「最近抜け毛が増えた気がする」「髪のボリュームが以前より少なくなってきた気がする」など、抜け毛に関する悩みを持っている方は大勢います。そしてその中には、「抜け毛は老化現象の一つだから仕方ない」「年をとったら髪が減るのは当たり前」と考えている方も少なくありません。この記事では、そのように抜け毛は改善が難しいと考えている方や、抜け毛の治療を迷っている方に向けて、抜け毛を皮膚科で治療する際のメリット・デメリットや治療方法などをお伝えします。
抜け毛は皮膚科で治療できるのか
まずは、皮膚科で受けられる抜け毛の治療についてご説明します。
- 抜け毛の治療は皮膚科でできますか?
- 抜け毛の治療を皮膚科で行うことは可能です。近年、AGAという言葉を目にする機会が増えたという方も多いかと思いますが、「男性型脱毛症」を意味するAGAや、「女性型脱毛症」を意味するFAGA、円形脱毛症などが原因の場合は、皮膚科で治療を受けることができます。抜け毛でお悩みの男性の多くはAGAであることが考えられるため、薄毛や抜け毛が気になる場合には一度皮膚科を受診してみましょう。
- 抜け毛の治療を皮膚科で受けるメリットとデメリットを教えてください。
- メリットとして第一に挙げられるのは、頭皮や頭髪に関する専門的な診療が受けられるということです。当然ではありますが、皮膚科の医師は頭皮も含めた皮膚を専門的に診療しています。そのため、抜け毛の原因がどこにあるのか、どうすれば改善を見込めるのか、ほかに頭皮トラブルは起きていないかなどを、詳しく診察・検査することができます。 また、AGA専門のクリニックに比べて受診のハードルが低いこともメリットです。
「薄毛・抜け毛の治療に通っている」と一目でわかるAGAクリニックには抵抗感があると考えている方にとっては、何を理由に受診しているか周りの人からはわからない皮膚科のほうが、通いやすいでしょう。 一方でデメリットとしては、薄毛や抜け毛治療に特化しているクリニックはそう多くないということです。皮膚を専門的に扱っているとはいえ、皮膚科で扱う症状は頭からつま先まで多岐にわたります。そのため、抜け毛・薄毛治療に対応はしていても、特化しているクリニックは少ないということを覚えておきましょう。
また、そのために治療の選択肢が少ない場合もあります。 そして最後に、AGA専門クリニックと比べると、プライバシーへの配慮が万全ではない場合が多いことも頭に入れておきましょう。AGAクリニックの場合、完全予約制やオンライン診療を利用して他の患者さんと顔を合わせないようにしたり、番号で呼び出しをすることで名前が知られないようにしたりしているクリニックも多くあります。皮膚科の場合は、そこまでの配慮はされていないことが多いため、待合室でほかの患者さんと顔を合わせたり、クリニックによっては診察の内容が待合室にいる患者さんに聞こえてしまったりすることがあります。
- 皮膚科以外に抜け毛の治療を受けられる医療機関について教えてください。
- 皮膚科以外に、内科や心療内科でも薄毛・抜け毛の治療に対応している場合があります。特に、ストレスが原因で抜け毛が多くなっていると感じる場合には、心療内科を受診して、抜け毛の治療とともに精神的なストレスを解消するための治療を受けるのが望ましいでしょう。また、前述したようなAGA専門クリニックでは、薄毛・抜け毛はもちろん、発毛や育毛にも特化した治療を行っています。
- 抜け毛について、どのような症状が出たら皮膚科を受診すべきですか?
- 抜け毛は日々発生するものなので、どこまでが自然な状態で、どこからが皮膚科を受診するべき状態なのか迷う方も多いかと思います。そのように悩んだ場合は、抜け毛の量を確認しましょう。浴室の排水溝に髪の毛をからめとるネットなどをつけ、日々の抜け毛の量を大まかにでも確認するのがおすすめです。毎日100本以上の髪が抜けている場合には、通常よりも抜け毛が多いことが推測されますので、皮膚科を受診する目安となります。 また、抜けた髪の毛の毛根をチェックし、毛根が膨らんでいない場合や黒くなっている場合にも、頭皮トラブルが起きている可能性があるので受診を検討しましょう。そのほか、かゆみやふけがある場合も皮膚科を受診するべきタイミングと言えます。
皮膚科で受けられる抜け毛治療
次に、皮膚科で受けられる抜け毛治療について説明します。
- 抜け毛の防止・抑制を目的とした治療方法にはどのようなものがありますか。
- 抜け毛の防止・抑制を目的とする治療法としては、フィナステリドと呼ばれる薬の服用があります。これは、男性型脱毛症の進行を遅延する作用が認められている薬であり、1日に1回服用することで抜け毛や薄毛の抑制につながるとされています。
- 発毛を目的とした治療方法にはどのようなものがありますか。
- 発毛を目的とした治療方法には、飲み薬や塗り薬といったタイプがあります。どちらも、発毛だけでなく、抜け毛や薄毛の進行抑制も期待できる薬です。
- 皮膚科と薄毛専門クリニックで受けられる治療の違いを教えてください。
- 個々の皮膚科によっても異なりますが、一般的に皮膚科で受けられる治療は、抜け毛や薄毛がこれ以上進行しないように現状維持を目的として行われるものです。そのため、発毛や育毛を目的とした治療には対応していない場合が多いという難点があります。また、そのような理由から扱っている薬の種類が、薄毛専門クリニックに比べて少ない場合も多くなっています。
- 皮膚科での治療費はどのくらいかかりますか?また、保険適用されますか?
- AGAやFAGAが原因で抜け毛や薄毛が起こっている場合、これらの症状の治療には保険が適用されません。自由診療となり、医療機関ごとに設定金額が異なるため一概には言えませんが、一般的には月々5000円から10000円ほどは治療費としてかかると考えておきましょう。症状の度合いによって、薬の種類や数、量が異なるため、これ以上かかる場合もあります。
抜け毛の再生医療について
最後に、抜け毛に対する再生医療について解説します。
- 発毛を目的とした再生医療は、皮膚科でも受けられますか?
- 発毛を目的とした再生医療を皮膚科で受けることは可能です。対応しているクリニックの数は少なく、すべての皮膚科で受けられるわけではないため、対応の可否は事前に確認しておきましょう。
- 発毛を目的とした再生医療の治療内容を教えてください。
- 発毛を目的とした再生医療として、幹細胞培養上清注入療法と呼ばれる方法があります。これは、患者さんの脂肪から抽出した幹細胞を培養し、遠心分離で細胞や不純物を取り除いたうえで再度体内に戻すことで、髪を作る細胞を活性化させ、発毛・育毛を促す治療法です。さまざまな成長因子が発毛・育毛に作用すると考えられており、副作用などの心配が少ないというメリットがあります。
- 治療の効果が見え始めるまでどれくらいの期間が必要ですか?
- 患者さんによって違いはありますが、早ければ注入後1カ月ほどで変化が目で見てわかるようになります。
- 治療が終わるまでにはどれくらいの期間が必要ですか?
- 治療期間も患者さんによって異なります。それは、治療開始前の頭髪の状態や、希望とするゴールが異なるからです。一度の注入である程度満足できる方もいれば、半年間ほどの継続的な治療を求める方もいるため、自身の頭髪の状態を医師に診察してもらったうえで必要となる治療期間を確認しましょう。
- 治療にはどれくらいの費用がかかりますか?
- 幹細胞培養上清注入療法は自由診療であり、前述したように必要となる注入回数も患者さんによって異なるため、一概には言えません。目安としては、1回の注入で10万円程度、複数の注入だとその回数に応じた金額が加算されると考えておきましょう。
編集部まとめ
皮膚科で受けられる抜け毛や薄毛の治療法から、薄毛専門クリニックとの違い、毛髪に対する再生医療まで説明しましたが、参考になりましたでしょうか。薄毛や抜け毛は、その多くが皮膚科で治療可能な症状です。早めの対処が肝心なため、ささいな変化や違和感だとしてもまずは医療機関に相談してみることをおすすめします。
参考文献