いつの時代も美容や健康を求めている方は多いでしょう。美についての探求は女性だけでなく最近は男性も積極的になってきています。また、年齢を重ねてもキレイな肌を維持している方も増えてきており、各年代でエイジングケアへの意識も高まってきています。
近年、次世代のエイジングケアと注目を集めている「ヒト幹細胞エキス」 美容や健康に効果を期待され様々な研究が進められていますが、具体的にどのようなものなのでしょうか。ここでは、ヒト幹細胞エキスについて、美容や健康への効果や安全性とともに解説していきます。
ヒト幹細胞エキスとは?
様々な細胞に分化する能力や自己複製機能をもつ細胞を幹細胞と言い、その中でもヒト由来の幹細胞を「ヒト幹細胞」と言います。このヒト幹細胞から抽出・培養した上澄み液を培養液とよびます。エキスは、上澄み液である培養液を水やアルコールなどによって薄め、その中から成分を抽出します。以上のような工程を経て、ヒト幹細胞エキスとなります。
幹細胞は様々な組織へと分化させることができ、医療分野において様々な研究がされていますが、美容分野でも応用できることからコスメの栄養成分として配合されることも増えています。また、コスメに配合される幹細胞の成分にはヒト由来の他に、動物由来、植物由来のものがあります。
動物由来幹細胞はヒトの幹細胞と構造が似ているとされる羊の毛根などから採取したものです。しかし、動物性ウィルスや衛生管理など、安全性が心配されるため日本ではあまり流通していません。
植物由来幹細胞は再生能力の高い植物から抽出した成分です。植物の中には傷ついた細胞を再生させる能力が非常に高いものが多数あり、植物由来幹細胞はそのような植物の細胞から採取されます。植物由来幹細胞の特徴は高い抗酸化作用と保湿効果が期待できる点にあり、肌のバリア機能を高めたい方にオススメの成分と言えるでしょう。肌環境を整えることが期待される成分のため、配合されているコスメも多くあります。
ヒト幹細胞の特性
ヒト幹細胞は細胞の成長を促進する成長因子が含まれているため、細胞の活性化が期待できる成分として注目されています。美容分野では、培養時に精製される「上澄み液」に肌を形成するコラーゲンの生成を促進する作用が期待されており、ハリのある肌の実現を目的としてコスメへ配合されることが増えています。
肌にハリをもたらすことは、しわ改善にも繋がります。水分量が少なくなると細胞は縮んでしまったり変形してしまったりなどするため、しわの要因になってしまいます。ヒト幹細胞は細胞を活性化することが期待できるため、古くなった細胞を健康的な細胞に生まれ変わらせる働きが促進され、その結果豊富な水分量を含んだハリのある肌を実現しやすくなります。ヒト由来なので細胞へ浸透しやすく、効果を感じやすいのも大きなメリットです。
医療分野においては、この幹細胞を用いた再生医療の研究が進められており、iPS細胞や間葉系幹細胞の研究にて、様々な成果が上がっています。 幹細胞研究は次世代の治療である再生医療の分野で大きな発展を遂げ、今後より私たちに身近な医療分野になることが期待されています。
コスメ(エキス)としての利用
コスメに配合される幹細胞はヒト由来と植物由来の2種類が主流となっています。 ヒト由来幹細胞エキスは肌を形成する細胞を活性化することで、ターンオーバーを促進し肌のハリを保つのに大切なコラーゲンやエラスチンなどの生成を助けます。その結果、若々しい肌を維持しやすくなるといった効果が期待できます。
植物にも動物と同様に細胞を再生させる幹細胞がありますが、細かな仕組みが異なるため、ヒト由来と同様の美容効果を期待することはできません。 植物由来幹細胞エキスで期待できるのは、抗酸化や保湿力の作用によって肌を保護することが挙げられます。
また、植物由来幹細胞はアレルギー反応が低いため、安全性の高い幹細胞エキスとしてコスメに使用されています。
ヒト幹細胞やエキスの美容への効果
ヒト幹細胞エキスは肌を形成する細胞へ直接アプローチできると考えられ、高い美容効果が期待できると言われています。
ヒト由来のため細胞へ浸透しやすく、肌にダイレクトに効果をもたらしてくれると考えられており、肌の細胞を活性化、より若々しくハリのある肌が実現できると言われています。
実際にヒト幹細胞エキスを配合した美容液は、肌質の改善効果が感じられるコスメとして、多くの化粧品メーカーから販売されています。 ここではヒト幹細胞エキスで期待できる具体的な効果等を紹介します。
アンチエイジング効果
ヒト幹細胞エキスは肌のターンオーバーを促進、また正常化させる働きを持っているため、アンチエイジング効果が期待できます。 ハリがなくなったりしわが増えたりすると肌の老化を感じやすくなります。逆にハリがあってしわの少ない肌は年齢に関係なく若々しさを感じられます。 そのため古い細胞を新しい細胞へと生まれ変わらせるターンオーバーの周期を早めることは、常に若々しい肌を維持するためにとても重要なポイントであると言えます。
肌は30代半ばから細胞分裂の速度が衰え、ターンオーバーに時間がかかるようになります。 ターンオーバーに時間がかかるようになると古くなった角質が残りやすくなり、ざらつきを感じ表面に硬さを感じる肌となってしまいます。 コラーゲンなどの美容成分の生成速度が落ち、肌のハリを保ちにくくなるため、30代からのアンチエイジングはヒト幹細胞エキスが効果的と言われています。
10代20代であっても外での活動が多いと紫外線の影響を受けやすくなり、肌がダメージを受けやすくなります。
ヒト幹細胞エキスには肌が受けたダメージを補修する効果も期待できるため、外出の機会が多い、外で運動する機会が多いのであれば、年齢に関係なくこちらが配合されたコスメを使用すべきでしょう。
肌の再生と修復
肌は紫外線を多く浴びると老化が促進されてしまいます。また、ストレスの多い生活を送ることでも肌の老化が進んでしまい、しわやたるみが目立つ肌となってしまいます。
このような状況を改善するには、肌の細胞を活性化し常に新しい肌へと生まれ変わらせる必要があります。ヒト幹細胞エキスは肌の再生や修復を促進させ、サイトカインや成長因子に働きかけ細胞を活性化させます。直接肌に塗るタイプのコスメであれば、細胞にダイレクトに働きかけ細胞の生まれ変わりを促進、キレイな肌へと再生・修復してくれる効果が期待できます。
ヘアケアへの利用
男女問わず脱毛症はヘアサイクルの乱れが主な原因です。そのためヘアケア商品の多くはヘアサイクルを正常化させて、育毛、発毛、そして頭皮を正常に保つ効果が期待できるものが多くなっています。
ヒト幹細胞は頭皮や毛根に対しても成長因子を通じて働きかけることができ、ヘアサイクルの正常化を促進する効果が期待できます。皮膚の細胞増殖を促し、血流を促進、さらに毛髪自体を形成するケラチノサイトの増殖も手助けします。昨今耳にする機会が多くなったAGA(男性ホルモン型脱毛症)についても、毛髪の成長を促す毛母細胞が残っている状態であれば、ヒト幹細胞エキスによって育毛促進が期待できると言われています。
AGAとは「AndrogeneticAlopecia」の略で、男性型脱毛症のことをいいます。成人男性特有の進行性の脱毛症で、遺伝や男性ホルモンの影響が主な原因だといわれています。生え際や頭頂部の毛髪が薄くなるのが特徴で、治療せずに放置すると進行していくため早めの治療が大切です。
ヒト幹細胞を使用したコスメの費用
ヒト幹細胞を使用したコスメの費用は、配合成分やどのくらい幹細胞エキスが配合されているかなどによって異なります。しかし、一般的にはどうしても生産コストが高くなってしまうので、比較的費用は高くなってしまうといえるでしょう。
しかし、費用対効果(コストパフォーマンス)を考えると、ヒト幹細胞培養液を配合した製品に大きな有用性や期待を持てます。どうしても価格が気になる場合は、試供品などを試してみるのも良いかもしれません。
ヒト幹細胞やエキスの健康への効果
ヒトの細胞には幹細胞が存在し、老化することでその機能が低下し各組織や臓器の健康が脅かされる状態となります。そのため年齢と共に疾患のリスクが高まっていくと考えられています。ここでは、ヒト幹細胞が健康面でどのような効果があるのかを解説していきます。
再生医療への応用
ヒト幹細胞は再生医療への応用も進んでいます。ヒト幹細胞は、わたしたちのからだをつくるさまざまな細胞に変化する能力(分化)と、まったく同じ能力を持った細胞に分裂することができる能力(自己複製)という2つの特徴を持っています。この2つの能力から、機能を失った、または機能が低下した組織や臓器を再生・修復する治療への応用が進んでいます。ヒトの幹細胞を移植することにより、臓器を再生したり修復したりといった技術も進歩しており、今後さらに様々な治療方法が確立されていくことが予想されています。
免疫力の強化
ヒト幹細胞エキスは免疫力の強化にも適しているとされています。免疫機能はT細胞の働きに大きく影響されており、そのT細胞はエクソソームという物質から作用を受けます。
ヒト幹細胞エキスにはこのエクソソームが含まれているため、免疫機能向上にも期待できるのです。
ヒト幹細胞やエキスの安全性
どのような治療法、治療薬にも安全性への疑問はつきものと思いますが、ヒト幹細胞エキスについてはヒト由来の成分のため、拒絶反応を起こす要因も少なく比較的安全性が高いといえるでしょう。
エキスと培養液の違い
幹細胞を培養した後の上澄み液が培養液になります。培養液エキスは、上澄み液である培養液を水やアルコールなどによって薄め、その中から成分を抽出したものになります。
薄める水やアルコールは成分を抽出しやすくするために使用するのですが、薄める割合は一定ではないため、同じ培養液エキスでも濃度の違いが生まれやすくなっています。そのため、原材料表示で培養液エキスが100%と記載されていても、必ずしも高い濃度であるとは限りません。
コスメの中には培養液エキスと培養原液といった形で、異なる表記がされているものもあります。これらは多くの場合成分濃度が異なっており、それぞれが表記ルールに基づいて異なる表記がされています。
ヒト幹細胞エキスやヒト幹細胞培養液の危険性
ヒト幹細胞エキスや培養液はヒト由来の成分のため、親和性が非常に高くなっています。 そのため体内に取り込みやすく、効果も持続しやすい成分で、拒絶反応・副反応といったリスクも少なめです。
実際にヒト幹細胞エキス・培養液の使用で、副作用が確認されたという報告はありません。
一部のデマで、細胞がガン化するといった情報がありますが、そのような健康を害するようなリスクも現時点では発見されていません。
どのような成分でも100%リスクがないと言い切ることは難しいのですが、ヒト幹細胞エキス・培養液はヒト由来の成分ですので、同じような成分の中でも安全性の高さは際立っています。
また、ヒト幹細胞エキス・培養液を怪しむ声は、脂肪吸引などから採取された細胞から抽出する過程が理由とも考えられます。このような抽出方法から、「他人の細胞を注入する」といった誤った理解をされてしまい、ネガティブな情報が出回ってしまっているようです。
実際のところ、抽出した細胞をそのまま使用することはなく、使用されているコスメ美容液等に幹細胞自体が配合されているわけでもありません。 この点は厚生労働省の「生物由来原料基準」にて、直接ヒトの幹細胞を配合してはいけないと定められています。
一部アレルギー反応が見られる場合がありますが深刻なものではなく、使用を中止することで反応も収まります。アレルギー体質で心配な場合は、治療を受ける前にアレルギー科の医師に相談したり、治療前のカウンセリングなどで担当医にそのことを相談すると良いでしょう。
まとめ
ヒト幹細胞エキスは細胞を活性化させ、肌のターンオーバーを促進する効果が期待できる成分です。美容業界で大変注目されており、多くのコスメ商品に配合されるようになってきています。ヒト由来成分ですので、親和性・安全性が高く、明らかなリスクと考えられる点もありません。
ヒト幹細胞エキスは肌本来が持っている美しさをサポートする、美容業界で大変期待されている美容成分です。コスメ選びの際にはヒト幹細胞エキス配合の商品を積極的に検討してみてはいかがでしょうか。
参考文献