞を活性化させてヘアサイクルを整えます。
発毛は、皮下組織にある脂肪前駆細胞が活性化することがキーになります。薄毛の要因のひとつは、頭皮の皮下組織にある脂肪が少なく、脂肪前駆細胞の働きが悪くなっているためであると考えられています。毛髪再生医療では、腹部やお尻などから採取した自身の脂肪幹細胞を頭皮に移植して、脂肪前駆細胞と毛包幹細胞の働きを活性化させることで、通常のヘアサイクルに導き発毛を促します。
毛髪再生医療のメリット・デメリット
毛髪再生医療のメリットは、内服薬や外服薬による薬物療法よりも効果が早く出やすい点で、従来の治療方法ではあまり効かなかった人も効果を感じられる点、副作用があまりない点などが挙げられます。また、毛髪再生医療は外科的手術よりも身体への負担が少ない状態で、根本治療が期待できます。
デメリットとしては、毛髪再生医療を受けられるクリニックが限られている点があります。再生医療は厚生労働省に届け出て受理されたクリニックのみができる治療のため、医療機関であればどこでも治療が受けられるわけではありません。
費用が高額になりやすいのも毛髪再生医療の特徴です。費用相場としては数万円から数十万円かかり、複数回治療を受けると100万円を超える場合もあります。毛髪再生医療を検討している場合には費用面について事前に確認したうえで選択しましょう。
また、毛髪再生医療は100%効果が保証されている治療ではありません。症状や人によってはあまり効果がないこともあります。
PRPによる頭頂部の薄毛治療
PRPとは、多血小板血漿(けっしょう)のことです。PRPによる頭頂部の薄毛治療では、自分の血液から採った血漿を濃縮して作った高濃度の血小板を頭皮に注入して薄毛にアプローチします。薄毛治療におけるPRP療法とはどのようなものなのか説明します。
PRP療法の特徴
血小板のなかにはさまざまな種類の成長因子が含まれており、これらには細胞の増殖や組織を活性化する作用があります。PRPを注入することで、ヘアサイクルの乱れが改善され、正常なヘアサイクルに戻すことが期待できます。また、毛根周囲の血管新生も刺激されることで、抜け毛が減ったり生える毛の本数が増えたりするともいわれています。
自分の血液を使うため、免疫拒絶反応などの副作用が出にくいのが特徴です。また、1~2時間程度の施術で、ダウンタイムもほとんどありません。急に毛が生えることはありませんが、ゆっくり時間をかけて自然な育毛が期待できる治療法です。
PRP療法による薄毛の治療方法
PRP療法の治療では、まず採血が行われます。採取した血液はすぐに遠心分離機にてPRP(多血小板血漿)を抽出し、その後、PRPを気になる薄毛部分の頭皮の真皮層に注入します。注入する時間は10~15分程度です。注入箇所を冷却しながら注入を行うため、痛みも抑えられます。
施術当日は、激しい運動や入浴、サウナは避けるべきですが、洗顔やシャワーは可能です。治療後すぐに頭皮の違和感はなくなるケースがほとんどです。仮に違和感が残った場合でも、2~3日程度で自然に解消します。
PRP療法による薄毛治療の効果
PRP療法では頭皮の薄毛箇所にPRPを注入します。血小板から分泌される成長因子は、毛根のバルジ領域にある幹細胞を刺激することで細胞の増殖を促進します。これにより血管の新生を助け、組織修復を促すため、血流を増加させ、毛髪の成長期を延長し、毛髪数を増やしたり、毛髪が太くなるなどの効果があります。個人差はありますが、このほかにも、毛髪にハリが出たり、毛の伸びるスピードが速くなったり、地肌が透けなくなったりなどの効果が感じられるでしょう。
幹細胞培養上清療法による頭頂部の薄毛治療
幹細胞培養上清液とは、幹細胞を培養するときに使用した培養液から幹細胞を取り出し、残った培養液を遠心分離、滅菌処理などを行って作られる上澄み溶液のことです。この幹細胞培養上清液を用いて治療をすることで、育毛や発毛の効果があると考えられています。幹細胞培養上清療法による薄毛治療とはどのようなものなのか説明します。
幹細胞培養上清療法の特徴
幹細胞培養上清療法では、幹細胞培養上清液のなかにある成長因子やエクソソームを利用し、細胞を活性化させて育毛や発毛につなげます。
幹細胞培養上清液のなかには、衰えた細胞の活性化を促進し、傷ついた組織や細胞を修復したり再生させたりする働きのある成長因子などが多く含まれています。こうした成長因子などの成分の働きを利用し、毛母細胞の修復や再生、細胞分化、増殖を促進し、頭皮環境を整えて育毛や発毛を促すのが幹細胞培養上清療法です。 治療方法は注入のみとなります。ダウンタイムがほとんどなく、手軽にできて身体への負担が少ないことも幹細胞培養上清療法の特徴です。
幹細胞培養上清療法による薄毛の治療方法
実際の治療は注入のみのため、10~30分程度の短時間で終わることがほとんどです。注射による注入のほか、特殊な機器を使用することで痛みを感じにくい治療を行っているクリニックもあります。注射の場合でも冷却や麻酔を使用することで、痛みを軽減しながら治療が進められます。多少の出血が見られることもありますが、ほとんどの場合はすぐに出血は止まります。
注入する成分や治療で使用する機器はクリニックによって異なりますので、自分の希望に合う治療を行ってくれるクリニックを選びましょう。
幹細胞培養上清療法による薄毛治療の効果
幹細胞培養上清液に含まれる成分には頭皮の毛母細胞を活性化させる働きがあるため、これを直接頭皮に注入することで、育毛や発毛が促されます。また、毛母細胞が活性化されると、髪の成長に必要な栄養を放出する機能も活性化します。ヘアサイクルが整うことで、髪の健康が促進される効果も期待できます。
編集部まとめ
頭頂部の薄毛は、男性ホルモンの影響によるAGAが主な原因です。このほかにも、生活習慣の乱れによっても薄毛になりやすくなるといわれています。毛根は一度死んでしまうと再生はしません。薄毛の治療を行うなら、できるだけ早く始めるのがポイントです。 薄毛治療の方法としては、従来の投薬治療や外科的治療のほか、近年では毛髪再生医療も注目されています。PRP療法や幹細胞培養上清療法など、使用する成分や方法はさまざまです。クリニックによって扱う治療法や内容が異なりますので、症状やご自身の希望に合ったクリニックを選びましょう。
参考文献