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変形性膝関節症が先進医療で治る? 治療の種類や方法と気をつけたいポイントを解説します

変形性膝関節症が先進医療で治る? 治療の種類や方法と気をつけたいポイントを解説します

膝の痛みはつらいですね。その痛みの原因のほとんどは変形性膝関節症です。はじめはそれ程でもなかった痛みでも、進んでしまうと薬も効かなくなってしまうことがあります。しかし、現在では変形性膝関節症も先進医療によって、切らずに治療することが可能になりました。この記事では先進医療を中心に、変形性膝関節症の治療の種類や方法について解説します。先進医療についての知識も広げ、治療の選択肢に加えてみてはいかがでしょうか。

変形性膝関節症について

変形性膝関節症について 中高年によく現れるといわれる膝の痛みですが、そのほとんどの原因が変形性膝関節症です。その症状と治療について説明します。

変形性膝関節症の症状について教えてください。
変形性膝関節症とは、膝の軟骨(関節のクッション)がすり減るため痛みが生じる病気です。初期症状としては、膝の違和感(体を動かし始めるときに感じるこわばりや鈍痛)などの自覚症状があらわれます。もう少し進むと、正座や階段の上り下り、方向転換をしたときなどの痛みが顕著になります。中期になると、正座やしゃがみ込む動作、階段の上り下りが困難になります。これは関節内部の炎症が進み、膝の腫れや変形が起こるからです。 末期症状では、日常生活へも支障をきたし、普通に歩いたり座ったりしゃがんだりすることも困難となります。 一度すり減った軟骨はもとには戻りません。早い治療を心がけましょう。
現在行われている変形性膝関節症の治療にはどのような方法がありますか?
一般的に行われている治療方法は大きくわけて、手術をしないで運動や投薬で症状を緩和させる保存療法と手術治療の2種類です。運動療法は疾患や機能障害の改善、回復を運動によって図る方法です。痛みで緊張した筋肉をほぐし、血行を促進させ、低下した筋力を向上させるなどの効果が期待できます。

薬物療法で使用する薬は外用薬の抗炎症剤や内服薬で、消炎鎮痛剤などがあります。また、変形性膝関節症では、ヒアルロン酸が減少するといわれているので、膝の関節内にヒアルロン酸を注射する方法も一般的です。保存療法を数ヵ月続けても効果がなく、痛みや変形が悪化するようであれば、手術療法を行います。手術方法としては、関節鏡視下手術、高位脛骨(けいこつ)骨切り術、人工膝関節置換術の3つの方法が代表的です。

変形性膝関節症と先進医療

変形性膝関節症と先進医療 長年膝の痛みで苦しんでいる方の第3の治療法として再生医療の活用が注目されています。薬物療法やヒアルロン酸注射などの保存療法で効果が得られなくなり症状が悪化してしまうと、従来は手術療法の検討となります。しかし、手術はできれば避けたいという方もいらっしゃるでしょう。こうしたケースに成果をあげる治療法として膝の再生医療があります。

先進医療についてどのようなものかを教えてください。
医療保険が適用されず、患者さんの希望で医師の判断のもと行う治療を自由診療といいます。自由診療というと美容整形などのイメージが強いと思いますが、公的医療保険が適用されていない高度な医療技術で治療を受ける場合も自由診療にあたるのです。先進医療とはこのような進んだ医療技術のうち、公的医療保険の適用を前提として厚生労働省が認定した医療技術をさします。

先進医療による治療の代表的なものでは、がんの治療で用いられる陽子線治療や重粒子治療があります。さらに不妊治療で多く実用化されている、タイムラプス撮像法による受精卵・胚培養、また関節軟骨損傷で適用される軟骨再生治療など多岐にわたります。

変形性膝関節症の再生医療はどのような人に向いていますか?
保存療法の効果が思わしくなかったり、また症状の悪化が見られたりすると、手術をすすめられることがよくあります。しかし、手術を避けたい場合には、現在実用化が進んでいる再生医療の検討も選択肢の一つになるかもしれません。
変形性膝関節症の再生医療のデメリットはありますか?
再生医療は自分自身の組織を用いる治療のため、理論上のリスクは低いと考えられています。しかし、医療行為である以上リスクはゼロにはなりません。血中に脂肪が混入して血管がつまる脂肪塞栓症や感染、神経や血管が破損する可能性もないとはいえません。また、再生医療は自由診療です。自己負担金が高額になることもデメリットの要素といえるでしょう。

さらに、治療の効果は人により差がでることも承知しておいてほしい点です。効果がでないということもありえるので事前のカウンセリングを十分受けるようにしてください。

変形性膝関節症の再生医療について

変形性膝関節症の痛みで悩んでいる方に、切らずに痛みを改善させる治療が再生医療では実現できるようになりました。膝の再生医療の種類と治療法、期待できる効果などを個別に説明します。

現在、変形性膝関節症で実用化されている先進医療にはどのようなものがありますか?
膝の再生医療のなかでも、変形性膝関節症が対象となる治療としては、おもにPRP(多血小板血漿)療法と幹細胞治療(培養幹細胞治療)があります。しくみや治療方法が異なりますので次に代表的な治療についてそれぞれ説明をします。
PRP(多血小板血漿)療法とは?
血液中の血小板からは傷んだ組織を修復する成長因子という物質が供給されます。これは傷を元どおりに治そうとするしくみです。この自己治癒力を利用した治療法がPRP療法です。PRPは組織の自己修復作用や抗炎症作用を高め患部の早期治癒をサポートします。治療方法としては、自分自身の血液を30ミリリットルくらい採血して専用のキットで遠心分離機にかけて分離後、血小板がたくさん含まれる多血小板血漿(PRP)だけを抽出し、それを膝関節内に注射するのです。

PRPから放出される成長因子の働きによって、自己修復作用が始まります。そしてその能力は痛みの緩和や関節機能の改善などの作用を促すのです。

幹細胞治療 (培養幹細胞治療)について教えてください
人の体は無数の細胞からできています。それらの細胞は一様ではありません。体の組織や臓器によってそれぞれの細胞には決まった役割があるのです。細胞にも寿命があり、老化や病気などで失われていきます。古い細胞が失われる一方で新しい細胞を補充しなければならず、そこで働くのが幹細胞なのです。しかし、なかには決まった役割を持たずにさまざまな細胞へと変化する可能性のある特殊な細胞が存在し、その能力から再生医療への転用が実用化されています。実用化に適した素材は脂肪組織に含まれる脂肪幹細胞です。この脂肪由来の幹細胞が膝の再生医療に用いられます。治療方法としては、お腹や太ももから採取した脂肪組織から脂肪幹細胞を抽出して培養し、その培養した幹細胞を膝の患部に注射します。

幹細胞には、炎症や痛みを和らげる成分の生成能力があるといわれています。そのため、膝の痛みの改善には効力を発揮するのです。それも一時的な改善ではなく、その効果は長期持続も期待できるという報告もある程です。

変形性膝関節症で再生医療を受けるときに気をつけるべきこと

膝の再生医療で期待できる効果は説明しましたが、効果だけで評価をしてよいとは限りません。気をつけることやリスクに対しても考えておく必要はありそうです。次に気になる点をまとめてみました。

変形性膝関節症で再生医療の治療を受けられないケースはありますか。
一般的には、発熱がある場合や、がん治療をしている、関節に感染が見られる、薬物アレルギーがある、免疫抑制剤を服用中などのケースでは治療を受けられないといわれています。不安に思う場合は主治医とよく相談するとよいでしょう。
変形性膝関節症の再生医療には保険は適用されますか?
変形性膝関節症の再生医療であるPRP療法や幹細胞治療は、現在は公的保険の適用にはなっていません。そのため自由診療となり全額自費での支払いとなります。健康保険の適用には厚生労働省の承認が必要です。今後、さらに再生医療の知見の蓄積を継続し、中央社会保険医療協議会で検討を重ね、保険適用の承認を受けられることが期待されています。

編集部まとめ

保存療法や薬物療法では痛みがなかなか改善しない場合、保存療法を続けていても効果がない、ヒアルロン酸注射も無駄ではないかとあきらめていませんか? そのようなお悩みに、現在では再生医療での治療が可能となりました。先進医療の実用化はどんどん進み、入院や手術をせずとも長期的な改善が期待できます。早く痛みをなくして元気に歩きたいですね。

参考文献

この記事の監修歯科医師
松澤 宗範医師(青山メディカルクリニック院長 慶応義塾大学病院形成外科)

松澤 宗範医師(青山メディカルクリニック院長 慶応義塾大学病院形成外科)

2014年3月 近畿大学医学部医学科卒業 2014年4月 慶應義塾大学病院初期臨床研修医 2016年4月 慶應義塾大学病院形成外科入局 2016年10月 佐野厚生総合病院形成外科 2017年4月 横浜市立市民病院形成外科 2018年4月 埼玉医科総合医療センター形成外科・美容外科 2018年10月 慶應義塾大学病院形成外科助教休職 2019年2月 銀座美容外科クリニック 分院長 2020年5月 青山メディカルクリニック 開業

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