髪の幹細胞治療は新しい治療法のため、あまり良く知らない、安全性が気になる、という方も多いのではないでしょうか。 髪の幹細胞治療とは、幹細胞の力を利用して髪を作る細胞を活性化させ、ヘアサイクルを整える治療方法です。 本記事では、幹細胞治療と髪の関係について以下の点を中心にご紹介します。
- 幹細胞治療について
- 毛髪再生治療で知っておくべきポイント
- 代表的な毛髪再生治療の種類
幹細胞治療と髪の関係について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。 ぜひ最後までお読みください。
幹細胞治療について
- 幹細胞治療とはどのような治療ですか?
- 幹細胞治療は、自身の皮下脂肪から採取した幹細胞を用いて行われる再生医療の一形態です。
幹細胞とは、細胞が絶えず入れ替わり続ける組織を守るために、失われた細胞を再び生み出し、補充する能力を持った細胞のことです。
髪の幹細胞治療は、脂肪組織由来の幹細胞を頭皮に注入することで、休眠状態にある毛包幹細胞を活性化させ、健康なヘアサイクルに調整します。
- 幹細胞治療は痛みや副作用がありますか?
- 幹細胞治療は自身の間葉系幹細胞(骨や軟骨、血管、心筋細胞に分化できる細胞)を使用するため、アレルギーや拒絶反応のリスクも低いとされています。
痛みについては、要所要所で注射針を刺す痛みというのは発生します。なかには注射針を用いない機器を取り入れているクリニックもあるようです。幹細胞治療中の脂肪採取時や細胞の注入時は、痛みを軽減させるため局所麻酔が用いられます。
ただし、まれではありますが、注射部位に一時的な腫れが生じるケースがあり、必要に応じて消炎鎮痛剤が処方される場合もあります。
- 幹細胞治療のメリットを教えてください
- 幹細胞治療の主なメリットは、自身の細胞を利用するため拒絶反応や副作用が少なく、体の自然な修復能力を強化することで、組織の回復を促せる点です。
そのため、幹細胞治療は幅広い治療に対応できるのもメリットです。再生医療をはじめ、免疫療法や神経再生、血液疾患や関節症の治療、美容治療など、幅広く治療に活用できます。 また、幹細胞治療は、切開などの外科手術が少ない治療であるため、患者さんの身体的な負担も軽いとされています。
- 幹細胞治療のデメリットを教えてください
- まず、治療を提供しているクリニックが限られており、通院が困難な場合があります。さらに、治療の費用は高額になる傾向にあるため、経済的な負担がかかると考えられます。
また、治療の経過には個人差があり、すべての患者さんに即効性があるわけではなく、長期間にわたる治療が必要になることもあります。
また、施術には注射が用いられるため、痛みを感じることもあります。
【幹細胞治療】毛髪再生治療で知っておくべきポイント
- 毛髪再生治療とは何ですか?
- 毛髪再生治療は、自身の脂肪から採取した幹細胞を活用して行われる治療法です。休眠状態にある毛包幹細胞を活性化し、ヘアサイクルの乱れを整えて毛髪の再生を促進します。
具体的には、採取した脂肪幹細胞を頭皮に注入し、毛包幹細胞を刺激して発毛を促します。毛髪再生治療は、AGA(男性型脱毛症)や薄毛で悩んでいる方におすすめで、個人差はありますが、内服薬や外用薬に比べて効果が早く出やすいといわれています。軽度の脱毛症であれば、3〜6回程度の治療終了後に効果を感じられるようです。
- 毛髪再生治療の仕組みを教えてください
- 毛髪再生治療は、患者さんの腹部やお尻、太腿などの脂肪から採取した幹細胞が用いられます。これらの幹細胞は、脂肪前駆(しぼうぜんく)細胞および毛包幹細胞の活性化を促す役割を持ちます。
AGAや薄毛の直接的な原因は、ヘアサイクルの乱れです。髪の成長期が通常よりも短くなってヘアサイクルが乱れると、髪が十分に成長する前に退行期・休止期に入ってしまいます。すると髪が太くなる前に抜け落ちてしまうため、頭皮の地肌が目立つようになります。 髪の成長期が短くなってしまう原因の一つとして考えられるのが、毛包幹細胞の機能低下です。
毛髪再生治療は、脂肪幹細胞を頭皮領域に注入することで、休眠中の毛包が再び成長期に入り、ヘアサイクルを整えるという仕組みになっています。また、脂肪前駆細胞はヘアサイクルの改善だけでなく、肥満や糖尿病などの生活習慣病の治療や、再生医療への応用が期待されています。
- 毛髪再生治療はどの医療機関でも受けられますか?
- 毛髪再生治療は、すべての医療機関で受けられるわけではありません。
毛髪再生治療を提供できるのは、再生医療などを提供する施設として厚生労働省に認可された医療機関に限られます。再生医療を行うには、治療の妥当性・安全性・医師体制・細胞加工管理体制が治療項目ごとに厳しく審査されます。「認定再生医療等委員会」に治療計画を提出し、厚生労働省より計画番号を取得することで治療の提供が可能となります。
再生医療を受ける際は、適切な計画番号を取得しているかの確認をおすすめします。
- 毛髪再生治療はどのような人でも治療できますか?
- 毛髪再生治療は、すべての方に適しているわけではありません。
治療を受けるにあたっては、医師と患者さんの合意が必要であり、一部の健康状態や病歴を持つ方々には適用できないことがあります。例えば、悪性腫瘍の既往歴がある方、出血傾向がある方、特定の皮膚疾患がある方、円形脱毛症の方、妊娠している可能性のある女性などが含まれます。
【幹細胞治療】代表的な毛髪再生治療の種類
- PRP(多血少板血漿) 毛髪再生治療について教えてください
- 患者さん自身の血液から多血少板血漿を抽出し、これを頭皮に注入することでヘアサイクルを促進する治療法です。
PRPは自身の血小板を使用するため、副作用が少なく、アレルギーや拒絶反応のリスクも低いとされています。
治療は約1〜2時間で完了し、ダウンタイムも短い傾向にあります。
ただし、心臓病や脳梗塞などの既往症がある方は治療できず、毛根が消失している方には効果が期待できません。
- PFC (血小板由来成長因子濃縮液)毛髪再生治療について教えてください
- PFCとは、血小板から抽出された成長因子を凍結乾燥して保存したものを使用する、薄毛の再生医療の一種です。血小板の持つ自然治癒力を利用します。
PFCによる毛髪再生治療では、患者さん自身の血液から成長因子を濃縮した液体を頭皮に注入することで、毛髪の成長を助けることを目指しています。
PFCで凝縮されている成長因子は、PRP(多血小板血漿)の約2倍といわれています。
- HARG(HARGカクテル療法) 毛髪再生治療について教えてください
- HARG(HARGカクテル療法)毛髪再生治療 とは、HARGカクテルと呼ばれる薬剤を頭皮に直接注入する治療方法のことです。特許取得のフィルタリング技術を通じて製剤からエクソソーム(細胞間の伝達物質)を抽出し、頭皮に直接注入します。
エクソソームには成長因子やmiRNA、脂質、タンパク質などが含まれます。これが毛乳頭細胞を刺激し、薄毛を抑制するよう働きかけ、ヘアサイクルの正常化を促します。
主にAGA(男性型脱毛症)や女性のびまん性脱毛症に対応し、長期にわたる毛髪の維持を目指します。化学薬品を使用しないため、副作用のリスクが低いとされています。また、エクソソームは細胞間のコミュニケーションに重要な役割を果たす小さな小胞のことです。これらは細胞の外に放出され、ほかの細胞に情報を運ぶためのタンパク質やRNAを含んでいます。
細胞が環境やほかの細胞とどのように相互作用するかを調節する重要な手段で、医学研究や治療法開発においても注目されています。
編集部まとめ
ここまで、幹細胞治療と髪の関係について解説してきました。 幹細胞治療と髪の関係について、要点をまとめると以下のとおりです。
- 毛髪の幹細胞治療は、自身の脂肪から採取した幹細胞を活用して行われる治療法で、休眠状態にある毛包幹細胞を活性化させ、健康なヘアサイクルに調整することが目的
- 毛髪再生治療は、厚生労働省に登録されている特定の医療機関でのみ施術できる
- PRP(多血少板血漿)、PFC(血小板由来成長因子濃縮液)、HARG(HARGカクテル療法)が代表的な毛髪再生治療である
毛髪再生医療は、決して安価な治療ではありません。また、効き目や安全性についても十分な研究結果が出ていない部分があります。しかし、可能性を秘めた治療法であることは間違いありません。
もし、毛髪再生医療に興味がある場合は、信頼できる医療機関で十分なカウンセリングを受け、メリットとデメリットを理解したうえで、慎重に検討することをおすすめします。 この記事が薄毛に悩む方にとって、この情報が少しでも役立つことを願っています。