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幹細胞治療によるAGA治療とは?毛髪への再生医療と自毛植毛術の比較も紹介


AGAとは「男性型脱毛症」のことで、このAGAに悩まされている男性は多いのではないでしょうか。


AGAは進行性の脱毛症であるため、完治させることは難しいとされてきました。しかし、再生医療による新しい治療法が開発されています。


幹細胞を使ったAGA治療は、頭皮の細胞を活性化させて毛髪の再生を促す治療法です。そのため、これまでより高い効果が期待できます。


この記事では、幹細胞治療によるAGA治療について解説します。自毛植毛術との比較も紹介するので、AGAにお悩みの方はぜひ参考にしてください。


幹細胞治療によるAGA治療とは?


研究 科学者


幹細胞治療とは、患者さん自身の脂肪組織から取り出した幹細胞を培養し、患部に局所注射または点滴にて注入する再生医療のことです。


私たちの身体には、多くの細胞が存在しています。そのなかには皮膚や血液のように一つひとつの寿命が短い細胞もあり、絶えず入れ替わり続けています。


また、病気・ケガなどで細胞が死滅することもあるでしょう。身体全体の機能を維持するためには、失われた細胞を再び生み出して補充する必要があります。


この役割を果たすのが幹細胞です。新しい皮膚・脂肪のもととなる細胞へ分化できるため、医療・美容の分野で注目を集めています。


この能力を活かし、幹細胞を頭皮に直接注入し髪を作る毛包幹細胞を活性化させようと試みるのが、幹細胞によるAGA治療です。


ヘアサイクルは成長期・退行期・休止期から成り立っています。成長期に髪の毛が伸び、退行期に成長が止まり休止期に抜け落ちる周期が繰り返されます。


AGAは男性ホルモンの影響で毛髪の成長が阻害され、成長期が極端に短くなる疾患です。毛包幹細胞が休眠状態になり、やがて髪の毛が生えてこなくなります。


そこで幹細胞の能力を使って休眠している細胞に働きかけ、正常なサイクルに戻るよう休止期から成長期へ移行スイッチを切り替えて発毛を促すのです。


従来のAGA治療に新しく加わった治療法ですが、患者さん自身の細胞が本来持つ能力を利用しているため、効果・安全性の面で大きなメリットがあります。


なお再生医療を行うためには、特定認定再生医療等委員会の認可が必要です。幹細胞治療を検討している方は、認可を受けているクリニックか確認しましょう。


そして、どのような治療法を提供しているのか、どのような安全対策をとっているのかも併せて確認することをおすすめします。


再生医療の適応症


髪を気にする男性


幹細胞を用いた再生医療は新しい治療法で今も研究が進められており、治療適応となる疾患が増え続けています。


AGAも再生医療の治療に適応していますが、同じように見える脱毛症でもそれぞれ症状・進行度合いはさまざまです。



  • 壮年性脱毛症

  • 円形脱毛症

  • 休止期脱毛症


この項では、特に再生医療に適応しているこれら3つの脱毛症を解説します。自身の疾患を理解するためにも参考にしてみてください。


壮年性脱毛症


壮年性脱毛症とは、30〜50代の壮年期に多く見られる脱毛症を指します。働き盛りの若い世代に発症します。


主に額の生え際・頭頂部から薄毛が進行していくのが特徴です。さらに頭髪全体のボリュームが減少し、加齢とともに症状が悪化していく傾向にあります。


AGAは男性のみに発症しますが、壮年性脱毛症は女性も発症する場合があります。ホルモン・遺伝が大きく関係していると考えられています。


さらに、ストレス・栄養不足・誤ったヘアケアなども原因と見られていて、セルフケアでは改善しないため、男女問わず幹細胞治療の効果が期待できる疾患です。


円形脱毛症


円形脱毛症


円形脱毛症は、毛髪の一部分が円形または楕円形にごっそりと抜け落ちる特徴があります。複数個が同時に発生する場合もあり、症状はさまざまです。


これは何らかのきっかけで毛包周囲に炎症が起き、一部のリンパ球が誤って毛包組織を壊そうと攻撃する自己免疫疾患の一種です。


さらに、遺伝・アトピー素因・ストレスも影響していると考えられています。自然と治る場合もありますが、重症化・再発するケースもみられます。


ただし円形脱毛症の場合はAGAとは異なり、毛包幹細胞は無事な場合が多いです。幹細胞が無事であればまた毛髪は生えてきます。


幹細胞治療によって、個々の細胞が正常に働くよう促します。AGA程の効果は得られにくいものの、重症化している方は検討の余地があります。


休止期脱毛症


休止期脱毛症とは、本来は成長期にある毛髪の多くが休止期に移行し、頭部全体の脱毛量が増える疾患です。


休止期に入ると成長を促す毛母細胞が働かず毛髪が成長しません。正常であれば、休止期毛は全体の10%程度です。


しかし、休止期脱毛症では休止期毛が全体の15%以上を占め、細くて短い成長途中の毛が大量に抜け落ちてしまいます。


主に30〜60代の女性に多く、高熱・外傷・手術によるストレスが原因の急性タイプと、全身疾患・薬剤投与が原因の慢性タイプがみられます。


一般的に原因が取り除かれると自然と回復しますが、成長期に切り替わるまでに長い時間を要することもあります。幹細胞治療で移行を促すのが効果的です。


再生医療に関連する毛髪の組織について


鏡を見る男性


ここからは、毛髪組織の種類を解説します。再生医療はそれぞれの組織が持つ働きを助けるための治療法です。


患者さん自身も毛髪組織の仕組みを知っていれば、より効果的に治療を進められるでしょう。再生医療について理解するためにもぜひ参考にしてください。


毛母細胞


毛母細胞は毛髪を作る細胞で、毛乳頭の周りにあります。毛細血管から吸収した栄養分・酸素をエネルギーにして分裂を繰り返し、毛髪を作っていきます。


そのため、毛母細胞が死滅し働きを完全に停止すると毛髪は生えてきません。死滅した毛母細胞は復活しないからです。


しかし毛母細胞が簡単に死滅することはほとんどなく、多くの場合一時的に働きを休止しているに過ぎません。通常はヘアサイクルを終えたときに死滅します。一生涯にわたり、ヘアサイクルは20〜40回繰り返されるものです。


平均すると2~6年で一周し、次のサイクルが始まります。ただし、頭皮に縫合手術が必要な程の大きな怪我・火傷といった過度の刺激を受けた場合は、毛母細胞が死滅する場合があります。


薄毛になるのは、毛母細胞の働きが弱まるためです。ストレス・加齢・飲酒・喫煙などにより活性酸素が増加し、それが毛母細胞を攻撃します。


内毛根鞘


くしを見る男性


毛髪が抜けたとき、その根元に白い塊が付着しているのを見たことがある方は多いでしょう。その白い塊を「毛根鞘(もうこんしょう)」といいます。


白く半透明で、べたつきがないのが特徴です。毛根鞘には毛母細胞に栄養を届ける毛乳頭が含まれており、毛根を取り囲んでいます。


毛根鞘の役割は、毛髪を頭皮につなぎとめることです。内毛根鞘および外毛根鞘で構成されており、内毛根鞘は毛根側と接する内側部分を指します。


これが髪の外層に当たる毛小皮(キューティクル)と噛み合うように付着しているため、成長期の毛髪が抜けないように守られています。


抜けた毛髪に毛根鞘が付いているのは正常な状態なので、心配はありません。毛根鞘には発毛を促す働きはなく、ヘアサイクルとともに再び作られます。


ただし、抜け毛のほとんどに毛根鞘が付いていない場合は薄毛の可能性があります。毛髪が十分に成長しないまま、抜けている可能性が高いです。


外毛根鞘細胞


外毛根鞘細胞は、毛根鞘の外側に位置する細胞です。皮膚側に接しており、内毛根鞘の役割を外側から支えています。


外毛根鞘には毛母細胞のもととなり、毛髪の太さにも関係するCD34たんぱく質を含んだCD34陽性細胞が存在しています。


必要な栄養素を毛根の細胞に供給する働きを担っており、毛髪が成長するために重要です。また、細胞が成長するバルジ領域があるのも外毛根鞘です。


外毛根鞘細胞が健康であるなら、抜け毛の防止・健康的な毛髪の維持が可能となります。そのため、適切な頭皮ケアが欠かせません。


毛乳頭(DP)


くしを気にする男性


毛乳頭があるのは、毛根の一番底のくぼんだ部分です。毛細血管によって運ばれた酸素・栄養分を取り込み、毛母細胞に届ける役割を担う細胞です。


毛髪は「毛根」と「毛幹」からできています。表面から見えている部分が毛幹で、毛髪の成長に不可欠な毛母細胞・毛乳頭は毛根の下部にあります。


毛髪に栄養を送るとともに、ヘアサイクルを正常に保つために毛母細胞の増殖・分化を促進する指令を出すことから、毛乳頭は毛髪生産の司令塔でしょう。そのため、毛乳頭がダメージを受けると毛髪が育ちません。


実際に毛球部を切断したところ、毛包上部の組織のみでは毛包が再生されないことがわかっています。


なお、AGAは男性外生殖器の形成に必要なDHT(ジヒドロテストステロン)が、毛乳頭にある受容体と結合して引き起こされます。


毛根鞘細胞


内毛根鞘のところでも触れましたが、毛根を取り囲むように存在する間葉系の細胞です。毛乳頭細胞の前駆細胞で、毛包の底にあります。


壮年性脱毛症の新たな治療法として、自家毛髪培養細胞を用い毛根鞘細胞を再生する治療法が開発されています。


壮年性脱毛症の患者さんの後頭部から採取した皮膚組織から、「毛球部毛根鞘細胞細胞加工物(S-DSC)」と呼ばれる物質を作るのです。


このS-DSCを脱毛部分に注射し、毛髪の細胞を回復させます。治験では有益な効果が得られており、重大な有害事象も認められておりません。


見た目でわかる治療効果と安全性を示すため、さらなる臨床研究を実施される予定です。近い将来、S-DSCを使った治療法が身近なものとなるかもしれません。


毛髪への再生医療と自毛植毛術の比較


診断する医師


AGAに有効な治療法として自毛植毛術が行われてきましたが、再生医療とはどのような違いがあるのでしょうか。



  • 治療効果

  • 治療費用

  • 治療にかかる時間


この3つの観点から、再生医療・自毛植毛術の違いを比較していきます。ご自分にとってよりよい治療法を選択するためにお役立てください。


治療効果


再生医療を使った治療を受けられるクリニックは少なく、治療効果ははっきりとしていません。安全性や副作用も完全に解明されていない点にも注意が必要です。


幹細胞を利用したAGA治療として、幹細胞上清液療法があります。幹細胞を培養増殖する際に利用した溶液の上澄みを、頭皮に注入する治療法です。


損傷した毛包幹細胞を修復し再生を促進するため、従来の薬物治療よりも効果が高いことが認められています。さらに、男女ともに施術ができます。


最初の2~3週間は抜け毛が増えますが、心配はありません。新しい毛髪の成長により、機能していない毛髪が抜けるため抜け毛が増えるのです。治療の前後2週間は、パーマ・染髪・脱色は控えるようにしましょう。


赤み・腫れ・内出血などの副作用が出ることもあります。カウンセリングを受けるときは、副作用やリスクをしっかりと確認しておくと安心して治療を受けられるでしょう。


再生医療によるAGA治療は、幹細胞治療だけではありません。組織の修復を促す作用のある物質、PRPを血液から採取し頭皮に注入するPRP治療もあります。


一方、自毛植毛術は健康な毛髪を毛包ごと採取し気になる部分に移植する方法です。副作用が少なく、日本皮膚科学会から承認されています。


ただし費用が高額になりやすく、効果に即効性がないというデメリットがあります。施術するドクターのスキルで仕上がりが異なる点も注意が必要です。


治療費用


治療費


AGA治療は保険が適用されない自由診療です。そのためクリニックごとに費用が異なり、多くの場合医療費控除の対象ともなりません。あらかじめ検討しているクリニックに確認しましょう。


AGA治療の費用相場は、検査料・薬代込みで月々1万~3万円(税込)程です。症状が軽度であれば、1万円以下に抑えられるケースもあります。


ただし再生医療によるAGA治療・自毛植毛術は、この費用相場よりも価格が高くなるのが一般的です。なぜなら繊細な管理・高度な技術が必要だからです。


例えば、幹細胞上清液療法は1回あたり10万円(税込)以上です。注入する量や治療回数によって値段は異なってきます。


また、PRP治療は月5万~8万円(税込)程です。自分の血液から作り出すため副作用が少なく、安心して受けられる治療法です。


しかし治療効果には個人差があり、毛母細胞が死滅していると効果が得られません。治療中もしくは治療後に痛みが出ることもあり、慎重な選択が必要です。


自毛植毛術の場合は、1回の手術費用が26万円(税込)程となっています。費用面も考慮しつつ、どの治療を行うかよく検討しましょう。


治療にかかる時間


頭皮診断


効果を得るためには定期的な通院が必要です。幹細胞上清液療法の場合、3~4週間に一度、1クール6回の治療がおすすめです。個人差はありますが、4回程で効果を実感できるでしょう。施術時間は15~30分程で行えるため、忙しい方も気軽に受けられます。


PRP治療は2~3ヵ月に1回程度の頻度で施術をします。患者さんが希望する場合は、月1回の施術を受けることも可能です。


個人差はありますが、1~3回(6ヵ月程度)で効果を実感できます。カウンセリング後に採血をし、外部機関と協力しながらPRPを作製します。


PRPが完成してから治療開始となるため、当日中の治療はできません。基本的に内服薬と併用しながら治療を進めます。


自毛植毛術はいくつかの術式がありますが、どの術式を選択しても1日で治療が終わります。そのため、日帰り手術が可能です。施術時間は3~6時間程です。長時間になるため、体調を考慮して休憩をはさみながら施術を行うこともできます。


FUT(Follicular Unit Transportation)法は、AGAの影響を受けにくい後頭部の頭皮を切り取る術式です。切り取った後頭部の頭皮からドナー株を採取し、移植を行います。


抜糸が必要なため、手術の1〜2週間後に来院しなくてはいけません。しかし、ほかの術式なら通院の必要はなく回復も早いです。


なお、植毛する量が多い場合はさらに施術時間が長くなり、1回の手術で終わらない場合もあります。医師とよく相談して施術内容を決定しましょう。


まとめ


髪 男性


AGA治療には薬を使ったものなど、さまざまな治療法があります。幹細胞治療によるAGA治療は、そこに新たに加わった治療法です。


再生医療そのものがまだ研究段階にあり、幹細胞治療を行っているクリニックは限られています。しかし、自身の細胞を使用するため、副作用が少ないなどさまざまなメリットがあります。


また、治療効果も高いのが特徴です。幹細胞治療以外にも、再生医療を使った薄毛治療の研究は進んでいます。


今はまだ対応しているクリニックも少なく費用も高いですが、いずれはAGA治療の選択肢の1つとして大きく普及していくのではないでしょうか。



参考文献





この記事の監修歯科医師


高藤 円香医師(自衛隊阪神病院)



高藤 円香医師(自衛隊阪神病院)




防衛医科大学校卒業 / 現在は自衛隊阪神病院勤務 / 専門は皮膚科



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