薄毛の治療を受けるなら、安全性の高く、効果的な治療を受けたいですよね。この記事では、AGA(男性ホルモン型脱毛症)で悩む男性の方へ詳しく解説します。
植毛などの手術に抵抗があるけど、痛みや副作用が少ない治療法がいい。再生医療の毛髪療法に興味があり、複合治療での発毛効果を高めたい。
そう思われる患者さんへ、AGAの従来の治療法から先進的な毛髪再生医療までさまざまな治療法のメリット・デメリットも含めて紹介します。
男女ともに受けられる女性の薄毛治療におすすめの施術も紹介します。AGAはもちろん女性の薄毛にも効果があるので、ぜひ参考にしてください。
注意事項や治療を受けられない場合、効果が出にくい場合もあります。医師の説明に十分に納得したうえで治療を受けてください。
AGA(男性ホルモン型脱毛症)とは
思春期以降に発症する薄毛のことで、成人男性によくみられる進行性の脱毛症です。細い毛や脱毛が増えます。
おでこの前頭部がM字型に後退したり、つむじ周辺の頭頂部がO字型に薄くなる状態です。どちらか一方、または両方から薄くなっていきます。
この症状は男性ホルモン型脱毛症(AGA:Androgenetic Alopecia)と呼ばれ、遺伝も関わるとされています。
自分の髪はどうなったのかと不安を誰にも相談できず、心細いですよね。薄毛に悩む方の気持ちに寄り添いながら、AGAの原因と症状を解説します。
AGAの原因
Androgenは男性ホルモン・geneticは遺伝・Alopeciaは脱毛症を意味するAGAの主な原因は、遺伝だと考えられています。
特に母方の親族に薄毛の人がいる場合、高確率でAGAを発症することがありますが、今は治療法が確立されているため心配はいりません。
悪玉男性ホルモンの1つのであるDHT(ジヒドロテストステロン)が原因でAGAを発症するといわれています。
悪玉男性ホルモンDHT(ジヒドロテストステロン)は男性ホルモンのテストステロンと、還元酵素の5αリダクターゼの結びつくことで生成されます。
AGAの症状
悪玉男性ホルモンDHT(ジヒドロテストステロン)の前頭部・後頭部の脱毛部分への高濃度分泌により、毛髪の成長期は短くなります。
長く太く成長できない毛髪は細くなり、生えなくなります。
以下はAGA(男性ホルモン型脱毛症)の症状です。
- おでこの前頭部がM字型に後退する
- つむじ周辺の頭頂部がO字型に薄くなる
- サイドの側頭部は薄くならない
- 症状が少しずつ悪化していく
以下はAGA(男性ホルモン型脱毛症)のタイプです。
- M字型:額の左右のM字部分から薄くなる
- O字型:頭頂部から薄くなる
- U字型:前頭部全体から薄くなる
AGAの従来の治療方法
AGAの従来の治療方法には内服薬・外用薬・植毛術・低出力レーザー照射などが挙げられます。それぞれの治療方法を解説しましょう。
従来の治療法のなかには重要な注意事項もあるので医療機関を受診して、医師の処方により正しく服用するようにしてください。
プロペシアは、妊娠中の女性では男の胎児の生殖器に異常を起こすおそれがあることが米国FDAの公表する注意事項に掲載されています。
内服薬
AGAの内服薬は以下のとおりです。
- プロペシア:国内外で多く普及しているAGA治療薬。テストステロンをDHT(ジヒドロテストステロン)へと変換する5α還元酵素(2型)を阻害します。
- フィナステリド:プロペシアのジェネリックのAGA治療薬。プロペシアより費用が抑えられます。
- ザガーロ:2015年に承認されたAGA治療薬。テストステロンをDHT(ジヒドロテストステロン)へと変換する5α還元酵素(1型・2型)を阻害。プロペシアより高い効果が期待できます。
- デュタステリド:ザガーロのジェネリックのAGA治療薬。ザガーロより費用が抑えられます。
外用薬
AGAの外用薬は以下のとおりです。
- ミノキシジル:毛細血管を拡張させ、毛根へ豊富な血流と栄養を与える。内服薬としての危険性が十分に検証されていません。
- アデノシン:細胞のエネルギーのATP(アデノシン三リン酸)を構成する重要物質。毛根の細胞で細胞増殖因子を産生します。
- カルプロニウム:各種脱毛症の脱毛防止・発毛促進・乾性脂漏・尋常性白斑の治療に用いられます。
- ケトコナゾール:脂漏性皮膚炎を起こす真菌を取り除き、頭皮環境を改善。
- フラバノン:毛乳頭細胞で産生されて毛母細胞に作用し、髪の成長を抑えるTGF-βの活性を抑制します。
- サイトプリン:毛根細胞内の髪の成長に必要なタンパク質のエフリン・BMPの生成を促し、発毛促進シグナルを増幅します。
- ペンタデカン:毛根細胞内の髪の元となるタンパク質のケラチンの合成に必要なエネルギーを供給します。
植毛術
AGA(男性ホルモン型脱毛症)になりにくい後頭部の毛髪を、薄毛になりやすい頭頂部や前頭部へ移植する治療法です。
自家植毛術といわれる一種の手術で、メリットは治療効果が高い点です。デメリットは内服療法や外用療法より費用がかかる点でしょう。
患者さんの症状と希望から治療法を組み合わせて治療を受けていただくことが、現実的でおすすめです。
低出力レーザー照射
LLLT(Low Level Laser therapy)は、FDAの認証を受けているレーザー波長を使った安全性が高い低出力光学療法です。
AGAに効果的に作用します。ただし、使用を控えた方がよい場合もあるため、医師へご相談ください。
LLLTの特徴は以下のとおりです。
- 頭皮を均一に照射して血流を改善する
- 頭皮に栄養と酸素を供給して育毛を促す
- 安眠効果がある
- 痛みや副作用がほとんどない
LLLTは以下の方におすすめです。
- 自宅で育毛したい
- 薬や育毛剤の使用を避けたい
- 女性の薄毛治療にもおすすめ
- 薬との併用で治療の相乗効果を得たい
毛髪再生医療によるAGA治療とは
毛髪再生医療は、再生医療の承認を得た医療機関で受けられます。従来の育毛方法で改善しなかったり、薬の副作用が気になる方におすすめです。
毛髪再生医療は頭皮注入による薄毛治療で、以下の成分や薬剤を注入します。この記事では、PRP療法と幹細胞培養上清療法を解説します。
PRPか培養上清液かを直接頭皮へ注射して機能低下した毛包幹細胞を活性化し、再び太く元気な毛を作れるように刺激を与え、育毛を促進します。
- PRP:自身の血液を採取して成長因子を多く含む成分
- 幹細胞培養上清療法:脂肪・臍帯・歯髄・骨髄由来
- エクソソーム療法:細胞から分泌される物質エクソソーム
- Dr.CYJヘアーフィラー:7種類の発毛・育毛に関わるペプチド含有の薬剤
- HARG療法:他人の細胞を培養して抽出した成長因子
PRP療法によるAGA治療
PRP(多血小板血漿)を使った毛髪再生医療の特徴、PRP療法によるAGAの治療方法と効果を解説します。
メリット・デメリットがあるので、治療を検討する際の参考にしてみてください。
PRP療法の特徴
患者さん自身の血液を採取してPRP(多血小板血漿)を抽出し、頭皮へ注入する治療法です。
修復能力が優れたPRPに含まれる成長因子が頭皮サイクルを活性化し、頭皮再生を促します。
PRP療法のメリットは以下のとおりです。
- 高い効果が期待できる
- 男性も女性も受けられる
- 安全性が高い
- 副作用の心配はほとんどない
PRP療法のデメリットは以下のとおりです。
- 採血の必要がある
- 体への負担が多少かかる
PRP療法によるAGAの治療方法
PRP療法は、もともと体の機能として備わっている発毛力を引き出すAGAの治療方法です。血小板内に含まれる成長因子で改善を促します。
血小板には修復させる作用があります。高濃度にした血漿(PRP)で修復能力を高め、患者さん自身の治癒力で治すのが、PRP療法です。
頭皮では毛母細胞の生成と成長が活発になります。アレルギー反応、治療の回数や通院の負担も少なく、頭皮に優しい育毛治療です。
患者さん自身の血液から作るPRPを使い、安全性と信頼性が高いといえるでしょう。過去の報告や文献の多さが証明しています。
PRP療法によるAGA治療の効果
PRP療法がおすすめの方、効果とメリットを解説します。治療を受けられない方、効果が出にくい方にも言及するので参考にしてください。
期待できる効果とメリットは以下のとおりです。
- 2~3ヵ月程で効果を実感(個人差あり)
- アレルギーや副作用の心配がない
- 飲み薬と併用できる
- 男性のAGA・女性の薄毛にも効果がある
- 通院回数の負担が少ない
治療を受けられない方は以下のとおりです。
- 妊娠中の方
- 全身状態の優れない方
- 免疫疾患の方
- がん治療中の方
- 喫煙の方(効果が出にくい)
幹細胞培養上清療法によるAGA治療
老化した細胞や傷ついた組織の再生に有効なAGA(男性ホルモン型脱毛症)の治療法を紹介します。
人間の体内から抽出した幹細胞を培養する時に使った培養液から、幹細胞を除いた液体(上澄み液)を、幹細胞上清液といいます。
幹細胞はさまざまな臓器の組織に分化が可能です。そのため、幹細胞培養上清液に含まれる成長因子の効果は多岐にわたります。
毛髪の領域ではVEGF(血管内皮増殖因子)、KGF(上皮細胞成長因子)が毛母細胞へ働きかけて育毛や発毛、増毛効果を促進するでしょう。
幹細胞培養上清療法の特徴
定期的な治療を受けることをおすすめします。幹細胞移植との違いも参考にしてください。
幹細胞培養上清療法の特徴は以下のとおりです。
- 幹細胞採取手術や細胞培養・事前検査は不要
- すぐに治療できる(滅菌凍結の注射液)
- 幹細胞移植よりコストが10分の1以下
- 治療時間は部位により15~30分
- 通院は注射と点滴(目安月1~2回程度)
注意事項と治療を受けられない方は以下のとおりです。
- シャワーや入浴・軽い運動は当日から可能
- 動物性蛋白のアレルギーがある方
- 妊娠中の方(または可能性がある方)
幹細胞培養上清療法によるAGAの治療方法
点滴による全身投与です。点滴などの溶液に幹細胞培養上清液を入れ、ゆっくりと静脈内に投与します。
培養上清液に含まれる多種多様なサイトカイン(成長因子)が体内の損傷部位の細胞を活性化させ、さまざまな老化現象の改善が期待されています。
幹細胞培養上清液は、損傷部位の修復が特徴です。例えば、KGF(ケラチノサイト成長因子)は発毛・育毛に効果があります。
VEGF(血管内皮細胞増殖因子)が損傷部位の細胞を活性化すると発毛と育毛を促進し、ゴースト血管を抑制するという効果の現れ方です。
幹細胞培養上清療法によるAGA治療の効果
幹細胞培養上清液には数百種ものサイトカイン群の有効成分が含まれることが報告されており、免疫改善や美容の領域でも大変注目されています。
AGA(男性ホルモン型脱毛症)にも多く活用されている幹細胞培養上清療法の効能効果を紹介します。
特徴と効能効果は以下のとおりです。
- 毛根の細胞レベルの活性を促す
- 高い発毛即効性
- 副作用がほとんどない
副作用と注意事項は以下のとおりです。
- 出血・頭痛・血圧低下
- がんのある方への施術はできない
- 毛根が完全に失われた部分への発毛はできない
PRP療法との違い
幹細胞培養上清療法とPRP療法との主な違いは、成分と原料です。PRP療法(多血小板血漿療法)は患者さん自身の血液を使います。
幹細胞培養上清療法で使うのは、人間の体内の幹細胞を培養した液体から幹細胞のみを取り出し、滅菌などの各種処理を行った上澄み液です。
また、幹細胞培養上清療法では幹細胞から分泌される成分や因子は含まれますが、幹細胞そのものは含まれません。
PRP療法では血液中の血小板由来の成長因子(サイトカイン)が使われます。血小板そのものが濃縮して使われる点も違うといえるでしょう。
毛髪再生医療によるAGA治療の安全性は?
自身の血液を採取するPRP、他人の幹細胞を培養した幹細胞培養上清液、ほかにも先進的なさまざまな毛髪再生医療によるAGA治療があります。
厳重管理された培養施設で製造され、ウイルス検査をはじめ安全性にも問題なく、治療を受けることができるでしょう。
一方で、政府機関からの発表もありましたが、美容医療のトラブルは平成22年度(2010年度)からの3年間で5千件を超え、年々増加の状況にあります。
トラブルを避けるためにも患者さんには、医師の説明に十分に納得されたうえで治療を受けてください。
まとめ
毛髪再生医療によるAGA治療に、いくつかの希望の灯が見えてきました。すさまじい速度で進化しつづける医療の日進月歩に驚かされます。
PRPは整形外科の領域にも取り入れられており、実例も少なくありません。何より、自分のために自分の細胞を使うので安心感がありますね。
治療の注意事項や治療を受けられない場合、効果が出にくい場合もあります。医師の説明に十分に納得したうえで受けてください。
人類が薄毛に悩まなくてすむ時代が来るのも、そう遠くないのかもしれません。この記事が、AGAや薄毛に悩む方のお役に立てればうれしく思います。
参考文献